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親友への想いが奇跡を生んだ、結婚式

日本で入籍するカップルは、年間約60万組。
しかし、その中で結婚式を挙げているご夫婦は約半数のみ。
残りの半分は、挙式をしていないという現状があります。

結婚式をあげない理由はさまざま。
「お金に余裕がない」
「授かり婚でタイミングを逃してしまった」
「再婚なので式をする予定はない」

結婚式は人生の大イベントだからこそ、簡単にはできないもの。
苦渋の選択で、式を諦めたご夫婦がたくさんいます。

そんな、式をあげられなかったご夫婦へ、家族や友人が結婚式を企画し、新郎新婦へプレゼントする「ギフトウェディング」というユニークな結婚式のスタイルがあります。ご夫婦本人ではなく、周りの人々が内緒で新郎新婦のために企画する結婚式です。2人が諦めた夢を、まわりの人々が叶えるのです。

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私は、それに惚れ込み、ギフトウェディング専門でプランナーをしています。
依頼者さまの想いはさまざまです。

「式を挙げれなかったけど、妻にウェディングドレスだけでも着せてやりたい」
「両親が再婚したので、感謝の気持ちを込めて結婚式をおくりたい」

どんなご依頼も、本当に愛で満ちています。
その想いが結婚式として形になった時の素晴らしい空間や一瞬一瞬は忘れることができません。
これは、私が出逢った、夫婦の、家族の、友人の、たくさんの愛が詰まった結婚式の物語。

結婚式を挙げれなかった親友へ


「友人に結婚式をプレゼントしたいんです」

学生時代からの親友に結婚式をあげたいと連絡をくださったのは20代後半の女性、Aさん。
親友のまりさんは2年前に子供を授かり結婚。しかし、金銭的な余裕もなく、結婚式を挙げられていませんでした。

「子供がもう少し大きくなったら、いつかドレスを着てみたい」
Aさんは、まりさんが結婚当初に言ったことばをどうにか叶えたいと思っていました。

Aさんがまりさんに結婚式をプレゼントしようと決意したのは、Aさんの妊娠がわかった時でした。
ずっと不妊治療を行なっていたAさん。そして、ようやく叶った妊娠。
病院でそれが判明したのち、真っ先にまりさんへ電話しました。ずっと応援してくれていたのが彼女でした。
電話で報告を受けたまりさんは自分ごとのように喜んでくれたそう。
そして、Aさんが病院を後にしようとした時、なんとまりさんの姿が。

「直接おめでとう言いたくて、いてもたってもいられず来ちゃった!」
電話を切ってすぐ病院まで駆けつけてくれたまりさん。
そんな友達想いな親友に、絶対に恩返しをしたい。
Aさん結婚式をおくろうと決意しました。

結婚式は、まりさんの誕生月である6月に行うことに。
Aさんと一緒に会場見学をして、まりさんの好きな雰囲気である、ガーデンつきのこじんまりとしたレストランで結婚式を行うことにしました。

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そして、まりさんの旦那さまにも協力してもらい、Aさんからドレスでの記念撮影をプレゼントするという口実で、会場に呼び出すことにしました。その後、撮影のための衣装決めと伝え、ウェディングドレスを選んでいただきました。


思いもよらぬ展開。すべての計画が白紙・・?


順調に準備が進み、残り数日になった頃、Aさんから私へ電話が。
電話を取ると少し申し訳なさそうな声で話し始めたAさん。

「あの、、、もし今キャンセルしたらキャンセル料はいくらかかりますか、、、?

まりが旦那と大げんかしてしまって、、、離婚寸前までヒートアップしているんです。
それで、まりがドレス撮影やらないって言い出して、、、私ももうすぐ出産なので自分たちのためにお金使わせるの申し訳ないし、今回は気持ちだけ受け取らせてって、、、」

サプライズだからこそ、こういったケースは防ぎようのないことですが、数日前なのでゲストも来る準備をしており、Aさんも悩んだ末、連絡をくださったようでした。
ゆっくり事情をお伺いしたあと、今回の結婚式に対する私の想いを伝えました。

「今回の結婚式は、Aさんにしか企画できない結婚式です。Aさんのまりさんへの想いがなければ、この結婚式はここまでカタチになっていません。それは本当に素晴らしく、尊いものだと思います。
もし結婚式のことを打ち明けてもよければ、私はまりさんにサプライズを明かしてでも、決行した方がいいと思います。喧嘩がヒートアップしているふたりも、この結婚式がきっかけで、いい方向に動くかもしれないですし。」
Aさんは、考えてみますと電話をきりました。

数日後、Aさんはまりさんへ、結婚式の種明かしをすることにしました。
その事実を知ったまりさんはとても驚いたそうです。

「本当のこと伝えたら、行くと言ってくれたのですが、二人の仲はまだ微妙です。。。」
またお電話をくださったAさん。実行できることへの安堵と、サプライズを隠しきれなかった悔しさで、複雑な心の内が伝わってきました。


やっと迎えた当日。


そして結婚式本番。まりさんご夫婦とAさんが到着しました。
Aさんにこそっと二人の様子を聞くと、
「ちょっとはよくなりました。」
と無事当日を迎えられたことにほっとしていました。

お着替えを済ませ、ガーデンでの挙式の準備も完了し、小さなレストランでのウェディングが始まりました。
まりさんご夫婦のご家族もこの日を心から楽しみにしており、家族と友人の祝福に包まれて、挙式は執り行われました。
新婦さまのベールを下ろした後、お母さまが新婦さまをギュッと抱きしめた姿がとても印象的でした。

挙式は結びとなり、披露宴へ。
ゲストによるダンスの余興や、Aさんご夫婦からのサプライズムービー。
まりさんも旦那さまも、それぞれ楽しそうに笑顔で、時折涙しながら、パーティーは順調に進んでいきました。

しかし、幸せそうな2人の様子を見ながら、私はどこか違和感を感じていました。
パーティー中、あまり二人が会話をしていなかったのです。

そのままパーティーの終盤を迎え、残すは新郎新婦からの挨拶のみ。
ここで私は急遽、ひとつの仕掛けを用意しました。


本当に伝えたかったこと。


きっと、お互いまだわだかまりが残っている二人。
喧嘩中は意地を張ってしまい、正直に言えなかった気持ちがあるはず。
この非日常な空間を使えば、本当の想いを伝えられるのではないか。

そこで、挨拶に加え、予定していなかった「新郎新婦お互いへのコメント」を話していただくよう、司会から急遽アナウンスすることにしました。

「最後に、新郎新婦さまからのご挨拶に加えと、お互いへ一言ずつ気持ちを伝えていただきたいと思います。では、お願いします。」

まりさんは、急なふりに少し驚いていましたが、まずゲストの方々へ、結婚式を開いてくれたことへの感謝を、涙ながらに伝えていました。

そして、ゆっくりと旦那さまの方を向き、一瞬言葉を詰まらせ・・

「結婚してから色々あったけど、
あなたと結婚したことも、この子を産んだことも、一切後悔していません。

これからも宜しくお願いします。

・・・ありがとう。」

声を震わせながら、なかなか言えなかった心の奥の想いを伝えました。
その一言には、まりさんの旦那さまへの本当の想いが表れていました。
その言葉を聞いて、旦那さまの表情は崩れ、涙が溢れていました。

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お互いが意地を張ってしまい、離婚するかどうかまでいってしまった。
でも二人ともずっと変わらず心の中にあったのは、
“あなたと夫婦になれてよかった”、”家族になれてよかった”、という気持ちのようです。

パーティーが終わった後、旦那さまは
「見栄を張ってしまっていた僕が悪かったんです。」と照れ臭そうに言っていました。
ずっと言えなかったたった一言の素直な言葉が、二人の関係を元に戻し、そして、深めました。

その様子を見てやっぱり一番嬉しそうだったのはAさん。

Aさんの想いと行動が、親友の夢を叶え、さらには二人の未来をも明るくした
愛の溢れるギフトウェディングでした。

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ハモンという小さなおくりもの屋で大切な人へ想いを届けるお手伝いをしています。 

おくりもの屋の日々の中で起こった、心がちょっぴり幸せになるお話を届けていきます。

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