見出し画像

読書感想文 『キッチン』

私がこの世でいちばん好きな場所は台所だと思うー
祖母の死、突然の奇妙な同居、不自然であり、自然な日常を、まっすぐな感覚で受けとめ、人が死ぬことそして生きることを、世界が不思議な調和にみちていることを、淋しさと優しさの交錯の中で、あなたに語りかけ、国境も時も越えるロング・ベストセラー、待望の定本決定版。〈吉本ばなな〉のすべてはここから始まった。

吉本ばなな『キッチン』あらすじ

 この本を読んで、すっかり吉本ばななさんのファンになってしまった!なんで今まで読んでこなかったのだろう。と思ったけれど、今、出会うべき本だったのかな。

心の中にあたたかい光が残像みたいにそっと輝いて、これが魅力っていうものなんだわ、と私は感じていた。

透明にしんとした時間が、ペンの音と共に一滴一滴落ちてゆく。

人の心には宝石があると思わせる。

吉本ばなな『キッチン』

 言葉って芸術なんだな。と思わせる、吉本ばななさんの美しい表現が好きです。

いかに力強く苦しんでいても同情の余地はないわ。だって私、体を張って明るく生きてきたんだもん。

世界は別に私のためにあるわけじゃない。

二人してもっと大変で、もっと明るいところへ行こう。

吉本ばなな『キッチン』

泣きそうで、でも温かい。淋しいけど優しい。そういう相反する感情が、当たり前にある。それが日常なのかも知れないと、この本を読んで気付きました。
この物語のような状況は、よくあることでは決して無いのだけれど、自分には起こりそうもないその状況の中で、何か知っている感情を見つけた。

「世界は別に私のためにあるわけじゃない」という言葉を、何て希望に溢れた言葉なのだろうと、救われる思いで読みました。

愛する人たちともいつまでもいっしょにいられるわけではないし、どんなすばらしいことも過ぎ去ってしまう。どんな深い悲しみも、時間がたつと同じようには悲しくない。そういうことの美しさをぐっと字に焼きつけたい。

吉本ばなな『キッチン』 そののちのこと(文庫版あとがき)

 文庫版あとがきを読んで、『キッチン』という物語がより一層尊いものに感じられました。吉本ばななさんのこの思いが、『キッチン』という作品からすごく伝わってきたから。苦しい時間も、かけがえのない美しい時間も、過ぎていくものだから、だから尊くて、大切なんだと、そう教えてもらったように思います。
 しばらくは、吉本ばななさんの作品ばかりを読んでしまいそうです。

この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?