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あなたの常識は、私の・・・

 私は朝のニュースはNHKの一択だ。タレントさんたちのプロモーションを垂れ流すだけのエンタメ情報にも占いにもまったく興味がないので、民放を見る気にはならない。

 NHK朝ニュースには「地域の話題やニュースをお届けする地域発ニュース」というコーナーがある。さすがは地方の支局網がしっかりしているNHKだけに、日本各地の多彩な表情が見られて面白い。

 けさのことである。コーナー終了後に女性アナウンサーが「さきほどの青森のニュースでお伝えしたのは“おうしゅうし”でした。失礼いたしました」と訂正して頭を下げた。同業者として「他山の石」にしたい、というよりも、単に他人のミスが好きな私。早速24時間録画でたどってみる。

 MLB大谷選手の出身地にWBCでの雄姿を描いた田んぼアートが出現した、というもの。岩手県奥州市なのだが、これを「おくしゅうし」と読んでいたのである。おやおや、原稿にルビを振っていなかったに違いない。

 女性アナウンサーの地名に対する無知を嗤うのは簡単だ。しかし、この場合は出稿する側があまりに無頓着・無造作すぎるのではないか。

 制作過程ではきっとこんなやりとりがあったに違いない。

 「おーい、きょうのネタ候補はどうなってる?」「はい、ラインナップはこっちになっています」「お、じゃ、まず1本目は青森田んぼの大谷、な。2本目は・・・、3本目は・・・で行くぞ」「へい、了解です」。

そこでスタッフは各支局からの原稿を整えてVTRを編集して、はい、出来上がりだ。

 オリジナル原稿は青森のローカルニュースに出稿したものだろう。執筆した青森支局にとって奥州市の読みが「おうしゅうし」であることは、呼吸をするほど当たり前のことであって、わざわざルビを振ることなどはしない。というか、「こんなものにもルビを振っていたらアナウンサーに失礼だろ」と無意識に判断するレベルなのだろう。

しかし。

青森に縁がない東京のアナウンサーにとって「おうしゅうし」という読みは常識の埒外だった。ルビがなければ普通に「おくしゅうし」と読んでしまっても非難できない。

悪いのは青森支局でも、女性アナウンサーでもない。そこまでの想像力を働かせることなく漫然と原稿をコピーして出した東京のスタッフだ。

以上は完全に私の妄想にすぎないが、おそらく現実から大きく外れてはいないと思う。

「私の常識は、他人の非常識」。これを肝に銘じて緻密にやらないと、恥をかく。
(23/6/28)

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