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【心を亡くす恐怖】 『モモ』ミヒャエル・エンデ

1970年代にドイツの作家ミヒャエル・エンデによって書かれた児童小説です。

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モモという少女が,灰色の男たちという時間を奪っていく謎の組織と出会い,奪われた時間を取り戻す戦いを繰り広げるファンタジーです。ファンタジーですが,面白かったで終わるものではなく,自分の人生の幸せってなんだろうかと感じさせてくれました。

こんな人に読んでほしい

一言で言うと「忙しい」人です。忙しいというのは,心を亡くすと書くなどとよく言われますが,心を亡くしていませんか?ということを問いかけてくれる本です

正直最初の方は,物語がとてもゆっくりと進んで読むのやめたくなります。私も以前最初の方を読んでやめてしまった経験があります。笑
忙しい人にとって展開していかない物語は,ちょっと苦痛かもしれません。ただ,あえてゆっくりと進ませているのでは?と読んだ後に思いました。

もう一つは,「幸せってなんだろうかと考えている」人です。この物語で伝えたいことが唯一の正解ということはありませんが,自分の時間の使い方を振り返る良い機会だと思います。これは大人でも子どもでも関係ありません。

こんなところがグッとくる

この本は,時間泥棒という,時間をないがしろにしている人のもとに忍び寄ってきて時間を奪っていくという者が出てきます。この時間泥棒はフィクションなのですが,フィクションのようには感じません。特に今忙しい人は,この本を読んで,ちょっと立ち止まって自分の生活を考えることができるのでは無いかと思います。そして,自分の時間の使い方を見直してみるキッカケになるでしょう。

みんなに平等に与えられているもの,それは時間です。この時間が時間泥棒に奪われていませんか?そして時間を奪われ,ただお金を得て,お金を消費する人生って幸せなんでしょうか?そんなことを考えさせてくれます。

私が好きな場面

特にグッとくる場面は,道路掃除夫ベッポの登場シーンです。

ベッポはなにかされてもニコニコと笑うばかりで返事をしません。返事をしないのではなく,じっくり考えます。そして,答えるまでもないと思うと,だまっています。でも答えがひつようなときは,どうこたえるべきか,ようく考えます。そしてときには二時間も,場合によってはまる一日考えてから,やおら返事をします。でもそのときにはもちろんあいては,自分がなにをきいたかわすれてしまっていますから,ベッポのことばに首をかしげて,おかしなやつだと思ってしまうのです。(p.51)

ほとんど最近はテレビのニュース番組見ませんが,あれの逆と言えば良いのでしょうか。ある出来事に対して,良い悪いとコメンテーターがしゃべり,街頭の人がしゃべり,まとめる。1つの記事に対してごく短くこんな出来事がありました。良いですね。悪いですね。と流していく。そうではなく,自分の考えをじっくりと整理して,吟味して,そうしてから話し出す。という人です。

また,道路掃除の仕事の接し方にもいいなと思いました。

(ベッポは,)自分の仕事が気にいっていて,ていねいにやりました。とてもだいじな仕事だと自覚していたのです。
道路の掃除をベッポはゆっくりと,でも着実にやりました。ひとあしすすんではひと呼吸(いき)し,ひと呼吸ついては,ほうきでひと掃きします。ひとあしーひと呼吸ーひと掃き。ひとあしーひと呼吸ーひと掃き。(中略)
よごれた道路を目のまえに,きれいになった道路をうしろにして,こうしてすすんでいるあいだに,とても意味ぶかい考えが心にうかんでくることがよくありました。でもそれは,思いかえせばほのかによみがえってくるなにかのかおりとか,夢で見た色とかのように,人に説明することのできない,ことばで表現することのできない考えでした。ベッポは仕事がっすうんでモモとならんで腰をかけているとき,こういうふかい考えを話しました。(p.52)

他人と比較すると行動が遅くて,怠けているように感じるが,ベッポは道路掃除に真摯に向き合っていることが感じられます。そして,モモとの会話でしごとについてこう語っています。

「とっても長い道路をうけもったことがあるんだ。おっそろしく長くて,これじゃとてもやりきれない,こう思ってしまう。」
「そこでせかせかと働きだす。どんどんスピードをあげてゆく。ときどき目をあげて見るんだが,いつ見てものこりの道路はちっともへっていない。だからもっとすごいいきおいで働きまくる。心配でたまらないんだ。そしてしまいには息がきれて,動けなくなってしまう。道路はまだのこっているのにな。こういうやり方は,いかんのだ。」
「いちどに道路ぜんぶのことを考えてはいかん,わかるかな?つぎの一歩のことだけ,つぎのひと呼吸のことだけ,つぎのひと掃きのことだけを考えるんだ。いつもただつぎのことだけをな。」
「するとたのしくなってくる。これがだいじなんだな,たのしければ,仕事がうまくはかどる。こういうふうにやらにゃあだめなんだ。」(pp.52-53ベッポの会話のみ抜粋)

1つ1つ今のこと,つぎのことのみに集中して,行っていく。いわゆるマインドフルに行動するということですけれども,そうしていると楽しくなってくる。そして,知らぬ間に仕事がはかどる。ということです。心を亡くしているとそうはいきません。自分の行動がベッポのようにやれていますか?深く考えさせられるエピソードでした。

以上,こんな人におすすめでその理由と一部エピソードを紹介しました。ぜひ読んでみてください!

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2021年3月から長泉町にある個別指導の学習塾「濱塾」を経営している高濱と申します。教育に関する情報を発信していきます。