『ナチュラルスイーツ〜Big Mama Blues〜』

『ナチュラルスイーツ〜Big Mama Blues〜』作 すがの公
<あらすじ>ミソラは大人にならない奇病を持つ妹・レミの姉。その「若返りの遺伝子」をめぐり、大学時代の仲間たちが「ミソラの卵」奪還に奮闘する。あの日、世界は滅亡した。見た目は何も変わってないけど、確かに、その世界は滅亡した。月は誰にも気付かれずに、その形を変えている。

1場■侵入SFC:コンクリートの壁。

舞台、暗。
緞帳上がり、サイレン。

ビーーッ ビーーッ ビーーッ ビーーッ 

『緊急警報、緊急警報、警戒レベル「E」発生、
すべての非難経路をシャットアウト、
ターゲットは殺傷用具を所持。正当防衛適用。各員すみやかに対処せよ』

ビーーッ ビーーッ ビーーッ ビーーッ 

早川、星野、父、

星野: どうして突破されたんだ!僕のタマゴは?!
早川: セキュリティロックまた解除されました!
星野: 一体どこのどいつだ!
早川: ナチュラルスイーツ、とかいう、、。
星野: フザけた名前、つけやがって、、、、、!!
早川: アイディーカード、所有者出ません!ゲストです。
星野: 、、だれだ!
父: あの子だよ。
星野: え
父: あの子以外の誰がこんな事するっていうんだ。
星野: 、、ミソラ、、。
父: レミ。ミソラが来た。

イシダ、フィギア、

イシダ: やばいって!出口!
フィギア: 全員いる?!
イシダ: ヤナギ!どこだ!

ヤナギ、ビニー&テッド、レミ(大)を台車に乗せてくる。
レミの口から透明の管。

ヤナギ: ビニー!テッド!早く!なんかしゃべればかやろお!
フィギア: レミちゃん!
イシダ: 一気に年とっちゃって、かわいそうに。
姉: 、、
ヤナギ: レミちゃん。

管はずす、が、ぐったりした姉

ヤナギ: 畜生、、。ひでぇ事しやがる。
レミ: ミソラ、、どこ?
早川: しまった!屋上です!
父: ははは。

無音部分、かけこむ足音、走って現われる、レミ

レミ: ミソラああああああ!�!

曲、コンクリートの壁飛ぶ。

月を背に妹。血のついた白い服、腕に抱えたウサギのタマゴ

姉: ミソラ。
妹: 、、、おねえちゃん。
レミ: ミソラ!
妹: みたかったでしょ?これ
レミ: なに?
妹: ウサギのタマゴ。
レミ: ウサギのタマゴ!

ゆっくりと卵をかかげる。

星野: よせええええええええ!!!!!!!!!

曲上がり、強くて美しい照明。

舞台奥に大きな赤い三日月
傾斜になっているアンテナのついた屋根
コンクリートの壁
ゴミステーションと電柱。

『あの日、世界は滅亡した。
見た目は何も変わってないけど、確かに、その世界は滅亡した。
月は誰にも気付かれずに、その形を変えている』



2場■サークル時代・チル研:チル研部室

ファミコン、漫画、エロ本、プレステ、フィギア、プラモ、ギターな、部室。
歴史を感じさせる木に『子供心研究会』と江戸文字。
そのしたに落書き『チル研』

ヤナギ: うるせぇ!

近くのラジカセを止めるヤナギ
ビニー&テッド、びく。
ニート、ゲームしてる。
アニおた、フィギア作ってる

ヤナギ: おめえらよぉ。サークル変えろ。な?軽音とかよ。ロッケンとかよ。
もういっその事ヘビメタ部作れ。な?
ビニー: 、、
テッド: 、、
ヤナギ: なんか言えよ!
ビテッド: 、、、
ヤナギ: にやにやしてんじゃねぇ!
ここはお前らみたいな音楽キチガイが集う場所じゃねぇ。
我が教育大学の歴史あるサークル「子供心研究会」
チルドレンズマインドを考えるサークルだ。
イシダ: 略して「チル研」だ。
ヤナギ: おまえら子供の心を少しでも考えた事があるのか?
子供見つけたら食っちまいそうなメイクしやがって。
、、にやにやすんじゃねぇ!
イシダ: うーわー。今の、
すかさずユウナがマジカルダンスで、パインがフレアで6000ダメージって
感じだな。FFで言えば。ポーションくださいって感じだな?今の。
ヤナギ: あ?
イシダ: ポーションください。俺がユウナだとしての話。
ヤナギ: 殴るぞおまえ。
イシダ: うわっ。プロテス(防御)。
ヤナギ: ゲームに例えんな。
イシダ: 伝わんないか。イシダの心は。
ヤナギ: 伝わらん。なんだその格好。
イシダ: 背中、ファミリーコンピューター。
おなか、スーパーファミコン。
右手、初代ゲームボーイ。
左手、なんとディスクシステムのディスク。
ヤナギ: 歴代のゲーム機器身につけてんじゃねー!古いんだよ。
イシダ: イシダなりの古き良きマシンへの弔いの心だ。コスプレ
フィギア: うわー。きもっ。
ヤナギ: お前が言うな!
フィギア: なんで?
ヤナギ: 説明しろ!お前は今何をしてる!
フィギア: フィギア、かわきまち。
ヤナギ: フィギアじゃない!
フィギア: フィギアだよ。サクラ大戦の霧島とエヴァの綾波。6分の一スケール。
ヤナギ: フィギアと呼ぶな!お人形さんと呼べ!
それは、現実にはいない女の人の裸の人形だ。
フィギア: いるようなもんだよ。
ヤナギ: どういう意味だそれは!
フィギア: 安心しろ。これなんて60分の1スケールガンダムだ。
ヤナギ: 安心できねぇよ。いくつだおまえら。
でかい図体して大丈夫かおまえたちは?
就職活動もせずに毎日毎日大学の部室で
明らかに無駄な毎日を過ごして!
無駄どころか!
一歩間違えば性犯罪を起こしかねない危険性をはらんで!
もうすぐ卒業だぞ?
大丈夫か?来年という将来、君らは何になるんだ?
マビニー: (にやにや)
ヤナギ: 笑ってんじゃねぇ!
イシダ: やっぱイシダかな。
ヤナギ: 職業じゃねぇだろが!勝手にカタカナ職業に並んでんじゃないよ。
フィギア: ははっはは
ヤナギ: お前は人を笑うな。
決定だな、おまえらニート決定だな。
フリーター。今や死語となりつつあるフリーター。なれれば良い方だ。
イシダ: 内定来たの?ヤナぎ。
ヤナギ: 見損なうな。この少子化の進む日本で俺のような人材があぶれるわけないだろ?
フィギア: 内定来たの?ヤナぎ。
ヤナギ: だから見損なうな。平成も終わった、法律も変った。
今世紀、日本はようやく需要と供給のバランスを取り戻したわけだ。
イシダ: 内定は?
ヤナギ: 必ずくる!

着メロ

ヤナギ: 見ろ、
イシダ: メール?
ヤナギ: 信じられるか?
同時に3通だ。同時に3通の内定通知が今まさにこの携帯のなかにある。
フィギア: そんで?
ヤナギ: 来た!
コカコーラボトリングです。残念なながらこのたびは、ふごーかく。
次!大日本帝国製薬です。残念ながらこのたびは、ふごーかく。
まだある! 教育大学事務室です。このたび、用務員さんに応募ありがとう、でも、、
イシダ: 自分の大学にまで見放されたか。
ヤナギ: 、、、、おかしい。この世は、間違ってるぞ。
イシダ: あ、星野とマネージャーだ。

星野部長、ミソラ、
ポロシャツにリボンでまとめた参考書

星野: 僕は絶対反対だ。
新法は間違ってると思う。
だって理由なんてさまざまじゃないか!
どうして子供が幸せになるのも不幸になるのも
両親の経済状態じゃないか!
妹: あたしはそうは思わない。
どんなに小さくても命は命。
必死に産まれてこようとする命を断つ権利をどこのだれが持っているというの?!
星野: もちろん産まれ来る全ての子供たちには
産まれる権利がある。
そして幸せになる権利があるじゃないか。
確実に不幸になる可能性をはらんでいるそのタマゴを
この世に解き放つなんて、それこそエゴイズムだよ。
妹: ナンセンスね。
星野: ナンセンスだって?
僕は子供心研究会略してチル研の部長として
屈託のない意見を述べているまでだよ
議論において相手の意見を一言でナンセンスと片付ける
君のその姿勢こそナンセンスとは言えないかい?マネージャー?
妹: 出たわお得意の水掛け論。
どうせさっきテニスで私に負けた記憶が拭されないのでしょうよ。
男らしくないわ。まるで男らしくない。
星野: クリケットなら負けないさ!
ヤナギ: どこだここは!!
なんだその完璧なまでのカレッジライフは!
クリケット?!
間違ってるのは俺たちか?
星野: どう思うヤナギ?先の法律改正について。
ヤナギ: 法律?なんの?
星野: 中絶予防対策についての法律さ。
ヤナギ: あーどうだろうねぇ。そういやここはそういう文系サークルだったな。
ニビテッド: うん。
妹: 私は子供たちのためにはむしろ素晴しい法律だと思うの。
受胎をしたその瞬間から育ち行く命よ!?
生命が誕生する事が不幸を招くのじゃないわ。
軽はずみなセックスが不幸を招くの!
人類はもっとセックスを大事にするようになる。
正しいセックス!みんな、正しいセックスよ!
ヤナギ: 君の意見に賛成。君の瞳に乾杯。
フィギア: おい。
ヤナギ: ミソラちゃん、もっと言ってくれ。
今この瞬間を大切にしたいんだ。
星野: よく考えろヤナギ。
ヤナギ: 視界にはいるなよおまえは。
星野: 僕はにわとりを飼っている!
ヤナギ: そして突然何を告白するんだ。
星野: 僕はにわとりを飼っている。ペットで。
ヤナギ: わかったから。
星野: にわとりはほぼ毎日たまごを産むんだ。
オスとメスをつがいで飼っている場合、
5割の確率でそれは有精卵となる。
にわとりはほぼ毎日たまごを産むんだ。
君は全てのヒヨコを幸せにできると思うか?
全てのヒヨコを健康に育てられると思うか?
ヤナギ: にわとりの幸せがわからねぇーけど。
星野: 抑制があって淘汰があってこの世はバランスを保っているんだ。
なかには失敗作だってある。
失敗作とわかっても、君はそのヒヨコをかえすのか?
妹: どうしてもあなたとはわかりあえないようね。
星野: そのようだね
ヤナギ: ミソラちゃん提案。
こんなな、親が貿易会社の社長、お遊びで大学通ってるような
世間知らずのボンボンなんてほっといて、
俺と一緒にカラオケにでも行こう。
そしてその後二人きりで正しい事しよう。
イシダ: ヤナギー

星野、妹、ひしと抱きあってる。

ヤナギ: えーーー
星野: ちょっと議論が熱くなりすぎた。
妹: 気にしないで。あたし少し捜し物があるから待ってて
星野: わかった。一緒に帰ろう。リムジンで送るよ。
ヤナギ: リムジン。
妹: ヤナギくん。
ヤナギ: 、、はい。
妹: 部室に小さい女の子来なかった?
ヤナギ: 、、わかりません。
妹: そう。
フィギア: どんな子?
妹: あたしより小さい女の子。

妹退場。

ヤナギ: 、、、。
星野: おまえには可愛そうで教えてなかったんだけどな。
イシダ: 二人、つきあってんだ。
ヤナギ: いつから。
星野: 入学してすぐだから。
イシダ: 4年。
ヤナギ: おれにぶいーーーーーー。

姉登場。テケテケテケテケー。

レミ: ミソラは?
星野: あっち。
レミ: どーも。
イシダ: あ。
ヤナギ: 、、、小さい女の子。

テケテケテケテケー。コケ。

ヤナギ: 、、、。
レミ: 、、、うう、うう、、
星野: あ、泣く。
レミ: うううううわああああああああああああああああああああああああ
ヤナギ: 泣いた。
イシダ: どうしよ。
レミ: うううううわああああああああああああああああああああああああ
星野: ヤナギ。
ニビテッド: (いけ)
ヤナギ: なんで!
レミ: うううううわああああああああああああああああああああああああ
ヤナギ: ちょっと。
レミ: 、、
ヤナギ: 大丈夫?
レミ: うううあああああああああ

妹、走ってくる。

妹: あ、いた!
レミ: ミソラーーーーーー
妹: どしたの?
レミ: うわあああああ
妹: 誰にやられたの?
レミ: (ちら見)
ヤナギ: え?
レミ: うわああああああ!
妹: (にらむ)
ヤナギ: ちがうちがう!勝手にコケた!
レミ: あああああああ
ヤナギ: そやって何かを訴えながら泣くなよ!
妹: ほら立って。
レミ: うええええええええん。
妹: どうせ嘘泣き。
ヤナギ: え?
レミ: ううえええ。
妹: 嘘泣きでしょ?
レミ: 、、、、、、。
妹: 嘘泣きしないで。
レミ: へへへへへ。
妹: 大学まで来ないでよ。
レミ: だって。
妹: お姉ちゃん。
ヤナギ: へ?
レミ: ヘヘヘへ
ヤナギ: え?あの、お姉ちゃんって

チル研の面々に話しかけようとするが、皆、歌の準備をしてる。

ヤナギ: 、、言った。
妹: 、、、、。
ヤナギ: ねぇ?
妹: 病気なの。お姉ちゃん。
ヤナギ: え?
妹: 言わないで。
ヤナギ: 、、、あ、、うん。

ビニー&テッド、演奏開始。曲の前奏

レミ: だれー?
妹: 誰でもない誰でもない。ほら立って
ヤナギ: え
レミ: 知らない人?
妹: 知らない人知らない人。
ヤナギ: え?いやいや。
レミ: なんでもない人?
妹: そー、なんでもないなんでもない。
ヤナギ: あのー
レミ: (ごめんねー)立ってほら。
妹: どのくらいなんでもない人?虫くらい?
ヤナギ: え?
レミ: そう虫虫。
ヤナギ: え?
妹: ダニ?
レミ: そーそーダニ。イエダニ。(ごめんねー)
ヤナギ: えええ。

ビニー&テッドもくもく演奏。

イシダ: あ、ヘビメタじゃないんだ。

ビニー&テッドもくもく演奏。

星野: ミソラさん、妹いたんだ。
妹: 、あ、、うん(ヤナギちらり)
星野: 水臭いなぁ。4年間も教えてくれないなんて
妹: あ、あの、たまたま、たまたま。
星野: こんにちは、妹さん。なまえは?
レミ: 違うよ?
星野: え?
妹: あの、えっと。

ヤナギ姉の手を引く。

妹: !
ヤナギ: あそぼー!名前は?
レミ: レミ。
ヤナギ: ヤナギ。
レミ: ダニの?
ヤナギ: ダニじゃない。なにする?
レミ: 太陽にほえろごっこ。
ヤナギ: 古いな。熊ー!
イシダ: くまじゃないぞ(立ち上がる)
星野: よし、チル研最後の活動どぁ!
ヤナギ: そもそもチル研って何してきたんだ
星野: あそぶんだ!子供みたく!

歌の中、情景。美しい光

太陽にほえろごっこ。
部室から出てくるおもちゃの銃。
犯人1=熊公。犯人2=ヤナギ。ニワトリ刑事=星野。ガキデカ=姉。人質=妹。
応援歌=テッド&ビニー。

『平成が終わり、法律も変わった。
でも。星野くんは、相変わらずにわとりを飼っている。
あたしがまだ白馬の王子様を信じてたあの世界。
それぞれの道を歩み始めた途端、世界は滅亡した。
見た目は何も変わってないけど、確かに、その世界は滅亡した。
月は誰にも気付かれずに、その形を変えている』

じょじょに暗。

3場■産婦人科医:コンクリートの壁

暗の中、コンクリートの壁、降りてくる。

夜、三日月、ゴミステーション。
産婦人科医と妹。
妹、ウサギのタマゴを持ってる。それを見つめてる。

妹: 、、、。
さ: ごめんねぇこんな夜中に。
人目につくとあれだから。
うち病院じゃ、看護婦がホラ、ウワサ好きだから。
妹: 、、、。
さ: それね。「ウサギのタマゴ」。
妹: 、、ウサギ?
さ: それに移しておけば、まぁほっといても半月は持つのかな。
妹: 、、、。
さ: もちろん中味は入ってないけどね。
まぁ、それに移す事になりますよーって。
妹: 、、、。
さ: 妙な事考える会社があるもんだよ。
欲しがる人間がゴマンといるからね。
日本の妊婦さんの1割はウサギのタマゴあたためてるらしい。
妹: 、、ウサギのタマゴ
さ: ウサギってタマゴから産まれるでしょ。ひよこみたく。
妹: 、、そうなんだ。
さ: そんなわけないじゃない。
妹: ?
さ: でも、ありそうでしょ?だから。
妹: 、、、、、、。
さ: 産婦人科医がタマゴにうつして、
ディーラーが芸術品としてだれかに売るの。
ほら、パチンコ屋の景品みたいなもんだね。
妹: 、、、。
さ: でも今度は人身売買で捕まる可能性出てきちゃうから。
妹: 、、、、
さ: よっぽどの理由がないと、うつしたくないのね。
妹: 、、、理由、、
さ: うん。、、なんかある?
妹: 産まれたら不幸になるから。
さ: 、、んー。
妹: それじゃ、理由として足りませんか。
さ: 誰が?
妹: え
さ: 君不幸になる話し?
妹: 違います!
さ: 、、、ほんと?
妹: 、、、違います。
さ: そーかなぁ。
妹: お金なら、どうにかします。
さ: あ、お金持ちなの?親子さん。なにしてる人?
妹: 教授です。
さ: あ、そうなんだ。じゃまぁ、話しは違ってくるかな。
妹: でも、、、、研究してて。父が。
さ: 研究?なんの。
妹: 姉が病気で、その研究。
さ: へー。
妹: その研究費にお金つぎこんでて。
さ: 結局お金はないって事ね。
妹: お願いします!お金、いくらですか?
さ: 話し戻そう。中絶は違法。ね?
妹: 、、、、すみませんでした。

退場しようとする。

さ: あれ?君、テレビ出た事ある?
妹: 、、、姉の病気の資料で。
さ: あ、なんだ、もしかして、レミちゃんの妹さん?
妹: 、、はい。
さ: なんだ有名人だー。
妹: 、、あたしは、関係ありません。
さ: 君は?MAじゃないんだね。
妹: 違います!
さ: 、、、あら。ごめんごめん。
妹: すみません、、でもあたし、それがもとで、、
、、もうすぐ、離婚するんです。
さ: MA?
妹: 、、はい。

4場■最高の幸せ:結婚式場

曲、結婚の曲

ケーキ、走りこんでくる。

友人たち出れるだけ。、星野、登場。司会マイク
皆祝福してくれるの図

司会(マイク): ケーキにゅーとう!

刀を持った新郎、ケーキを切る。

星野: であ!
ケーキ: グアアア!!

くちぐちに「おめでとう」。
花をかける。皆、シャンパングラス。

フィギア: ひゅうひゅうニクいぜ星野ひゅう。
ケーキ: 我らが「子供心を考える研究会」
略して「チル研」のアイドル
月野ミソラさんを貰えるお前は世界一のしあわせもんだ。
星野: 教育大学、チル研の皆さんに約束します!
僕は!ミソラさんを世界一幸せにしてみせます!
司会(マイク): ケーキにゅーとう!

刀を持った新郎、ケーキを切る。

星野: あちょう!
ケーキ: グアアア!!
ヤナギ: 貸せ!ちくしょお!

刀を奪い、ケーキを切りまくる

ケーキ: グアア!!グアア!!グアア!!
ヤナギ: ちくしょおおお!
イシダ: あ、全然気にしないで。ヤナギ、昔からミソラにホれてたもんだから。
ヤナギ: 簡単にバラすななああ!
イシダ: あきらめろ。そのうち誰かが拾ってくれるさ。
ヤナギ: くま公!
イシダ: くまじゃないよ。
ヤナギ: 大きな幸せの前にはそれによって起こった不幸すらギャグになっちまうようだ。
イシダ: うんうん。飲め飲め。
司会: 大変ながらくお待たせいたしました!
皆様、舞台中央奥をごらんください!
新郎の入場です!

曲上がり、妹登場。さらにでかい刀を持っている。
変なかぶりもの(なんだろーね)

ヤナギ: ミソラ~~~~~~~!!
妹: とお!!

SEブギャアウ!
妹、ヤナギをあっさりと切り捨てる。

ヤナギ: ああ!
星野: でやあ。

SEブギャアウ!

妹星野: たあ。

SEブギャブギャウ

ヤナギ: ああああああああ。
司会: ご覧ください!初めての共同作業です!

全員拍手、新婦を向かえる星野。

司会: キース!キース!キース!
全員: キース!キース!キース!

今にもキスをせんばかりの二人
ヤナギ、司会のマイクを奪う。

ヤ(マイク): 星野おおおおおおおおーー!!!
星野: おーう。
ヤ(マイク): やったのか?!もう、やったのののか!
星野: 何の話しをしてるんだヤナギ!
ヤ(マイク): セックスだ!
星野: 何を露骨に聞いてくるんだ。
ヤ(マイク): 100歩譲って結婚は許してやる!
しかし!ミソラとセックスする事だけは断じて許せん!
星野: またヤナギがおかしな事を言ってら。
妹: ホントね。
全: あははははっははははは
ヤ(マイク): おれは、本気だあああああああああ!
星野: ヤナギー、もし就職全部あぶれたらうちの会社に来い!
お前なら速、幹部候補にしてやるぞー!
ヤ(マイク): 大きなお世話だにわとり野郎~~!!!
妹: あははっははあはは。
星野: あ、あははっはははは

くるくる回るふたり。しだいにスロー

妹: 私は幸せ!私は今この瞬間、最高に幸せだわ!
ヤナギ: あいつにミソラを幸せに出来るわけがない!
イシダ: いやいや、星野は世界をまたにかける大会社のボンボンだからな。
ヤナギ: おれは。
イシダ: のめのめー
妹: 新婚旅行はパリ、ローマ!
フィレンツェの風に抱かれて、プラハの町並みを手を繋いで!
二人だけで1ヵ月幸せな結婚生活を話しあうの!
星野: 君はなにも心配いらない!
苦労なんてひとつもさせない!
炊事洗濯掃除に育児!使用人に任せりゃいい!
妹: 結婚はゴールじゃないのね!
星野: そうさ結婚はゴールじゃない!
結婚は君の幸せのはじまりだ!
妹: 私の幸せのはじまり!
星野: 君を世界一幸せにするために、
僕は、どんな事でも受け入れよう!
司会(マイク): お父さん!そして天国のお母さん!私は今、最高に幸せです!
皆さん、ハンカチのご用意はよろしいでしょうか!
お待ちかね、花束贈呈です!

イシダ: おお。泣けるんだよな。これ。

星野、妹、ふらふらしながら花束を受け取る。

ヤナギ: ふらつくくらいなら回ってんじゃねぇええ!
司会(マイク): 今日は新郎のご両親はニューヨークでの株主総会により欠席。
ヤナギ: 聞いたか。ニューヨークだ。
イシダ: 新婦の親さえいれば泣けるからいんだ。
司会(マイク):
本日は新婦のお父様、
そして、天国へ上ったお母さま代理として、
お姉様にお越しいただきました。

父と姉登場、曲止まり、照明、姉に集中する。

イシダ: え?
ヤナギ: 、、、。
イシダ: お姉様?

『遺伝子光学を先行していらっしゃる大学教授のお父様。
そのおとなりには、かわいらしいお姉様。』

司会の録音の声。エコーかかり。
花束を持ち、ゆっくりとそこに向かう新郎新婦。

『今日は妹さんの桧舞台のために、
ご病気にも関わらずかけつけてくれました、、た、た、、た、、』

5場■姉と妹:サス2本

エコーとともに照明、舞台奥の姉、舞台前の妹
妹、花束を持って振り返り、産婦人科医への独白。
憎しみが混じる。

妹: 私の母も、姉と同じ病いでした。
母の病いは何故だか私には遺伝せず、妹に遺伝しました。
父は母の死後、私財を投げうちその研究を始めました。
私が結婚したその年、その病いの存在を学会に発表しました。

妹の手から落ちる花束

妹 若返りの奇病、MA

6場■学会:記者会見会場。

父: そのとおりです!

記者会見の曲。フラッシュ。
結婚服の友人たち+報道の腕章→報道陣に囲まれている父
舞台奥で、白衣を羽織る父。
舞台上前に演説台
産婦人科医、妹、姉、退場。

父: マイクロニュークリック・アシッド
縮小核酸。略してMAと名付けました。
記者4: 突然の発表でしたがそのわけは!
父: 治療薬が完成するまであと一歩です。
悲劇を繰り返さないために資金を援助していただける
企業を募集しております。
そのための発表だと思っていただいて構わない。
記者1: 簡単に言うとどういう病気なのでしょうか。
父: 例えば長女は、22を境に退行し続け、
本来なら27ですが、見ためと知能は今や小学生レベルです。

舞台奥高い場所に本来の姉。本来の姉をくりぬく照明。

父: これがMAが始まる直前の長女レミです。
記者団: どよどよどよー(フラッシュフラッシュ)
父: まわしてください。

記者会見の曲カットアウト。
SEピッ

姉: ちょっとなに?ちょっとなに取ってんのちょっとー。
なに?なに取ってんの?今やばい今、今やばいって。
全然かみちゃんとしてないって。髪もじゃもじゃじゃない?
ええ?なに?インタビュー?インタビューすんの?
今ー?えーと、えーと今。今はえーと、
お味噌汁を作ってまーす。
大根とー、あぶらげとー、チーズ。
失礼な事言ってんじゃないわよ!自毛で~す。にゃー。

父: はい!もういいです。はい!
記者1: えーと今のは?
父: 正常だった頃の映像が少なかったもので。
姉: あんたアレどうなった?アレ。男。星野くん?まだつきあってんの?
金持ちなんでしょ?いいよねぇ玉の輿!
父: もういいです!

SEピッ

父: (ホッ)そして、
姉: 星野君お兄さんとかいないの?えーい弟でも可!
父: すみません!止めてください!

以下、SEピッ、鳴るが映像の意思で止まらない。

姉: ぬわあ。いねーのかボォケェ!あんた妹なら姉の将来も考えな!
父: あれ?
姉: あたしなんて産まれてこの方男に触れられたトキねーし。

以下、記者団、興味ある所で写真パシャパシャ

父: やめてください!
姉: 触れられるどころが触れた事もねぇよ!
父: 機械止めて!
姉: あああああああ、
父: 全国放送だ!
姉: チョー触れてぇ~~~~~!
父: やめてやれ!機械が壊れても構わない!
姉: しーずちゃんと一緒♪しーずちゃんと一緒♪
ハイおみそしる�めしあがれ�
、、、、(リモコン)ピ。

自分で止め、フェードアウトする、本来の姉。

父: 、、、、、、、、、、、、、
えー、、
記者1: 自分で止めましたね。
父: ノーコメントだ!
、、とにかく、長女はその後、じょじょに退行を続けていきます。
記者3: 若返りという事でしょうか
父: その通りです。
記者2: 病気の原因はなんなんでしょうか?
父: 特異遺伝子、つまりDNA伝達作用の欠縮と考えられます。
お願いします。

SEピッ

舞台奥高い場所に若返った姉。くりぬく照明。

父: これが、現在の長女・レミです。
記者団: どよどよーどよー
父: まわしてください。

SEピッ

レミ: ♪うーんちーがびっちびち♪(ポーズ)
父: 止めてください!

SEピッ

父: えー、、長女レミと次女ミソラの様子を皆さんにご覧いただきたいと思います。
少し進めてください。

レミ: キュルキュルキュルキュル
妹: キュルキュルキュルキュル
父: そのへんで。
姉妹: ♪うーんちーがびっちび、、♪
父: 飛ばして!(姉妹ポーズ)

SEピッ

レミ: ミソラー!
妹: 待ってちょっと。晩ご飯作ってるから。
レミ: テレビーー!
妹: やめてよお姉ちゃんだけ写してよ。
レミ: 今日ねーあんねーミソラの学校いってきたさ
妹: お父さんからも言ってきかせて。
ついてこられるの迷惑だから。
レミ: チン研。チン研。
妹: チル研!
レミ: チーズぼーん。
妹: チーズいれないでよなんでも!
レミ: うわあああああああ
妹: 嘘泣き!
レミ: ちぇー。チーズくらいケチケチすんなよなぁ
妹: ちょっとどっか行っててお姉ちゃん。
レミ: ミソラはレミの事きらいなんだ。
妹: 嫌いじゃない嫌いじゃない。父さんと遊んで。ね?
レミ: やだー。
妹: なんで。
レミ: お父さん注射するから嫌い。
妹: 、、、、。

SEピッ

父: もういいでしょう。
このように現在では長女レミと次女ミソラの関係は逆転した状態です。
なにかご質問は。
記者1: 、、、天然パーマが直ったようですが。
父: 他に気になった所はないんですか?!!!!
記者団: ハイハイハイハイハイハイ!(ひとりだけ「いーち!いーち!」と叫ぶ人)
父: 順番に!いちってなんだ!

つっこみきっかけで、記者会見の曲再び。

記者2: つまり若返るという病気という事でしょうか?
父: その通りです。DNA伝達作用の欠縮により起こると考えられます。
記者3: 「若返り」自体はむしろ羨ましく思えますが?
父: そう考える方ももちろんいるでしょう。
しかし。これは明らかに病いです。
第一に「肉体的な退行に比べ、知能の退行が著しいという事」
第二に「退行を続けたのち、予測される結末がある」という事」
記者4: 「予測される結末」というと?
記者1: 若返って最後はどうなってしまうんでしょうか?
父: まだそれは断定できません。
世界でもまだ2例を検証したにすぎません。
記者2: 1例目はどちらで検証されたんでしょうか?
父: ノーコメントです。
それは患者のプライバシーに関わる事なので申し上げられません。
しかし、その1例目をきっかけに私はこのMAの研究を始めました。
記者3: どのような「予測される結末」だったのでしょうか?
記者4: 結末という事はつまり、どういう事なんでしょうか
父: 1例目のMA患者のケースでは。
退行はあるレベルでピタリと止まり、
たったの一日で本来の年まで老け込み、
あっという間に息を引き取りました。
重ねて申し上げたいのは、
その悲劇を繰り返さないためにも資金を援助していただける
企業を募集しておるという事です。
記者1: この病いは遺伝すると考えても良いのでしょうか?
父: どうしてそう思うんですか?
めったな事を憶測でいうもんじゃない!
記者1: レミちゃんのお母様の事です!
父: え。。

曲、止まる。

記者1: わが社の調査によれば、教授の奥様は同じ病でなくなられた。
父: 、、記者じゃないな。、、、なんだ、、君は。

腕章を取る、記者1→秘書早川(ひ)

早川: スターフィールド社、早川です。
私はビジネスの話がしたい。(名刺)
父: 、、、、。

7場■家の前: コンクリートの壁

主人公の家の前
コンクリートの壁降りてくる。

記者2: えーわれわれ報道陣は、
若返りの奇病MAのレミちゃんの帰りを
いまかいまかと待ち構えております!
近所の方のお話しですと、もうまもなく、もうまもなく
レミちゃんが現われるのではないかと
記者3: レミちゃんだ!
記者2: 来ました!21世紀の奇病MAのレミちゃんです!
どうやら妹さんと一緒にあらわれました。

姉、妹と手を繋いで登場。
しゃぼん玉を吹いている。

記者4: レミちゃん!なにか一言!
記者2: レミちゃん!
記者3: 妹さんはMAじゃないの?
レミ: 違います!どけてください!
記者4: 一言だけでもお願いします。
妹: なんなんですかちょっと。
レミ: しゃしん?
記者2: レミちゃん!今度こっち!
レミ: はい、チーズ。
記者3: こっちもこっちも!
妹: 父さん!
レミ: いちたすいちはー
記者たち: にーーーーー。
妹: どっか行ってください
レミ: 庄司***の往年のギャグはー?
妹: やめて
記者たち: どぅ~~~ん
妹: いいかげんにしてください!父さん!
記者4: 面白い!レミちゃん面白い!
レミ: ミソラー。お腹減ったー。
妹: 父さん!

フラッシュ、たき続ける記者たち。

早川: これってぇ、遺伝するんじゃないですか?
父: 、、、

父、秘書早川の名刺を受け取り、足早に退場。

妹: 、、、父さん、、、、。
レミ: あっちであそぼーーー!
記者たち: レミちゃん!�

姉、記者団、退場。

8場■離婚:コンクリートの壁

妹、秘書早川、記者団に混じっていた星野、残る。

星野: ごめんっ、、、、!
妹: え

うすぐらい明。星野土下座。

妹: 、、どういう事?
星野: うちの製薬会社、ひいひいじいちゃんが始めて以来、
息子か、娘の婿養子が会社を継ぐ決まりになってるんだ。
、、、古いんだ。世襲制なんだ。
うちひとりっこだから、絶対にぼくの子供じゃなくちゃいけないんだ。
妹: 言ってる意味わからないんだけど。
星野: ミソラさんは美人で健康で魅力的で
人には無いオーラをまとってるから、
きっと幸せになれると思うんだ。
だから、、、。
妹: 言ってる事全然理解できないんだけど、、
星野: パパとママが言うんだ。
僕はそうは思わない。
だけど二人がそういうんだ。
もしも健康な子供が産まれなかったらって。
妹: 、、、。
星野: 、、だから。
妹: だから?
星野: だから、、

結婚指輪を出す。

妹: 、、結婚指輪。
早川: 私、秘書の早川と申します。
妹: 、、。
早川: これ、うちの弁護士から。

弁護士からの手紙を出す。

早川: えーと。
「あなたの母親と姉が同じ病いに冒されていた事実があった以上
あなたの身体的欠縮の可能性を、
事前に夫となる相手に伝える義務がありました。、、」
うんぬんかんぬん。
だいたい、わかりますよね?
妹: 、、、、
早川: 離婚届けに名前とハンコをいただきたい。
朱肉、ついてますから。

離婚届け。

妹: 、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、。

ハンコを押す妹

星野: 、、、、、、、、、、、、、、、。

テーマ曲。やさしい歌。

早川: 確かに。
妹: 、、星野くん
星野: 、、、、、、。
妹: 、、、星野くん、あのね、、
星野: 、、、ごめん。

走り去る星野

妹: 、、あのね、、、
早川: 実は、慰謝料につきましては、
お父様とお話しさせていただいております。
妹: 、、、、、、、、、、、、、、。

一礼して去る弁護士。

妹: あのね。
星野くんあのね。
あたしね。
びっくりさせようと思ってね。
言ってなかったんだけどね。
星野くんあのね。
星野くんあのねっ、、あのねっ
あたしね
あのねっ。
結婚してからね、
ここ2ヵ月来てなくてね。
それでね。
あのねっ。
病院行ってね。
そしたらね。
おなかにね。
星野くんとあたしのね。
ふたりのね。

姉、走ってくる。

レミ: いたー。
ミソラー。
あっちでねー。
月ー。
もうすぐまんまるになると思うー。
あとねー。
ゴミステーションにねー。
すっごくいいもの発見。
きてー。

妹の手をひっぱる姉。

妹: ちょっとまって。
レミ: すっごくいいものだからー
ミソラもきっと欲しいと思ーう。

妹の手をひっぱる姉。

レミ: 何だと思う?
妹: ちょっとまってよ。
レミ: なーんだ?
妹: 、、、わかんない。
レミ: ヒント。タマゴタマゴタマゴ
妹: 、、、おねえちゃん。
レミ: ウサギのタマゴ。
妹: 、、おねえちゃん。
レミ: きてー。
さっきテレビの人がまたきたー。

ふりほどく妹。拍子に転ぶ姉。

レミ: 、、、。
妹: ごめ。泣かないで。
レミ: 、、う。
妹: 泣かないで。今。
レミ: うわーん。
妹: ごめん。
レミ: うううわあああああああん
妹: ごめんって言ってんじゃん。
レミ: うわああああああああああああああああああああ
妹: 悪かったって言ってんじゃん!
レミ: うわあああああ
妹: どうせ嘘泣き!
レミ: 嘘泣きじゃない~~~!

妹、姉を叩く。

妹: どうせ嘘泣き!
レミ: うわああ

妹、姉を叩く。

妹: 嘘泣き!
レミ: うわああああ

妹、姉を叩く、叩く、叩く。

レミ: うわあああああああああああああ
妹: うそつかないでよ!
うそ!うそつかないでよ!
レミ: うう、、ミソラ、、?
妹: 幸せにするって!!!!!!
レミ: 、、、、
妹: 世界一幸せにするって言ったのに
レミ: どしたの
妹: 世界一幸せにするって言ったのにぃ~~
うそつかないでよおお!!!
レミ: ミソラ?、、ミソラ、、?
妹: うわあああああああああ

いつの間にか、
姉に抱かれてる妹。
曲、上がっていく。

9場■再び産婦人科:コンクリートの壁

冒頭の産婦人科医とのやりとりの続き。
夜、三日月、ゴミステーション、コンクリートの壁
産婦人科医と妹。
妹、ウサギのタマゴ。

さ: なるほどねぇ。
今やお茶の間の人気者。
若返りのレミちゃん。
その妹さんかぁ。

と言いながらごみステーションへ。
姉を引っぱり出す。

レミ: うわわ。
さ: 一人で来てって言ったのに。
妹: ごめんなさい。でも大丈夫。お姉ちゃん日に日に物忘れはげしくなってるし。
さ: へー。(姉の顔をマジマジと見る)
レミ: ?
妹: ?
さ: やっぱり可愛いいなぁ。レミちゃん。
妹: !
さ: テレビでみるよりずっと可愛いねェ。
おじさん、ずっと思ってたんだ。
妹: 、、、、。
さ: ミソラちゃんの、何歳上だっけ?
レミ: 3歳!
さ: ああそうか。じゃぁ。、、、結婚だって出来る。
妹: !!、、、、。
さ: ウサギのタマゴ。おじさん家にいっぱいあるんだ。ひとつあげようか?
レミ: ほんと?
さ: おじさん、嘘はつかない。レミちゃんは?
レミ: つかない!
さ: おじさんとこくる?
レミ: 行ってもいい?ミソラ!
妹: 駄目!

妹を引き剥がす姉。

レミ: どしてー?
妹: どうしても。
さ: 、、、、
長いこと産婦人科なんかしてるとねぇ。
女性観がくずれてくるんだよ。
妹: 、、、。
さ: 君だけじゃないからね。中絶したい人。
中絶法が制定されてからは、むしろ増えてる。
なにも知らないような可憐な乙女が、
大金積んで僕の目の前でパンツを脱いで股を開くんだ。
まるで「にわとりのメス」に見えてくる。
妹: 、、、、。
さ: そのメンドリが、色々言うんだよ。
僕にとってはどーでもいい事、全部説明しはじめるんだよ。
ピーチクパーチク。いや、コケコッコウか。
知能ついたメンドリが言い訳してるんだ。恐いだろ?
美しければ美しいほど、賢ければ賢いほど、
僕にはみにくく見えてくる。
妹: 、、、、。
さ: 女性不信とでも言うのかなぁ。コレ。
妹: 、、。
さ: テレビを見ながら思ってたんだよ。
この子は人類に与えられた芸術品だ。
日に日に真っ白な存在に近づく。
妹: 帰ろう。お姉ちゃん。
レミ: ウサギのタマゴはー?
妹: だから、、それは、、駄目
さ: 自分で決めていい年なんだから。
そこまで君が決めてあげるのはどうかな?

ちんもく

さ: 男に捨てられて、しかも妊娠までさせられて、しまいに中絶。
こうなったのは、君のせいかな。
妹: 、、、ちがう、。
さ: そうだね。
妹: あたしのせいじゃない!
さ: 君のせいじゃない。じゃぁ。
これは、、誰のせいかな。
星野くん?お父さん?お母さん?、、
レミ: まだー?早くいこー
妹: 、、、。

妹、姉を見る

さ: 君が決めたら君のせいになっちゃうよ。
妹: 、、、。

妹、姉に寄る

父の声: レミー!どこだ!レミー!
レミ: !!

隠れる姉。

妹: あ。
父の声: ミソラ!

父、走ってくる。怒っている。

父: レミは?

手に注射器。

父: 今度こそ出来たんだ、レミの薬が!
これで、レミの退行を止められる!
どこだ?!レミは?!
ミソラ?
妹: 、、、、父さん。
父: こんな時間に家にいないんだ。探してくれ。
妹: あの、、
父: みつけたら教えろ。いいな。

走り去る父。

さ: まるで眼中にないようだ。

姉、父の行方をみやり、
ゴミステーションの陰から出てくる。

レミ: 、、、
さ: どうして隠れたの。
レミ: お父さん、毎日注射するからいたい
さ: だってさ。かわいそうに。
妹: 、、、
さ: 母親代わりもつかれたろう。かわいそうに
妹: 、、、、
さ: 君のせいじゃないのに。かわいそうに
妹: 、、、。
さ: 本当は世界一幸せになるはずだったのに。かわいそうに
妹: 、、
レミ: ミソラー。この人だれー?
妹: 、、、。
さ: ミソラちゃんが、おじさんに助けてーっていうからぁ
レミ: 助けにきたの?
さ: そー。頭いいねぇ。
レミ: うんっ
さ: だってレミちゃん、お姉ちゃんだ。
ミソラちゃんを、助けてあげよーか。
レミ: 、、、うん。
さ: だって。
レミ: 、、、。
さ: みんな幸せになろう。
妹: 、、、、、、
さ: お金はいらない。

ちんもく

レミ: ミソラ?
妹: お姉ちゃん。
レミ: ん?
妹: 、、ひとりで、、いっといで。

姉、不思議そうに姉をみる。
妹、姉を少し押す。

レミ: 、、ミソラ

背中を押された事に気付き、
少し不安になる姉。妹を見る。

妹: あたし、、、自由になる

姉、ウサギのたまごを、
ゴミステーションに捨てる。つまり、中絶をする。
すかさず手を引く産婦人科医

レミ: !!

何かに気付く姉。
産婦人科医、姉を持っていく。

レミ: やああああああああ!!!!

姉の叫び声とともに曲、まぶしい照明。

レミ: ミソラあああああ!!!!!

コンクリートの壁が無くなる。
ゴミステーション無くなる
三日月、満月に変わる。
姉、産婦人科医、退場する。

広がる一人の世界。
まっすぐと遠くを見据える妹。

10場■侵入SFC:

曲の中、録音による。ラジオ。

A: 今日はなんか話題ありますか?
B: 少し前にちまたを騒がせたレミちゃんっていたでしょう?
A: いたいた、いました。MAだかの
B: MAを直す研究をしてたお父さんが
スターフィールド製薬と組んで
医薬品を発表したそうです。
A: 医薬品?
B: その名も「ママの薬」
A: なんだそれ。
B: MAMA、つまり、マイクロニュークリックアシッドメディカルアシスト
A: ほー。すごいですねなんか。
B: すごいでしょ。
A: なんですかそれは結局。
B: 若返り補助剤。
A: おお。
B: 値段は今のところ1瓶36錠で178500円です。
A: たかい!

フェードアウトするラジオ。

フィギア、イシダ、

イシダ: こちらイシダ、
フィギア: こちらフィギアどーぞ。
イシダ: そのコードネームどうにかなんねーの?
フィギア: え?だってヤナギが

ヤナギ、警備員の格好で。

ヤナギ: どっちでもいいよ。
今、どのへんだ。
フィギア: ビルについた。
ヤナギ: よし、ロビーで客のふりして待機してろ。
イシダ: 俺3人同時通話って初めてした。
ヤナギ: 二人は?
イシダ: まだ来てねぇよ。
ヤナギ: 何してんだよあいつら。
イシダ: さぁ。
ヤナギ: いったん切るぞ。
目立つなよ。
イシダ: おっけー。

でかい乳母車を押してくる、ビニー、テッド。

フィギア: あ。
ヤナギ: どした?
フィギア: めちゃめちゃ目立ってるやつら確認。
ヤナギ: は?
イシダ: 俺も確認。
ヤナギ: コードネームヘビメタ兄弟か。
イシダ: 普段から目立つうえに
なんか、でかい乳母車もってきたぞ。
フィギア: 他人のふり他人のふり。
ヤナギ: 10時になったら表の玄関閉まるからな
監視モニターをイシダが切る
その瞬間に女子便に隠れろ。
西側に二人、東側に二人だ。
イシダ: 人生初の女子トイレだ。
ヤナギ: 喜ぶな。変態。お前らで大丈夫かなぁ。
なんで俺の知り合い、お前らしかいないんだよ。
聞いてるか?ヘビメタ兄弟。

真剣に電話を聞いてる二人

フィギア: すっげぇ真剣に聞いてる。
ヤナギ: 12時になって警備員交代するまでがリミットだ。
イシダ: 警備員って、おまえだけじゃねーんだろ?
ヤナギ: 大丈夫。睡眠薬で楽勝だ。
イシダ: 乳母車、トイレに入るのかなぁ。
ヤナギ: 放置しとけ。堂々と置いてありゃ、案がい気付かれないもんだ。
武器は?
フィギア: ちょっと改造しといた。
ヤナギ: なるべく使うなよ。
、、ミソラ。
妹: うん。もうすぐ10時。
イシダ: よーし。(機械みたいなもの)
ヤナギ: 頼むぞ。
妹: ごめんねみんな。
ヤナギ: え?
妹: こんな事にまきこんで
ヤナギ: いんだ。こいつら暇だから。
イシダ: 3、2、1、レッツジャミ~~ン。

ビーーッ ビーーッ ビーーッ ビーーッ 
『緊急警報、緊急警報、警戒レベル「E」発生、
すべての非難経路をシャットアウト、
ターゲットは殺傷用具を所持。正当防衛適用。各員すみやかに対処せよ』

ヤナギ: なんだ?
イシダ: やべぇ。
フィギア: もう見つかったの?
ヤナギ: 散れ!
イシダ: ゲームみてーだ!

曲上がり、
色変わり、ビニー&テッド、フィギア、イシダ、ヤナギ、一斉にはける。

11場■事の顛末:ファミレス

ファアミレスの一角、出てくる。

曲消える。妹、残る。

妹: 、、、、、。

イシダ登場。

イシダ: いらっしゃいませー。お一人様ですかー?
妹: あの、後から一人。
イシダ: おタバコは?
妹: はい。
イシダ: って。ミソラ?
妹: あ。、、えっと、
イシダ: イシダイシダイシダイシダ。
妹: そんな名前だったんだ。
イシダ: なんだよー誰も俺の名前覚えてくんねーよ。
妹: ここでバイトしてるんだ。
イシダ: そー、親がさー。一日中ゲームしてるくらいなら死ねって。
妹: へー死ねってゆーんだ。
イシダ: どーせ俺がつぐ事になるからそれまで自由にさせろっつーの。
妹: 家。何屋さん?
イシダ: 電気屋。イシダデンキ商会。しょっぼーいの。
妹: なんかいいね。
イシダ: よくねぇよ。あ、立ち話もなんですから。
喫煙ったっけ?
妹: うん。
イシダ: あれ?タバコ吸ったっけ?
妹: 最近最近。
イシダ: そっか、主婦もストレスくるか。
妹: そんなんじゃないよ。
イシダ: こちらの席でよろしーでげすか?
妹: よろしいです。(にこ)
イシダ: なんかあったー?すっげー不自然な笑い方してるー。
妹: そんなことないよ。
イシダ: あ、出た。「そんなことないよ」
エロゲーでさ。女の子が「そんなことないよ」って言ったら
あー、これはあやしいーってなるんだよな。
妹: 相変わらずなんだ。
イシダ: まーねぇ。(座る)
妹: 座ってていいの?ファミレス店員が。(タバコ出す。)
イシダ: いんだ。怒られるまで。
うわ!なんだこれ!エチョーじゃん!
妹: エコー
イシダ: これきついんじゃないの?
妹: うん。なんでもいいんだ。
イシダ: なになにヤケになってんの?
こんなん吸って出産にひびくよ出産に。
妹: 、、、そうだね。
イシダ: 誰と待ち合わせ?星野?
妹: 、、。
イシダ: あれ?もしかして別れた?
妹: 、、、。うん。
イシダ: うわ!ものすごい事になってんじゃん!
妹: えーとー。
イシダ: イシダイシダイシダ
妹: 石田くんてさー。人が触れて欲しくない事簡単に触れるよね。
よく頭に来てた。
イシダ: なー。だから人間嫌いなんだよな。めんどくさくて。
妹: 、、うん。
イシダ: 俺最近気付いたの。思った事ってあんまいっちゃいけないんだよ。
ごめん。あんまり悪いと思ってないけど。
妹: いっちゃいけないよだから。
イシダ: あー。そーか。ご注文よろしーですか?
妹: 来てから頼む。
イシダ: だれ?ヤナギ?
妹: え?
イシダ: あ、違った?お姉ちゃん?
妹: あの、、、そう。ヤナギくん、、。
イシダ: どしたの。
妹: なんでわかったの?
イシダ: え?だって星野の次に好きでしょ?チル研で。
妹: 、、、、
イシダ: そんつぎビニーとテッドでしょ。
そんつぎアニオタフィギアアー、で俺イシダイシダイシダ。
俺嫌われもの。あれ違った?
妹: 、、そう。
イシダ: なんだ俺また触れて欲しくない事触れた?
妹: あたしそんなにわかりやすい?
イシダ: え?あんまり考えた事ない。
妹: 、、、、。
イシダ: ここチル研で良く来たよねー。
妹: あ、うん。
イシダ: 俺行動範囲狭いからさぁ。
バイトしろっていわれてもここしか知らなく無くてさぁ。
家めっちゃ遠いよ。わー。帰るのめんどくせーから止めてくんねぇかな。
あ、駄目だ。ここゲームねぇじゃん。
妹: うるさいねイシダくん。
イシダ: えー?うーん。ごめーん。あ、今の嘘。
妹: やっぱ一番嫌い。
イシダ: いーよ別に。でもなー、楽しかったなぁチル研~。
妹: 、、うん。
イシダ: いきなり社会人なれって言ってもな。俺にゃー無理だわ。
あ、ヤナギ何やってんの?あ、ちょまって当てる!
えーと、就職出来ず。
妹: 正解。
イシダ: 警備員。
妹: 正解!
イシダ: わー。

とファミレスセットごとはけ。

12場■ヤナギ

下手にヤナギ
ヤナギ、警備員。
秘書早川。

早川: 一階エントランスからロビー受け付け回り、
二階から四階までのオフィスフロア、
五階応接室は念入りに。
ヤナギ: あ、はい
早川: 六階社長室に関しましては私の指示で。
10階から上、そしてB1から下の製品開発部にはこのIDカードが必要となる。
仮のID。どうぞ。
ヤナギ: へー。なんかすごいっすね。
早川: シュレッダー処理されずに捨てられている企業機密ファイルを発見した場合は
即私早川に連絡ください。
ヤナギ: ハイ。、、、どやって機密かどーか判断するんですか。
ヤナギ: どやって?
早川: わからないんですか?
ヤナギ: ハイ。
早川: 、、ですからこう。まず、発見する。
ヤナギ: あ、発見。
早川: まだ重要書類かわからないから、
ヤナギ: わからないから、中を見て
早川: 見てはいけない!
ヤナギ: ええええ
早川: なんだ君は企業スパイか!
ヤナギ: 違いますよ!
早川: どんな些細な情報でも金にするか!
ヤナギ: 言ってない!
早川: セキュリティ!!!
ヤナギ: ちょっと!

セキュリティどやどや現われる。
(変なの一人いる)
ひしょを連れていく。

早川: 違う!違う!俺じゃない!はなせ!ばか!ばか!
ヤナギ: 、、、、、。
早川: あっちだ!

セキュリティどやどや囲む。

ヤナギ: わー!だから違いますよ!
たまたま!たまたま来ただけですから!
スターフィールド警備保障の!
それもバイトの!しかも日やといの!ヤナギです!
普段は交通整理ですから!今日たまたま行って来いって!
早川: なんで来たんだ!
ヤナギ: 知りませんよ!
親会社一緒だからじゃないですか?

セキュリティたち、秘書を見る。

早川: 下がれ。

セキュリティたち、下がる。

ヤナギ: あんなにいるなら俺いらないじゃないですか。
早川: やつらは世界各国からその腕を見込んで雇われたあらくれ者どもだ。
ヤナギ: 日本人ばっかり。
早川: あれは日本人部隊だ!みてろ!外人部隊!
ヤナギ: え?

セキュリティどやどや現われる。
(外人鼻、つけてる)

ヤナギ: よばなくていいですから!

セキュリティひしょを連れていく。

早川: 違う!違う!呼んだだけだ!はなせ!ばか!ばか!ノー!ノー!
ジャストアジョーク!
ヤナギ: 、、、。
早川: ハウス!

セキュリティたち、下がる。

早川: 、、、はー、はー。
ヤナギ: どやって重要書類を見分けるのかって話しは。
早川: 自分で考えろ。警備員だろ。
ヤナギ: なげやりですね。
早川: ハイこれ、携帯。
ヤナギ: あ、ありますよ携帯
早川: これは社内専用の携帯内線電話だ。
わが社は迅速な対応をモットーに全ての内線電話を廃止した。

首にかけさす。

早川: そして、全館クーラー完備につき寒いのでこれをはおれ。

はおらす。胸元でキュっ。

ヤナギ: なんか
早川: なんか一昔前のギョーカイの人みたいになったなぁ。
ヤナギ: 、、はい。
早川: じゃ俺帰るから。あとよろしく。
ヤナギ: はい!おつかれさまです!

秘書退場。

ヤナギ: あーあ。
結局ひとつも就職決まらぬままに大学カンニングだけで卒業して、
いつまで深夜バイトでくいつなぐんだ俺は。
1、2、3、4、、5、、もうすぐ半年か、、。
なんか、、慣れてきたな。
はー。月もきれいだ。、、きれいだな。
月、、、月野ミソラ、、、
今ごろきっと、、、
今ごろきっと、、、
金持ちのどらえもんで言う所の出来杉くんの腕に抱かれて、、
抱かれて、、、、すっぱだか。、、
、、、、、、、、、、、、、、、、、。

(妄想中)

ヤナギ: わー!わー!おおお!
変なエレクトしてる場合じゃないぞ!
どうして自分がキズつくとわかってて妄想しようとするんだ!
、、最近俺ちょっと自虐的になってやしないか。
どーしちまったんだ!
半年前の俺はもっとこう、輝いてなかったか?
はっ!
一人でいる時間が、、あまりにもながいんじゃないかしら。
、、よく考えたら、さっきの人との会話、、俺、楽しかった。
いかんいかん!よりによってあんなイヤミな秘書!
秘書から説明がありますからって言うから少し、、期待してきたのに。
「ちょっと待ってくださいよ、こんな夜更けに
社長室にカギかけて一体何をしようと言うんですか?
パンティストッキングを止めるための
ガーターベルトを外した!?
やめてください。僕には心に決めた人がいるのです。
だれか来たらどうするんですか。
え?見られたって構わない?
耳もとでささやかないでください!
そんな小悪魔的なひとみで見つめても駄目です!
でも、メガネを取ったら随分印象が変わりますね。
こいつあ相当なジャジャ馬だ。
舌をペロって!舌をペロって出さないでください!!」
、、でも男だもの!
俺の昨日の夜を返せ!あの汗を返せ!
何を言ってるんだ俺は!
畜生!全部独り言!!!!!!

うずくまる。仰向けに転がる。

ヤナギ: 、、俺は、、、俺は、、
童貞だあああああああああああああああああああああ!!

星野

ヤナギ: 、、、、、、、童貞宣言。ヤナギ、、かつひこ。
星野: あれ?ヤナギ。
ヤナギ: え?
星野: ヤナギ?
ヤナギ: 星野?!
星野: 何してんだ?ギョーカイ人みたいな格好して。
ヤナギ: くっ!

セーター的なもの、捨てる。

ヤナギ: 警備、、セキュリティだ!
星野: あ、そうなんだ?
ヤナギ: お前こそ何してんだ。ここは一般人立ち入り禁止だ。
さっさと出ていけ、にわとり野郎。
星野: あー、うん。

秘書。

早川: えーと、ぼっちゃんぼっちゃん、、
あ、いつまで同じ場所、見回ってんだよお前。
ヤナギ: あ、えっと、あ、こいつ!
早川: あ?あ。
ヤナギ: 不審者発見しました!不審者!
こいつ、にわとりを飼ってます!
早川: 社長に何てこというんだお前は!すみません!
もーおまえ明日から来なくていいよ!バカだから!
ヤナギ: 馬鹿じゃないです!!
早川: 馬鹿!
星野: まーまー、そういうわけだから。ヤナギ。
ヤナギ: 社長ってどこの?
早川: スターフィールド製薬に決まってんだろうバカ!
ヤナギ: スターフィールド。
星野: スターが星で。
ヤナギ: フィールドは、、
星野: 野原。の野。
早川: スターフィールド製薬、代表取締役社長
星野: 星野一郎です。(名刺)
ヤナギ: おれにぶいーーーーーーーー
早川: あー、ぼっちゃん!急ぎましょう!先方お待ちかねです。
星野: 大丈夫。ここに呼んである。
早川: あ、そうなんですか?じゃ、おまえどっか行けバカほら!
ヤナギ: へいへい。

ヤナギ退場しかけ。

星野: 居てくれ。
早川ヤナギ: は?
星野: 新しい薬を見せてやる。
早川: どうして!
星野: ヤナギとはチル研時代に一人の女性を取り合った仲なんだ。
人事部に言っておいたんだ。
もし、ヤナギカツヒコという人間が来たら僕に連絡するようにって。
早川: しかし、これはわが社の重要機密です。

星野: 玄人で良かったら、相談にのるよ?
ヤナギ: え?
星野: 童貞宣言。
ヤナギ: 聞いてたのか!
星野: その年で童貞はさすがにまずい。
まずいというか、恐い。潔癖を通り越して不潔だ。
社長クラスのつきあいともなれば取り引きの中に女も絡むからな。
好みのタイプがいたら明日にでもセッティングしてやる。
社長ともなればよりどりみどりだ。
ヤナギ: なに言ってんだてめえ。
星野: 、、、。

えり首をつかむ、ヤナギ。

ヤナギ: てめえ、ミソラ、どうなってんだ、、
早川: あ、コラ。

なぐりつける。

ヤナギ: ミソラ泣かすような真似しやがったら
早川: だめだってば。これ。コラ。よいしょ。

なぐりつける。なぐりつける。なぐりつける。

早川: お金貰ってんだから。ヘイコラしろ。
ヤナギ: やめてやるわこんなもん!
星野: 安心しろヤナギ。あの女とは別れた。
ヤナギ: え?
星野: その代わり。
ミソラさんのお父さんと結婚したよ。

曲。ヘヴィメタとか

13場■レミの薬

光。高い所から父。

父(マイク):
お待たせしまして申し訳ございません~!
いやぁー苦節30年、お陰様でやっと完成いたしました~!
いやいや、苦節が29年と364日、完成は一日、こうもうしたほうがよろしいでしょうーか。
お金の力というのは素晴しい!
私も大学教授でそこそこの年収だとばかり思っておりましたが、
なんのなんの。ある所にはあるもんですね。
本当に便所紙として一枚使ってみたあの時の感動と
福沢諭吉のさみしそうな顔は今も忘れられません。

曲、クロスフェードで演歌となる。

産婦人科医現われる。

父(マイク):
今は遠い思い出です。
ほんの1週間前の出来事とは信じられません。
歌は人生詩はこころ、
僕は遺伝子、あなたはおマタ!
高い所から失礼いたします。
今日も二人で歌わせていただきます。
曲は「奇形花」!

父さ: どおっせぇ、ロックはあ!ありゃしねえ~~♪
ヤ早川: やめーーーーーーいやめーーーい!

曲消える。

星野: お。
早川: 意見があったな。
ヤナギ: なんだこのおっさんデュオは!
さ: 産婦人科医師、横島三郎太。
父: 遺伝子工学教授、月野省三。
星野: 幼馴染みのこの二人が、
わがスターフィールド製薬でガッチリタッグを組んだんだ!
父さ: (ガッチリ)
ヤナギ: このヒゲとメガネがなんだっていうんだ。
父さ: わかぞうが!
早川: 本当に言ってしまっていいんですかぼっちゃん。
星野: 構わん。
早川: 第1問!
星野: でれっで!
早川: これはなんでしょーか!

ショーケースに入ったウサギのタマゴ。
管が繋がれている。箱を押してくる女。

ヤナギ: なんだこりゃ、ラグビーボール?タマゴか?
さ: ピンポーンウサギのタマゴ!
早川: そのとおり!では第2問!
星野: でれっで!
早川: 卵の中味はなんだろな!
ヤナギ: え?にわとり!あ、ウサギ!
星野: ぶっぶー。
父: ピンポーん人間の子供!
早川: そのとおり!では第3問!
星野: でれっで!
ヤナギ: え?
早川: これは誰の子供でしょうか!
カッチッカッチッカッチ
星野: ぴんぽーーーん!
早川: はいぼっちゃん!
星野: 僕とミソラの子供ー!
早川: ぴんぽんぴんぽんぴんぽん!大正解~~!!!
ヤナギ: 、、、なに?
早川: それでは最後の問題!
星野: ででれでーでれーでーーー
早川: この子はだーーーーーあれ!

SEドックン、ドックン、ドックン、ドックン

照明、ショーケースを
姉。マントを脱ぐ。
レミの服と同じものを着ている。

ヤナギ: 、、、、、、。
早川: はい、皆さん答えが出揃いました。
皆さんなんとおんなじ答え。
それではそれでは
ヤナギカツヒコさんにお答えを伺ってみましょう、
お答えを、どうぞ!

SEドックン、ドックン、ドックン、ドックン

ヤナギ: 、、、、、、、、、、
、、、、、、、、、
、、レミちゃん?

星野: ぜーんぶ教えてやるよ。ヤナギ。
ヤナギ: どうなってる!

微笑む姉。

姉: せいかーーーーい。

フラリと倒れる姉。

14場■ラジオ:社長室。

録音による。ラジオ。

A: えー今日もメールをありがとうございます。
B: 結構来てんの?
A: 1通。
B: すくないですね。
A: 多い方です。先週はマイナスでした。
B: そんなわけないでしょ
A: さっそく紹介してきましょう。
えーと、子煩悩さんからのメール。タイトル。
「主人がムササビに襲われました助けてください」
B: 困ったね。
A: 以前オオアリクイに襲われたというメールが日本に氾濫しましたが。
B: 今度はムササビですか。
A: 困った世の中です。
えー「仕事中に突然目の前が真っ暗になり、意識不明の重体。
同僚があわてて救急車を呼んで事なきを得ましたが、
お医者さんの話では当分、夜はむずがゆいでしょうという事で
家族一同心配しています。ちなみに主人の仕事は役所の事務員です。
庭にチューリップが咲きました。1本。」

サスに星野。椅子に座り、パソコンからヘッドホンで
ネットラジオを聞いている。至福の顔。

B: 目の前が真っ暗になった理由が、ムササビですか。
A: それは書いてないです。
B: メール、ばんばん待ってます。
A: それでは、タイトルコールいきましょう。
けんちゃんと
B: ひろしの、
AB: 『はぐきの奥』
A: テーマソングどーん。
B: (歌)

星野、にやにやしている。
いつの間にか父、その様子を見ている。

父: 、、、。
星野: ひひひひひ。ひひひひ。ひひ。
父: さっきから一体、何してるんだ。
星野: わあ。いたんですか。お父さん。
父: 、、お父さんという呼び方は、ごめんこうむりたいね。
星野: 僕こういうなんでもないやつらががんばってるのを確認するのが好きでね。
父: なんでもないやつら?
星野: 最近はやってんの知ってます?ブログとか、日記とか、ラジオとか、ネットで。
父: ああ、真面目に見た事はないが。
星野: おかしな時代だ。
そろそろかなぁと思ったら最近はネットテレビも始まりましたよ。
父: テレビ。
星野: なんでもない人間のなんでもないテレビですよ。
見ますか?くだらない。ものすごくつまらない。
家庭用ビデオをパソコンにつないでえんえん
その前にいるんです。そいつら。
昔、伝言ダイヤルってのがありましたよね。
携帯電話が主流になる前。PHSも出て無い頃。
父: ああ。
星野: あれにね。 みんなが聞ける番号ってのがあったんです。
それでね。そこに電話して番組作ってるやつらがいるんです。
面白くないですよ。ずーっとそいつの愚痴やら説教やら。
世の中にこんなにつまらなくて寂しいものがあるのかと思いましたね。
父: でも、聞いてたんだろう。
星野: はい。ネットテレビも暇さえあれば見てます。
父: 、、じゃあなんで見るんだね。
星野: なんでもない人間にラインをまたがせないためですよ。
父: ライン。
星野: 僕との境界線ですよ。
父: 、、なるほど。君は普通の人間ではない、とういう事か。
星野: 僕は選ばれた人間です。
選ばれた人間は選ばれた人間ゆえに進まねばいけない道がある。
究極的にいえば、それは、埋もれないためです。
埋もれないためには、弱者の弱い部分を知っておかなければならない。
そのなんでもない個人ですら、主張をする時代なんです。
父: 、、、、本当にそう思っているの。
星野: 、、もちろん。
父: じゃあ。
星野: なんです。
父: どうしてあの青年を。
星野: え
父: ヤナギという、あの、普通の青年を仲間に加えたんだね。
星野: あいつ、初めて会った時に言ったんです。
おふくろに逃げられてして、おやじ借金でサラ金に手出して、
借金取りに追い回されて、それで小学校ん時いじめられたり、
友達に裏切られたり、しまいにおやじ女作って蒸発して、
おふくろ帰ってきたら頭パァになってて病院入れたころ
おやじどざえもんになって川からあがったり。
それ聞いたおふくろ自殺したり、色々だったって言ったんです。
父: 、、、。
星野: 僕には想像つかないほど不幸な人生のくせに、
あいつは絶対自分の事不幸だと思ってないんですよ。
父: そう。
星野: だから。
父: 嫌いなのか。
星野: 、、さすがはミソラさんのお父さんだ。
父: ついでに教えてくれ。
星野: 、、
父: どうしてミソラと結婚したんだ。
星野: 他の事は全部説明できるんです。
でも、それだけが、説明できない。

星野退場。

15場■レミの死:高い場所にレミ。

舞台奥に姉とタマゴ。
管につながれて

父: レミ。
姉: 、、、、、、、
父: 母さんの時はな、ある年齢まで若返ってから、たったの1日でみるみる老けた。
私はそれをずっっと眺めてた。
みずみずしい肌が水分を失い、
しわくちゃになる様子を眺めてた。
二人ともそれに気付かないふりをして他愛のない会話を探すんだ。
真夜中息を引き取るまで私は涙をこらえるのに必死だったよ。
お前が同じ病いと知った時、せめてその1日を経験させたくないと思った。
首をしめようかとも思ったよ。
MAMAの薬は、お前のための薬としては完璧ではない。
しかし。
せめて月の満ち欠けの早さくらいで死ぬ事になろうよ。
私はもう思い残す事はない。生きる希望がない。
お前が死ぬ時、私も死のうと思うんだ。
だから、ミソラに手紙を出したよ。
レミの薬が若返りの薬として世に出るとは思わなんだ。
あの薬は人類には必要ない。
ミソラに終わらせて貰おうと思うんだ。
私の子だ。同時に二人の男に愛されて、幸せに生きるさ。

父、遠くをみやり。

父: ミソラ。

コンクリートの塀。降りてくる。
ゴミステーション。

16場■ヤナギとミソラ:コンクリートの塀

下手より息を切らせて走ってくるヤナギ。
妹、手紙を持っている。

ヤナギ: はー、はー、はー
ごめん!遅れた。
妹: 突然呼び出してごめんねヤナギくん?
ヤナギ: いんだ。
結婚式以来ねヤナギくん。
でも聞いて欲しいのヤナギくん。
ヤナギ: あの、、ミソラ。
妹: 新婚旅行はローマに行ったわ。
オードリーがグレゴリー・ペックと出会ったあの場所に行ったわ。
星野くんたらすごい演出を用意してくれて感激したわ。
ヤナギ: もういいよ。俺も話しがある。
妹: 聞いて欲しいのヤナギくん。
スペイン広場。真実の口。
観光名所をかしきりにしてローマの休日の乱闘シーン。
オードリーがギターで追手を追い払うシーン。
ベスパに乗ってロータリーをくるくる回って。
グレゴリーペックになり切って、星野くんたら子供みたい。
ヤナギ: もういい。
妹: あたしは少し気恥ずかしくて、だってみんなが見てるんだもの。
そしたら星野くんが言ったの。
君はオードリーだとしたら、僕は全く興味がないよ。
ヤナギ: 全部きいたから。
妹: 彼が興味を持ってるのは、彼の目の前にいる、私。
ヤナギ: もう聞いたから!
妹: にわとりの卵くらいにしか思ってなかったのかもしれない
ヤナギ: え
妹: 星野くんは月に一度上質のタマゴだけを選ぶの。
一日にひとつ産まれるから月に30個。
30個のうちのひとつだけ、上質の卵を選ぶの。
その選ばれた卵だけ抱きしめて。
奥の部屋に持ってくの。
星野くんちにはふか器があるの。
その中にさっき抱きしめた卵をいれるの。
毎日その様子を眺めるの。
少し動いて、ヒビが入って、カラがやぶれて、
そうしてかわいいヒヨコにするの。
全ての様子を写真におさめるの。
ヒヨコにならないタマゴもあるの。
形が変だったり、頭がなかったり、
足が3本生えてたり、羽がなかったり、
目がなかったり。
ヒヨコにならないタマゴもあるの。
そうしたら、
タマゴを産んだ親鳥もケージから外に出して、殺すの。
そこからが星野くんの奥さんの仕事。
ヒヨコにならないタマゴの死体と
タマゴを産んだ親鳥の死体を
燃えるゴミの日にゴミステーションに出してくるの。
帰ってきたら朝食の準備。
選ばれなかった29個。
全部あわせてスクランブルエッグ。
星野くんはおいしそうに、
朝食をすませて仕事にいくの。
ヤナギ: もういいから!
妹: 、、、聞いて欲しいのヤナギくん、、。
ヤナギ: もういいから。
妹: 、、あたしはいつから、
誰かが幸せにしてくれるなんて思っていたんだろー。
ヤナギ: 、、、

ヤナギ、ミソラの手を取る。

妹: あたしはどうして、
白馬に乗った王子様を、
信じる力があったんだろう。
ヤナギ: 、、俺、あの、、
妹: ヤナギくん、
ヤナギ: 俺、あの。
妹: 今のあたしには、あなたの言葉を信じる力がないの。
ヤナギ: 、、じゃ、俺、どうしようか。
妹: だからただ聞いて欲しいのヤナギくん。
あたしを幸せになんて、しようとしなくていいからヤナギくん。
ただ聞いて欲しいのヤナギくん
ヤナギ: 俺、どうしようか。
俺、君のためにどうしようか。
そうだ!あいつを殺そうか!
俺、君のためにあいつを殺そうか!
俺、星野を殺そうか!
妹: どうして?
ヤナギ: だって。星野がにくいだろ

ヤナギの手を放す、妹

妹: そんなことあるわけないじゃない。
ヤナギ: え、、。
妹: あたしはあたしの人生を後悔しないって決めたの。
あたしはあたしのために、あたしが自分で幸せであるために。
後悔しないって決めたの。
だから
星野くんを選んだ事も
妊娠した子を殺した事も
変わりにお姉ちゃんをあげた事も
すべての決断は間違ってないわ。
全てあたしが幸せになるための正しい選択だった事にするの。
だから、もしも星野くんをにくんだら、間違ってた事になるじゃない。
ただ聞いて欲しいのヤナギくん
あたしをただ否定しないで欲しいのヤナギくん。
ヤナギ: 、、聞くよ。ただ。
妹: あたし、卵を割りにいく。

曲、聞こえてくる。

ヤナギ: 、、、、、、
わかった。
妹: 、、、。
ヤナギ: 俺は俺のやりたいようにやるけど。
妹: 、、え?
ヤナギ: 、、
否定されてもいいし。

携帯電話を打つヤナギ

妹: どうしたの。
ヤナギ: ろくたやついねぇなぁ。
妹: なにするの。
ヤナギ: メールするの。
妹: 誰に?
ヤナギ: 勢ぞろいすんの。
妹: なに言ってんのヤナギくん。
ヤナギ: 勢ぞろいすんの。
妹: え?
ヤナギ: チル研。
妹: でも
ヤナギ: どうせ大人になんねーんだから。
みんな喜ぶと思うよ。
妹: ヤナギ君。
ヤナギ: 忙しいから家帰りなよ。
妹: なにする気なのか教えてよ。
ヤナギ: 子供みたいな事だよ。
妹: だめだよ。
ヤナギ: いんだよ。
妹: だめだよ!あたしなんかのために!
ヤナギ: おまえのためなんかじゃねえよ!!!!!
、、、、、
レミちゃんと遊んだろ。部室で。馬鹿みたく。
ただ、今回は犯人役なだけだ。
送信。

曲、上がり、かけてくヤナギ。

17場■参上:ナチュラルスイーツ

早川: ぼぼぼぼぼぼぼぼぼっちゃあん!
星野: どうした早川、らしくないぞ。
早川: ぼっちゃん!
星野: ぼっちゃんはやめろ
早川: 挑戦状が!
星野: なに?

舞台奥上段、月の横に、
でかいななめのカード。カードに文字。

『満月の夜、
レミと、
ウサギのタマゴ
いただきます。
ナチュラルスイーツ』

星野: ナチュラルスイーツ、だと?
はははは!おい早川!やっつけろ!
早川: え?

曲上がり下がり。

ビーーッ ビーーッ ビーーッ ビーーッ 

『緊急警報、緊急警報、警戒レベル「E」発生、
すべての非難経路をシャットアウト、
ターゲットは殺傷用具を所持。正当防衛適用。各員すみやかに対処せよ』

ビーーッ ビーーッ ビーーッ ビーーッ

音の中、散らばるナチュラルスイーツたち。

イシダ: レミちゃーーん!どこだーーーい!
あ、ヤナギ?今どこ?
ヤナギ: セキュリティルーム。今から全部のセキュリティを解除するから。
イシダ: そんな事できんの君は?
ヤナギ: たぶん。
イシダ: 俺にまかした方がいいと思うけどなぁ。
ヤナギ: おめえ失敗したろーが!なにがレッツジャミ~~ンだ。
イシダ: どうすんだよ?
ヤナギ: 映画ではだいたい、ぶち壊せばどうにかなる。
イシダ: そーかお前は映画おたくだったのか。
フィギア: こちらフィギア!
ヤナギ: どうにかしろよそのコードネーム
フィギア: 改造銃使う時の注意なんだけどー、
ヤナギ: 注意?わかった、安全装置だな?おっけー!映画で見た。
フィギア: ひとつだけ火薬量まちがった。
ヤナギ: たまや!

チュドーーーン

イシダ: 少ないって事?
フィギア: 多いの。

ドッカアアアアアアアアアアアン!
ふっとぶ3人

産婦人科医

さ: やーやー月野くん、どうですかレミちゃんは。
父: 無念です。
さ: しかしまぁ、MAMAの薬という人類への素晴しい貢献をしたのですから
学者冥利につきるでしょうなぁ。
あなたの名前は歴史に残ります。
おめでとう。
父: 、、、。
さ: とりあえず研究も一段落。後は余生を楽しむばかりと言った所かな。
父: ははは、それも良いですなぁ。

ポケットから注射器。

父: しかし。薬の服作用か、なんなのか、レミがあまりに口を聞かない。
どうかんがえますか。先生。
さ: まぁ。自分が少しづつ年老いて行くのが耐えられんのでしょうな。
彼女を知った時、初恋にも似た感覚を覚えたもんです。
父: それで、レミを手ごめにしたわけですか。
さ: え?

父、注射器を振り上げ、
産婦人科医に刺す。

さ: 、、、あ、、
父: 人としてやってはいかん事ですが、
父としてやらねばいかん事がありますな。
さ: な、なに、なにを打った!
父: MA。縮小核酸。レミの病ですよ。
これからどんどん若返る。しかし。
古い細胞には、厳しいでしょうな。
さ: うあああああああああああああ!

産婦人科医、退場、

SEどかーーーーーーーん。

父: 始まったか。

走って退場、屋上へ。

イシダ: あたたた。この階までひびいた。
フィギア: だいじょうぶー?
イシダ: なんだ近くにいたのか。
マッドとビニーは?
フィギア: 重いからエレベーター乗るって。
イシダ: のんきだなぁ。

あらくれものたち。

あ: ふっふふうふふ
イシダ: なんだ?
フィギア: なんか来たぞ。
あ: てりゃあ!
イシダ: ヤナギ!なんか襲ってきた!
ヤナギ: あたたた。
フィギア: あちょお!
イシダ: あぶないってば!
ヤナギ: そいつらは世界各国から集められたあらくれもの立ちだ!
ゲフィギア: 日本人ばっかり!
あ: にゃあああああ!
イシダ: 格闘ゲーム苦手なんだけどなぁ。
フィギア: おなじく。

セキュリティルーム
妹、走ってくる。

妹: 大丈夫?!
ヤナギ: 感謝してる。
妹: どうして
ヤナギ: 感謝してんだってとにかく
妹: あたし、勝手な事ばっかり。
ヤナギ: 今俺がここにいるのは、
今おれがここで、こんな事になってるのは、
俺が君に会ったからだ。
妹: 、、、
ヤナギ: 君に会ってなかったら、
こんな事には絶対ならない。
いいかわるいかは別として、
俺全ての出会いに感謝してる。
あんなクソみてえなやつでも。
妹: あたしも、、
あたしも感謝したい。
会って良かった事にしたいよ。
ヤナギ: 自分の事だけ考えてりゃいんだ。
他人の事はついででいい。
妹: 、、
ヤナギ: 俺、たぶん出だし不幸な人生だから。
自分の事しか考えてねんだ。
妹: 、、、、。初めて聞いた。
ヤナギ: 初めて言った。
妹: 大学の時、言ってくれたら良かったのに。
ヤナギ: だめだめ。不幸売り物にしたら、不幸じゃなくなった時、困るだろ。
妹: 、、、
ヤナギ: 幸せになるために、自分の事だけ考えるんだ。
世の中の全ての事は、俺を中心に回ってる。
君の世の中の全ての事は、君を中心に回ってる。
妹: 、、そんな事。
ヤナギ: それを信じろ。
妹: 、、
ヤナギ: まずは、信じろ。

イシダ: いいや、らちがあかん。
フィギア: 点火!
イシダ: うてい!

SEドカーーーン。

妹: !
ヤナギ: ちょっとおお!?
イシダ: ごめん!なんかに引火した!
ヤナギ: あやまられてもよお!
フィギア: こっち!
ヤナギ: マッドとビニーは?!
イシダ: レミちゃん確保!とのことです!
ヤナギ: どこいった。
フィギア: 屋上!
イシダ: やばい、そっち、もっくもくだ。
ヤナギ: とにかく上に!ミソラ!
妹: 、、うん。

階段をかけ上がるNS

A: さぁ!はじまりましたー。
世界に向けて発信しております、超ローカルコミュニティネットラジオ、
『はぐきの奥』
本日もメール受け付けておりまっす。
それではメール届いておりますか?
B: 届いておりますよー。
「こんにちはおしさしぶりです。御曹司です。
実は飼ってるめんどりが奇形の卵しか産まなくなって困っています。
エサが悪いのでしょうか。環境が悪いのでしょうか。
動物病院に連れて行っても、まったく原因がわからずに困っています。
そのにわとりは人工孵化器で私がかえしたのですが、
どんどんやせていくその姿を見ていると、
なんだかせつない気持ちになり責任を感じます。
こんな事をお二人に相談しても仕方が無いのかもしれませんが、
リスナーの方でそういう経験のある方がいらっしゃいましたら、
よろしくお願いいたします。」
A: いるのかそんな人。
B: いるんじゃないかなぁ。

星野、早川。

星野: 早川!補助セキュリティおん!
1階から追い込め!
屋上だ!
早川: はい!
星野: わははは!
なんかすごいぞ!
生きてるって感じだぞ!
早川: ぼっちゃんんん!!!
星野: 早川!来~~~~~~~~い!!!!

二人退場。

A: 次のメール。
「えーと、お二人にとって、生きるってなんですか?」
B: えー、なんだろう。
A: これもじゃあ募集します。「生きるについて」ちょっとおおまかすぎっかな?
B: メールアドレスは、えーと、

曲、上がっていく
光上がっていく。

18場■屋上:クライマックス。


大音響の中、冒頭と同じく皆集まってくる。

しだいに見えてくるミソラ
ゆっくりと卵をかかげる。
曲、下がり。

星野: よせえええええ!!
妹: 星野くん。
星野: 何をしてるのかわかってるのか!
それは!そのタマゴは!僕と君の子供なんだぞ!
妹: わかってるわ星野くん。
星野: おちついて!君は今、きっと気が動転しているんだ!
深呼吸して、まずは落ち着くんだ。
自分が何をしてるのか、
そして、
自分がどうしてここにいるのか、
きっと君は自分でわかっていないんだ!
わかった!
ヤナギだ!ヤナギだな?おまえ!おまえのせいか!
妹: 聞いて星野くん。
星野: 答えろヤナギ!
ヤナギ: きけえええ!
星野: !!
ヤナギ: 今ミソラが言おうとしてるんだ。
まずはそれを聞け。
妹: あたしは気が動転なんてしていないわ。
こんなにも鼓動がゆっくりなのは産まれて初めて。
こんなにも自分が何をしているのかを理解してるのは産まれて初めて。
ゆっくりゆっくり、心臓の音。
トクン、トクン、トクン、トクン、
タマゴから聞こえる、この子の、心臓の音。
トクントクントクントクン。
ちょうどあたしの倍の早さで、脈打つの。
手のひらから伝わってくるの。
命の音。
星野: ミソラ!早く人工孵化機に戻さないと手おくれになる!
妹: だいじょうぶ。この子はだいじょうぶ。
この子に名前をつけたの。聞きたい?
もしかしてあなたも名前をつけた?聞かせて?
星野: 名前なんて!それは生きる価値があるものにつけるんだ!
妹: 価値。
星野: そうだ!もし奇形だったらどうするんだ。
MA遺伝子の危険性については、
まだ2世代までしか立証されてないんだぞ!
もしかしたら3世代目から、大きな欠縮を産むかもしれない!
妹: 危険?欠縮?奇形?わからない。
私、あなたの言ってる事がぜんぜん理解できない。
星野: 君ほどの頭脳を持っていればわかるだろう!
遺伝子工学の第一任者、月野省三の娘なら当然だろう。
今はタマゴの段階、胎児の段階で検査をして、
問題があればそれを操作するのが親としての勤めじゃないか。
僕の気持ちがわからないのか?
僕たちの子だぞ?!
劣悪な環境に置きたくない僕の気持ちがわかるだろう。
妹: あなたは何をシドに求めているの?
ねぇ?シドの名前の由来を知りたい?
素敵な名前なの。
ミソラ、レミ、シド。
どう?並べてみればわかるでしょ?
星野: 名前なんかどうだっていい!
今はまずそのタマゴを安全な場所に置こう!早くしろ!
妹: 全然どうでもよくない。
レミとミソラはね。
音楽の愛したお母さんがつけた名前。
シドはね、その流れをもらったの。わかる?
星野: 早くタマゴを返せ!
妹: シド。シドでいい?タマゴの名前
星野: なんだっていい!名前なんて君の好きに任せるから!
妹: シド。今、あなたには名前がつきました。
私は今母としてあなたに生きる権利を与えます。
シド、今からあなたは、
この世に生を受け、
自由に大地を踏みしめる権利を持ちます。
見たいものを見て、聞きたいことを聞いて、
触れたいものに触れて、食べたいものを食べて、
そのために殺したいものを殺す権利を持ちます。
星野: ヤナギいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!!!!
妹: 今から私は母として、あなたの命を殺します
星野: 卵は一定の環境に保たなくちゃ!
温度、湿度、全ての環境を完璧に整えてやらなくちゃ!
完璧なヒヨコが返らない!
その狂った女を止めろ!!
お前も愛した女だろお!
その女のために守った童貞だろお!
その女はくれてやる!
その女を止めろ!
ヤナギ: 星野。
星野: はやくしろ!ヤナギ!
ヤナギ: とめられねーよ。
星野: どうして!その女は、あきらかに狂ってる!
ヤナギ: だって、ホレた女がそういうんだ。
どんなに間違って見えたって、
俺はそれを受け入れるしかない。
妹: ありがとう。
ヤナギ: てれる!!
星野: やったのか。
早川: は?
星野: なんだ!そうか、二人はやったのか!
早川: ぼっちゃん。
星野: 二人はセックスをしたのか!
早川!僕は勘違いをしていた。
単純な話だった!あの女は浮気をした!
それで僕との子供が不必要になったそれだけの事だ!
全ての監視カメラをあの女に向けろ!
浮気の果ての子殺しの瞬間だ!
自分の子供を中絶し!
保育カプセルにうつしかえ!
周囲の男の気をひき!
悲劇のヒロインを気取った末に!
八方ふさがりとなり残忍な本性をあらわにした!
あの女にとって我が子はにわとりのタマゴほども重要なものではない!
単なる!男を所有するための保険としての、都合の良い存在だ!
はやかわああああああああ!!!!!!!!!!!
スポットライトおおおおおおおお!!!!!!
全ての監視カメラをあの女に向けろお!
女の皮をかぶった、ばけものだ!!!!!!!
早川: お言葉ですが!!!!!!
星野: なにをしているのろま!
早川: ばけものは涙を流しません。
星野: じゃぁ、ありゃ、なんだ。
我が子を高だかと片手に持ち、
今にもその命を殺さんとする、あれは、なんだ。
父: 、、女だ。
ヤナギ: ミソラさん。
父: 誰にも止められん。
星野: ははは。

ミソラ、さらにタマゴを掲げる。

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