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適度に忙しくないとつらいばかりで

 “スランプ”という単語を意識したのは小学生の頃だったか。

 巨人がV9街道をまっしぐらだったプロ野球で王や長嶋の不振について頻繁に使用されていたように記憶する。さらに、筒井康隆「地獄の沙汰も金次第」のイラストでは、トラキチの山藤章二さんが「“スランプ”といえば田淵」とボヤいていたのも強烈に覚えている。

 ON(王・長嶋)や田淵とは比べようもない定年再雇用おやじの身ながら、私も昨年後半から一人前にスランプに陥っていた。4月初頭にある大プロジェクト(当社比)の責任者ながら、さっぱり作業に集中できない。手がつかないのである。かなり苦しいもので「もう一切合切を放り出して隠居しちゃおうか」という考えも頭をよぎる。

 やっと先週あたりから脱出の兆しが出てきた。何のことはない、いよいよ期日が迫ってきたらお尻に火がついて集中することができるようになったのである。期日が近くならないと進まないことがあるので仕方ない側面もあるが、とにかくそれまでの宙ぶらりんは苦しかった。

 東南アジアの支局にいた際、ある大使館員の奥さまが「亭主について赴任してきたけど、仕事がなく家でぼーっとしていたら円形脱毛症になった」とぼやいていた。日本では女性警察官としてバリバリやっていた方だそう。

 「働いてないとなんだか不安」とは、私もその方も“貧乏性”であることだ。65歳で“本当の定年”を迎える時は要注意だな。
(24/1/30)

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