57話 ハチ公の前で③
月明りの中、駅前のブルースセッション演奏はいつまでも続き、人だかりは途絶える事がなかった。
ハーモニカを吹く僕の前には、いつの間にか飲み物や差し入れが置かれていた。これは「演奏がウケている」という意味だ。
それなのに、まだ路上演奏での常識を知らない僕は、(なんだよ、お供えかよ。演奏中は動けないと思ってバカにしてさ。まったく、お地蔵さまじゃないんだから)などと、見当違いな事で腹を立てていた。
その内に、バーボン系のお酒がビンのまま回って来る。誰もがブルースマンらしくストレートで