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なんでもない日だった、ということにしておく

1月31日
本日、23歳になりました。

誕生日、昔は無条件で楽しみな日だった。
朝起きて、自室から茶の間へ行けば両親が『おめでとう』と言ってくれて。
学校でも、友だちからお祝いの言葉やプレゼントを貰えて。
その日の夕飯は少し豪華で、自分の好きなメニューばかりずらっと並んでいて。
食後には、年の数だけロウソクの火が灯ったケーキが出てきて。
吹き消したら、切り分けたケーキと上に乗っていたチョコレートのプレート、そしてまたプレゼントが貰えて。

それが、今では特にこれといった予定もない、普段と変わらない1日である。
ありがたいことに、メッセージをくださる方がいて、その方たちのおかげで、今日が自分の誕生日であるという認識を保てた。本当にありがとうございます。あの瞬間、生まれてきてよかったんだって思いました。

さて、そんな年に一度だけ自分が生まれたことを祝ってもらえる日に、私はホテルのバイトをしていた。
出かける予定でもあればいいが、私には一緒に祝ってくれるような友人はそういない。というか今日平日だし。私の誕生日など、他の皆様にとってはただの1日だ。付き合ってもらうのなど、おこがましいにもほどがあるでしょう?

しかも、神のいたずらか、担当したのは葬式終わりの食事会のサービス。にこやかな笑顔など御法度の空間。
生まれた日に死関連の仕事て……。そんな小言をひとり呟きながら、担当卓のおじさま方のわがままに振り回されまくった。

夕方でバイトが終わり、いよいよ予定が無である。
仕方がないので、好みのケーキを買いながら帰宅、以前購入した冷凍肉を解凍し、豚肉茶漬けを作る。ケーキには、別売りで買った『HAPPY BIRTH DAY』の文字のプリントされたチョコプレート株の空欄に、『もちこ』と自分の名を白いチョコペンで書き入れて添えた。

皆さま、これが独り身の誕生日です。
どうです?寂しいでしょう?
これ、常人だったら心おかしくして死に至る危険もある行為ですよ?
私は、長年のひとり生活と特別な訓練のおかげで、むしゃむしゃとケーキむさぼり食えましたけれども。

茶漬けもケーキも食べ終わり、ごろんとロフトで寝転んでみる。
こういうとき、『ひとり』と『貧乏』を恨めしく思う。
私に、一緒に自分が唯一主役になれる日を過ごしてくれる恋人ないし友人がいたら、こんな真顔でごろ寝してなかっただろうに。
私に、なんの心配せず使える自由な金がある程度あったら、やれ映画だやれカラオケだって遊んで、この切なすぎる時間をないものにできたのに。
そんな残念なことを考えながらも、無情に時は進んでいく。あと2時間もすれば誕生日が終わり、また日常が始まる。
「ケーキ、500円は高かったかな……」
嗚呼、呟いても一人。

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