四人芝居『FAKE!~わかってんだけどね~』

四人芝居『FAKE!~わかってんだけどね~』 作すがの公

<あらすじ>「皆さん、この公園で生活してらっしゃるんですか?」ボランティアスピリット満載の主人公・マコトは3人のホームレスに元気よく話しかけた。社会を捨て、楽しい新生活を始めるマコト。初めは驚くジャニス、リーマン、チョーさんも次第に打ち解け始める。しかし4人にはそれぞれ、触れてほしくない過去があった。

<開演>

袖幕のない横に長い舞台、公演の一部分
舞台上にベンチ、4つのクズカゴが並んでいる
それぞれのクズカゴには黒い紙、文字が書かれている

『Artist』
『Enpty』
『Faker』
『Killer』


■朝の公園
 
 SE:チュンチュンチュン
 ベンチで談笑しているヒッピー風の女とサラリーマン
 横でカメラをいじる男、3人の会話が続く(小さい声)
 
マ「、、、あの」

 3人ピタリと止まり、見る

マ「、、っはじめまして!」

 3人不審がりつつ、バラバラの会釈

マ「皆さん、この公園で生活してらっしゃるんですか?」

 ヒッピー女、リーマン色めき立つ
 カメラ男怪訝な表情

 人物紹介の曲かかり、暗転
 4人クズカゴの前に立ち、思い思いのポーズ
 マコトにサス

NA:《主人公、マコト。ボランティアスピリット満載の23歳。経済大国日本に疲れ、
ふらりと訪れてみたこの公園で、憧れの新生活スタートなるか。住所未定。よく、悩む。》
マ「、、、」(悩む) 

 ヒッピー女にサス

NA:《ヒッピーな女、公園ライフ2年、年齢20代後半から30代前半、子持ち。
毎日必ず銭湯へ行く。財布がリッチなときは岩盤浴。
 心のテーマソングは『サマータイム』byジャニス・ジョップリン。よく、笑う。》
ヒ「、、、」(笑う)

 カメラ男にサス

NA:《男1。》

 リーマンにサス

NA:《2。》

 サス消え、暗転

NA:《以上。》
全:(悲鳴)

 カメラ男にサス

NA:《自称アーティスト。いつもカメラを持ち歩き、瞬間の芸術をフィルムに収める。
 公園ライフ1年。風貌に似合わずアウトドアなテント派。
 25歳独身。夢多きさすらい人。よく、取り返しのつかないことをする》
カ「、、、」(うなずく)

 リーマンにサス

NA:《自称サラリーマン。毎日必ず同じ時間に公園を出る。
 会社名不明、住所不明、公園歴不明。めぞん一刻の"四ッ谷さん"的存在。
 年齢不明。よく、空を見る。》
リ「、、、」(空を見る)

 シルエットだけが写る中、4人クズカゴを持ち移動
 明転。クズカゴの並び順『F/A/K/E』になる。暗転


■夕暮れの公園

 照明:夕暮れ。SEカラスの声
 ベンチに座るヒッピー女と地べたに正座のマコト

マ「えー?お子さんいらっしゃるんですか?」
ヒ「うん」
マ「男の子?女の子?」
ヒ「女の子!」
マ「いくつぐらいですか?」
ヒ「まだね、ちっちゃいの。もうね、こんなん。(手で、あり得ないサイズ)」
マ「、、っちっちゃいですねー。かわいいでしょう?」
ヒ「かわいいよぉー。もうねぇ、目に入れても痛くない。つーかいっぺん入れてみたい!
 そして痛くないってことを証明したい!!」
マ「入りそうですもんねぇ」
ヒ「でしょ!?」
マ「あのっ、どこに住んでらっしゃるんですか?」
ヒ「あ、うち?うちはほら、子供いるから子供。だからキャンピングカーつうの?
 アレに住んでるけど。だって危ないしょ、段ボールとか。風邪ひきたくないし。」
マ「不自由とかないですか?」
ヒ「不自由?」
マ「ほら、お子さんとかいらっしゃったら何かと大変でしょう?」
ヒ「あ~、あるっちゃあるけど、、ないっちゃないね!」
マ「ここ、何人くらいいらっしゃるんですか?」
ヒ「浮浪者!?」
マ「あーはい。」
ヒ「大体20~30人くらいだと思うよ。ちゃんと数えたことないから分かんないけどね。
 でもまたこれから増えると思うなー。」
マ「増えるんですか?」
ヒ「私思うんだけど!行方不明者の大半は公園にいるね!!(自信満々)」
マ「あ、あのー、立ち入ったことお聞きしてもよろしいでしょうか?」
ヒ「いいよいいよ」
マ「どうして、、、」
ヒ「どうして公園に住んでるかって?」
マ「あっ、答えたくなかったら!別に、、」
ヒ「それは言いたくない!!(イイ声)」
マ「あ、そんなに、、」
ヒ「ねぇねぇねぇねぇ!」
マ「あ、はい」
ヒ「いつ放送されんのコレ?」
マ「え?」
ヒ「カメラどこ!?隠れてんでしょ?あたしが思うにあそことあそこ!!(客席を指す)」
マ「あの?何のことですか?」
ヒ:『増え続ける路上生活者…今路上がアツイ!!』
マ「へ?」
ヒ「テレビでしょ?」

 リーマン、口笛を吹きながら登場。明らかにカメラを気にしている
 ヒッピー女とひとしきり話した後、「カットカット」とかしながら退場

マ「違います。」
ヒ「違うの!?なに?テレビじゃなかったらなに?あんたなんでそやってわーって聞いて」

 カメラ男、新聞を持って走ってくる

ヒ「わかった!新聞でしょ!?新聞記者!社会欄三段ぶち抜きで!ほい!」
マ「○○が△△で~■■?(新聞ネタ)」
チ「、、、そうだったのか(とかリアクション、新聞落とす)」

 カメラ男退場

ヒ「えーちょっとなに?新聞じゃなかったら何?なんでうちらのことそんな聞くわけ?
 わかった!作家さんでしょ!?」
マ「いやいやそういうのでは、、」
ヒ「え!?違うの!?やだやだ!モデル?スカウトスカウトモデル?!山田優みたいに!?
よしよしよしよし何でもやるよ!(脱ごうとする)」
マ「いやいやいや、違うんです違うんです!!」
ヒ「やだ!?警察?撤去撤去!!」
マ「違う違う違う!違いますよー!」
ヒ「なに?」
マ「、、あの私、ここでお世話になろうかと思って」
ヒ「ここって、、」
マ「はい」
ヒ「公園?」
マ「はい」

 SE:カァカァカァ

ヒ「まじで?」
マ「、、はい」
ヒ「公園デビュー?」
マ「あ、そういう言い方するんですか」
ヒ「公園デビュー、、」
マ「はい、、だめでしょうか?」
ヒ「わかった」
マ「ほんとですか!?」
ヒ「あーうんうん、わかったわかった」
マ「ありがとうございます!」
ヒ「、、からかってんでしょ?」
マ「へ?」
ヒ「馬鹿にしてんでしょ?」
マ「へ?いや、あの」
ヒ「なんもなんもなんも!いんだいんだいんだ!うちらほら慣れてっから。
 あたしほら、ちょっと子供見なきゃいけないから。じゃねー」

 ヒッピー女退場

マ「ちょっと、、待ってください」

 1人残るマコト

マ:(ため息)

 ベンチに座る
 ポケットから手紙を取り出す。最初の1・2枚を目で読み、
 3枚目を口に出してみる

マ「『ひとりでいると自分が何のために生まれて来たのか。とか、
 なんだかずいぶんと哲学的な事を考えるようになります。ニュースを見ながら』、、、、。」

 いつの間にか聞こえる優しい曲
 マコト、手紙をしまい、横になる

 照明、夕方から夜の公園へゆっくりと変わる
 小さく丸くなり寝ているマコト、どんどん暗くなる公園

 ヒッピー女登場、ベンチで寝ているマコトを見つける。いったん退場

 街灯、ベンチを照らし始める

 ヒッピー女が毛布を持って登場
 毛布をマコトに掛けて退場。曲、少しづつ上がり暗転


■マコトの夢:::::::::::::::::::::::::::::::::

 サス、クズカゴを持ったリーマン
 クズカゴに文字『マコトの夢』
◎配役◎ 先生=マコト ひがし=カメラ男 にっき=リーマン レイコ=ヒッピー女

NA: 《マコトの夢》

ひ「おいおい、今度2組に赴任してきた先公みたかよ、にっき」
に「見た見た!可愛いよなーあいつな」
ひ「おいおい、今度2組に赴任してきた先公みたかよ、にっき」
に「だから見た見た!可愛いよな、なっ、ひがし!」

 SE:ザシュ!ザシュ!
 レイコ登場。万能ナイフで2人を切りつける

レ「どいつもこいつも鼻の下伸ばしやがって!」
に「かっちゃんなら停学食らってんぜ」
レ:(切りつける)「誰もそんなこと聞いてねぇよ」
に「こりゃ相当おかんむりだぜ」
ひ「おー、よせよせにっき。『ひさしを貸して母屋を取られる』だぜ」
に「なんだよそれ」
ひ「ことわざだよ」
レ:(切りつける)「殺すよ?!」
にひ: 「レイコにはかなわないぜ」
レ「さぁ!練習だよ!」

 3人、万能ナイフを出しチャカチャカやる練習
 マコト登場

先生: 「止めなさいあなたたち!」
レ「ああ?!あんた達!やっちまいな!」
先生: 「そんなモノ振り回して、誰かがケガをしたらどうするつもりなの!?
 東山紀之君、錦織一清君?」

 ナイフを落とす、にっき・ひがし

レ「どうしたんだい?」
に「なんで覚えてんだよ、、」
ひ「俺たち、3組なのに、、」
に「何で他の組の生徒の名前まで覚えてんだよお!」
ひ「そんなん、そんなん初めてだぜ」
先生: 「植草克秀君は?」
にひ: 「ちっくしょおおお!(先生の元で泣く)」
レ「てめえら裏切りやがって」
先生「葉山レイコさん、あなたのお家の事情は聞いたわ。
 でもね、負けちゃだめ!人生ってね素晴らしいものなのよ?」
レ「こなくそおおお!!」

 レイコ、ナイフで刃向かう

先生: 「危ない!」

 マコトに刺さる。曲。照明

レ「あたい、あたい、、」
先生: 「大丈夫、大丈夫。」
レ「あたい、そんなつもりじゃ、、」
先生: 「大丈夫、大丈夫。人って強いんだから、
 そんな簡単に死なないんだから、そんな簡単に死ねないんだから。」
レ「ごめんなさい!ごめんなさい先生!」
先生: 「大丈夫。先生、死なないんだから。先生、あなた達のために生きてみせるんだから」

 倒れる先生

3人: 「せんせい!!」
先生: 「だから泣かないで。強く生きて。(地べたを這い回りながら)
 人は強いんだから。先生、それを証明してみせるから。
 絶対に、、絶対、、死なないんだから、、、。
 あなた達に会えて、、、良かっ、、、た(ガクン)」
3人: (!!)
先生: 「、、、。」
3人: 「せんせええええええええ!!!」

にひ: 「うええ、うえええん」
レ「泣くなよ!」
に「俺、せんせいに会えて良かった」
ひ「せんせえ、俺達生きてくよ!」
レ「決まりだね」
にひ: 「うん」
レ「誰が最初に凶器の隠し場所見つけるか、」
に「競争だな!」
ひ「よおい、どーん!」
に「おい、ちょっと待てフライングだぜぇ」
3人: 「あはははは、あはははははは」(スローモーション)
レ「、、先生。グッバイ」

 3人、笑いながらスローモーションで退場

先生: 「いてて、、救急車、、誰か、、」

 じょじょに曲上がり、暗転

:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::

 照明、朝の公園 
 SE:チュンチュンチュン
 地べたに座っているヒッピー女とマコト
 茶の紙袋に入った酒瓶を持っている

マ「おいしー。何ですかこれ?」
ヒ「世界一やんちゃなカクテル」
マ「ベースは何ですか?」
ヒ「自由だよ!」
マ「おっかな~い!」
ヒ「飲み干しな!」
マ「はい!」

 飲む2人

マ「あのーお名前なんて言うんですか?」
ヒ「あ、好きに呼んで」
マ「えっと、あ、ジャニスさん。」
ヒ「オッケイ!それでいこう!」
マ「良かった、気に入って貰えて」
ヒ「ネーミングのセンスあるわ」
マ「ありがとうございます!」
ヒ「ね、あんたは?」
マ「マコトです」
ヒ「マコト、、まままま!飲んで飲んで!」

 マコト酒瓶置く

マ「それにしても良いところですよね、公園って。緑いっぱいだし、空も広いし。」

 リーマン登場、マコトの酒を飲む

マ「あの、ありがとうございました。毛布。」
ヒ「いーよ何回も」
マ「あたし嬉しくて、なんていうか受け入れられたなぁって」
ヒ「いや、なんもなんも」
マ「皆さんも受け入れてくれると良いんですけど」
ヒ「皆さん?」
マ「はい、他の皆さん。ここに住んでいらっしゃる、、」

 リーマンベンチの裏に隠れる
 マコト酒を飲もうとするが、軽い。

マ「?」(減ってる)
ヒ「どしたの」
マ「いや、なんでもない、と思います」
ヒ「ふーん。あ、食べる?肉まん」
マ「え、でも」
ヒ「ちゃんと買ってきたヤツだよ」
マ「あ、いや、そう言う意味じゃないんだけど」
ヒ「食べな食べな」
マ「いただきます」

 マコト酒瓶を置き、少し食べる
 リーマンまた酒を飲む

マ「おいしい。あたし昨日から何も食べてないから」
ヒ「何、家出?」
マ「あ、いえ、そういうわけじゃないんですけど」
ヒ「言いたくなかったらいーよ」
マ「、、、、。」

 マコ肉まんをベンチに置き、ヒッピー女に打ち明ける決心をする

マ「あの、やっぱり、不純でしょうか?!」
ヒ「ん?」
マ「突然こんな風に来て、ここでお世話になりたいなんて不純でしょうか?!」
ヒ「ふじゅん?あ」

 リーマン肉まんを食べようとする
 カメラ男登場、肉まんを奪いすごい勢いで食べる
 気付かず話し続けるマコト

マ「みなさんはつまり、ここで胸を張って暮らしてらっしゃいます。
 都会の喧噪を離れ、社会に反抗し、自由を手にして、
ヒ「そんな大層なもんじゃないよ。それより、、(肉まん)」
マ「聞いてください!そして判断してください!私の動機が不純かどうか、
 、、、ちょっと整理させてください」
ヒ「いや、早くした方がいいよ!あんた!」
マ「すいません、何から話せば良いのか、、」
ヒ「、、、とりあえず、腹ごしらえしたら」
マ「はい、すいません、、、、?」

 ガッツリ減ってる(2人はベンチに隠れている)

ヒ「どしたの」
マ「肉まん、、、」
ヒ「食べな!嫌かい?」
マ「あ、いえ!、、すいません」(肩を落とす) 
ヒ「どしたの?」
マ「なんだか自分が恥ずかしいです。お話しするまで、あたし、もっとなんていうか、その、、」

後ろで飲み食いしているリーマンとカメラ男

ヒ「なに?怒んないから言ってみな」
マ「はい、昨日バカにしてるって言ったじゃないですか」
ヒ「うん」
マ「で、気付いたんです、、もっと、自分よりも、、」
ヒ「不幸な人たちの集まりだと思ってた?
 『自分は手を差し伸べる側の人間だと思ってた』、、ちがう?」
マ「、、すいません」
ヒ「いーよ、謝らなくて」
マ「すいません!」
ヒ「うちら慣れてっから」(寝ころがる)
マ「でも!でもそう言う風に思うのってなんか!」

 リーマン、カメラ男発見(じゃれ合ってる)

マ「よくない、、て、、思、、い、ます」

 寝てるヒッピー女

マ「寝てる、、?
 、、、、、、、、、、、、も、もー。」

 曲、徐々に暗転


■ジャニスの夢:::::::::::::::::::::::::::::::::

 照明サス、クズカゴを持ったリーマン
 クズカゴに文字『ジャニスの夢』
◎配役◎土方=ヒッピー女 近藤=リーマン 沖田=マコト 竜馬=カメラ男

NA:《ジャニスの夢》

土方: 「新選組副長、土方歳三だ。
 御用改めである!手向かいいたすと容赦なく斬り捨てる!新選組だぁ!」

 ジャニス、舞台中央で刀を構えている。新選組羽織
 舞台中を駆け回り見えない敵を切りまくる 
 SE:カシンカシーン ズシャァ カシン ズバァァ
 ジャージ姿の近藤登場
 
近藤: 「とし!」
土方: 「近藤さん!総司は!?」
近藤: 「あのバカ先走りおって!ひとりで2階へ斬り込みやがった!」
土方: 「あの野郎!自分の腕に溺れおって!」
近藤: 「とにかく池田屋2階へ!」
土方: 「近藤さん、先に行ってくれ!
近藤: 「え?あ、うん」

 近藤退場

土方: 「我この策にありて、退く者は斬り捨てる!、、かっこい~」
近藤: 「とし!」
土方: 「あ」
近藤: 「みんなの部隊だ」
土方: 「すまん」
近藤: 「好きな事するな」
土方: 「すまん!」

 土方退場

近藤: 「我この策にありて~退く者は斬るぅ~、なんつって」
土方: 「近藤さん、、」
近藤: 「すまんにゃ!」
近土: 「にゃー!」

 2人退場
 羽織姿の沖田、「坂本竜馬」のたすきを掛けた竜馬が登場

沖田: 「寄るなぁ!坂本竜馬!!近寄るな!ゲホオ!」
竜馬: 「よく坂本竜馬だとわかったな。固いことは言わんぜよ。
 おいどんはおまんにぞっこんばい。総司どん。」
沖田: 「僕には決まった方がいるんです!カハァ!」
竜馬: 「ほれほれ胸の病にさわるばい。どれ、あちきがちと見て進ぜるよばい。」
沖田: 「方言めちゃくちゃなんだよぉ!ゲホオ!」
竜馬: 「一夫多妻!」
 
 竜馬、武器(傘)を広げると「一夫多妻」の文字
 沖田、斬りかかって捕まる

竜馬: 「布団ば敷いて、異国のダンスば踊るべさ♥」
沖田: 「土方さん、土方さーん!」
竜馬: 「そんな名前は聞きたくなかとです。悪い口をばキッシング♥」
沖田: 「なにを言っているか解らない!」
竜馬: 「異国のチューだがや♥」
沖田: 「やめろお!土方さん、土方さーーん!ゲホオ!」

 土方登場

土方: 「坂本竜馬か!!」
竜馬: 「土方どすか、噂にゃ聞いとりましたがお美しい」
土方: 「総司を離せ!総司は俺のもんだ!」
竜馬: 「こりゃレズビアンヌ。文明開化の音がすっぜよ」(沖田離す)

 近藤登場

近藤: 「天然理心流免許かいでん!近藤勇ぃぃぃぃ!!」
土沖: 「近藤さんんんん!!」

 曲切れ、近藤変な動き、竜馬受ける
 
近藤: 「あ」
竜馬: 「えい」

 SE:ズバア

近藤: 「いてえ!ああああ!」
土沖: 「近藤さんんんん!!!!」
竜馬: 「急所だったのか、、」

 近藤に駆け寄る土方

近藤: 「う、う、、」
土方: 「近藤さん!しっかり!」
近藤: 「とし、お前と、、いっっぺん、、やりたかっ」

 土方とどめを刺す SE:ズビャバ

沖竜: 「、、。」
土方: 「よくも近藤さんを、、」
竜馬: 「おんしがやっただぎゃ!」
土方: 「うるせえ!」
竜馬: 「今見てた、、」
土方: 「うるせえ!」
竜馬: 「うるせえって、、」
土方: 「うるせえ!」
竜馬: 「、、、覚悟ぉー!」
 
 竜馬斬りかかる、曲再び

土方: 「よせ!近藤さん!」
沖田: 「生きてたんですね!」
竜馬: 「よいしょ!」
 
 土方沖田、近藤を盾にする SE:ズバシャァ 倒れる近藤

土沖: 「ゆ、ゆるせん!」
竜馬: 「んんんんん???」

 囲まれる竜馬

土沖: 「新選組参る!」

 少しのアクションの後竜馬斬られる、曲止まる

竜馬: 「おんしらと、3人して、、やりたかっ」

 2人に斬られる、SE:ブキャキャウ 倒れる竜馬

竜馬: 「レズと3P、、」

 とどめ刺される、SE:ブキャウ
 優しい曲

土方: 「総司、無事か?」
沖田: 「はい、大丈夫です、ゲホオ!!」

 沖田倒れ込む

土方: 「総司!」
沖田: 「大丈夫大丈夫」
土方: 「大丈夫なものか、こんなに血を吐いて、、」

 抱きかかえる土方

沖田: 「ははは、ゲホ」
土方: 「その咳が治まるまで、俺がこうして抱いていてやる」
沖田: 「いやだなぁ、また変な噂が立ちますよ」
土方: 「とやかく言う奴は俺が斬って捨てる」
沖田: 「そんな乱暴な、ははは、ゲホゲホ」
土方: 「無理して話すな」
沖田: 「土方さんといるとなんだか楽しくなるんです。ゲホ」
土方: 「たまには言うことを聞け。もう話すな、総司」
沖田: 「、、、はい、土方さん」
土方: 「大事にしろ、総司。もっと自分の身を大事にしろ。
 お前は日本一の剣士だ。新選組の宝だ。俺達の希望だ。
 お前がいないと、困る」
沖田: 「土方さんは?」
土方: 「え」
沖田: 「土方さんは、どうなんですか」
土方: 「新選組が困るという事は、俺も困るという事だ」
沖田: 「なんだ、つまんないな。ゲホゲホ」
土方: 「話すなっ!静かにしてないとまた胸の病がひどくなる」
沖田: 「、、、」
土方: 「これが終わったら、いい医者を見つけてやる。
 日本一、世界一いい医者を見つけてやる。
 金なんていくらでも出す。
 新選組で稼いだ分すべて、お前の命のために使ってやる。
 だから総司、先に行くな。俺よりも先に行くな。
 俺は、、お前がいないと困る。
 おい、聞いてるのか?」

 目をつぶっている沖田

土方: 「、、、寝たか。、、まるで子供みたいだな。、、見えるか総司、空いっぱいの星だ」

 空を眺める土方
 曲上がり、じょじょ暗

 その途中で動き出す、竜馬

竜馬: 「ぐっ、、、」

 ジリジリと近藤に近づき、手を伸ばし、近藤の手を取り力尽きる

 暗転

:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::


■3日目の朝

 SE:チュンチュンチュン
 明、舞台上にリーマンとマコト

リ「もう3日目になりますねぇ」
マ「はい」
リ「もう慣れました?」
マ「ええ、もうだいぶ慣れました」
リ「良かった良かった。いや、良くないですよこんなのは。
 確実に臭くなります。臭い女は嫌です。」
マ「大丈夫ですよ、昨日だってジャニスさんに岩盤風呂連れてって貰いました」
リ「ああ、通りで岩盤臭いと思いました。ははははは」
マ「?」
リ「いや、冗談冗談。はははは」
マ「は、ははははは」
リ「ははっははは、つまらなかったら笑わなければいいんです」
マ「は、ははははは」
2人: 「ははははは」

 カメラ男、新聞を持ってくる

カ「朝刊。」

 リーマンのケツを新聞でぶったたく、そのまま退場

マ「あの、仲悪いとか」
リ「、、ははははは」
マ「ははははは」
リ「ははははは」
マ「はっははあは」
リ「何か怖いですね」
マ「いやーはははは」
リ「良かった良かった。ははははは」
マ「あ、あの、リーさんもチョーさんも働いてらっしゃるんですね」
リ「え、あの『リーさんとチョーさん』って言うのは、、」
マ「サラリーマン」
リ「あ、リー」
マ「朝刊」
リ「あ、チョー。、、ネーミングのセンス」
マ「あります?!」
リ「、、ありますねー」
マ「(嬉しそうに)あと、公園の入り口にずっといるおじいさんは門番。
 噴水の所ずっといるおじいさんは原住民。おトイレにいるおばさんは便所」
リ「あ、あそこの太った男は?」
マ「体脂肪」
リ「あー、ネーミングのセンスが、、」
マ「あります?!」
リ「ありますねぇ」
マ「あ!あと、活性酸素さんて方とアセドアルデヒドさんて方が、、」
リ「ああもう、どんな人か想像つかない、、」
マ「もう景気づけに飲みましょうか!?はい!」
リ「え?あ、いやいや。今日、朝から大事な会議入ってまして」
マ「それじゃあ」
リ「どうぞ」

 クズカゴから取り出す酒瓶 2人ベンチに座る

マ「あたし、だいぶここの暮らしが楽しいです。毎日毎日新しいことがいっぱい。
 今まで気付かなかったことでいっぱい」
リ「普通に暮らしてれば、気付かないことでいっぱいですよ。日本って国は」
マ「リーさん」
リ「はい」
マ「酔っぱらいました」
リ「早いですね」
マ「ここの人たちいい人ばっかり。こんなに上手い事いっていいのかなぁ」
リ「、、上手い事ねぇ」
マ「いい天気ですね」
リ「ええ。でも」
マ「え?」
リ「雨も降りますよ」
マ「あめ」
リ「明日明後日あたり、雨です」
マ「当たるんですか?」
リ「まあ、だいたい」
マ「リーさんは何でここで暮らしてるんですか?」
リ「、、さぁ、なんででしょう」

 リーマン立ち上がる

マ「あ、行くんですか」
リ「はい。あ、雨の準備しといた方がいいですよ」
マ「はい」
リ「風邪ひいたら、死んじゃいますからね」

 リーマン朝刊を持って退場
 SE:チュンチュンチュン

マ「今はこんなに天気がいーのに」

 ポケットから手紙を出し、破ろうとする

マ「、、、、今の気分で決めちゃ、だめだ」

 手紙をポケットにしまう
 カメラ男、写真を撮りながら登場

マ「おはようございます」
カ「、、、」
マ「あの、、」

 ちらっとマコトを見るが、カメラに戻る

マ「あの、、なに撮ってるんですか?」
カ「別に」
マ「あ、、、ちょっと、散歩してこよっと」
カ「、、、、」

 SE:チュンチュンチュン
 マコト退場
 カメラ男、マコトの去った方を見る
 カシャッとシャッターを切る
 
 ヒッピー女登場

ヒ「チョーさん」
カ「、、、、」
ヒ「チョーさん!」
カ「チョーさんじゃねーよ」
ヒ「ケチ。あんたさぁ、もうここきて1年なんだからさ、そろそろ本名教えてよ」
カ「、、チョーさんでいいよ」
ヒ「ケチ」
カ「あ、新聞代」
ヒ「え?」
カ「新聞代」
ヒ「盗んだ新聞のくせに何ケチくさいこと言ってんの。
それより今朝の新聞!一昨日のだったんだけど」
カ「そーだよ」
ヒ「そーだよってそれ、新聞じゃないよねぇ。新しくないもんねぇ」
カ「どうせここの連中気付いてねーんだから」
ヒ「あたし気付いたもんねー」
カ「たまたまだろ」
ヒ「まーね」

 もくもくと写真をとり続けるカメラ男

ヒ「いつも何撮ってんの?」
カ「言ってもわかんねーよ」
ヒ「ゲージツだから?」
カ:(無視)
ヒ「みしてみして」
カ「見たってわかんねーよ」
ヒ「いいじゃん減るもんじゃなし」
カ「減る」
ヒ「あーかわいくない」
カ「タバコある?」
ヒ「え?」
カ「タバコ。」
ヒ「あたしタバコ吸わない」
カ「、、クスリはやんのに(退場)」
ヒ「っだかわいくない。『減る』っつって、
 あームカムカする。新聞でも読もー。やっぱやーめたっと!!」

 ヒッピー女、クズカゴから新聞を取りだしてすぐ床に投げつける
 マコト登場、足下に新聞投げつけられ驚く

マ「うわ!びっくりした。なんでここの人たち人に新聞投げつけるんだっちゃ?」
ヒ「だっちゃ?あ、あんた酒飲んでる!」
マ「あ、わかります?」
ヒ「かー、この飲んだくれ!」
マ「すいません」
ヒ「飲んだくれ天使!」
マ「あ、天使、はい!」
ヒ「なんかいいね、自由が板に付いてきたね!」
マ「ありがとうございます!」
ヒ「あたしも酒飲もっかなー。あ、切れてんだあたしの酒」
マ「あ、飲みます?(差し出す)」
ヒ「あー、いいよいいよ」

 錠剤をひとつぶ飲む

マ「なんですかそれ?」
ヒ「サプリメント」
マ「なんのサプリメントですか?」
ヒ「当てたら偉い」
マ「ビタミンB?」
ヒ「ぶー」
マ「ミネラル?」
ヒ「ぶー」
マ「コエンザイム?」
ヒ「ぶー」
マ「ウコン!ウコン!」
ヒ「ぶー!ぶー!」
マ「悔しいなぁ、私コンビニのサプリは全て揃えた女なんですよ」
ヒ「あー、じゃ、わかんないよ」
マ「え?コンビニものじゃないんですか?」
ヒ「ドラッグ、、、、ストアー」
マ「飲んでみます!そんで当てます」
ヒ「(錠剤渡しながら)だからぁ、朝起きたらもうおはよーっつって、
 『はい、あむさほりちゃぼ』」
マ「何語ですか?」
ヒ「目ぇ剥いた状態で笑える人ー!はーい!あははははは!」

 ヒッピー女、マコトの頭たたく

マ「痛!!」
ヒ「でっかいのが止まってたよ」
マ「何ですか?」
ヒ「でっかいお相撲さんが」
マ「止まりませんよ」
ヒ「舞の海レベルの」
マ「ちっちゃい方じゃないですかお相撲さんとしては」
ヒ「手ぇ挙げた状態で笑える人ー!はい!わはははははははっはははは!」
マ「ジャニスさん!誰でも出来る!誰でも出来るよ!」

 笑いながら退場するヒッピー女

マ「大丈夫かな、ジャニスさん」

 マコト錠剤を飲む
 
 照明、夕暮れ
 SE:カァカァカァ
 ひとり道ばたに座り込み、酒瓶に説教するマコト

マ「腰って書いてみて」

 酒ビン無反応

マ「漢字で」

 酒ビン倒す

マ「痛い?、、でもね、母さんはもっと痛い!、、(うなずく)」
  
 酒ビンを戻す
 リーマン登場、マコトを見る


マ「腰って言う時は『ツキ』へんに『カナメ』良く知ってるでしょ。
 だって母さん、漢字博士になるのが夢だったんだ」
リ「誰と喋ってるんですか?!」
マ「もう一度言ってみなさい。あなた今なんて言ったの?」
リ「?」
マ「今こういったよね、『漢字博士という職業はない』って。この親不孝者!!」

 ビンを転がす
 コロコロコロコロコロコロ

リ「!!」
マ「戻ってきなさい!」
リ「ええ??」
マ「まだ話しは終わってないのよ!」
リ「あなた自分で、、」
マ「あなたからも少しは言ってやったらどうなんです?!」
リ「え?ビンに?」
マ「あの子、またダンスパーティに出掛ける気だわ!早く!」
リ「ダンス、、」
マ「ダンスパーティに出掛ける気だわ!早く連れ戻して!」

 リーマン、酒のビンを取りに行く

マ「おかえり。じゃ、あなたからも少し言ってやって」
リ「あ、あのビンに?」
マ「え?」
リ「あ、この子に?」
マ:(にっこり)
リ「こ、こら、ダンスパーティに行くのは止めなさい!
 駄目だぞ、わかったか、ダンスパーティ、、けしからん、、」
マ「100点」
リ「あ、ありがとうございます、、」
マ「やっぱり持つべきものは100点パパね♥」
リ「パパ?」
マ「じゃ、お部屋に行ってなさい。今度は父さんと話しがあるから」
リ「父さん?」
マ「あなた、早く連れてって」
リ「あ、お部屋にね、お部屋発見しましたー(クズカゴに放る)」 
マ「そこお部屋じゃないわよ!」

 カメラ男登場。見てる

リ「君ちょっと、これ」
マ「待って」
リ「え」
マ「パパにお休みのキス」
リ「キス、、ちゅう」

 酒ビンがほっぺにキス
 カメラ男、シャッターを切る

リ「あ」

 カメラ男退場
リ「違うんだこれは、、」
マ「うひょひょい、うひょひょい、うひょひょーい!あ、うひょひょいっていっちまったばい」
リ「、、、」
マ「見てみて!後ろ向きに走れるよ!」 

 普通に前に走っていき、退場
 ヒッピー女、いつの間にかいる

リ「、、、、、、。」
ヒ「はっはっはー。すごいねあの子、何時間ラリッてんだろー」
リ「やっぱりあなたでしたか、だめですよクスリとか」
ヒ「だってあの子が飲んでみたいってゆーからさ」
リ「ちゃんと説明したんですか、飲むとどーなるか」
ヒ「したよ、サプリメントだよーって」
リ「違うでしょ」
ヒ「だって『オギナウ』って意味よ。補うってのはー、足りないもんを埋めるって事ー」
リ「そんなの飲んだって、、」

 リーマン、タバコ取り出す

ヒ「タバコ!それと変わんないじゃん」
リ「別に、何かを補おうとしてるわけじゃないですよ」
ヒ「リラックスタイムってこと?」
リ「まー、そういう事です」
ヒ「じゃ、今リラックスしてないんだ」
リ「いや、そんなことはないですけど」
ヒ「やっぱサプリメントじゃん」
リ「違いますよ」

 タバコ、空だった。くしゃっとする

ヒ「無くなったの」
リ「いや、まだあります」

 ポケットから新しいのを出す

ヒ「肺ガンになるよ?」
リ「僕が言ってるのはクスリの事です。あの子まだ若いから、ハマるとまずいでしょ」
ヒ「だいじょぶだよ。合法のだから」
リ「合法違法は関係ないでしょ」
ヒ「関係ないことないよ、だって売ってんだよ普通に」
リ「マジックマッシュルームですか?」
ヒ「あ、あれは去年辺りから違法になった」
リ「ほら、、だから」
ヒ「タバコ吸えば?」
リ「、、、。」

  タバコ、吸わずにしまう

ヒ「これなんだっけ?」
リ「え?」
ヒ「この草」
リ「雑草」
ヒ「またぁー照れてー」
リ「雑草ですよ、雑草」
ヒ「ここ来たばっかん時よく教えてくれたじゃーん。
 『いいですか?雑草にも名前があるのですよ?』って」
リ「聞いたって憶えてないでしょ?」
ヒ「おぼえるおぼえる」
リ「現に憶えてないじゃないですか」
ヒ「憶えてるよー。
 『雑草にも名前があるのですから、頑張って生きていきましょうね?』」
リ「余計なこと憶えてますね」
ヒ「憶えてるよー。だって思ったもん。
 うわー。ホームレスだーって。きったねーーーー」
リ「他に何も思わなかったんですか?」
ヒ「別にー」
リ「僕も必死だったんですけどね?
 だってあの頃、あなた、破天荒だったから」

 動きが止まっているヒッピー女に気付き、話し止める

リ「、、、、どれですか?」
ヒ「これ」
リ「ノゲシ」
ヒ「すげえ、即答」
リ「ノゲシ」
ヒ「わかったって」
リ「正式には違います」
ヒ「え?」
リ「ただのノゲシではありません」
ヒ「どんなノゲシ?」
リ「オニノゲシ」
ヒ「最初からそういえばいいしょや」
リ「ほら、ご覧なさい。鬼みたいでしょ」
ヒ「ぜんぜん。だって鬼見たことないもの」
リ「想像力がない」
ヒ「鬼なんていねぇもの」
リ「夢もないのなぁ」
ヒ「もういい年だからねー」
リ「年のせいにするかあなたは」

 マコト登場

マ「あたし、、、何してたんだろ。小便小僧と」
2人: 「と!?」
リ「大丈夫?!な、なにして、、」
ヒ「おいでおいでおいでおいで!」
マ「なにしてたんですか?」
ヒ「雑草に名前付けてんの」
リ「付けてはいないです。正式にそう言う名前なんです」
マ「雑草に名前あるんですか?」
ヒ「雑草博士だから、このおじさんは」
リ「おじさんではないです」
マ「へー。教えて欲しいです!」
リ「あ、そう?」
ヒ「嬉しそうに、このエロおやじ!」
リ「エロって、、」
マ「聞いていいです?」
ヒ「何でも聞いてみな。即答すっから」
マ「じゃあ、これ!」
リ「ノゲシ」
ヒ「他のにしてよー」
リ「でも正式には違います」
ヒ「オニノゲシ!」
リ「あ」
ヒ「ふっ」
マ「ほんとだー、鬼みたーい!」
リ「夢がある!」
ヒ「どうせ私は若くないからねー」

 カメラ男登場

マ「チョーさんもどうですか?」
カ「あー、今忙しい」
ヒ「言うと思った、かわいくなーい」
リ「まま、そう言わず。」
マ「リーさん雑草博士なんだって」
カ:(鼻で笑う)
ヒ「鼻で笑ったよ。チョーさんのくせに」
リ「まあ、そういう職業はないですから」
マ「あ、あたし小学校の時漢字博士になりたかったんですよ」
リヒ: 「え」
マ「だからすごいショックでした。先生にそんな職業はないって言われて」
リ「そこは実話だったんだ」
マヒ: 「え?」
リ「いやいや、こっちの話し。さっ、どんどん来てください!」
マ「これは?」
リ「スイバ」
マヒ: 「即答!」
リ「でも、、」
マ「正式には違うんでしょ?」
リ「そう、ヒメスイバ。」
マ「お姫様みたーい!」
ヒ「本気?あんたちょっとまだラリってんじゃないの?」
マ「いえ」
リ「夢があるんです」
ヒ「調子いいねマコト」

 曲いつの間にか聞こえてくる
 何となく気になり、近くにいるカメラ男

ヒ「なに?」
カ「別に」

 離れるカメラ男

マ「一緒に聞きましょうよー」
カ「いや今」
ヒ「忙しんだってさー」
カ「、、、、」
マ「そーですか?」
ヒ「いいよいいよあたし達だけで楽しくやろーよー」
リ「出ましたね、女子」
ヒ「ねねね!コレハコレハコレハーー?(当てつけ)」
カ「そんなもんわかんだろ」
ヒ「あー、あなたに聞いてなーい」
カ「タンポポだろ」
ヒ「しまった」
マ「タンポポですよ、ジャニスさん」
ヒ「わかってるよ!」
リ「違います」
3人: 「え?」
リ「それはタンポポにとても似ているのですが、残念ながらタンポポではありません。
 みなさんよく間違えます」
カ「ご満悦だな」
ヒ「なんか腹立ってきた」
リ「彼がタンポポと間違えたこの花は、、」
カ「わかったから」
リ「ブタナです」
ヒ「え?」
リ「ブタナ」
カ「ぶた?」
マ「ほんとだー」
ヒ「ぶたみたーい♥とか言ったら殺すよ?」
マ「はい」
カ「ひでえ名前だな」
リ「雑草ですからね、ある意味憎しみが込められたりしてます」
カ「憎しみねぇ」
ヒ「あれー?あんた忙しいんじゃなかったっけ?
 あ!うるさかった?ごめんね邪魔してーほんとごめんねー(土下座)」
マ「ジャニスさん、そんなに意地悪しなくても」
カ「興味ねえし(離れる)」
マ「あー」
ヒ「だいじょぶだいじょぶ」
マ「でもー」
リ「その割に離れませんから」

 カメラで遠くから覗いてるカメラ男

ヒ「ほら、カメラの望遠機能で参加してんでしょ」
マ「あー」
リ「ちょっとほら、屈折してるんです」
マ「なるほど」
ヒ「これ!」
リ「、、クズ」
カ「え?」
マヒ: (振り向く)
カ「あ」
マヒ: 「え?」
リ「クズ」
ヒ「作ってない?」
リ「作ってませんよ。マメ科の多年草です」
マ「これ!」
リ「ギシギシ」
ヒ「なんだそりゃあ!これこれ!」
リ「スズメノテッポウ」
カ「なんだろうなこれ、雑草じゃねえか、、」
リ「ナズナですね、それは」
カ「聞いてないけどねー」
ヒ「ふーん」
マ「入りたいんでしょー?」
カ「、、、」
マ「これ!(カメラ男付近)」
リ「マメグンバイナズナ!」

 3人、カメラ男の近くに寄っていく

ヒ「これ!」
リ「トキワハゼ!」
マ「これ!」
リ「タネツケバナ!」
カ「これ」
リ「ナズナ」
カ「見てねーだろ!」
ヒ「ねえ!あれは?あそこのでっかいの!」
リ「あれは」
マ「え?あれ?」
カ「あれは雑草じゃねーだろ」
リ「あれは木ですね、ジャニスさん」
ヒ「誰が雑草を探す会だっていった?言った人挙手!
 はい、だれーもそんなこと言ってませーん、ね!(睨む)」
マ「は、はい」
ヒ「ね!(睨む)」
リ「はい、そんなルールなかったです」
ヒ「じゃ、あの木の名前について聞きたい人ー!」
マリ: 「はーい(挙手)」
ヒ「あんたは絶対に聞かないでね!」

 カメラ男を隅に追いやる

ヒ「あれ何?あの木」
リ「あれは桜の木です」
カ「くだらねぇ」
ヒ「出たよ、くだらねぇ」
カ「なんだよ」
ヒ「なんだよじゃねーよ、このもやしっこ」
カ「もやしっこじゃねぇよ!」
リ「変なケンカは止めてください」
マ「もやしっこじゃねぇよって
リ「凄まれても、ねぇ」
カ「なんだよ?」
ヒ「ちょっとー勝手に参加しないでくんない?」
カ「参加してねぇよ」
ヒ「じゃこっち見ないで汚いから」
カ「わかったよ、、汚くねぇよ」
リ「まぁまぁまぁまぁ」
ヒ「うわ!何か臭い!あ、コイツの匂いだ。避難ひなーん!」
カ「くさくねぇよ!」
リ「わかりましたから、少しケンカのレベル上げましょう」
カ「くさくねぇよ!」
リ「分かりましたそれは!」
カ「あーくだらない。寝よう」

 カメラ男退場、ハケ際、少し涙を拭う
マ「あ、泣いた!」
リ「ジャニスさん!」
ヒ「わははは!面白いから見に行こう!」
リ「鬼ですねあなたは」
ヒ「行くよ!」
リ「行きましょう」
ヒ「あんたも変わらんよ?」
リ「ほら、マコトちゃん!」
マ「はい!」
ヒ「待てー!屈折かめらまん!!」

 2人退場、マコト途中で立ち止まる
 ポケットから手紙、
 やぶってクズカゴに捨てる
 走っていくマコト

 曲上がって 暗転


■チョーさんの夢:::::::::::::::::::::::::::::::::

 案の中鳴り続ける曲
 サス、クズカゴを持ったリーマン
 クズカゴに文字『チョーさんの夢』
 ◎配役◎ 織田=カメラ男 モモコ=ヒッピー女 タゴサク=マコト セキュリティ=リーマン 

 SE:キャーキャーキャー
 コンサート会場、マイクを持ったクレイジー織田(カメラ男)

織田: 「サンキューTOKYO!愛してるぜー!また会おうな!」

 タゴサク走ってくる

タ「お疲れさまです!はい、ダイエットコーラ」
織田: 「そんなもん飲めるかぁ!!(殴る)」
タ「(こぼす)どばっしゃぁ!しゅわわーしゅわわー」
織田: 「俺を誰だと思ってんだ?生きながら伝説になる男、クレイジー織田と知ってのことか!?」

 モモコ登場

モ「ちょっといいかしら?」
織田: 「誰だよあんた」
モ「敏腕ルポライター、フジガシラモモコ」
織田: 「タゴサクー!誰が楽屋通していいって言った!?」
タ「すんません!じゃ、これ!」
織田: 「なんだこれは?」
タ「ガラナっす」
織田: 「そんなもん飲めるかぁ!(殴る)」
タ「(こぼす)ばっしゃーん!しゅわわーしゅわわー」
モ「近寄らないで!べたべたする。手洗いなさい。ほら石鹸」
タ「ありがとうございます!」

 タゴサク退場
 
織田: 「石鹸なんて配ってんじゃねぇ」
モ「あら、ちゃんと普通に話せるのね」
織田: 「あぁ?」
モ「ごめんなさい。あたしったら勘違い」
織田: 「おい、何の話しをしてるんだ」
モ「話すこともままならないのかなぁって。ライブじゃ口パクだから」
織田: 「、、、、、。」
モ「アフレコでしょ、全部」
織田: 「タゴサク!!こいつを追い出せ!」
モ「あら、ダメよ~」

 タゴサク、手を洗いながら登場、倒れる

織田: 「タゴサクーーー!!タゴサクに何しやがった?!」
モ「ちょっと、石鹸にね」
織田: 「石鹸で何したー?!」
タ「、、、おださん」
織田: 「タゴサク!」
タ「手、、キレイに、なったかな(ガクリ)」
織田: 「タゴサクーーーーー!!」
モ「ちょっと、石鹸にね」
織田: 「石鹸で何したー!!」
モ「怖い顔ね。さあ答えて、あなた歌ってないわよね?
 ついでに言えばあなたの新曲『My favorite』あれもあなたの書いた曲じゃないわ、盗作よ。
ついでに言えばあなたのその顔、整形よね。これ、昔のあなたでしょ」

 モモコ、写真を見せる

織田: 「やめろーーー!!」
モ「ついでに言えば、、」
織田: 「もうついでに言うなー!セキュリティ!もしもし!不審者だ!」
モ「だめよぉ~」

 セキュリティ、髪をセットしながら登場、倒れる

織田: 「こ、これは!?」
モ「ポマードよ」
織田: 「ポマードでなにした!?」
セ「おださぁん」
織田: 「セキュリティ!!」
セ「俺の髪型、、どおかな、、(ガクリ)」
織田: 「すまん。髪型どころか、おれ、お前なんか知らないし、、ちくしょー!」
モ「全部あなたのせいなのよ。あなたが才能もないのに嘘をつくから、
 嘘をついてまで特別な存在でいようとするから」
織田: 「だまれ!(銃を向ける)」
モ「物騒なもの持ち出すじゃない?」
織田: 「俺はなぁ!過去を全部捨てた男なんだよ!」
モ「そう?落ち着いて」

 モモコ、床に正座する

モ「ここに頭乗せて」
織田: 「おかしなまねすんじゃねえ!!」
モ「大丈夫。ほら」

 モモコ、綿棒を取り出す
織田: 「それは、、」
モ「綿棒よ」
織田: 「今度は綿棒か!」
モ「違うの!!」
織田: 「これ以上身キレイにするものだすなー!!」
モ「あたしは!!」

 SE:バキューン
 モモコ撃たれる

織田: 「、、、馬鹿な女だ」
モ「あたし、ただ昔のあなたに戻って欲しかっただけのに!、、サニー」
織田: 「なぜ昔の俺の名を!?」

 曲入る
 モモコ、付けボクロ取る

織田: 「モモミ!!」
モ「そう、、モモミよ。結婚の約束してたのにあなたに逃げられたモモミよ」
織田: 「ちょっと言いにくいな」
モ「モモミよ」
織田: 「モモミー!!」
モ「あたし、昔のあなたに戻って欲しくて、、」
織田: 「おい!しっかりしろモモミ!」
モ「昔みたくモンって呼んでよ」
織田: 「モン、、」
モ「嬉しい」
織田: 「モン」
モ「嬉しい」
織田: 「モン、モン、モンモン!」
モ「う、うん」
織田: 「モンモンモーン!」
モ「うん、もう充分」
織田: (うなずく)
モ「あたし、あなたが歌ってくれたへったくそな歌、好きだっ、た(ガクリ)」

 モモミ倒れる

織田: 「モモミーーー!!
 違うんだよ、違うんだよモモミ。誰も、誰も分かってくれなかった
 だから、だから全部捨てたんだよ!誰かのために詩を書くとか、
 誰かのために声張り上げるとか、そういうの全部捨てたんだよ!
 でも、それじゃ暮らしてゆけねぇじゃん?お前と一緒にいらんねぇじゃん?
 だから!だから全部捨てたんだよ!お前以外の誰も、誰も解ってくんねぇんだもん!
 だけどさぁ!俺、夢捨てらんねぇんだよ!」

 織田、モモミの持ってた綿棒を手にする

織田: 「ごめんモモミ、おれ、お前の顔まで忘れてた」

 織田、綿棒で耳掃除

織田: 「思い出したよモモミ!お前、よくこうして俺の耳掃除してくれたっけ。
 (綿棒突っ込んだまま)決めた。俺、自分一人の力でやってみるわモモミ!
 ゲホオオ!!、、、え?」
綿棒を取り出し、また入れる

織田: 「グハァ!!」

 もう一回入れる

織田: 「グハァ!!、、、、、毒?、、、、、、、復讐?」

 倒れる織田、曲上がり 暗転

:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::

 曲、聞こえなくなると共に照明、夜
 SE:すずむし

 ベンチにマコト、考え事をしている
 カメラ男、写真を撮りながら登場

マ「なに撮ってるんですか?」
カ「別に」
マ「ちょっと見せてください」
カ「見せれねーよ」
マ「どうして?」
カ「デジカメじゃあるまいし」
マ「じゃ、今まで撮った写真とか」
カ「ない」
マ「ないんですか?」
カ「ないよ」
マ「どうして」
カ「全部捨てた」
マ「全部?勿体ない!」
カ「そんなことねーよ」
マ「いや、せっかく撮ったのに捨てるなんて勿体ないですよ」
カ「、、、なんでわかるんだよ」
マ「え」
カ「俺が撮ったもん見たことないのに何でそんな事分かるんだよ」
マ「あ」
カ「撮ったもんが勿体ないかなんて見てみないとわかんねーだろ」
マ「、、、、すいません」
カ「、、、いいよ」

 写真撮り始める

カ「、、、あんたさぁ、なにしに来たの」
マ「、、、、、ボランティアです。ジャニスさんが言ってた通りです」
カ「ふーん」
マ「あたしですね、自分が手を差し伸べる側の人間になりたかったんですよ。
 偽善ですよねぇ。皆さんのこと何も知らなかったんですけど、なんか
 自分よりも不幸な人たちだーって、可哀想な人たちだーって決めつけてました。
 結局、自分のためだなぁって」
カ「そういうもんかねぇ」
マ「はい」
カ「不幸だよ」
マ「え?」
カ「結構みんな」
マ「、、、」
カ「よく知らないけど」
マ「でも、あたしなんかよりも全然幸せに見えます」
カ「、、あぁ。なるほどね」
マ「、、あの、私また余計な事言いました?」
カ「別に」
マ「あ、待ってください」
カ「いいとおもうよ」
マ「え?」
カ「それで」
マ「あの」
カ「ボランティア」
マ「、、?よくわかんないです」
カ「あのねーちゃんのとこにいんの、今」
マ「あ、はい」
カ「子供は?」
マ「今はご両親に預けてるみたいですよ」
カ「あんま長居しない方いいよ」
マ「え?」

 ヒッピー女、ぼーっとして登場

ヒ「いない、、」
カ「探しもん?また」
ヒ「うん」
マ「また?」

 カメラ男退場

マ「あ、おやすみなさい」
ヒ「、、、おかしい」
マ「何探してるんですか?」
ヒ「えっとねぇ、これっくらい」

 子供の大きさを手で

マ「これっくらい、のものですか?」

 マコト、その大きさを手で

ヒ「うん、、」
マ「ジャニスさん?」
ヒ「?」
マ「全然分かんないです。これぐらいって言われましても、
 これくらいのものって、世の中に結構あると思うんですよね」
ヒ「ああ」

 ヒッピー女退場しかける

マ「ジャニスさんっ」
ヒ「ん?」
マ「一緒に探します?」
ヒ「うん」

 2人、舞台上を探し出す
マ「ジャニスさん、別にこれくらいのものは見つからないんですけど、、」
ヒ「おかしい、、」
マ「あの、特徴とか」
ヒ「なんか暖かくって、、」
マ「あったかいものですね?あったか、、じゃなくて!見た目教えて下さい」
ヒ「ぽちゃぽちゃしてる」
マ「ぽちゃぽちゃ、、全体的にですか?」
ヒ「ほっぺた」
マ「ほっぺたって」

 2人ほっぺたに手

2人: 「ほっぺた」
マ「ヒント」
ヒ「おぎゃあ」
マ「赤ちゃん!?」
ヒ「うん」
マ「大変じゃないですか!?」
ヒ「あれがないと困るんだよなぁ」
マ「なにしてんですか!?早く探しますよ!」
ヒ「でもなぁ、今日親のとこに預けてっから」
マ「何のんきなこといってんですか?」
ヒ「よし、探そう探そう」
マ「そうですよ!いくらジャニスさんが『今日はご両親に預けてるから』
 って言ったからって、、、!!、、、ジャニスさん?」
ヒ「ん?」
マ「今日はご両親の所に預けたって言ったって事は」
ヒ「、、、、、」
マ「今日はご両親の所に預けたって事じゃないですかねぇ」
ヒ「、、、、、」
マ「ジャニスさん?」

 SE:犬の遠吠え

ヒ:(このくらいの、赤ちゃん、置いといて)
マ「、、、、」
ヒ「寝ぼけた」
マ「寝ぼけましたか」
ヒ「おはよう」
マ「まだ夜中です」
ヒ「どーりで寝ぼけるわけだ」
マ「結構寝ぼけるんですか?」
ヒ「いやー、いままで一回も」
マ「いや、チョーさんが『また』って言ってました」
ヒ「週に2~3回」
マ「あーー、ほっとしたらどっと疲れた」
ヒ「すません!」
マ「いえ」

 2人、ベンチに座る

マ「でも、愛してるって事ですよね。いないと不安になるんだ」
ヒ「いやー、ただの寝ぼけだから!」
マ「いいなぁ、あたしは産んだことないから分かんないけど
 なんか、確かなものなんでしょうね」
ヒ「いやーそんなそんなそんな!たいそうなもんじゃないよ」
マ「母親って感じですね」
ヒ「やだ、あんたあれなんてね、泣くし、わめくし、ウンコするし、ウンコするし。
 おむつとかうんこまみれだから。あれは小さなウンコ製造機だね。
 ウンコ製造後に泣くってとこがミソ。」
マ「ミソですか」
ヒ「ミソってウンコのことじゃないよ?」
マ「わかります!」

 SE:犬の遠吠え

ヒ「今日は星でないね」
マ「え?出るんですか?」
ヒ「でるよ」
マ「へぇー。都会だから出ないと思ってました」
ヒ「出る出る。すごい時すごいよ」
マ「え?そんなにですか?」
ヒ「ぶわわああああああって空一面」
マ「ほんとに?」
ヒ「ほんとほんと。手届くよ」
マ「それは嘘」
ヒ「でもすごいよ。ぶわわあああああって」
マ「へえ」
ヒ「夢かなぁ」
マ「え?また寝ぼけた話しですか?」
ヒ「いや、でも1回見たの、誰も信じてくれないけど」
マ「夢ですね」
ヒ「そっかなぁ、夢じゃないと思うんだけどなぁ」
マ「さっきの寝ぼけを見て信じろって言うのは難しいですよ」
ヒ「信じない?」
マ「信じてもいいですけど」
ヒ「ほんと?」
マ「はい」
ヒ「じゃ、指切り」
マ「信じるって言ってるじゃないですか」
ヒ「いや、信じられない」
マ「おかしいじゃないですか」
ヒ「はい」
マ「じゃ、はい」
ヒ「信じて」
マ「信じますってば」

 会話の途中からじょじょに暗
 ラジオ体操の音楽(♪大きく背伸びの運動から)

 照明、朝の公園
 ラジオ体操しているマコト、何もしない3人 

マ「何もしないんですか?!」
ヒ「するする」
マ「全くやる気なしじゃないですか?」
リ「しちはっち」
ヒ「さんしー」
カ:(カメラ)
マ「あたし、くじけそう」
リ「ふぁいとマコトちゃん」
ヒ「がんばれー」
カ「もうラリってんじゃねえの?」
リ「朝からまた薬ですか?」
ヒ「悪いー?」
リ「マコトちゃんを見習いなさいよ少しは」
ヒ「、、(カメラ男に)ねぇねぇ、いいポーズだから取っちゃれ」

 マコトにカメラを向けるカメラ男
 他の2人はちゃちゃを入れてる

カ:(マコトを撮る)(カシャ)
マ「、、、、、」
カ:(マコトを撮る)(カシャ)
マ「やめてください」
カ:(マコトを撮る)(カシャ)
マ「3人ともどっか行ってください!」
カ:(カシャ)
マ「だからー!」
リ「まぁまぁ落ち着いて」
ヒ「行きたくても行けないの」
マ「どういう事ですか?」
カ「カタギがいるから」
マ「え?」
リ「ほら、あのスピーカーの周りに一般の人たちがいるでしょ?」
ヒ「じじばばガキども」
リ「お年寄りと、お子さま達が」
マ「ええ、だから一緒に行きましょう?」
カ「邪魔にされるから」
マ「え?」
リ「我々が行くと浮くんですよ」
マ「浮く?」

 マコト体操をやめる、鳴り続けるラジオ体操

ヒ「あっちみてみな」(舞台そで)
マ「あ、門番さん」
リ:(色々な方向を指さす)
マ「原住民さん、便所さん、体脂肪さん、アセドアルデヒドさん」
カ「誰だよ?」
ヒ「気使ってんのさ、いちお」
マ「なんでですか?」
リ「税金払ってんのは向こうの人たちですからね。
 そこからあっちは一般の方、そっからこっちは、、」
カ「社会のゴミ」
マ「、、、、」

 沈黙、一般人を見ている4人

マ「ひどい」
ヒ「え?」
マ「ひどいじゃないですか、そんなの」
ヒ「なんで?あー、このクスリ全然効かない」
リ「朝だから効かないんじゃないんですか?」
ヒ「あー、そーかも」
リ「運動したら」
ヒ「効くかな?」
リ「効くかも」
マ「あの、ひどいと思います。おんなじ人間なのに
リ「いやいや、別に一般の方たちが線引いたわけじゃないですからね。
 ほら、暗黙のルールってヤツでね、僕がここ来る前からずっとそうみたいですよ」
マ「でも」
ヒ「あの人たちせっかく健康のために運動しに来てんだから、
 うちらみたいのが出てったら健康に悪いでしょ?」
マ「どうして?」
ヒ「まともじゃないから」
マ「、、あたし皆さんのことまともじゃないなんて思ったことないです」
ヒ「あんたもまともじゃないからじゃない?」
カ「行って来れば?」
マ「、、、」
カ「混ざってみれば?」
ヒ「そーだそーだ。あんただったらまだ日浅いから馴染むよ。いっといで、いっといで」
リ「止めなさいって。、、マコトちゃん、気にしないで。
たかだか何分かの事ですから。ね?いいじゃないの、どちら側かなんてことは」
マ「、、、、、」

 客席中央を見つめ

マ「あたし行ってきます」
リ「でもねぇ」
ヒ「いってらっしゃい」
リ「ジャニスさんっ」
ヒ「賭ける人ー。」
マ「え」
ヒ「マコトがあん中に入って馴染むと思う人」

 ヒッピー女挙手

ヒ「はい、ひとり」
マ「、、、、」
ヒ「じゃ、馴染まないで周りの人がどんどん離れてくと思う人」

 カメラ男挙手

ヒ「ひとり、、あんたは?(リーマンに)」
リ「マコトちゃん、気にしないで、ね?」
マ「行ってきます」

 マコト舞台上手にハケ
 目線で見送る3人

ヒ「あ、本当に行った」
リ「なんでそういう意地の悪い事を」
カ「確かめたいんじゃないの」
リ「、、、、」
カ「社会不適合者かどうか」
ヒ「あれ?どっちならいいの?」
カ「不適合の方が楽なんじゃない?」
リ「、、、、」
ヒ「あ、着いた」
カ「ど真ん中」
ヒ「どーかね」

 3人、自分がその輪に入ってるかのような気分で見守る
 鳴り続けるラジオ体操の曲
 マコトは、馴染むか、馴染まないか

 リーマン、答えを見る前に退場
 カメラ男、答えを見て退場
 ヒッピー女、残る
 
 ラジオ体操の曲、おわる
 『♪今日も一日、元気で頑張りましょ~~~』
 
 帰って行く普通の人達を眺めているヒッピー女
 酒を取り出し飲む
 マコト、とぼとぼと戻ってくる
 目を合わせようとしないヒッピー女
 ばつの悪そうなマコト
 酒を飲み続けるヒッピー女
 ベンチの端に座るマコト

 平静を装うヒッピー女
 普通の人たちに馴染んでしまったマコト
 だんだん悲しくなる、どんどんうつむいていくマコト
 それに気付かないふりをしてるヒッピー女
 どんどん小さくなるマコト
 無言で酒を差し出すヒッピー女
 酒を一気に飲む、笑って見せようとしてヒッピー女を見るマコト
 相変わらず、平静を装うヒッピー女
 笑えないマコト。また、どんどん悲しくなる
 小さくなるマコト
 ヒッピー女、マコトの頭に手
 マコト、どんどん小さくなる
 マコトの顔をのぞき込むヒッピー女
 マコト、どんどん小さくなる

ヒ「泣いてんの?」
マ:(首をふる)
ヒ「なんで泣いてんの?」
マ:(首をふる)
ヒ「ちょっと」
マ「すいません」
ヒ「ねぇ」
マ「すいません」
ヒ「なんで謝んの?」
マ「、、すいません」
ヒ「、、、、、困ったなこりゃ」

 顔を上げずにいるマコト
 その状況に戸惑いながらも
 優しくなりすぎずに平静を装い、なんとかこの場を収めたいヒッピー女

ヒ「、、あんたがさぁ、ここに何しに来たのかは知らないんだけどさ、
 なんつーか、ほら、別にさぁ、、ねぇ?、、、困ったなこりゃ」
マ「すいません」
ヒ「いやいや、そう言う事じゃなくてね。例えばそれ。謝るとかさぁ。
 そういうのはほら、そういうのとサヨナラしたかったりするからここにいたりさ。
 謝ったらほら、謝った分だけ、ねえ?、、勝ち負けじゃないんだけどさ。
 いや、、いや、この際、人生勝ち負けだとしてさ。この際。
 この際、そういうことだとしてさ。
 あやまったら、『負けたー』って思い出が一つ増えたりするでしょ
 負けたら、負けた分、勝たなきゃいけない気になるでしょ?人間。
 いや日本人。あ、どこ出身?、、何言ってんだろあたし。
 そうじゃなくてさ、
 人生、勝ち負けじゃないって事を確かめるために生きてたりするわけよ、多分。」
マ「、、、、、」
ヒ「わかんないよね?あたしも何言ってんだかさっぱりだ」

 酒飲むヒッピー女

ヒ「、、だからほら、泣け?もうね、これでもかと言うほど泣きなさい、ね。
 もうわんわん泣きなさい。映画みたく。ドラマみたく。 
 そしたらほら、今日は泣いたなぁとか、次の日は目が腫れてブサイクだなぁとか
 忙しくなるから。そしたら、なんか、そんな忙しさはバカみたいだなぁって思うから。
 今日は思えないけどね?でも明日、自分の事バカだなぁって。  
 昨日の事バカだなぁって思うから。」

 ヒッピー女、一升瓶取り出す

ヒ「そう言うときはほら、これ。ね、あたしのとっておき」

 マコト一升瓶を受け取る

ヒ「あ、いく?いっときなさい!それはあたしのとっておきなんだから」

 マコト、酒を飲む、どんどん飲む

ヒ「あー、随分行くね?それ、とっておきなんだけど、、いや、いい、いきな!」

 マコト、瓶をヒッピー女に返す

ヒ「あ、もういい?はい、ごちそうさん」

 これ以上飲まれないように蓋をするヒッピー女。遠くに置く

マ「うえーーー」
ヒ「あ、泣く?」
マ「うえーーー」
ヒ「わんわん泣く?」
マ「うえーーーー」
ヒ「気にしないで泣きなさい、ね?」
マ「ううううええええええ」
ヒ「気にしない気にしない、ね?」
マ「うううううえええええ」
ヒ「何見てんだ!?見せモンじゃねぇぞ!」

 ヒッピー女、マコトをかばう形になる
 マコト、ヒッピー女にもぐる

マ「うわあーーーー」
ヒ「よしよし」
マ「わああああ」
ヒ「よしよしよしよし」

 次第に叫び泣く

ヒ「よしよし、よしよしよしよし、、、」

 曲上がっていく 暗転


■2年前
  
 曲下がり、SE:蝉の声
 照明、2年前の夏。ヒッピー女が公園に来た頃
 ヒッピー女の衣装少し変わる、薄着
 リーマン、ベンチに座っている
 ベンチにプラスチックのクスリの入れ物(睡眠薬)

ヒ「あー、久々に泣いた。すっきりした」
リ「そりゃよかった」
ヒ「でも浮浪者のおっさんの胸で泣くってのは一生の恥だな」
リ「浮浪者ではなく、公園生活者、もしくは路上生活者です。
 おっさんではなく、お兄さん
 一生の恥ではなく、いい思い出です」
ヒ「あたしもここで暮らそうかな」
リ「あまりお薦めはしませんよ。間違いなく臭くなります。臭い女は嫌です」
ヒ「ちゃんと銭湯行くよー」
リ「銭湯代だってバカになりませんよ」
ヒ「仕事辞めたから退職金もあるしさー」
リ「一年と持ちませんよ」
ヒ「そうなったらそうなったで稼ぐ」
リ「じゃ、わざわざこんな所で生活する必要ありませんて」
ヒ「なんかいいじゃん。公園って、緑いっぱい、、空も広いし」
リ「いいことばかりじゃありませんよ」
ヒ「そーかな」
リ「風邪ひいたら死にますよ」
ヒ「あたし風邪ひかないもん。バカだから」
リ「そう言ってる人に限って、、、」

 SE:蝉の声

ヒ「、、、あったけぇ」
リ「ええ」
ヒ「ずっとこういう天気だらいーのに」
リ「、、、、、、」
ヒ「そうも行かないか」

 SE:蝉の声

ヒ「ねぇ?これなんだっけ?」
リ「ノゲシ」
ヒ「すげえ、即答」
リ「正式にはオニノゲシ」
ヒ「すげえ」
リ「何度も聞くからですよ」
ヒ「だって憶えらんないよ」
リ「あなただってチューリップ見たら『あーチューリップだー』って
 言うじゃないですか」
ヒ「だってそれ雑草だもん」
リ「雑草と決めたのは人間です」
ヒ「どこにでもあるもん」
リ「強い植物だからですよ。強いからこそそこら中に分布するわけです」
ヒ「ゴキブリと一緒だ」
リ「そんなこと言ったら人間だってうじゃうじゃいるじゃないですか」
ヒ「まーねー」

 沈黙

ヒ「で?」
リ「、、え?」
ヒ「何が言いたいわけ?」
リ「え、いや」
ヒ「雑草の名前なんて教えて何が言いたいわけ?」
リ「いや、特に何も」
ヒ「じゃなんでわざわざ教えるわけ?」
リ「わけなんて別に」
ヒ「雑草にも名前があるのですから、頑張りましょー。そう言う事?」
リ「わかってるならいいじゃないですかそれで」
ヒ「そういう事?」
リ「そうですよ、雑草にだって名前があるんですから、頑張っていきましょうって」
ヒ「そういう事?」
リ「そう言う事ですよ」

 SE:蝉の声
 青空

ヒ「どう頑張れっての?」
リ「、、、、」
ヒ「何も知らないくせに」
リ「あ、いや、、」
ヒ「ね、知ってる?頭のおかしい人に一番言っちゃいけない言葉」
リ「、、知ってますよ」
ヒ「『頑張れ』」
リ「、、知ってますよ」
ヒ「が・ん・ば・れ」
リ「、、、、、仕方ないじゃないですか」
ヒ「何も知らないくせに」
リ「、、知らないから、仕方ないじゃないですか」
ヒ「仕方ないからって一番言っちゃいけない言葉言うの?」
リ「いや、すいません」
ヒ「頑張れねーからこんなとこで、こんなことしてんだあたしは!」
リ「それしか思いつかなかったもんで」
ヒ「、、、、、」
リ「でも、、すいません」
ヒ「頑張れねーからこんなとこで、こんなもん飲んだんだあたしは」

 睡眠薬を手に取り、クズカゴに投げ捨てる
 
ヒ「頑張りましょーってのは、、、、」
リ「?」
ヒ「生きてくって事で、、、いいですか」
リ「、、、、、」
ヒ「頑張って『ただ』生きていくって事でもいいですか」
リ「ただ」
ヒ「そー。ただ生きてくの」
リ「、、いんじゃないでしょうか、、、。とりあえず」
ヒ「とりあえずね」
リ「とりあえず」
ヒ「、、、、あーあ、またわんわん泣きたくなってきたな」
リ「いんじゃないでしょうか、とりあえず」
ヒ「とりあえず」
リ「ま、とりあえず」

 SE:蝉の声

ヒ「セミ」
リ「ええ」
ヒ「一週間で死んじゃうんでしょ?セミ」
リ「あー、そう聞きますねぇ」
ヒ「だって7年間も土の中にいるんだって。7年間ずーっと土の中で我慢して、
 やっと大きくなって外に出たら、一週間で死んじゃうんだって」
リ「、、、、、、」
ヒ「、、、正式には違わないの?」
リ「、、僕、虫方面はからきしで」
ヒ「違って欲しいなー」
リ「、、、」
ヒ「このままじゃ、悲しい事ばっかりだ」
リ「、、、」
ヒ「違って欲しいなぁ」
リ「、、、ええ」

いつの間にか曲聞こえてくる、暗転
 SE:競馬の中継
 『第4コーナーをまわりました。各馬一線に横並び、、』

<競馬>
 カメラ男、舞台中央、ラジオを聴いてる、照明昼
 周りで3人騒いでいる

3人:どうなった?何来た?始まった?1番?2番?あたしとった?、、など
カ「おおお!」
3人: 「おおお?!」
カ「ああああ」
3人: 「ああああーー」
カ:(ためいき)
3人:どうなった?何来た?始まった?1番?2番?あたしとった?、、など
 
カメラ男もみくちゃになる
 録音によるマコトの声(手紙)入る


 『お元気ですか?ご無沙汰してます。長い間連絡もせずにごめんなさい。
  この4月から移動になったことは電話でお話ししたと思います。
  実は、あそこに毎日毎日通うことを考えると毎日頭痛がして、
  1週間で無断欠勤、それが何日か続いて結局辞めてしまいました。
  前の仕事と勝手が違うことは別段苦にならなかったのですが、
  職場の雰囲気に耐えられれそうになく、そんな事になってしまいました。』

<缶けり>

 照明、夕方→夜
 マコト鬼。ヒッピー女に蹴られ、リーマンに蹴られ
 最終的にカメラ男が缶をクズカゴに捨てる
 
 『今考えればそれはただのキッカケに過ぎず、私は多分、変わりたかったのだと思います。
  こんな事を書くときっと、二人とも心配してしまうんでしょうね。
  けど、これは紛れもない事実です。会社には一身上の都合で退社という事にして貰いました。
  だからあと少しで失業保険も出るし、今はわずかな貯金でなんとか生活してますから、
  お金の事は心配ありません。』

<だるまさんが転んだ>

 照明、朝
 カメラ男が鬼。何回目かの「~転んだ」で3人いなくなってる
 カメラ男驚く、が何事もなかったかのように写真を撮り始める
 
 『仕事を辞めたばかりの頃は、毎日が暇で暇でたまらなくて、 
  アルバイト情報誌を眺めながら次はどんな仕事をしようかと悩んでみたり、
  学生時代の友人と連絡を取ってご飯を食べたり、遊んでみたり、お酒を飲んだり、
  一人でフィットネスクラブに行ってみたりと結構忙しい日々を過ごしてましたが、
  無理矢理時間を埋めるにもだんだん飽きてきて、
  ただぼーっと1DKの部屋で一人でいる時間が長くなりました。
  人間はもともと働くように出来ていないのか、何もしていなくても結構大丈夫なんですね』

<鬼ごっこ>

 照明、昼
 ハケていた3人が走ってくる、鬼ごっこに移行している
 マコトが鬼。カメラ男を邪魔するかのように追いかける

 『ひとりでいると自分が何のために生まれて来たのか。
  とか、なんだか随分と哲学的な事を考えてしまいます。
  何年か前は考えた事もないような事を考えるようになります。
  ニュースを見ながら、私が今ここで死んだらニュースになるだろうかとか。
  私はニュースになるような事した事がないから、ニュースになんかならない。
  でももしかしたら、誰も私を発見してくれなくて、何ヶ月も経ってから見つかって、
  それでニュースになるかなぁとか。当たり前の事だけど、それがとても悲しい気がして』

 カメラ男退場
 他の3人、カメラ男とは別の方向に退場

<拾われた手紙>

 照明、夜

 
『思った事を書くと、きっと父さんも母さんも心配するんでしょうね。
  だからそろそろ書くのをやめます。どうせ、うまくまとまらないし。
  言いたかった事ははたぶん、
  二人も心配してくれる人がいる私は、とても幸せだって事です。』

 カメラ男登場、つなぎ合わせた手紙を持っている
 ベンチに座り読む

 マコト登場、カメラ男の手にある手紙を見る

マ「チョーさん」
カ「なに」

 まだ読んでるカメラ男
 曲、消えていく

マ「、、、返してください」
カ「なに」
マ「それ」
カ「、、、これ?」
マ「あたしのですよね」
カ「捨ててあった」
マ「返してください」
カ「はい」

 マコト、カメラ男から受け取る
 カメラ男、写真を撮る。カシャ

マ「!」

 カシャ

マ「何撮ってるんですか?」

 カシャ

マ「やめてください」

 カシャ

マ「写真撮るのやめてください」

 カシャ、カシャ

マ「やめてください!!」

 沈黙

マ「何で撮るんですか」
カ「いいと思って、表情が」
マ「でも勝手に撮るのは失礼じゃないですか」
カ「あー」
マ「あたし間違ってますか?」
カ「撮ってもいい?」
マ「なんで、よりにもよって、あんな写真」
カ「ホントの顔かなぁって」
マ「!」
カ「ホントの顔じゃねーの」
マ「、、、。」
カ「俺、そういうの撮りたいから」
マ「普段、人間撮らないじゃいですか」
カ「だって、ここの連中ウソばっかだから」
マ「え」
カ「ホントの顔なんて誰もしてねーよ」
マ「、、、取り消してください」
カ「なにを」
マ「取り消してください」

 カメラ男、ベンチに座る

マ「みんなウソなんてついてないと思います」
カ「じゃ、それでもいーや」
マ「え」
カ「取り消す。みんなホントの事しか言ってない。はい」
マ「ちゃんと取り消してください!」
カ「したよ。撮ってもいい?」
マ「全然取り消してない!」
カ「、、門番が昔社長で大金持ちだったってのはホントウ。
 便所おばさんが便所に住んでるのはあの便所が死んだ旦那と出会った場所だってのはホントウ。
 あそこの太った男がなかなか痩せないのは100万分の1の確率で生まれる特殊な遺伝子のせい。
それも本当。リーマンが毎日毎日会社で重要な会議があるのもほんとう。
 あのヒッピー風のねえちゃんの、、、」
マ「カメラ貸して下さい」
カ「、、、なんで?」
マ「さっきの写真、現像されたくないから。、、、、多分、フィルム駄目になると思いますけど」

 ヒッピー女、何かを探して入ってくる

ヒ「、、、、いない」
マ「ジャニスさん」
カ「探しもん?また」
ヒ「、、、、あ、、、うん」
マ「、、また」
カ「そっかい」
ヒ「、、、、あれがねぇと、困るな」
マ「何、探してるんですか」
ヒ「、、、ん?あ、えっと、、、このくらいの」
マ「、、、、、、、」
ヒ「、、、、おかしい。
 、、、あったかくて
 、、、ぽちゃぽちゃしてて、、、みた?」
マ「いえ」
ヒ「あんたは?」
カ「、、、見たことねーから」

 カメラ男を睨みつけるマコト

カ「なに」
ヒ「そっかぁ、、」

 ゆっくりと退場しかけるヒッピー女
 
マ「ジャニスさん」
ヒ「?」
マ「あたし、、」
ヒ「?」
マ「あたしも探す?」
ヒ「、、うん」

 ヒッピー女退場

マ「、、、、、、、、、、、」

 (子供なんて、いないんじゃないんだろうか)

カ「何考えてる」
マ「、、あの、赤ちゃん、どこ行ったのかなって」
カ「見たことあんの」
マ「、、、、、、、、」
カ「許してやれよ。
 あんただって嘘ついてんだろ。ぜんぜんボランティアなんかじゃねぇじゃん」
マ「嘘じゃない!」
カ「どこが」
マ「この手紙書いたのもう随分前だから!
 ボランティアして自分のこと見つめ直そうと思って、
 それでジャニスさんに諭されて、
 リーさんに雑草の名前教えてもらってなんか元気出て、
 そんで、破って、捨てたんだから」
カ「へぇ」
マ「それをあんたがゴミ箱から拾って、、
 見てよこれ!わざわざテープで貼って!」
カ「俺じゃねーよ。テープで貼ったの」
マ「、、、、、、じゃ」
カ「この状態で捨ててあった」
マ「、、、、、、、うそ」
カ「こんなとこに『ぷらいばしぃ』なんてあるわけねぇだろ。
 見ねーようにしてんだよ。だいたいの人間は」
マ「、、、、、、、、」

 ヒッピー女、まだ探してる

ヒ「ねぇ、いた?」
マ「え」
ヒ「いない?」
マ「あ、、まだ」
ヒ「、、、そっか」
マ「、、ジャニスさん」
ヒ「ん?」
マ「あったかくて」
ヒ「、、、、あったかくて」
マ「これくらいで」
ヒ「、、、これくらい」
マ「ぽちゃぽちゃの、ほっぺた」
ヒ「ほっぺた。、、、あたし、あれがねぇと困る」
マ「あたし、そっち探す」
ヒ「?」
マ「あたし、そっち探すから!」

 マコト、ヒッピー女の手を握る

ヒ「ありがとおっ」
マ:(うなずく)

 リーマン登場

リ「おや、皆さんお揃いで。お月見ですか?」
マ「よかった!」
リ「は?」
マ「ジャニスさんの赤ちゃんがいなくなっちゃったんです」
リ「え?」
マ「だから手分けして探そうと思って、ジャニスさんの赤ちゃん!
 みんなで、お願い!」
リ「、、わかりましたっ」
マ「よかった!リーさんも手伝ってくれるって!」
リ「じゃあみんなで手分けして探しましょう。
 暗いですからゆっくりと、丁寧に探しましょう。ほらチョーさんも行きましょう」
カ「ちょっと待てよ」
リ「一刻の猶予も許されません。赤ちゃんがいなくなったとあらばそりゃもう一大事です。
 ここはひとつ、僕の指示に従って。
 ああそうだ、チョーさんあなた懐中電灯持ってましたよね。あれ貸して下さい。
 ジャニスさんは先に行って。赤ちゃんは一番あなたに会いたいはずですからね。
 もしいたら、まずキャンピングカーに赤ちゃんを寝かせて、それから僕に報告して下さい。
さ、行って」
ヒ「、、、ありがとう」

 ヒッピー女退場

カ「だからよぉ」
リ「ほらチョーさん、懐中電灯」
カ「そんなもんねぇよ」
リ「いやいやあったはずです。無かったら無かったでまた僕に連絡下さい、ね」
カ「だから」
リ「早く」
カ「待てって」
リ「早く行きなさい!」
カ「、、、」
リ「早くしないと、わかるでしょう」
カ「、、、」

 カメラ男退場

リ「マコトちゃん。
 ちょっと僕、彼の懐中電灯受け取ってから行きますから、必ず。
 先行っててください。こういう捜し物はきっと女性の方が上手です。」
マ「ありがとう」

 走り出すマコト

リ「マコトちゃん」
マ「はい」
リ「ゆっくりね」

 リーマン退場

マ「よし」

 マコトゆっくり退場
 誰もいなくなった公園、少し暗くなる
 SE:犬の遠吠え
 街灯に明かり、照らされるベンチ

 少ししてからリーマン戻ってくる

 辺りを見回して、ベンチに腰掛ける
 タバコを取り出す、空を見上げ

リ「こりゃ、一雨来るかな」

 タバコをくわえようとして、折れてる事に気付く

リ「あら」
 
 ポケットからセロテープ
 巻き付ける

リ「よし」

 火を付ける、同時に暗
 録音による声(マコトの手紙)

 『二人も心配してくれる人がいる私は、とても幸せだって事です。
  突然の手紙と突然の告白にきっと驚いていることでしょうね。
  二人ともお元気で、今までほんとにどうもありがとう。
  生んでくれてどうもありがとう。
  育ててくれてどうもありがとう。
  見守ってくれてどうもありがとう。
  心配してくれてどうもありがとう。
  私は大丈夫。
  私は大丈夫です。
  月並みですが、
  お父さんお母さん、先立つ不幸をお許し下さい。
  ごめんなさい。 マコト』

  
手紙の途中で曲、聞こえ始め
  照明、街灯がベンチを照らす

  手紙の声終わり、曲のみ聞こえる
  立ち止まるマコト
  赤ん坊なんていないんじゃないかという思いが断ち切れない
  それじゃいかんと再び赤ん坊を探しだす
  空、いまにも雨が降りそうな空

マ「雨、降りそう」

 ふと、ジャニスとの指切りを思い出す
 小指をみる

マ「ぶわあああって、空一面、、、ほし、、、」
 
 曇天、一つも見えない星
 悲しくなる
 思い直し、再び探し出すマコト、退場

 酒瓶を抱えてベンチに座るリーマン
 ヒッピー女歩いてくる
 リーマン、酒渡す。ベンチに座るよう勧める
 カメラ男も現れる、酒を渡す
 3人酒を飲み始める
 
 マコト登場

マ「あの」
ヒ「、、、、、」
マ「何してるんですか」
リ「ああマコトちゃん。良かった良かった、無事終了無事終了」
マ「、、終了?」
リ「見つかったから、さ、どうぞどうぞ」
マ「見つかったんですか、ジャニスさん」
リ「そう、見つかったの。良かった良かった、ねぇ?」
ヒ「いまやっとこ寝かしつけたとこ」
マ「どこに?」
ヒ「ん?キャンピングカー」
マ「どこにいたんですか」
リ「え?どこって、公園公園。よかった、公園から出てなくて」
ヒ「ごめんね?疲れた?」  
マ「どこにいたんですか」
リ「まぁまぁ、いいじゃないですか、いたんだから、ね?
 ほらマコトちゃん、祝杯祝杯、ごくろうさん」
カ「俺、寝るわ」
リ「あ、そう。おやすみ」

 カメラ男、マコトを通り過ぎ、止まり

カ「、、良かったんじゃない?これで」

 退場しそうになるカメラ男
 マコト、カメラを奪う

リヒ: 「!」
カ「おい」

 曲消える

カ「、、、返せ」
マ:(睨みつける)
リ「マコトちゃん、事情はよくわからないけど、それ、返そう、ね?」
マ「なんで」
リ「ま、なんでかはよくわからないんだけども」

マ「だってこの人、人の手紙勝手に読んで、
 そんで、あたしの写真勝手に撮った。そんでみんなの事、、、、(嘘つき呼ばわりした)
 あたし、さっきの写真、現像されたくないから」
リ「じゃ、現像しないって事でいいね?返してあげて」
マ「、、、、、」
ヒ「マコト」
マ「なんで」
リ「返しましょう、ね?」
マ「なんで肩持つんですか」
リ「いや、肩持つとかそう言う事ではなくてね、マコトちゃん」
マ「みんなの事、嘘つき呼ばわりしてるのに」
ヒ「返してあげて」
マ「、、!」
ヒ「たぶん、大事なものだから」
マ「、、、、、」
ヒ「開けたら、だめになるよ」

 マコト、一歩下がりカメラの後ろに手

カ「、、、、、」
 
 カメラ男、土下座

カ「全部取り消すから」
マ「、、嘘だ」
カ「お願いしますって」
マ「嘘ついてんのはあんたでしょ?
 ちゃんと取り消して、ちゃんと謝って」
カ「取り消すよ」
マ「ちゃんと取り消してよ!」
リ「いや、今ちゃんと取り消すって言ってくれたわけだから」
カ「わかった」
リ「ほらわかったって彼も言ってるし」
マ「、、、ちゃんと取り消してよ」
リ「いやいや、ちゃんとじゃなくても、ね」
カ「、、、『ちゃんと』だな?」
リ「いやいや、ちゃんとじゃなくてもね、十分みんなに伝わってると思うから」
カ「この姉ちゃんに娘なんていねぇ」

 沈黙

カ「そー言ったことを取り消します。すみませんでした」

 マコト一歩下がり
 カメラ男を睨みつけながら、カメラの後ろを開く

カ「あ、、、」

 マコト、フィルム抜こうとする
 が、入ってない

マ「、、、フィルム、、、入ってない」

 (ヒッピー女、リーマン、予測していた)

カ「、、、、、、、、返せよ」

 返すマコト、急いでカメラの蓋を閉じるカメラ男

マ「なんでフィルム入ってないのに」
カ「どーせわかんねーよ」
マ「、、入ってないなら最初から言えば、ちゃんと」
カ「言ったらわかんのかよ」
マ「、、、、わかるよ」
カ「なんでも言えばわかんのかよ」
マ「わかるよたぶん」
カ「たぶん?」
リ「ほら、もうよそう」
カ「わかんなかったらどう責任取ってくれんだよ」
マ「、、責任」
カ「あんたさぁ、、他人の事分かるかもなんて間違っても思わねぇ方いいよ。
 誰だって、自分が一番不幸だと思ってんだから」
マ「、、、、、、」

 カメラ男退場
 SE:犬の遠吠え

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2,710字

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たくさん台本を書いてきましたが、そろそろ色々と人生のあれこれに、それこれされていくのを感じています。サポートいただけると作家としての延命措置となる可能性もございます。 ご奇特な方がいらっしゃいましたら、よろしくお願いいたします。