プリンターを買いに、

2020年の今年、年賀状を作る事が億劫でならなかった。毎年慌ただしくて面倒だけれど、一応「絵師」もしくは「グラフィックデザイナー」と名乗っているので端折るわけにはいかない。それにしても…だった。世界的緊急事態のせいでちっともめでたい気分にならないもんね。

でもやっと重い腰をあげて、パーツ交換が必要…つまりはもう寿命だと思われるプリンタ君に見切りをつけ、毎年自分でイラストを描いて自宅プリンタで出力必須な年賀状を作るべく(去年は写真屋に頼んだのだがデータをJPEGに変換しなくては印刷できないらしく僕のMacで描いたイラストは変な色とフチありになってしまったのだ)泣く泣く近所の家電量販店へ新しいプリンターを買いに行ったのだった。

インクコストが高いことで文句ブーブーのEPSON機が僕の愛用プリンタだ。発色がいいから社畜だった頃から職場であるデザインプロダクションでも使っていた。でも数年前からエコタンク対応機が出たと宣伝していてそりゃいいじゃんと狙っていた。6色のカセット式はホントに使い勝手とコスパが悪い。色はキレイなのだけれども。

そう思い、だいたいの目星をつけて売り場でプリンターを眺めていたら店員のオニーサンに声をかけられた。ネットで軽くスペック等を調べただけだからココは話を聴いた方が得策だと思い、狙っている機種と欲しい機能を言ってみた。

こんなギリギリの年の瀬だ。みんな後回しにしたけどやっぱり出さなきゃアレかなぁと年賀状の為にプリンターを買いに来る。店の人にとっては儲け時だ。売れる時に売りたいだろう。僕のそばにくっついてきたオニーサンも明るく爽やかに僕の要望を聴きテキパキと各メーカーのプリンターの特徴やなんかを説明しだした。本当に澱みなく滔々とよく喋る。説明の大半は、おっとりしている僕には早すぎて右から左へ受け流してしまったがだいたいの要点は掴んだ。やたらとCanon機を勧めてくる。挙句EPSONは在庫があまり無いと言う。「ありがとうございます。ちょっと考えますね、」と言って僕はオニーサンを遠ざけた。

Canonは、少ししか使った事がなくてあまり馴染みがなかったし、割と色味がくっきりしている僕のイラストには不向きな気がする。やっぱり使い慣れたEPSONがいい。そして聴いてよかったと思ったのは、エコタンク方式のは色数が少ないので僕が最近まで使っていた6色カセット方式ほどキレイな出力は出来ないらしいのだ。だったら1年のうちそんなにしょっちゅう大量の出力をする訳でもないから6色のカセット方式でもいいやということ。

オニーサンは他の接客をしながら、ううむと考え込んでいる僕をチラチラ気にしていた。

ウロウロしていたが、今日買って、即お持ち帰って、それから年賀状の絵を考えて描いて、セッティングして急いで作らなきゃもう間に合わない。Canonに傾きかけたがやっぱりEPSONに決定した。再びにじり寄ってきた売り場のオニーサンに告げると、大きな身振りで肩を落としてみせたから「ん?」と思った。「ああ〜やっぱりCanonには踏み切れませんでしたか〜。使い慣れたEPSONですよねやっぱり…」

いくつかの確認をしてオニーサンは僕の指定したプリンターの在庫をとりに行った。その背中を見送っていたら気付いた。オニーサン、Canonのロゴが入ったブルゾンを着ている。そっか、そうだったのか、悪いことしちゃったっていうか、妙にCanon推しだった意味をようやく理解した。買って欲しかったのねCanonプリンターを。Canonからマネキンで借り出された営業スタッフだったのね。

長々と話を聞いていた割にオニーサンのスタッフブルゾンに気付かなかった僕も抜け作だ。

そんなこんなでEPSONの今年10月にリリースされた通信が楽チンなヤツをその場で買ってお持ち帰った。

さっきまで図案を考えていた。干支ばかりじゃ芸がないな、ちょっと凝ったイラストを丸ペンで漫画タッチで描いてスキャンして色をつけて…って作業工程を考えながら、日付が変わってしまったので本格的に作るのは今日にしようと思ってベッドでコレを書いている。

みなさん、今年は年賀状どうしますか?

ってなわけでそろそろ寝る。おやすみ。

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