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“保護猫カフェ”体験記

地元にある“保護猫カフェ”に行ってみた。

なにしろ現在は「猫プチマイブーム」の真っ最中なのだが、とにかく「いのちを預かることの重み」を忘れる軽挙妄動だけはしないようにしたいところ。

「のんびり猫と触れ合う」だけでなく、「プチマイブームを鎮火させる」作用も期待しての“保護猫カフェ”だった。


予約したのは週末の午後。住宅街のふつうの民家である。「定員5名」ということで、なるほど、あまり広くないリビングルーム風の空間が会場になっていた。靴を脱いでスリッパに履き替える。スタッフさんはとても親切だ。

意外なところが心理的なハードルだった。

猫や人間がリラックスするようにしつらえられたプライベート風空間に、見知らぬアカの他人と共存するのがなんとも不思議な感覚なのだ。ひとりで来ている女性やカップルの中にポツンと混じったおっさんがひとり。もちろんそんなおっさんの居心地の悪さなんて誰も気にしないことも承知しているのだけれど。

ざっと7〜8匹の猫がいた。

中には人懐っこいタイプもいて、ノソリノソリとおっさんのひざの上に登ってくれると、なんとも嬉しい。その適度な重みと体温は、写真や動画では味わえないもの。それがプイといなくなるとがっかりして、「ほかの客に比べてワシはダメだなあ」などと考えている。

30分ほど経過したところで“おやつタイム”になり、スタッフさんが「ちゅーる」というペースト状の袋と、半生のかつおエサを渡してくれた。めざとい猫たちはすぐに察知してプチ興奮状態、すぐに群がってくる。

「ちゅーる」というのはテレビCMでよく見かけるやつだ。どうやら猫業界方面では有名な存在で、スタッフさんによると、私のところに突進してきた茶トラくんは「ちゅーるしか食べない」そうだ。専用のスプーンに絞り出すたびにものすごい勢いでがっついてくる。ほかの猫にもあげようと手を挙げてしまうと、その手をグイッと自分の方に引き寄せる。別の猫は私の指ごとかつおに食らいつく。可愛くみえても、やっぱりケダモノなのだ。それがまた魅力なのだろうな。

あっという間の1時間だった。カフェといいながら、人間さまの飲料は缶またはペットボトルで、料金は1000円。予想通りに黒いニットジャケットと黒ジーンズは猫の毛だらけになったので、備え付けのコロコロを使わせてもらった。

やはり、不思議な動物である。見ているだけで楽しいし、そばに来てくれたらもっと嬉しい。こんなのがいつも家にいたらいつまでも飽きないかもしれない。つまり「おっさんはまんまと癒やされた」と言っていいのだろう。

それでも。

大量の抜け毛には閉口させられそうだ。毎日のエサやりや排泄物の処理は、どう考えても億劫だ。その他グッズを取り揃えたら、ますます部屋が狭くなる。病気もするだろう。図書館本にいたずらされてはたまらないし、なによりも、一番大切な「本を読む時間」を侵食されるわけにはいかない。

YouTubeを眺めたり、“猫本”を読んだり、たまには“猫カフェ”で実物の体温を感じたり。自分にはそんな距離感でのおつきあいが丁度いいのかもしれない。この感想が最大の収穫になった。
(22/3/6)


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