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『黄昏ジャイグルデイバ』中年男4女2若者2

『黄昏ジャイグルデイバ』
2021/11/11最終稿

<登場人物>
1:田村誠(保険屋)
2:中島晶(警察)
3:野々山風子(医者)
4:吉田芳樹(金融)
5:鈴木峰雄(カフェ経営) 
店長:カフェ店長(伊達の嫁)
店員:バイト店員(大学生)

<舞台>
 カフェのテーブル
 店内音楽(ビートルズのカバー)がかかっている

<心拍数、風>

 心拍音
 SEピッ、ピッ、ピッ、ピッ、
 
 風が吹く
 SEビュウウウウウウウウ

<死因>

1:紀元前455年、アテナイの詩人アイスキュロスはハゲで、ヒゲワシにリクガメを落とされて死んだ。

4:ヒゲ?
3:ハゲ?
2:カメ?
1:うん。
2:唐突に、なんの話だ
1:史上最古の、変死
234:ほう
2:なんで?
1:岩と見間違われた。
2:岩?
1:リクガメを砕くための岩と。
3:ハゲを?
1:ヒゲワシが
4:ヒゲが
3:ハゲに
2:カメを
1:すごいだろ

 カフェのテーブルに男女が座っている。
 酒を飲んでいる。

 2 1 3 4 の並び。

 明

3人:へーーー
234:、、、、で?
1:最近どう?
4:タモリか
1:髪切った?
2:タモリか
4:何年ぶり?
2:去年はまぁ集まれなかったから2年
3:まぁなあー
1:最近どう?
4:どうってことはないよ
2:同じく
3:毎日がただ、過ぎ去っていきます。
2:同じく
4:まじで
1:悲しいなぁ。ただ年を重ねてるだけなのかおまえらは。
2:おまえはどうなんだよ
4:そうだよ
3:どうなんだよ。
1:同じだよ。毎日がただ、過ぎ去っていくよ。
234:そっかーーー
2:あ!俺、尿酸値がやばいよ
4:あ、俺も。痛風予備軍
2:俺はとっくに痛風
3:わたしは無性にイライラする
2:あ、更年期障害きた?
4:大変なんだろ?昔木の実ナナが言ってたぞ
3:じわじわと、しかし、確実に。
4:これ(メガネ)
2:うわ、老眼鏡か
4:とうとう。
3:どれ。わ。キッツ
2:目でっか!
4:ケントデリカットです
23:古いわ
1:でもやっぱそういう話になるかー
2:中年もいいとこだからな
4:やっぱ中年?
2:中年だろ
4:まじかー
3:ええ
4:俺早生まれなのになー
2:関係ねえわ
4:気持ちは20歳のままよ?
1:こうして自覚なく年老いて、死んで行くんだよ
234:おー

 5、ジョッキ4つもってくる

5:はい、生ね
4人:(それぞれなんか言い、行き渡らす)
5:ごゆっくりどうぞー

 5、退場。

1:、、(5の後ろ姿を見てる)
2:じゃ、えーと
4:献杯献杯
1:じゃ、せんえつながら、私、田村誠が献杯の音頭をとらせていただきます
3:けんぱーい
24:わーい
1:おい!こら!おい!
124:はー。(ぱちぱちぱち)
1:なんの拍手だなんの。
4:いや。ほんとに。
2:いや。献杯献杯。
3:けんぱーい。
2:(3に)ほんで、なんだった?
3:ん?
2:あいつ
3:咽頭ガンだって。
2人:ガンかー。
1:遺伝っていうしな。
2:いういう
4:うちの親父もガンなったから、うちもガン家系なっちゃった。
1:あ、そういうもん?
4:ま、俺で家系終わりそうだけども。
3:お父さんどうなの?
4:なんか抗がん剤でうまく行ったけど、もう80後半だから。
1:え、もうそんなん
2:うちもこの前倒れてよ。救急車だってよ。
1:脳溢血?
2:うん。焦ったわ。
3:お父さん?
2:と思ったっけ、おふくろだったからもう逆に焦ったわ。
4:あー。
2:親父なんて、一人じゃ無理だから。
1:独居老人なー
2:テレビみて新聞読む以外しねえからな
4:男なんてなー
1:確かに。
3:まぁ、そろそろですよ。
2:そろそろかー
4:まぁ、人間、死ぬもんだ。遅かれ早かれ。
1:早すぎるやつもいるしな。
3:うん。

 間

1:若いうちにかかるとすげえ勢いでガンが育つらしい
2:ガンって生き物?
3:細胞っていう意味では、生き物かな。
1:いつの時代も圧倒的にガンで死ぬ。
日本人の死因のトップ、30%はガン。2位が心疾患の約15.8%、3位が脳血管の11.5%です。
2:さすが
4:くわしいね。保険屋。
2:なんかいい薬ないの?
3:あったらノーベル賞もん
4:頑張れよおまえ
3:え?わたし?
2:そうだ。医療従事者だろ
3:看護師だけど
4:がんばってくれ
3:わかった任せて。

 店長、通りかかる。

1:あ。ビールください
2:ぴっちはええな
4:負けられん!
1:いい年こいてはりあうな
3:ビールぅ!
2:おまえもか
4:三つ。
店長:はい三つでー♪
2:しっかしもう中年だなー
4:ねぇ、中年って何歳?
1:わー出てくる出てくる「中年は何歳からか」
2:みんな気になるんだな。
3:差別用語ですからね
4:たしかに
1:「正確な年齢は決まってない」byウィキペディア
34:へー
1:気持ちの問題だって。
3:私は最近、韓国のアイドルに興味があります
1:k-pop?
3:人生に潤いを
124:やばいやばいやばいやばい
3:え?
2:韓流とデパ地下にハマるともう確定だぞ。
3:いや気が若いって言って。
4:むしろ逆だろ。
1:厚生労働省では、45~64歳としてる資料があるってよ。中年。
2:はい全員確定ー
4:国に言われた。さらにショック。
1:もう45だもんなー
4:でも俺44。早生まれだから。
32:わかったわかった。
1:だって45ってよぉ。
3:うん
1:来年46だぞ。
2:50代と言っても過言ではないな。46は。
3:うん過言ではない
1:死がぐんと近づいてきたっつーかな
4:あれ?「壮年」は?
3:終わってんじゃないそれ
4:うそ。
1:正解。24から44まで。
2:やべえ。自覚なく終えてた。
4:武士だったら死んでるな
3:知ってる
2:なにそれ
4:江戸時代の平均寿命30とかだってよ。
3:縄文時代は15だって
1:まじか!(スマホ)
3:まじっす
2:今って何歳?
1:えっと。男79.64、女86.39
4:すげえ伸びたな。
1:39のとき、上司に40代なるとなにか変わるのかって聞いたらさ、
「余裕だと思っていた段差を越えられなくなる」って
3:段差って
4:縁石とか?
1:そう。
2:ルンバか
4:ちょっとわかるかも。
2:黄昏感あるよね。40代後半。
3:ある。
4:黄昏っていつ?夕方?
2:夕方の薄暗い時じゃない?
4:もう、夜ってこと?
3:たぶん。
4:もうかー
1:えーと、(スマホ)【また、比喩的に用いて、盛りの時期がすぎて衰えの見えだしたころをもいう】
3人:ほー。
3:老人にあと一歩。
1:40代は楽しいよ?とかいうやついるじゃん。
234:いる
1:あれはどういうつもりで言ってんの?
3:さあ。
2:負け惜しみかなぁ
4:若い方いいよな。
3:いいよ絶対
1:でもバカだろ若いって。
2:バカだね。
3:でも若い方がいい。バカでも。
4:たしかに。

 店員がくる。マスクしている

店員:失礼しまーす。ビールです。
2:あ、はいはい。おれです
店員:あいてるお皿おさげします。
2:ここの店、店員いいよな。
4:うん
3:エロおやじ
2:そういう意味じゃねえよ。
4:え?俺そういう意味だよ?
店員:(にこ)ありがとうございます。
3:聞こえてるのわかって言う感じがもう、ねえ?
店員:はい。そうですねー
2:ほらー。みたこの切り返しー
4:かわいいだけじゃないね?ね?
3:うわ最悪だね。
店員:だいじょぶでーす。
2:ほらー
3:この人警察官
店員:え
2:言うなよそういうのっ(敬礼)
店員:他にご注文ございますか?
1:あ、日本酒。のむ人?
2:そんなんあんの?
4:変なカフェ
4人:挙手
店員:日本酒ですね
1:おちょこ4つ
店員:冷やと熱燗とぬる燗
24:おねーさんの人肌で。
3:死ねよ
店員:(にこ)少々おまちくださいー
3:絶対嫌われたよ
4:そうかな?
2:にこっとしてたよな?
1:安心しろ。なんとも思われてないよ
3:今頃忘れきってるわ
4:くそー。一矢報いたい
1:もうさわっちゃえ、ペロンと。
2:もみっと。
4:よし
3:よしじゃねぇわ
1:40代。発言が日に日に適当になるのを感じます
2:あ、わかる。
4:なんなんだろうなこれは
1:高田純次になれそうな日あるよ。
2:すげえわかる
3:いかれてんじゃない?
4:脳が?
1:あればだけど。
4:あるよ
2:バカか
3:バカか。
1:次店員来たら行け。ぎゅーっと。
2:そしてコクれ
4:え、好きなの俺?
3:気づいてなかったの?
2:自分じゃ気づかないとき
13:あるよね
4:そっかー
1:独身だろ
4:はい
3:結婚しちゃえ
4:おお
2:結婚してください
3:いってみろ
4:けっくん
3人:あーーーーー(おのおの罵倒する)
4:なによ!
2:噛むなよ
3:なんだ「けっくん」って
1:練習しろ。結婚してください。
2:発声しろ
4:発声?
3:はいノック
1:プロポーズ10本。
123:はい(パン)
4:結婚してください、結婚してください、結婚してください、結婚してください、結婚してください、結婚してください。結婚してください、結婚してください、結婚してください、結婚してください
2:じゃ、これなーんだ。
4:ひじ。

 別の店員(店長)がくる

店長:失礼しまーす
4人:、、、、、
店長:日本酒でーす。
4人:、、、、、
店長:おちょこになりまーす
4人:、、、、、
店長:失礼しましたー
4人:、、
1:どもー

 店員ハケ

123:やれよ!
4:違う人だったし
1:いんだよそんなことは
3:いんだよお前なんかだれでも。
2:なんのために集まったと思ってんだ今日
4:え?なんのため?
1:えーと、おまえのためだ
3:次はがんばれ
1:応援してる
2:ありがとう?
4:ございます。
3人:うん
4:なんだよこれ
1:献杯!
3人:けんぱーーい
1:(拍手)
23:(拍手)
4:(拍手)だから、なんの拍手なんだよこれ。
1:いやーみんな変わらんな。
2:変われないというかね
3:こんなんでいいのかなって思う
1:はいはい
4:俺今だにドラボンボール大好きだ
12:わかる
2:最近の歌ぜんぜん耳に入ってこねぇ
3人:わかる!
1:*********
3人:わかる!(or わからん。)
3:*********
3人:わかる!(or わからん。)
1:ま、そんなもんだ。トイレどっち。
2:出て、右。
1:はい

 1、席をたつ

4:なんか頼む?
3:わたし食べてきた
4:そ。

 沈黙

2:、、、怪しい。
4:え?
3:うん
2:いや、誠よ。なにあの、さっきの何?
4:****?
2:それじゃねえよ
3:まぬけな死にかたの話でしょ?
4:あー。ハゲにカメをワシが落として死んだの。
3:んー。
2:なにあれ
3:なんだろう
2:やっぱへんだよな
3:変かもね。
4:そうかなぁ
2:そもそも、珍しいからな。あいつ主催ってのが。
3:うん
4:どういう意味?
2:いつも俺が集めてたじゃん
3:うん
4:ぜんぜん知らんかった。
2:おまえはな。
3:おかしい。
4:?
2:やっぱなんかあるよ
3:あるかー
4:なにが?

 1、席にもどる。

2:トイレはええな。
1:得意技だから。
4:始めて聞いたわ。
1:なんの話?
2:いや別に。
4:?
2:なぁ
3:うん。ぼーっと。
4:今日ってさあ、
2:(いんだよこういうのはほっとけば。と睨む)
4:(察する)あ、えーと
1:なに?
4:今日。風つええよな。
1:うん
23:つええええよなあああ
1:ま、寒いよな。もう冬だ。
23:はいはいはいはい
1:夏だったのになー。ほんとは。
4:え?
1:集まるの。毎年さ。
3:、、うん。
1:去年、むりくり集まればよかったな。
4:あ、そだなー。
2:予定あわんかったしな。
3:まぁ、しょーがないよ
4:なんか頼む?
2:いいから頼め(笑)
4:でも俺だけ?
2:いいよ別に、大人なんだから
4:割り勘?
123:割り勘割り勘
4:おし、めっちゃ頼もう。
2:あ、てめえきたねえぞ
1:こどもじゃねえか
3:パフェくださいー
1:早くねえか?
4:俺もパフェ!
2:酒と甘いもんいける派だもんな
34:はい。
12:うえええ
4:カルアミルクもー!
2:じゃあビールもー!

2:そーだ。演劇部てまだあんのかなぁ
34:あー
4:あの弱小演劇部?
1:いや、全国行ったってよ去年
3:げ。まじか
2:高校演劇なんて顧問だから。
4:確かに。
2:やる気ゼロだったからなぁ、平田。
1:あいつのせいで俺ら肩身狭かったとこあるよ
2:演劇部なんて世界共通でキワモノ扱いだろ
1:それはそうだ。
4:女子に完全にキモがられていた高校3年間。
2:ひとりをのぞいて。
124:はいはいはいはい
3:たっつん
2:昭和のアイドルみたいな顔しやがって
4:足長くてな。
1:背のびたんだよ。高校でさらに。
2:演劇部の奇跡だったよな。
4:頭も良いんだぞ?
2:女子キャーキャー言ってたし。
4:かならず主役級。
1:俺ら常にわき役。
2:おまえも明らかに主役級の役で当て書きしてたよな台本
3:男は顔だから。
4:いい切るなよ
1:弱小だったけど楽しかったよな
2:なぜか先輩がた部室こなくなってな。
4:俺ら男子5人の天下だったね
3:うおい
234:え?
3:女女。
234:あー
3:砂漠に咲いた一輪のバラ
2:メキシコのサボテンかな。
1:タマサボテンかな
4:ダイソーにうってるやつ。
1:ミニサボテンかな。
3:あれめっちゃでかくなるよ
2:お前ならねえな。
3:なんと、今年2センチ伸びました。背。
4:すげえ
2:むくみだろ
4:すげえ!
3:すげえなそれ

<達夫と誠は同中>

2:誠とたっつんって中学まで野球部だろ?
4:そーだそーだ。同中だったなお前ら。
1:おれはベンチだよ。
3:あー。
2:主役になりたかったのか
1:その通りだよ。
3:なったっけ?
1:一度もなってねえよ。
2:変質者とか
3:殺人鬼とか
1:芹沢鴨とかな
3:だれ?
1:え?忘れた?
2:あ、新撰組な?
3人:あー
1:俺演出もやらされたのに。悪役だよ。
2:高校から影のある人間だもんなー。
3:ま、悪い顔でもないんだが
2:はい
3:好きではない。
1:好きになれよ
2:君も出てなかった?脚本のくせに。
3:沖田総司
2:わ、めちゃくちゃだな
1:よっしーその頃もう音響?
4:でも人数足りなくてちょっと出た。
3:わかったあれだ
2:なに役?
34:近藤勇。
1:局長かよー
2:お前も局長じゃん
1:悪い局長だろ。
3:そんな話だったっけ
1:お前書いたんじゃん
2:懐かしい。
3:幕末モノなのにビートルズが鳴り響くという
2:いや合唱したんだ。
4:日本語でな。
1:斬新な演出だろ
2:新しすぎるわ
1:いや少数にはうけてたって
4:なんつー歌だっけなー
3:なんだっけ?
1:あー、なんだっけなー(本当は覚えてる)
2:だめだ、最近ぜんぜん出てこねえ。
3:もうだめだな
4:なー
1:で?おまえが鬼の副長だっけ?
2:いや、俺は斎藤一(はじめ)。
3:警察になったんだよ。斎藤一。
4:すげー。予言的だ
1:で、土方歳三が。
3:たっつん
4人:わああああああ
2:そっか。
1:達夫はなんでももってくからなー。
4:歌ってたわー。センターで。
1:刀担いでなー。
2:大見得切ってな
3:女子きゃーきゃー

 間

1:華があったよな、あいつ。
3:たしかに
2:おれはがんばってほしかったなー、達夫。
4:あいつまだやってたんだ?
1:東京でな。役者な。
2:映画のちょい役とかで見かけたらメールしたり。
1:声優もやってたよな。
2:わかったカードなんちゃら遊戯なんちゃらってアニメの。
4:なんちゃら多いな
1:うちの子が見てたのそれ。
4:すげーな達夫。全国放送だろ?
2:すげーよ。
1:がんばってたんだ。
3:ねー。

<ピンピンコロリ>

1:ま、とにかく俺も早死にしたいなー。

 間

2:今達夫が早すぎたって話したんだぞ?
1:うん
2:保険屋とは思えん発言だな。
1:思わない?ピンピンコロリってのに憧れない?
3:あこがれるかも
1:ほら。
4:子供どーすんだよ子供。
2:それ考えるとな、俺はまだ死ねないなー。
 下の子受験だからなぁ。
4:ぷー子、子供いないんだっけ?
3:いない。
4:はやばや結婚したのにな
3:人間とだったからな
124:なるほどな
4:早死にってどのくらい?何歳のこと?
2:60とか
3:50とか
1:おれは、もっと前でもいい
4;40代あと5年だぞ?
1:別に、明日でもいい。

 間

1:とか言ってな
4:おいおいおうい
2:おまえね。悪い冗談だぞ。
3:ほんとに。
4:だから、今日言うな今日。
1:ははは
2:普通何歳で死ぬって?
3:平均80才。
4:おおお
3:あと35年かー
2:結構あるな。
4:あー、ちょっとなげえかも。
1:その間どんどんよぼよぼになってく
 どんどん邪魔にされてく。
2:そんで、騙されてな。
4:おれおれ詐欺?
1:やっぱ多い?
2:多い。なんでこんなに学習しないんだって思うけどな。
1:あー、あれなんで?
2:おれが思うに、本人は年寄りの自覚なかったりすんだわ。
3:どっから老人って話か
2:おまえ、自分はおれおれ詐欺のターゲットに入ってないって思ってるだろ?
4:え?おれ?いや入ってないだろ!おれはまだ!
2:たぶんみんな思ってんだよ。こやって
4:いやまだでしょ!
13:こやってなー
4:いやいやまだだって!
1:しかし、増えた。老人。やばい。
2:昔、こんなに介護サービスのワゴン走ってなかったよな。
1:うちの近所のシャッター街、デイケア施設で息を吹き返しました。
4:医療系はもうかるな。
3:否定しません
24:ほー

1:今日本は超高齢社会。老人は3640万人で全体の29%。
3人:えええ
1:2055年にはなんと人口の約40%が65歳以上
2:ほとんど半分だな。
1:ここで皆さんにクエスチョンです。
4:お、きた。
3:なんのコーナー?
2:はい。どうぞ
1:なんで高齢化社会なんでしょう?
234:わかりません
1:即答か。
2:なんで?
1:アンサー。無駄に延命してるからだ。
3人:おお
1:無駄に治療して無駄に延命してるからなんだよ。
2:むだは言い過ぎじゃないの?
1:100歳以上は何人いるでしょう。
2:えー、これは結構いそうだな。
3:1000万にん!
1:そんなにいません。出直してください。
2:こういうのは低めにいうんだよ。
4:1000人
1:低すぎます。
2:2万人?そんないない?
1:2021年で、8万6510人。
3:うわ、いるなぁ
1:100歳まで生きてなにすんの?
4:お茶のんだり。
3:お茶菓子くったり。
2:お茶のんだり。
1:他。
4:なにしてんだ
2:こやってんじゃない?
3:なにそれ
2:なんか、こやって
3:想像もつかん
2:うん。
1:なぁ、ほんとに100歳まで生きたいと思うか?
3:、、

 店員

店員:お待たせしました。ビールの方お待ちいたしました。
 カルアミルクの方になりまーす。
2:どちらの方になりますか?
4:わたくしの方になります。
3:そちらの方へー。
1:あ、お回しの方いたします
店員:お回しの方、よろしくの方、お願いいたします。
4人:はーい
4:何歳?
店員:来月23です
2:ってことは22?
店員:もうやばいですよね
1:やばい?
店員:はい、やばい
4人:やばいかー
3:お母さんなんさい?
店員:えっと、40、、2だっけな。
4人:ぐええ(自分の首をしめる)
店員:失礼しますー

 店員退場する

2:なんで自ら喰らいに行くんだよ。
3:すまんつい
4:ついじゃねえよ

<ぷー子の恋>

1:おまえ好きだったろ、達夫
3:え。
1:おれは気づいていた。
3:なんで突然そんなのぶっこむの
1:白状しろ。好きだったな?達夫のこと。
3:ま、まー。ちょっと
1:「ま、まー、ちょっと」
2:うわ、照れた今?
3:はい。
2:わあ。ぷー子のそういうとこ見たくないわー
3:え?どういうとこ
2:人間みたいなとこ。
3:こいつなにいってる?
4:役だってだいたい子供とか座敷わらしとか、そういう感じじゃん
3:沖田総司だぞ
2:俺たちのマスコットだったのに。
4:(指で3センチ)こーんな小さかったろ
3:3センチ。
2:恋愛とかしてたわけ?あの頃?
3:ま、まー、ちょっと
24:やだあ!
1:みなさん。もう結婚してますから。
2:それ聞いたとき超ショックだったわ
4:な。「まさか人間と?!」ってな
1:みなさん。絶滅危惧種ですから。
3:ビールをよこせ。
2:おい頼んでさしあげろ
4:御意。あ、お願いしまーす(店員を呼ぶ)。
2:ぷー子の勤めてる病院だったんだろ?
3:うん。
4:なにが?
1:達夫。
4:わ、うそまじで?
2:偶然?
3:うん。びびった。
4:すぐわかった?
3:、、え?
4:たっつんだって。
1:、、
3:うん、わりとすぐ。
2:?
4:そりゃあのイケメンじゃな。
3:、、

 5。

5:お待たせしました。
4:あ、この方にビールを。
1:俺もビールぅ。
4:2つで。
5:ビール二つ!!!(叫ぶ)
4人:?
5:あとは?
4:あ、あと、えっとよし、俺はカルアミルクだな。
5:カルアミルク!!!!!(叫ぶ)他は?
2:じゃ、ビール。
5:ビール、もう、ひとつ!!!!(叫ぶ)
3:以上。です。
5:はい。お待ちください!!!(叫ぶ)
1:、、、、、(5の後ろ姿をまた見てる)

 5、退場

4:なした?
1:いや、なんか
2:なんか店の仕組み変わった?
3:、、
4:オーナーじゃね?
2:あーはいはい。
4:普段お店に出てないけど、的な
2:あー、あるわ。深夜のコンビニ、オーナーほぼパジャマでレジ打ち、的な。
1:いや、そこじゃなく。
3:どしたの?
1:見覚えあるっつーか。
2:オーナー?
1:うん
2:まー、地元だしな。
1:そーか。
4:なかなか戻らんべ?こっち
2:なかなか戻らんねー。
4:よっ地方公務員
2:俺もう定年まで新潟だわ。
4:俺とぷー子は地元組だけどなー。
1:なんか変わった?
3:別に。
4:なんにも変わらんよね
3:イーオンが出来た
3人:あー
1:でも、こんなカフェなかったろ
2:よく来んの?このへん。
3:近いから、病院
1:地元もいいよな。やっぱ。
4:住んでるとわからんわ
1:東京いると麻痺すっけどさー
 なんでこんなに人いるんだろうって思うわ。
4:ラッシュくらいありますよ。うちだって
3:張り合うかそこを

<年月>

2:なんていうか、やっとあきらめなきゃって思い始めたな。人生を。
1:あー、すげえわかる。
4:なんでなんで?まだこれからじゃん。
3:人生100年時代
1:いやな時代になったなー
2:あと55年も
4:俺は56年。早生まれだから
23:わかったわかった
4:俺は高校のままでこんな年になったー。
3人:なー
2:こどもおじさんだよな。ほんとに。
4:でも男子なんてもう全員そうじゃね?
2:子供いるのになぁ。俺。
3:いくつになった?
2:45
3:おめーじゃねえよ
2:上が大学で下が高2か。
1:人のガキは早いな
2:おまえんとこは?
1:まだ小2だもん
2:あ、まだそんなかー
4:女の子かー。かわいいだろ?
1:まぁ、、、、、見る?
234:しかたねえな(口々になんかいう)
1:これ、七五三のときの。
234:かわいいじゃねえか
3:くそ、けなせない
4:にてもにつかねえな
2:奥さん似でよかったな
1:いやにてる!ほら!あご!ここ!
4:今いそがしんだよ
1:みろ!俺を見ろ!
3:きたねえもんみせんな
2:まだ生意気じゃないだろ
1:いや女で一人っ子だからさ甘やかしちゃってだめだな。
4:もうひとり作ればいいじゃん?
1:簡単にいうね君も
4:おしっこしてくるわー
2:言わんでいい
4:うんこじゃないってことさ
3:3分超えたらうんことみなす
4:やっべ!
12:小学生か。

 4、トイレ

2:あいつは相変わらずだな。
1:たまに会う?
3:全然。
2:あれでな、金貸しってんだからな
1:わからんもんだ。
3:そうかな。
2:葬式行った?
3:うん、行った。
2:誠は?
1:たまたま行けた。その時期、実家に居たから、
2:俺、入院したのも知らんかったわ
 知ってりゃ、お見舞い行ったんだけど。
3:みんなにいうかって聞いたんだけど、
 本人が「やめとく」って。
1:まったく死に際までキザな野郎だ。
2:もうあれだった?末期っていうか
3:最後は抗がん剤もやめて、
 ホスピスに移ろうってはなしてたんだけど。持たなかった。
1:本当に偶然?ぷー子のとこに?
3:たぶん
2:ときめいた?初恋の人との再会に。
3:いやー、ははは。
2:やだあ。ぷー子ときめいてるよぉ
1:なんかちょっといいなぁ
2:中年だぞ中年
1:でもときめきたいだろ?
2:たしかに、ときめきてぇなぁ
3:妻子持ちがいうと、哀愁がにおうね
1:臭うってなんだよ。せめてただよえよ。
3:ははは
2:最期。ぷー子が看取ったの?
3:、、うん。
1:、、、
2:そっかー。きついな。
3:、、まー。
2:でもあれか。慣れてるか。看護師だもんな
3:、、
2:いや、、そんなことねーか。ごめん。
1:、、

 4、かえってくる

4:測ってた?!
1:3分1秒
4:げえギリうんこ!
3:あしたからお前のあだ名うんこなー
4:やーめえろおややーめえろおや
2:ガキか
4:ここのねえちゃん、まじでかわいいかも。
2:そういう店じゃねえだろ
4:いや、でもマスクのせいかな?
1:だいたいだまされてるからなー
4:そうか。
3:どれ(マスクを)
124:いいいい!
3:実力を見ていただこうかと
4:どんだけ見てると思ってんだよ素顔。
3:ちっ
1:舌打ちか。
3:あたしもおしっこです
124:言わんでいい

 3、トイレに立つ。

1:慣れてるわけねぇだろ
2:すまん。なんか、現実味なくて。
4:なんのはなし?
2:俺の失言。
4:あ、そうだ。言っとくわ。
2:え?なに?またやった俺?
4:ぷー子別れたって。
12:え?
4:離婚。
1:いつよ
4:去年かな。
2:なんで?
4:なんかあんまうまく行ってなかったらしく。
1:まじかー
2:言ってくれよそういうの先にー
4:職場結婚だったよな
2:そーか。この年で離婚かー。
4:まぁ看護師だから、くいっパクれることはないだろうけどな。
2:子供もいないわけだろ?
4:それはまぁ良かったんじゃない?
2:いや居た方いいって。たぶん。
4:けど全然あるだろ。独身なんて。
2:おまえと一緒にすんなよ。ぷー子だぞ?
4:え?なにそれ。
2:しあわせになってほしいだろ。ぷー子はさ。
1:そーだそーだ。
4:おれのしあわせは?
2:だって寂しいだろ、一人じゃさ。
4:離婚なんて早い方いいんじゃないの?
2:遅かったって。いや失敗だろう。絶対。
4:のびのびしてんじゃない?逆に。
2:俺はそうは思わんな
4:それは本人に聞かないと。
2:いや聞けねえだろ。本人には。
1:ま、そうだそうだ。
2:しかしなぁ。再婚とかはなかなかなぁ。
4:そう思ったら本人が努力すれば。
2:45だぞ?どういう努力すんだよ。
4:まー、それも覚悟しての離婚だろ?
2:お前みたくね。とっかえひっかえいきてる人間じゃないんだから一緒にすんなよ。
1:そーだそーだ。
4:いやいやいや!いつの話してんだよ。
12:高校
4:44だぞ俺も!
1:いや。わかった。
2:え?
1:おれはね。わかったわ。
23:なにが?
1:とにかく、わかった。

 3、戻る

3:測ってた?
2:測りません
4:想像もしてません
3:なんの話?
4:なんか、えっとー
2:わかったって。
3:なにが?
1:俺たちが、進むべき道だ。
234:は?

<シモの世話>

1:俺はこれから重大なことを発表したい。
3:なんだなんだ。
2:突然なんだ。
1:では、みなさんに質問です。
234:え
1:では、みなさんに質問です。
3人:はい。
1:じじいばばあになってシモの世話してもらいたいですか?
3人:、、、いいえ。
2:そりゃ誰だってそうだろ。
1:病院で管まみれになって最後を迎えたいですか?
3人:、、、いいえ。
1:生きてるかどうかわかんない状態でも
 むりやり機械に繋がれて生きてたいですか?
2:、、いいえ。
4:いいえだな。
3:でも、家族が望めば、そうするしかないよ
1:まわりがどう思うかはこの際どうだっていい。
 もし、自分がそうなった時に、
 「1秒でも長く生きていたい」なんて、
 考えると思うか?
4:思わんな。
2:うん。
3:でも日本では安楽死は認められていないから。
1:そうなんだよ。
 本人のためを思って安楽死をさせた医者が自殺幇助という罪に問われる。
 これはおかしい!
2:けど、そんなもん認めたらドクターキリコだらけになるだろ
4:だれ?
3:ブラックジャック
1:オランダ、ベルギー、ルクセンブルク、スイス、カナダ。海外では安楽死を認めている。
4:詳しいな?
2:保険屋だから?
1:調べたんだ。
3:なんのために
1:、、、今日のためだ。
4:は?
1:今日集まったのは他でもない。
2:え?遅ればせながらの達夫の送別会だろ?
1:表向きはそうだ。
 達夫はおれたちに素晴らしい機会を与えてくれた。
3:なにそれ
4:飲み会?
1:死に方について、考える機会だな。
2:あーーー。
3:なるほどーー
4:なになに?
2:さっきの。変なはなしは。そういうことか
4;ああ!
1:紀元前から、つい最近まで。
 たぶん、死はそんなに特別じゃなかった。
 もっと身近にあって、もっと自由があったんだ。
 俺は、それを、自由を、取り戻したい。

 間

3:がんばれ。
1:うん!
2:がんばれよ!
1:お、おう!
4:がんばって死ね!
1:え?
4:****(別の話題をふる)
1:まだ終わってない!これからだ!あきらかにこれからって感じ俺出したろう!
3人:なんだよおおお(口々に文句を言う)
2:日本酒飲む人ー
34:うぃー(注ぎ合う)
1:なに、おまえら俺の演説聞いてた?
2:きいてた聞いてた
4:半分な。
1:全部きけ。もう一度言う
3人:いい いい いい いい
3:死ぬときは自分で決めたいってことね
1:そういうことだ。よくわかってるじゃないか。さすが!ナース!
2:じゃあ、いけばいいじゃん
4:日本人でもいいの?
1:金と、条件がそろえば。
42:ほう。
1:(スマホ)日本人が安楽死を望む場合に受け入れてくれる団体は、スイスにある。
 会員費が年間45ユーロ、つまり6000円。診断書などの調査料が35万。スイス人医師の診断料が12万。自殺幇助自体は、35万。さらに警察などの捜査費用が6万。火葬や遺体搬送費に合計30万。そして、片道切符と宿泊費で数十万円。ざっと200万あれば、日本人でも自分で死ねる。
4:けっこうかかるな
3:なるほど
2:なんか勉強になった。覚えとこう。
4:そしてスナックのねえちゃんに話してみよう。
3:ウケないわ
4:まちがいないわ

 1、立ち上がる

1:今日、集まってもらったのは他でもない。
4:ああデジャブ
2:忘れてた。
3:なんだっけ?この会
1:おれと契約してくれないか?
3人:契約?

<ベッドの横>

 風の音、びゅううううう

 1と3、風の音に外を見る。
 目があう。

 照明変わる、一瞬フラッシュバックする。
 1、3以外、ストップモーションになる。
 心音が聞こえる。

 心音、ピッ、ピッ、ピッ、ピッ、ピッ、

 達夫のベッドの横で、
 1と3、顔を見合わせる。
 もうすぐ、死ぬ。
 長い時間、今日、死ぬのを待っている。

1:、、、、、、、、、、
3:、、、、、、、、、

 心音、ピッ、ピッ、ピッ、ピッ、ピッ、ピッ、ピ。

<相談>

2:契約?
1:完璧なんだ。
 俺たち高校の同期がこうして
 別々の職業につけたということはさ。
 いわば、奇跡なんだ。
2:奇跡? 
1:ぷー子は医療系
 あきらは警察で、
 よっしーは、えっと、金貸し?
4:金融だ金融。
3:サラ金な。
2:ヤクザだな
4:人聞き悪いなー
1:そして俺は保険屋。
2:うん。
4:それがどうした
1:おれたちはお互いに契約することにより一儲けすることができる。

 間

4:え、儲かるの?
1:まちがいない。
4:乗った!
2:乗るの早いな。
1:金、欲しいだろ?
24:ほしい。
3:私、いい。余ってるから
124:げえ。
4:でたよ。ナース
2:さらっといいやがったな
3:お金使う暇ないんだよね。
2:じゃもうくれよ
3:あんた公務員でしょ?
4:あ、そうだそうだ。
2:俺がどんだけ安月給か教えてやろうか?
4:でも倒産はないだろ
2:おまえね。減給も定年もあるんだよ
1:ぷー子が金になびかないのは想定内だ。
 でも安心しろ。これはお前にも関心のある話だ。
3:、、、
1:これから話すことは、他言無用で頼む。
 仲間であるおまえらだからこそ話すんだ。
 だれにも言わないと誓えるか?
4:誓う誓う
1:軽いな。
2:誓うから話せ
1:ぷー子も
3:話次第。
1:これは人助けなんだ。
 この世界へのささやかな抵抗とも言える。
4:世界だってよ
3:だいじょぶかな
2:前置きが長いよお前は。
1:ひとことで言えばこうだ。
 おれたちの手で、「死」に価値を与える。

 間

234:ん?
2:スピリチャルな、あれかな?
1:え?
4:宗教かな?
1:え?
2:あー、えーっとー
3:あこんな時間
4:ほんとだほんとだ。
2:じゃお会計
3:飲んだ飲んだ
1:待て!聞け!待て!

<パフェ>

5:パフェの人は?
2:あ。
4:、、はい
3:、、、はい。
5:他にご注文ないですか?

 1、とっくりを直接飲み干し

1:お酒!2合!熱燗でえ!
5:日本酒!!2合!!熱燗でええ!!
1:、、
5:ありがとう!ございます!

 5、退場

1:俺は、宗教にハマってるわけではない。
 そしてまず、パフェを、食え
34:、、うん
2:具体的に言え。
1:簡単な話なんだ。
 どんな仕事にも、個人の裁量ってもんがあるだろ。
4:裁量?
1:自分の判断だけで、処置できる範囲だ。
 医療には医療の。
 警察には警察の。
 金融には金融の。
 そして、保険屋には保険屋の。
 裁量権というものがある。
 それを結集させることで、
 ある商売が成立するんだよ。
2:ちょっとまてちょっとまて
4:なんか雲行きあやしくねえか?
3:なにやろうとしてんの?
1:俺たちは、秘密結社をつくる。
234:、、、、
1:そして、
 死に価値を与えるんだ。

<オーナー>

 店長、なんか怪しんでいる。

バイト:店長
店長:なに?
バイト:珍しいですね?
店長:なにが?
バイト:オーナーが料理運ぶなんて
店長:めずらしいよねぇ。
バイト:てか、めったに顔出さないのに。
店長:そうなのよ。
バイト:なんかあるんですか?
店長:どういう風のふきまわしだか

5:あっつ!
バイト:わあ、大丈夫ですか?
店長:、、、
5:熱燗て、チンでいんだよね?
バイト:いんですけど、徳利新しいのに入れ替えないと。
5:あー、なるほど。はいはい
バイト:やりますよ?
5:いいのいいの。任せて。あそこの客は。俺に。
バイト:はぁ。
店長:あそこのお客さんと関係あるのか。
バイト:みたいですね

5:はい、熱燗、熱燗二合、お待たせいたしましたぁ!

店長:あやしい
バイト:たしかに。

<秘密結社>

3:秘密結社?
4:価値を与える?
2:死に。
1:うん。
234:なにいってんの?
1:おれたち、もういい年だ。
 結婚して子供生まれたり、
 車買って家買って墓買って
 仕事も落ち着いた。
 夢なんてとっくの昔に消えた。
 ただ同じ毎日が、のんべんだらりとすぎてゆく。
 あとは定年を迎えて、退職金でローン完済して、
 年老いて、そして死ぬんだ。
 そうだろう?
2:まぁなぁ。
1:本当にいいのかそれで?
3:って言われてもなぁー。
4:うん
1:ときめこうぜ。
3:ときめく?
1:胸に手を当てて考えてみろ。
 子供のころ、どんな大人なりたかった?
 鏡に向かって自分をみろ。
 こんな大人になりたかったか?
2:いやー
3:もっと
4:こう
1:だろ?!
2:まー
3:もっと
4:なんか
1:な!
234:まー。
1:でもそこはあきらめろ!
2:あきらめんのかよ!
4:え、どういう話?
3:夢を追うんじゃないの
1:追わない。
4:追わねえのか
1:なぜなら、もう、中年だから。
 何ができて、何ができないかをわかる頃。
 それが、中年だから!
2:なんなんだよ一体よー
1:中年にほこりを持て!
4:ええ?
1:中年だから、できることが、ある!
3:なにそれ
1:できることとできないことを知る。その分別を持った瞬間、我々は中年に昇華したとも言える。そして同時にわれわれはこのことも悟る。「このまま行けば、このまま死ぬ」。
2:このまま行けば
3:このまま死ぬ
4:たしかに。
2:この先はなぁ。
3:うん。
1:でもそれだけじゃない。このままだと、いずれ病院の検査にひっかかって内臓の問題を指摘され、入院を強制され、病院で死ぬんだ。
234:、、、
1:必ずそうなる。畳の上で大家族に囲まれて死ねるチャンスなんかない。そんな時代は100年もの昔に終わった。それがこの、日本の現実なんだよ!
3:、、
1:夢を捨てた俺たちは、一心不乱に働いてきた。その結果が管まみれの病院生活だ。あまりにも価値がない。そう思わないか?最後の最後、俺たちは、自由を奪われ、自分で死ぬことも叶わずに、ベッドに拘束されるんだ。むかつくだろう。くやしくないか?
3:、、
2:たしかに。
1:夢はもうとっくの昔に捨てた!光り輝く未来が
なくても生きていける!でも死ぬときくらいは!自分の思うように死にたいじゃないか!
4:たしかに!
1:俺は、世界にまたをかける秘密結社の結成をここに宣言し、君たちと契約を取り交わしたい!
3:契約、、

 と、カバンから、パンフレットを取り出す。

234:、、、、、
1:こちら見ていただきたいんです。
234:、、、、、、?
1:はい。
2:えっと
3:まさか
4:保険か?
1:ある意味、そうだ。
234:(ぶんなげる)
2:なんだよお前!
3:保険かよ!!
4:てめえの商売じゃねえか!
1:ちが!違う!
2:最初から言え!
3:ちょっとキュンとしたわ!
4:返せ俺のハート!
1:違う!落ち着け!違う!!!
2:なにが違うんだよ
1:よくみろ!保険のパンフじゃない!これは、俺が自分で、俺一人で作った資料だ!その証拠に!俺は、会社をやめた!
234:え?
1:やめたんだ。1ヶ月前に。
2:おまえ、課長になったって去年。
1:でも、やめたんだ。だから、本気なんだ。俺は。
234:、、、、(パンフを見る)
1:俺の作る秘密結社は、法律の網目をかいくぐり、契約により、自らの死に価値を与える、ベンチャー企業だ。

 SEビュウウウウウウウウウウ

<からくり>

1:問題はふたつ。
 日本で安楽死は認められていない。
 そして自殺には保険金が支払われない。
 我々の秘密結社はこの問題をクリアする。
 そしてそれがそのまま、
 この契約がもたらす2つの価値となる。
 1つは自分のタイミングで死ねること。
 もうひとつは、死により、金を残せること。
 しかも、この日本で。
4:日本で?
1:簡単な話だ。年会費を払い、契約内容に従う。日本中の会員の裁量により、二つの価値を実現するんだ。
4:会員?
1:そうだ。日本全国、あらゆる業種から集める。会員を集めることにより、この秘密結社の力は増大し、あらゆる死に対応することができるようになり、結果、会員は法の目をくぐることが可能となる。
2:え?
1:俺が死んだ場合に払われる保険金は5億だ。
 問題は、自分のタイミングで死ねるかどうかだ。
4:自殺ってことか?
1:まぁ、自殺でも構わない。
2:でも自殺って、保険金は支払われないだろ?
1:例外はある。
4:例外?
1:保険会社の判断によっては自殺でも、支払いを受けられる可能性があるんだ。
4:まじで?
1:その上で、保険金が出る可能性があるのは、大きく分けて2つ。一つは「保険金目的でない自殺」。
4:どんなの?
1:過労を苦にしたり、人間関係で悩んでいたり。
4:へー
1:そして、もう一つは「自殺した本人に判断力がない自殺」つまり、精神疾患の人間は常人の判断力がないとされるってことだ。
2:うつ病や過労やストレスと判断されれば、ってことか?
1:簡単にいうとそういうことだ。
4:そんなの、どやって証明するんだよ。
1:俺たちの秘密結社が、担うのはまさにその証明の部分だ。
234:え?
1:秘密結社には多種多様の仕事を持った人間、しかもある程度の裁量権を持った人間が参加している。そして、仲間の死に立ち会った時、その裁量権を最大限に発揮するんだ。
3:どういう意味?
1:例えば、警察官であるアキラは現場検証の結果を
 例えば、看護師であるぷー子は診断の結果を
 各々の裁量で、処理してくれればいい。
2:処理?
1:保険屋が審議に使うのは、
 診断書とか現場検証の証明書類だ。
 たとえば、会員は、その死が仲間の死である場合、あいまいな報告をするんだ。
2:おいおいおいおい
1:決定的な書き方を避けてくれればいいんだ。
 俺が自殺したとして。
 あきらは、俺の状況証拠を、事故ととれるようにぼかす。
 俺が病室で死んだとして。
 ぷー子は、俺の行動一切を、記載する義務はない。
4:俺は?
1:よっしーは、金にする方法を知っているだろう。
3:え?
1:(スマホ)肌が2平方cmあたり約800円、血液ペットボトル一本で2万、眼球両目で12万、頭がい骨と歯で9万、肩が4万、手と手首で3万円、脾臓と胃は4万、胆嚢10万円、小腸20万、心臓は952万、肝臓1256万円、腎臓2096万だ。
4:調べたなぁー。
2:臓器売買?
1:そのルートを持っていなくても、持ってるコネクションを知っているだろう。
4:めっちゃ答えにくいわ。
1:これで、金が本人の思うところに入り、
 しかも、本人が死にたいタイミングで死ねる。
 つまり、俺たちの死に、価値がつくというわけだ。
4:なるほどねぇええ!
3:でもわたしはいち看護師だから。
1:わかってる。個人個人の裁量は小さい。
 でも日本中に会員を持ては、その裁量の幅は計り知れない。
2:まーなぁ。
1:同意するやつはいくらでもいる。
 死は万人に、平等に訪れるものだからだ。
 少しづつ、秘密裏に、しかし日本中に会員を増やす。
 いろいろな職種の人間が集まるだろう。
 そうすれば、あらゆる場面での裁量のはばが増える。
4:そんなうまくいくかなあ?
1:すでにネット上で志を同じくする人間を募った。
 反響があったうえでこの話をしているんだ。
 会員数は着実に伸びる。

<罪?>

2:これ、やばいだろ。罪に問われる。
1:嘘をかけってことじゃない。
 お前は書き方を工夫するだけだ。
 その文面を保険屋がどう読み取るかは
 おまえの管轄じゃない。
2:いやいや、あやうい。無理だって。
1:法に触れることをするわけじゃない。
 各々の仕事の中に許されている裁量というものを集結させるだけなんだ。
 死ぬタイミングくらい自分で決めたいだろ?
 国民みんなそれを望んでいるんだ。なのにできない。
 そこをどうにかするんだ。
 俺たちの秘密結社が。
 一人ではできないことなんだ。
 それだけだ。

<おりる>

2:俺は、おります。
1:なんでだよ。
2:あたりまえだろ?帰るわ。
4:帰るの?
2:これ以上いたら、警官が犯罪の片棒をかつぐ羽目になりそうだ。

 2、帰りかけ

1:ドラ息子、ひき逃げしたのに示談ですんでよかったな。
4:ん?
3:なんの話?
2:、、、、、
1:保険屋を甘くみない方がいい
 俺たちの商売道具は情報だ。
2:おまえ、どういうつもりでそんなこと言ってんの
1:そんなもんだって言ってるんだ。
 おまえらが秘密にしてあることも
 書類にはちゃんと書いてある。
 それを会社の人間ならだれでも見れる。
 2:、、脅してんのか
1:別におどしてるわけじゃない。
2:脅してんだろう。
1:違う。
2:いや、違わないね
3:ちょっと
4:待て待て待て待て!
 ちょっと、たんま。
 少し、落ち着け。
2:落ち着けるか?
 うちの息子ネタに脅してんだぞ?
1:情報なんてそんなもんだって言ってるだけだ。
 年をとって長く真面目に仕事をしていれば、
 それなりの力を持つ。
 それが裁量ってもんだ。
 ペーペーの新米には持ち得ない力を
 お前らもってるだろって話だ。
 それを発揮してくれ。
 そういう話だ。
4:ま、とにかく、ちょっと、落ち着け。
 そんな怒るなって。な?
 気にしてないし。誰も。な?
3:うん。
4:大人になりゃ、グレーな部分あるって。わかるよ。
2:わからんよお前には。
4:いやいや。わかるよ。
2:子供いねえだろ?!
4:ま、まあな。まあな。でもまぁ、そんだけ可愛いんだろ?
2:可愛いだけじゃねえよ。やっと最近おちついたんだ。最近。
4:え?
2:下のが、不登校ぎみで。悪いのに影響されて。
 無免許でよ。バカが。
4:あー、そういうやんちゃな年な。
2:わかったふうなこというな!
3:ちょっと。やめよーよ。
2:すまん、、、便所。
1:帰るなよ!?
2:うるせえ

<4>

4:おいいい。
1:本気なんだよ。
4:それはわかったけども。
1:おまえは協力してくれるか?金をさ。洗えるだろ?
4:やばいじゃん
1:マネーロンダリングだって立派な仕事だろ。
3:あらう?
4:足つかないようにすんだって。
1:できるだろう。
4:それはさ、会社組織としてだよ?
1:でもやってることはさ。
4:だから、ヤクザみたいに言うなよ。
1:一緒だろ
4:おまえ、つっかかるねぇ?
1:俺たちの死が。身内の誰かの役に立つんだ。
4:いや俺の場合、ガンの親父しか肉親いないから
1:わかんないだろ。おまえは、まだ。
4:え?
1:これから子供つくるかもだろ。男なんだから。
4:おい
1:あ。
3:45で離婚した女よりはね。
1:あ、いや。ごめん。ごめんつうか。可能性の話。
3:ま、事実だから。
1:いや、他意はない。こいつの話。
4:ちょっとお前、へんだよ?なんかあったか?
1:いや、だから結婚してさ。
4:100歩ゆずって結婚しても間違いなく子供はできないの。
3:え
4:俺は精子が、極端に足り無いから。
1:うそ
3:ほんとに?
4:ほんと。なんか変だなって調べたらそうだったんだよ。
 な。もういいべ?

<保険屋>

1:わかった。
4:なにがよ
1:そういうことも、俺たちの組織で解決する!そう!ぷーこのこともだ!
 力を結集すれば、なんとかなる!
4:何いってんだよおまえ
1:頼む。頼むよ。このとおり。
4:いや、ちょっと待て。
 なんかおかしいって。
1:協力しろよ!
4:いや、しないわ。
1:協力してくれ。(4を掴む)
4:しねえって(笑)
1:しろ!
4:しねえわ!
3:ちょっと!

 2戻ってきて、1を引き離す。

2:落ち着け。
1:落ち着いてる!はなせ!
3:のみすぎじゃない?
4:大丈夫かおまえ?なんでそんなせっぱつまってんだよ。
1:、、、、
2:(はなす)ちょっと頭冷やせ。
1:、、、すまん。

 1、退場する。

<やばそう>

2:、、大丈夫かまこと
3:、、、、、
4:なんか、、
3:、、、うん
4:やばそう。
23:、、、、、、うん。
4:なんかあったかな。
2:俺、やっぱちょっと帰るわ。
4:わかった。
2:すまん。
4:いっとく。
2:いや、すまん。さっき。
4:ま、いろいろあるからな。
2:もう、あれなのかもな。無理なのかも。
3:え
2:いつまでも、高校のときの仲間とか
 言ってらんねぇのかもな。俺たち。

<ビールよっつ>

 5、ビール4つ持ってくる

5:はい、ビールおまちーー
2:あ。
4:え。だれ?
3:たのんでないかも
4:あのー、
5:はいビール四丁!おまちい!!
4:あの、えっと頼んでないです。
5:、、、、
4:ビール、頼んでないです。
5:ビール、四丁、、頼まない?
4:、、、、
2:たのみます。
3:お願いします
4:いただきまーーーす。
三人(なんか言いながらまわす)

 5、戻らない。

5:、、、、、他に、ご注文は。うけたまわります。いかなるものでも(泣く)
234:、、、はぁ
5:ぐふっ

 5、泣きながら、退場しかけ、
 1、とぶつかりそうになり、

15:お。(同じ方に避ける)
15:あ。(同じ方にまた避ける)
15:すいません(同じ方にまた避ける)
1:すいません(止まる)
5:すいません!(回転して抜ける)(泣く)

 5、退場

1:、、、、泣かした?
4:泣かしてねぇよ
3:やっぱ泣いてた?
1:なんか傷つけるようなこと言ったのか?
4:言ってねえよ。
2:知らねえよ。
1:おじさんが泣いて出てったんだぞ
2:結構な年なのにな。
3:だからかも。
124:え?
3:あたしたち何言った?
2:ビールは頼んでませんって
4:それだけ
3:それだ。
1:それだわ
24:は?
1:たぶん、自分の不甲斐なさに泣いたんだよ。
3:こういうときは合わせなきゃ
4:え?ボケてんの?
2:そんな年じゃねえだろう
1:若年性
3:アルツハイマー
2:まじか
4:大丈夫かこの店。

<バックヤード>

5:ほっといてくれよ!
店長:でもー
5:大丈夫だ!大丈夫!
店長:泣いてるでしょう?
5:泣いてない!
店長:えーー
5:次また注文入ったら言って!
 おれ、大丈夫だから!
店長:わかった。
5:ちょっと、走ってくるわ(退場)
バイト:走っちゃうんですか?
店長:私に聞かないで。
バイト:あそこのお客さんに泣かされたんですか?
店長:でも本人言ってるから。
バイト:なんて?
店長:泣いてないって。
バイト:いや、うそですよね?
店長:実は最近、情緒不安定なんだよね。オーナー
バイト:なんかあったんですかね。
店長:さぁねえ。まだ出来て半年経ってないから。
バイト:あー。
店長:うん
バイト:男の更年期障害もあるっていいますけどね。
店長:え。なにそれ。
バイト:うちのお父さん、なったって言ってた。
店長:うそ。やだ。治るの?
バイト:どうなんだろう。
店長:としってこと?
バイト:としってことですかね。

<死ぬ理由>

 パンフを手にとり。

2:で、いつから?
1:、、
2:いつからこんなこと考えてたんだよ。
1:もともと、考えてはいた。
3:もともと?
1:うん。

 間

1:必要を、、強く感じたのは、、、半年前だ。
2:半年前
3:、、たっつんか。
4:え?どゆこと?
1:病院で、あいつの姿を観て、思ったんだ。
 やせこけて疲れ切った、しおしおの病人と目があった。
 一瞬わかんなかった。これは違うって思った。
2:会ってたのか?
1:俺、見舞いに行ってたんだ。
 おれそのころ実家戻っててたまたま知ったんだよ。
 ショックだった。
 ほんとにグワンときた。
 頭バットでなぐられたくらいってやつ。
 管まみれで、抗がん剤で髪抜けて、
 機械に囲まれて、げっそりやせてた
 正直、こんなの達夫じゃねえなって思った。
24:、、、
1:なんどか見舞い行くうちにたまに調子のいいときがあって
 そんなとき、あいつ、弱々しく笑いながらいうんだよ。
24:、、
 「だれか、終わらせてくんないかな」って。
3:、、、
1:おれ、終わらせる方法はないのかって聞いたんだ。ぷー子に。
2:、、、、
3:私は「ない」って、言った。

 間

1:ほんと、いいやつだった。俺の夢だった。
 俺ができないこと、全部代わりにやってくれるって思ってた。
 幼稚園から一緒で。ずっと同じ部活だった。
 演劇部に鞍替えしたときはあいつも入ってきた。
 あいつエースだったのに。
 なんでだって聞いても、にやにや笑ってた。
 結局なんでもあいつの方がうまくできた。
 東京で、がんばってる話聞くたびに
 おれもがんばんなきゃなって思った。
4:なんか、希望だったよな。
2:確かに。俺なんか早々公務員なっちゃってさ。
1:自由人だった。俺にはとても真似できないことして
 自分の道を自分で切り開いていた。
 だから、あいつは特別な道で、俺とは違う死に方をするって
 信じたかったんだ。

<あの日>

3:1ヶ月くらいお見舞い来てたでしょ
1:ああ、そうだっけ?
3:なんで実家にいたの?
1:たまたま
3:なんで?
1:たまってる有給取れって。なって。
2:会社に言われたのか
1:うん。
4:なんで?
1:なんでって。たまってたからだろ
2:そっか
1:え?他に理由ある?
4:疲れてたとか
1:あー。まぁ、それなりには。課長だったし。
2:そかそか。

 234、目配せ。

1:あの日。また見舞いに来て、
 達夫のベッドの横にいるプーコと目があった。
 それで、気づいた。
 今日、死ぬんだなって。
 長い時間、達夫が死ぬのを待っていた。
 つらかった。
 つらかったんだよ。
 ほんとに。
 あんなにつらいことは
 たぶん、もうない
 ほんとうに
 つらかったんだ。
 無力だった。
 ただ、死ぬのを待つしかなかった。
 最後の望みも聞いてやれなかった。
 俺、保険屋で。課長になって。
 子供もできて、家も買って。
 でも。
 なんだったんだろうって思った。
 想像してたのと違うんだ。
 死は。
 最後、こんななのか。
 こんなに、不自由なのか。
 憎たらしかった。
 俺たちの希望だった達夫ですら、
 このベッドに縛り付けられてる。
 俺なんか。
 いや、アキラだって。よっしーだって。ぷーこだって。
 間違いなく行き着く先はあの、
 おかしな匂いのする病院のベッドなんだ。
 無性に腹が立って。
 でも、当たりどころがなくて。
 怖くなった。
 俺は、どうしていいかわからなくなった。
 それで。ねれなくなって。
 寝酒を飲み始めて。
 会社に行けなくなった。
 それから、
 嫁と娘が、実家に行って、
 俺も、ローン払えなくて
 出ることになって、
 それで、なんか、
 ぷつんと。まぁ。糸が切れて。
 でも、やっと最近。
 ニュービジネスのことを考えて。
 だいぶ俺、元気になったと思う。
 まじで。
 だから、一緒にやろうぜ。秘密結社。

 長い間

1:あれ。
 あれ?なんかひいてる?
 あ、さっきのこと、起こってる?
 ごめん。
 あれ?みんな、どしたの?
 あれ?、、おれ。なんかやばい?
3:ちょっと。
4:やばいかも。
2:ちょっとな。
3:大丈夫。
1:そう?
3:大丈夫。
1:、、、なあ。
 、、、なんで、こうなったんだろう。俺。

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たくさん台本を書いてきましたが、そろそろ色々と人生のあれこれに、それこれされていくのを感じています。サポートいただけると作家としての延命措置となる可能性もございます。 ご奇特な方がいらっしゃいましたら、よろしくお願いいたします。