最後に

 年の瀬が近づいている今、最後の更新からかなり時間が経ったのを思い出した。
身辺に大きな変化があり、すっかり更新することの無くなったこのnoteシリーズ。これで最後にしようと思う。

 あれから私は大きな決心をした。
五年ほど密かに片想いしていた人と結ばれたいと。
もっと早くに想いを伝えても、と読者諸兄らは考えるだろうが、彼と自分との年齢を考えて踏みとどまったのだ。
 彼と出会い、好きになったのは私がまだ高校生の頃。一方で彼は社会人一歩手前。
まだ成人年齢が引き下げられる前の事としても、未成年と成人の交際に対する印象はあまり良くない。
 私自身、家庭環境が宜しくない上に人としても未熟な部分が多かった。
それに、抱えた想いが「大人への憧れからくる好意」ではないとはっきりさせなければ、彼に対して不誠実だ。
 そう決めてから早5年、ずっと好きな想いのまま。誰にも打ち明けないまま。
想い続けた年月が生半可な想いではないと自分に証明できた。
 早く彼に想いを伝えたい。そう強く思った。
想いの強さと裏腹に危惧していたのは、親が自分の都合で結婚を決めてくる可能性があったからだ。
そんなことになるのなら死んだ方がマシなのだが、あの親とは道理が異なるので理解されないだろう。
 このまま死ぬまで親に利用され、苦しみのまま生きていくことも出来ただろう。
しかし、生涯に1度くらい世の中の人々のように色恋に花を咲かせても罰は当たらない。
例え散ってしまったとしても、彼との出会いを想い出に地獄で生きようと。
今では考えられない事だが、当時は玉砕覚悟でいたのだ。

 そうと決まれば行動だと、まずは彼と親しくなる事から始めた。
当時、初めて遊んだとあるゲームが彼のお気に入りシリーズの新作で、パーティープレイ可能なこともあり一緒に遊ぶ約束をした。
 今まで2人きりで話す機会もなかった為、始めは緊張と高揚でどうにかなりそうだったが、持ち前の自制心でどうにか抑えることができた。
楽しい時間はあっという間に過ぎる。親が帰ってくる前に終わらなければならない。
 今回を最後にしたくない思いで遊び終わりに次の約束もしたが、今思えばかなり強行だったかもしれない。
実際には彼もまた私と遊ぶのが楽しかったようで、来週の同じ時間にまた遊ぶことにした。

 そうして、毎週のように遊んでいくうちに、彼に対する感情がどんどん深くなっていった。
深い深い池の水が、底がなくなってもしっかりと満たされているような。不思議なものだ。
 数ヶ月ほど2人で遊んだ冬のある日。
ゲーム内での連携は完璧で、すっかり自然体で話せるようになった頃のこと。
そろそろ自分の想いを打ち明けても良いだろうと、意気込んでゲームを開いたのを覚えている。
 しかし、結果は空振りに終わった。
中々勇気が出せず、ゲーム中なこともあってタイミングが読めなかった。
言い訳がましいが、とにかくその日は伝えられなかったのだ。
 その事を翌日まで凹んでいたが、やはり今すぐにでも言うべきだと思い直し、メッセージとして自分の想いを送った。

 結論から述べるとすれば、彼もまた同じ想いだった。
昨日遊んでいる時、彼もまたタイミングを読めずに言い出せなかったのだという。
 私が5年も片想いをしていたことには気づかなかったらしいが、一緒に遊んでいくうちに惹かれたのだと後に聞いた。

 交際を始めてから早い段階で、私は自分の家庭環境を明かした。読むのは少しずつで良いからと、このnoteのことを知らせもした。
それでも私に関する事だから、と彼は一晩の内に読み終えた。
平穏な家庭で育った彼は、このnoteにかなり衝撃を受けてしまったようで、2人して電話越しに目を腫らした。
 その時、彼は私に約束をした。
私をこんな地獄のような日々から1日でも早く救い出す。誰よりも幸せにする。
このnoteをハッピーエンドで終わらせる、と。
こんな私にそこまでの想いを向けてくれたのは、彼が初めてだった。

 彼がそう約束した通り、同棲まであっという間に進められた。
 彼の親は当然ながら困惑したようだったが、私の家庭環境が酷かったのを彼が説明してくれた。
 私の親には家を出る二ヶ月ほど前に彼がいること、同棲することを伝えた。
 父からは祝われもしなかったが、色々と小言や説教のようなものを語ってきた。
その上、一ヶ月の家族5人分の食費だと言って2万円を渡し、自力で買い物できるかを試してきた。
何を馬鹿げたことを、と聡明な読者諸兄らは思うだろう。私もこの時ばかりは怒りそうになった。
引越しの準備で忙しいというのに、変わらず家事をさせ買い物にまで行かせようという。質の悪い妨げでしかなかった。
 母からは祝われたものの、話題はすぐに両親の馴れ初めや惚気に差し替えられた。
そして、上から目線なアドバイスに続き、1人で勝手に盛り上がっていた。
こんな両親と顔を合わせる必要も無くなるのかと思うと、段々と気が楽になった。

 急に決まったとは言え、まるで無計画なものではなく、金銭面や生活面の擦り合わせや家探しから家具配置など。オンラインで済ませられることは全て終わらせてから一緒になった。
 電話ではよく聞いていた声がすぐ側にいる安心感は、想像より大きいものだった。
それからの生活は苦労などなく、これまでの人生が嘘のように平穏で幸せな生活を送れている。
 こんなに幸せでいいのかと、彼に聞いてしまったことがある。
彼はこんなのは普通の日常だよ、まだまだ幸せになってもらうからね。これが当たり前になるくらい。と穏やかに答えてくれた。

 同棲を始めてから1年。
彼からのプロポーズを受け、結婚した。
当然ながら結婚式は催さず、記念に写真だけ撮ってもらった。
式の規模に問わず、あの両親と祖母を招待しなければならないのは心労しかないだろう。
想い出深いアルバムを作れただけでも満足だ。
私の親友には式が出来ない理由に納得してくれ、別に会って祝おうと決めている。彼の友人達も同様だろう。

 多少早足になったが、以上が更新が途切れていた理由。その間に起きた事だ。
今はすっかりこの平穏で幸せな生活に慣れつつあるが、たまに見る悪夢で昔の記憶が掘り起こされる。
それも次第に間隔が空いているのを考えれば、抱えた負の感情も少しずつ手放せているのかもしれない。
すぐには消えない毒やら呪いの類い、彼と一緒ならきっと全て手放してしまえるだろう。
2人で支え合い、幸せを手にしたのだから。


 ここまで読んだ読者諸兄らには深い感謝を。
最後まで読んで頂き、ありがとうございました。
読みにくい、或いは読んでいられない内容もあったかもしれない。
しかし、最終的に「この世のどこかにいる誰か」はこうして幸せになることができた。
その点をもって後味良しとして頂きたい。
 私の実体験は参考にできるものではないが、このようにして幸せになる方法もあるとだけ最後に書き残しておく。

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