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「新聞連載小説」のステータス

 今週から朝日新聞で今村翔吾さんの連載小説「人よ、花よ、」が始まった。まだ数回だが“今村節”がさっそくうかがえて、今後の展開が楽しみだ。

 連載に先立って紙面に作者のことばが掲載されていた。

 「依頼は2年以上前のこと。当時、まだデビュー3年の作家に歴史ある連載の紙面を任せようというのだから耳を疑った」
 

 今村翔吾さんといえば、いまや押しも押されもせぬ第一人者だし、これからも当代を担う人気作家であり続けるだろう。しかし直木賞を獲得したのは今年で、私も2年前は存在を知らなかった。小説雑誌ではなく、“天下の朝日新聞”からの依頼だ。今村氏が驚いたであろうことはよくわかる。そして、今村氏がここまでの人気作家になると当時から見抜いていた担当者の慧眼はすごいものだ。


 吉川英治の名作「宮本武蔵」も朝日新聞の連載だった。文庫の惹句だったか「日本中が毎日一喜一憂した」とあったし、続きを待ちきれない読者が新聞販売店に押し掛けた、というエピソードも「宮本武蔵」だったのではないか。いまからは想像もできないほど新聞メディアに影響力があった時代なのだな。
 
 いまの作家さんにとって新聞連載小説というのはどういう位置にあるのだろう。もちろんステータスであることは変わっていないだろうが、注目度が高いだけに滅多な駄作は出せないし、「中断できない」というプレッシャーも相当なものだろう。
 
 小説の技巧においては「細切れで毎日出す」という形態で読者の興味をつながなければならないのは、どのような影響があるのだろう。出版する際には加筆が必要なのだろうか。そのあたりもちょっと興味があるところ。
(22/8/18)

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