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大学と企業の連携プロジェクトー観光拠点としての浜松町の未来を描くー

今回のHamamatsucho Life Magazine では、東京都市大学の坂井研究室(エリアマネジメント)北見研究室(マーケティング)の学生の皆さんによるまちづくり提案プロジェクトの特別レポートをお送りいたします。本プロジェクトは浜松町を舞台に毎年行われており、今年で4回目。毎年のテーマに基づき学生の皆さんがまちづくりにおける課題を設定し、解決施策の提案を行うというものです。本レポートでは、上位2チームの提案内容の概要をお届けします。学生の皆さんの柔軟な発想で描く浜松町の街の未来像を是非お楽しみください。

今年のテーマは「観光拠点」としての浜松町

今年度のテーマは「観光拠点」。日本の玄関口として機能する浜松町は羽田空港と都心を結び、ビジネス客や観光客など様々な人が行き交う交通の要所です。この浜松町の立地特性を活かし、浜松町駅前開発においても「観光拠点」の創設が決まっています。その「観光拠点」を学生の皆さんで創るとしたらどんなものにしたいか?また、観光客の方に浜松町周辺地域を体験してもらうためには、どのような施策やサービスが必要になるのか?このようなテーマを元に、学生のみなさんが施策の検討を行いました。
今回のレポートでは最終発表で2位を獲得した鵜浦さん、舘山さん、高橋さん、村田さんのチームの提案をご紹介します。

事業者へのプレゼンの様子

フィールドワークを通しての気付き

まずはフィールドワークで浜松町の課題の分析からスタート。現場を体験してみて「観光地としての若者の賑わいがない」「仕事のための場所になっている」「浜松町駅は乗り換えのための駅になっている」など、街の課題とも言えるさまざまな意見が挙がりました。一方で浜松町の特徴として、様々な種類の食材・郷土料理が駅周辺で味わえるということも分かりました。

発表スライド「調査報告ーまとめー」

こうしたフィールドワークでの気付きから、テーマを「食」に設定。メインターゲットを外国人、サブターゲットを食に関心のある日本人に定め、「食」を起点に浜松町を観光拠点としようと考えました。

”五感を感じる 劇場型レストラン”

提案コンセプトは「浜松町で日本を食べる(観光×食)」。フィールドワークで気づいた浜松町の特徴「多種多様な飲食店」を活かして、食を最大限に楽しめる「五感を感じる 劇場型レストラン」、ワクワクしながら街歩きができる「浜松町 フード&館内マップ」を提案。浜松町をエンターテイメント溢れる街にして観光拠点としての魅力を向上させることを目指すものです。

発表スライド「ビジョン」

「五感を感じる 劇場型レストラン」はその名の通り五感を存分に使って食事を楽しむことができるエンタメ性の高いレストランです。中央に配置されたキッチンを囲むように客席を並べ、調理の段階からお客さんの五感を刺激する特別な食事体験を提供します。このレストランは駅前再開発の街区内に新しくできる施設内にオープンし、実際に浜松町で営業している飲食店のご協力のもと、期間を定め次々に店舗を入れ替え、一つの場所で様々な地方の料理を楽しんでもらうことが想定されています。劇場型レストランをきっかけに、浜松町への人の流れを生み、最終的には地方への観光のきっかけづくりとなることを狙いとしています。

発表スライド「レストランイメージ」
発表スライド「実現への6か条」

「浜松町 フード&館内マップ」は施設の館内情報、周辺の飲食店、観光スポットなどを一元化したデジタルマップです。意外と知られていない浜松町の魅力的なスポットを分かりやすく紹介し、「劇場型レストラン」と組み合わせることで、再開発街区だけではなく、エリア全体を巻き込んだサービスの提供で浜松町全体の魅力周知を行い、よりたくさんの人の流れを生み出すことが狙いです。

五感で楽しめる街だという気付き

ここからは提案に至った背景や、学生の皆さんから見た浜松町の街についてお伺いした座談会の様子をご紹介します。

東京都市大学キャンパス内でのインタビューの様子

ー最初に、みなさんの所属研究室について教えてください。

舘山さん このプロジェクトはマーケティング研究室とエリアマネジメント研究室が合同で行うゼミの一環で、各チームのメンバーは参加者の中からランダムで選ばれました。僕と鵜浦さんはマーケティング研究室に所属しています。マーケティング研究室は、普段は、例えば保険業界や金融について研究・発表を行うコンペなどに出ています。
鵜浦さん 今回のようなまちづくりのプロジェクトは初めてだよね。
舘山さん うん。慣れないこともあって、ちょっと難しいところもありました。
高橋さん 私と村田くんはエリアマネジメント研究室です。行政や民間のまちづくりの研究を行っています。今も浜松町とは別のプロジェクトにも参加しています。

「まちづくりプロジェクトには初めて参加します」

ー最初の浜松町の印象・今回の提案に至った背景は何ですか?

鵜浦さん 最初はフィールドワークで旧芝離宮恩賜庭園、あと海の方にも行って、めちゃめちゃ自然あるなって思って。それから増上寺にも行って、落ち着ける場所が色々あるから「リラックス」をテーマとするのがいいんじゃないかと思って。
舘山さん うんうん。あれ、なんで「五感」って出てきたんだっけ?
鵜浦さん 海の音とか。あと鐘の音とか…。
舘山さん あ、そうだそうだ。実際に現地に行って、色々感じることができたのが印象に残って「五感」に訴えることをテーマにしようとなって。それと浜松町の多種多様な飲食店があるという特徴から「食」と掛け合わせたりしてみようとなったんだよね。
鵜浦さん 最初は「五感」のお店を全部をやろうとしてたけど、先生から取り扱う対象が多過ぎるのではないかと言われて飲食店に絞っていったよね。そこからは意見も割れることなく進んでいって。
舘山さん とても個人的になってしまうんですけど、浜松町は僕ら世代には馴染みが無い場所だったので、新しい発見は割とたくさんあったんです。けど、それを提案につなげるところが難しかったですね。
村田さん 自分も浜松町は初めて行ったんですけど、観光する場所があっていいな、と思いました。
高橋さん 私は2つの研究室で合同でやったことで気付いたのですが、マーケティング研究室はとても積極的に盛り上げながら取り組んでいて、私たちエリマネジメント研究室はどちらかというと、それを下から支えていて。お互いの良いところで補えたことがとても印象的でした。
鵜浦さん 私はフィールドワークが初めてで。フィールドワークに行って分かることがたくさんありました。

「実際に浜松町に行くと良いまちだと思いました」
「お互いの良い所でフォローし合えたことが良かったです」

ーまちづくりプロジェクトを通して、浜松町に対する印象の変化はありましたか?

鵜浦さん 元々まちづくりとか建築には興味が無くて。最初はまちづくりと聞いて堅くて難しいイメージがあったんですけど、私たちの提案したレストランやマップみたいに、商品企画の視点からもまちづくりに参加できるんだなと気づきました。
村田さん 自分は別のプロジェクトと比べて、あらゆる角度から多面的に考えられて新しい見方ができました。
高橋さん 今回私たちは2位でしたが、1位のチームは、この言葉が合っているか分からないですけれど、ベンチャー気質というか勢いのある提案をしていた印象があって。今回のプロジェクトでは、若者ならではのパンチのあるアイデアが求められていたのだなと気が付きました。
舘山さん 今回のプロジェクトのように企業の方々を目の前にして発表させていただくという機会は新鮮でした。プレゼンの仕方も、話し方だったり引き込む力っていうのは大事なんだなと改めて気づかされました。
高橋さん 講評でいただいた「浜松町ならではの提案がもう少し欲しかった」というコメントが印象に残っています。
村田さん 実際に初めて浜松町を歩いてみて、個人的に見るべきスポットがたくさんあってすごい良いなと思ったので、今はたくさんの人に浜松町の良い所を知ってもらいたいと思っています。
鵜浦さん 実際に行くと分かるけど、浜松町は新宿や渋谷に比べて昼も夜も安全だなって思って。酔っ払いが絡んできたりとかもないので、若者が新宿とか渋谷と同じくらい気軽にご飯食べに行ける街になったらいいのかなって思いました。女子にも安全ですし。
舘山さん 僕は浜松町はすごく落ち着いているというか、日本の伝統を感じる上品な街になると面白いのかなと今は思っています。

「浜松町は上品な街になって欲しいです」

ー北見先生から見てこのチームの提案はいかがでしたか?

北見先生 チームでまとまってひとつの提案をつくりあげたことが分かって良かったです。当初は動画のインパクト、プレゼン力を持っていて優勝候補だなと思っていました。
舘山さん 悔しいです。
北見先生 クライアントの話をもっと聞く機会があったらよかったですね。そうしたらもう少し、どこにフォーカスするべきか分かったかもしれない。やっぱり事業者と学生の視点は違うのかもしれないね。

「クライアントの視点を持つことが大事ですね」

ー最後にこのチームを一言で表すと?

舘山さん 和むっていう字じゃない?「和」。
鵜浦さん 「和」?
舘山さん 雰囲気的に和んで、ピリピリしない、穏やかな感じでゆったりプロジェクトを進めていったんで、僕的には「和」です。
鵜浦さん やるときはやる。
舘山さん そう、そう、そう。良いチームでしたね。
一同 

「浜松町がもっと若者が楽しめる街になって欲しい」

今年の浜松町プロジェクトを振り返って

最後に、北見先生同様今回のプロジェクトに伴走くださった坂井先生からいただいたコメントをご紹介いたします。

「今後も浜松町の未来を学生と考えていきたい」

浜松町プロジェクトとして数年学生参加させていただいておりますが、本年は、独自の調査を行ったうえでの提案というプロセスをとりました。提案に結び付く調査とは?と考えながら現地を歩き回り、さらに実際の調査を通して、より浜松町の街の理解につながったと思います。他方で、観光拠点というお題につなげることにどのチームも苦労していたのが印象的でした。未来の浜松町の姿を、今後も学生とともに考えていけたらと思っております。

取材・文:齊藤宗英(Kプロビジョン)」/撮影:堀内彩香


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