あなたは世界に愛されている。
あなたの「出生届」を出してくれたのは、誰ですか?
カンボジアに向かう機内での出来事でした。
僕は3列シートの通路側。
そして通路を挟んだ右の3列シートは通路側にベトナム人の女性が座っているだけで、真ん中と窓側は空席でした。
飛行機は離陸予定時刻をとっくに過ぎても、まだ動き出す気配はありません。
しばらく待っていると、搭乗口の方から忙しない物音が聞こえました。
ふと目をやると、赤ちゃんを抱っこした女性が焦りをにじませながら搭乗してきました。そしてそれと同時に、機内には安全確認のビデオが流れはじめました。
どうやら、この赤ちゃん連れの女性を待っての離陸だったようです。
赤ちゃん連れの女性の席は、僕の通路を挟んだ右側、ベトナムの女性の列の窓側でした。
急ぎ足で僕の右までやってきた女性は、
ベトナムの女性に英語で言いました。
「すみません。この子をちょっと抱っこしててもらえませんか?」
赤ちゃんは1歳になるかならないか。
その上、女性は手荷物を両肘にぶら下げていましたから、
赤ちゃんを抱いたままだとうまく席に座れないようでした。
お願いをされたベトナムの女性は
「もちろん。」
と笑って、立ち上がると赤ちゃんを大事そうに抱きとりました。
乗客たちは、その出来事を見るともなしに見ていましたが、
この光景に機内が微笑みと暖かい空気に包まれたことは言うまでもありません。
この赤ちゃんは、ベトナムの女性のみならず機内の乗客全員に愛されていたのです。
みなさんは、「戸籍全部証明書」を取得したことがありますか?
戸籍謄本の類で、本籍と戸籍の筆頭者の氏名、その戸籍に記載されている人全員の氏名、生年月日、父母の氏名と続柄とそれぞれの人に関する出生事項や婚姻事項などが記された書類です。
その中の「出生事項」には、あなたが生まれた日はもちろんのこと、出生届が提出された日、そして提出した人までが記載されています。
先日僕は、父が他界した関係で「戸籍全部証明」を取り寄せました。
そして、今まで知らなかった事実を知ったのです。
僕の出生届は、父によって、僕が生まれた次の日に提出されていました。
僕が生まれたのは日曜日。
父はサラリーマンでしたから、月曜日もしっかり仕事だったはずです。
それにも関わらず、僕が生まれた次の日に、出生届を提出してくれていたのでした。
お昼休みに同僚のご飯の誘いを断って、役所に走ってくれたのでしょうか?
もしそうだとしたら、同僚も祝福してくれたことでしょう。
あるいはもしかしたら、現場と現場の移動中に先輩に頭を下げて役所に寄ってもらったのでしょうか?
もしそうだとしたら、先輩もたいそう喜んでくれたことでしょう。
その時の父の喜ぶ顔が目に浮かぶようです。
いまでは、その時の気持ちを父に直接聞くことはできませんが、
僕は父の大きな愛を感じずにはいられないのでした。
そうなんです。
この世界の人間で、誰からも愛されていない人なんて、一人たりともいないんです。
飛行機の赤ちゃんも、僕も、もちろんあなたも、必ず誰かから愛されて生きているんです。
だってそうでしょう?
あなたがこの文章を読んでくださっているということは、
あなたは今も生きているということ。
生きているということは誰かの「おかげ」。
そして、「おかげ」は愛を受け取ったからこその「おかげ」なのです。
だから、あなたは必ず誰かに愛されているということなんです。
直接的にせよ、あるいは間接的にせよ、必ずです。
ご両親、家族、友人、恋人、誰でもいいです。
今朝の食卓に並んだお米を作ってくれた農家の人だっていい。
あなたを愛してくれている人を探してみてください。
あなたへの愛を見つける手っ取り早い方法として、
「戸籍全部証明書」の取得、おすすめですよ。
本来の目的とは違うかもしれませんが。笑
今ではコンビニで取得できますし。
あなたの「出生届」を出してくれたのは、誰ですか?
その時のその人の気持ちを、ぜひ想像してみてくださいね。
きっと嬉しくて愛おしい気持ちになるはずです。
そして、次はあなたがその愛おしさを誰かに与えてみてくださいね。
本日も文末までお付き合いいただき、ありがとうございました。
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