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小説「蚕殺し」オリジナル まとめ

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蚕殺し

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ソナチネの章


その知らせは桑畑の広がる里を凍らせた。

―くるぞ。

 人々は声を低くし口々に囁き合い、すさまじい泥流の勢いでその「知らせ」は瞬く間に里じゅうを駆け抜けた。
 しかし禍々しい知らせとは対照的に、さんさんと陽の光を浴びて無邪気に光合成する桑の葉はこの季節、いちばん美しかった。

「彼女」は桑の匂いが好きだった。
 身の丈を軽く越す、しかしそれほど高くはない種の桑の木々の海の中で

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