エタニティーリングが作れるようになるまで
前回のnoteに書いたように、インド人にコテコテなインドデザインのジュエリーの作り方を習った自分にとって、ジュエリー製作を再開してからの一番の課題は、どうやったらインドっぽさ、と言うか程よいエスニック感を残しつつも日本の人にも受け入れてもらえるモダンで洗練されたものがつくれるようになるか、ということでした。
国内のマーケットを見ると、比較的リーズナブルかつ石が大きめなカジュアルジュエリーのほとんどはインド生産のものと見受けられます。(タイ産も多いけどもっと日本のマーケットにあった繊細なものが多いような…)
それはインドは世界有数の宝石集散地でジュエリー製造業者の数も多く、コストを抑えて見栄えのいい大きい石を使ったものが簡単に作れるからな訳ですが、自分が現地で習った技術だけで制作するとそれらのインド仕入れのジュエリーと正面からバッティングしてしまうのです。
デザインはもちろん、予算感から使用する石のタイプやサイズ感まで似てきてしまいます。流石にこれでは勝負にならない、かと言って今できる技術ではできることが限られすぎる…と色々と考えた末、デザインの幅を拡げつつ技術をつけるために小さな石の彫り留めの練習を始めることにしました。
その結果生まれたのが定番商品になっている『石を選べるハーフエタニティリング』です。
まぁ、普通のハーフエタニティなので定番といえば定番のデザインの商品なのですが、当時の自分には作り方が全く見当もつかず、技術的に結構なチャレンジでした。
沢山のお客様にオーダーいただくようになった今でも、製作しようとなると背筋が伸びる思いのする、作りがいのあるリングであることには変わりません。
作り方は〜
誰が教えてくれる訳でも無いので、まずは製作工程を見せてくれる動画を見てとにかく真似をしまくりました!
(Jewelry Making 職人への道 : 細かく説明されていてとても勉強になります)
(経験を積まれた職人さんは無茶苦茶上手くて早いです。実際には穴を正確な位置に一つ開けるのも難しい)
初めは動画を見て、真鍮の角棒を指輪状に丸めて見様見真似で練習していましたね。石はCZ(キュービックジルコニア)
今見るとこれはこれで味があって可愛い。
使ったことのなかった毛彫タガネの使い方や、正確な穴の位置決め、きれいな爪を作るためのコツなどを少しずつ掴んでいって、なんとなく形になるようになったものの、留めたつもりの石が外れて落ちてしまったり、石留めの最中に石を割ってしまったりと当初はトラブルも多かったです。
3mm幅のリングの中央に規則正しく2mmの穴を開けて石を留め、その両サイドに2本の線を彫るという中々細かい作業で、今では実体顕微鏡を使うようになったのでだいぶ精度が上がりましたが、それでも気を使う作業が多いリングではあります。
でも細かい作業が多い分、表に出てくる繊細さや小さな色石の華やかさがあるんですよね。目指していたインド感の中和剤としてもとても働いてくれている気がしてます。個人的にもとても好きなリングです。
昨年末、20年ぶりにインドに行き師匠のハリーと再会しました。
彼は全く昔と変わらずに、同じ場所で同じように、西洋人や現地の人に向けてシルバージュエリーを作ってます。(宝石商の弟の方はビル建てるくらいのお金持ちになってましたが)
彼に「今はこんなものを作ってるよ」と、エタニティの彫り留めの技術を使ったマリガーネットの指輪を見せたのですが、「腕を上げたね!」ととても喜んでもらいました。彼が教えた生徒の中では一番上手くなったと言ってもらえたのが嬉しかったです。
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