僕の好きな詩について 第二十五回 大手拓次
僕の好きな詩について語るnote、第二十五回は大手拓次です。
ハードな雰囲気の詩がかっこよい詩人なのですが、あまり知られていないように思います。
ではまず詩をどうぞ。
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「黄金の闇」大手拓次
南がふいて
鳩の胸が光りにふるへ、
わたしの頭は醸された酒のやうに黴の花をはねのける。
赤い護謨のやうにおびえる唇が
力なげに、けれど親しげに内輪な歩みぶりをほのめかす。
わたしは今、反省と悔悟の闇に
あまくこぼれおちる情趣を抱きしめる。
白い羽根蒲団の上に、
産み月の黄金の闇は
悩みをふくんでゐる。
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まずもう出だしの「南がふいて」でやられますね。
この詩の底に流れる硬質な雰囲気は何者でしょう。
大手拓次氏は生涯独身だったので、出産は暗喩で、創作の苦しみについて歌っているのではないかと思いますが、臨場感が凄いです。
大手氏は萩原朔太郎や北原白秋に認められていましたが、あまり詩壇の付き合いがなかったので生前には詩集が出版されなかったし、変わった人だと思われていたようで、死後二年経ってから、数年にわたって数冊の自作詩集や翻訳詩集等が刊行されました。
さらにその後、第一詩集が発売されてから34年後に全集が500セット限定で販売されましたが、数が少ないこともあり、現在は中々の値段で売買されています。(Amazonで全六冊の中の第五巻のみで五万円で販売されているのを見ました。)
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