豊富なエピソードと安定の語り口【感想文】「将棋指しの腹のうち」先崎学
(プチネタバレあり)私は、棋譜が読めない「観る将」。興味は常に「棋士」という存在に向いているので、先崎エッセイは大いに楽しんでいる。本書でも豊富なエピソードと愉快な語り口は健在だが、ちょっと噺の並べ方が乱暴な部分も散見されるのが残念。一番面白かったのは、体育館での公開対局に巨大駒を持ち込み、それを30人の奨励会員がヒーコラと動かしたというエピソード。終了後にわずか2人の割り勘で高級焼肉店で全員を労った先崎氏と佐藤氏の男気にホロっとした。うつから復帰され、またこうした本を書けるまでになったことがめでたい。
(21/6/19)