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ユリ・ゲラーは“超能力者”?

公式に「認定」するのは、まずい

2020年の大晦日にあのユリ・ゲラー氏が母国イスラエルで新型コロナウイルスワクチンの接種を受ける瞬間にスプーンを折ってみせた、という話題があり、日本の各社もそろってニュースで取り上げた。当時私は外信部デスクで、たまたま自分のシフトに当たっていたので出稿を担当した。

ちょっと悩んだのが、ユリ・ゲラー氏をどのように紹介するか、ということだ。原稿で「超能力者のユリ・ゲラーさんが、、、」としれっと書いてしまうと、テレビ局として超能力の存在を認めたことになってしまう。それはまずいだろう。

各社の当時のニュース原稿がネット上に残っている。

「あの“得意技”を披露です」

「スプーン曲げで有名な自称『超能力者』のユリ・ゲラー氏(74)が」

「日本に超能力ブームを巻き起こしたイスラエル人、ユリ・ゲラーさんが、自身の代名詞でもある『スプーン曲げ』をしながら新型コロナウイルスのワクチン接種を、、、」

「病院の診察室でスプーンを片手にもつのは、自称“超能力者”のユリ・ゲラー氏です。」

「カメラに向かって話すのは、1970年代の『超能力ブーム』で日本でも人気になったユリ・ゲラーさん」

「スプーンを曲げるなど数々の怪奇現象を披露してきた自称超能力者のユリ・ゲラーさん(74)」

(↑私が知恵を絞った原稿も掲載したが、noteでは私の所属会社を明らかにしていないので特定を避ける)

同じ懸念を持ったのだろう、各社が工夫をこらしているのが伺える。

この中にはかつて“超能力ブーム”を仕掛けたテレビ局の原稿もあり、ネット上には「あの頃にはさんざん煽っておいて、今さらこんな風に書くのか」と揶揄している書き込みもあった。

変わらぬ“芸風”

それにしてもユリ・ゲラー氏、74歳には見えない若々しさだった。これも“超能力”のひとつなのか?いまだにスプーンを曲げ続けていてそれを巨大通信社が世界に配信するほどなのだから、芸風は微動だにしていない。これが日本の伝統芸能だったら、紫綬褒章モノだろう。

スプーン業界はどう見ているのか

ユリ・ゲラー氏の至高の芸。やはりありふれた生活用具がグニャっと曲がることのインパクトが大きいのだが、そもそもなぜスプーンなのか。

昔、ダウンタウンの漫才に「スプーンそんなに曲げたら、カレー屋さん怒ってくるやろ」というネタがあったそうだ。「食べ物を粗末にしてはいけない」が、「食べるための器具を粗末にする」こともよろしくない気がする。

食器といえば新潟県燕市。

テレビ番組の中でユリ・ゲラー氏が挑戦しながらついに曲げることができなかったほど硬いスプーンが、燕市産業史料館に展示されているという。ゲラー氏をして「私が曲げられなかったスプーンに出会ったのは初めてだ」と言わしめた。

スプーン業界、楽しんでいるではないですか。非常に正しい超能力の“使い方”だと思う。
(21/11/18)

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