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「代わりのいないあなたに」

 かつての風邪薬のテレビCMに、「代わりのいないあなたへ」というコピーがあった。千堂あきほが出演していたように記憶するが、「風邪薬 CM 千堂あきほ」でググっても見当たらなかったので、ここは間違っているかもしれない。

 CMには電車運転士らしき制服制帽姿の男性や受験生アイコンの鉢巻姿の学生服の男性など数人も並んでいた。「あなたには代わりがいないでしょうから、この風邪薬を服用してがんばってね」ということか。「ああ、なるほど風邪すらひけない人たちって多いんだなあ」とぼんやり考えていた。

 風邪ではないが、2020年からのコロナ禍では、こうした人たちも罹患が相次いだ。そして病院や警察などでシフトがきつくなったことが伝えられたのである。

 仕方がないではないか。

 マスク・手洗い・消毒をしっかりしていても、かかるときはかかる。休まねばならない人は「迷惑をかけて申し訳ない」と思うだろうが、そこは“お互いさま”であることはみんなわかっている。ウチの職場もカバーしあってなんとか乗り越えた。

 そう考えると、リアルに「代わりがいない」のはテスト当日の受験生だけのような気がする。
 
それだって新型コロナでは一応の救済措置は取られていた。はたして普通の風邪やケガだったら救済されるのか?

 「俺には“代わり”がいないんじゃー」と悲壮な覚悟を持つことが多い日本人。ところが、実は本人が考えているほど代わりがいないわけでもなかったりする現実もあって、その姿はちょっと滑稽に見える。

 まあ、一家の大黒柱の“代わり”はリアルに存在しない。だから、せめてホントに深刻な病気などに備えて、生命保険などで金銭の用意をしなくてはいけないわけだ。それも、もう下の子の大学卒業も間近になってくると「そろそろ、ほどほどでいいのかな」なんて考えている。
 
 “代わり”を必要とされなくなるのも、さびしいことだが。
(22/9/20)

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