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ネイティブ・ジャパニーズからの贈り物

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ネイティブ・ジャパニーズ探究家 亀山理子が東北の小さな浜からお届けするLIFEマガジンです。土地に根ざし、自然とともに暮らすネイティブ・ジャパニーズから教わった知恵や学び。自身の…
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#食べる

#8 浜のネイティブ・ジャパニーズ(前編)

 私にとって旅は発見であった。私自身の発見であり、日本の発見であった。書物の中で得られないものを得た。−(中略)− 人の生活の場にはそこに百年の歴史があれば百年間の、百人の人が住めば百人の、それぞれの生活の歴史がひそんでいるはずである。そういうものをかぎわけて追求してゆくことによって、人は如何に生きて来たかを発見することがわかるばかりでなく、いま自分の立っている位置もおのずからわかって来る。  −(中略)−  私は日本という国はそのようにしてもう一度見直すべき国だと思う。国と

#7 希望をつなぐ(後編)

 #6で書いたような話し合いと準備を経て、いよいよ2021年11月、はまぐり堂にて、浜のお母さんたちと若者たちが交流する初めての体験ツアーが開催されました。  朝、浜に集合したツアー参加者の皆さんは、はまぐり堂オーナーの亀山と一緒にカゴ漁の体験からスタート。 私としょうこさんのスタッフ2名はお米を炊いたり味噌汁や魚のフライ、野菜のお惣菜を用意したりして、お昼ごはんの支度をします。  お昼近くになると、今回協力してくださる2人の浜出身のお母さんたちも到着。それぞれが作ってき

#6 希望をつなぐ(中編)

 前回#5では、結城登美雄先生のお話と、はまぐり堂の取り組みについて、地元のお父さん・お母さんたちと共有する機会をいただいたお話を書きました。それを通じて、みんなで未来の子どもたちへ"足元の宝もの"をつないでゆくために、世代を超えた協力の場を作っていこう、という取り組みがいよいよスタートしました。  2021年11月。取り組みの第一歩として、地元のお母さんたちと一緒に、はまぐり堂で体験ツアーを開催することになりました。  お母さんたちに季節の恵みを生かした家庭料理を持ち寄っ

#5 希望をつなぐ (前編)

 前回#3、#4でご紹介した、サステナブルデザイン工房さん主催の「石巻のもう一つの宝を見つける」をテーマとした地域の学習会。  私たちが初めて参加させていただいたその翌月の会では、ゲスト講師の結城登美雄先生から参加者の皆さんへ向けて、次のような提案をいただきました。 「これからの地域づくりを考えたときに、食べものをベースに置きながら、次の世代がやっていける、そんな方向も見据えて、みなさんが積み上げてきた経験と知恵と…いろんなものをぜひ、アドバイス、リレーさせていただければと

#4 足元の宝ものを見つける(後編)

 前回#3に記したとおり、私たちは2021年5月、「石巻のもうひとつの宝を探す」をテーマとする学習会(主催・サステナブルデザイン工房)に参加し、そこで東北の民俗研究家・結城登美雄先生との出会いがありました。  その際「ぜひ今後の学習会で、参加者の皆さんにもはまぐり堂の活動の話をしてもらえないか」とお声がけをいただき、次回の学習会に向けての話し合いも兼ねて、結城先生と運営スタッフの皆さんが、はまぐり堂に足を運んでくださいました。  結城先生が、ご自身が編纂した宮城の農山漁村

#3 足元の宝ものを見つける(前編)

 前回#2でご紹介した、学生時代に私が本を通じて大きな影響を受けた民俗研究家・結城登美雄先生。それから十数年の時を経た2021年5月、ひょんなご縁から、初めて結城先生ご本人とお会いするという、とても嬉しい機会をいただきました。  石巻でリサイクリエーション活動を行う「一般社団法人サステナブルデザイン工房」さんが主催する、地元の人たちのための学習会。そこに結城先生が講師としてお話に来られるのでぜひ参加してみませんか?と、知り合いの方から声をかけていただいたのがきっかけでした。

#2 食べることは生きること(後編)

 前回の#1では、「健やかに食べ、生きること」を求めてあらゆる食にトライした学生時代の私が「食の迷子」になった末、本を通じて江戸時代の食医・石塚左玄先生に出会ったことについて書きました。  今回はもう一人、私の食にまつわる探究に大きな影響を与えた東北の民俗研究家・結城登美雄先生の本との出会いについてお話しします。  結城先生は1945年山形生まれ。広告会社の仕事を経て、40代の終わりから東北各地の農山漁村を訪ね歩くフィールドワークを続けて、地域の人々の声を拾い集めながら地域

#1 食べることは生きること(前編)

 今回は、なぜ私がこんなにも長い間ずっと、ネイティブ・ジャパニーズという生き方に惹かれ、探究し続けてきたのかについて、少しお話ししたいと思います。  一つめのきっかけは、前回の「はじめに」の回でも触れたとおり、学生時代に文化人類学や民俗学に興味を持ち、先住民族の人々の生き方や知恵に興味を持ったことでした。  そしてもう一つの大きなきっかけは、学生時代に、「食」についても興味が出てきたことにあります。  当時はちょうど、子育ての終わった私の母が一念発起して専門学校に通い鍼灸

はじめに

 初めまして。ネイティブ・ジャパニーズ探究家・亀山理子です。  宮城県・牡鹿半島の蛤浜という浜に夫・亀山貴一(はまぐり堂代表理事・小漁師)とヤギたち、猫たちと暮らしています。はまぐり堂では、スタッフとして料理・お菓子・SNS広報などを担当しています。  このマガジンを読んでくださる方の中には、「そもそも"ネイティブ・ジャパニーズ"とはなんぞや?」と思われた方も多いのではないかと思います。  私が「ネイティブ・ジャパニーズ」という言葉を知ったきっかけは、作家・北山耕平さんの著