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いまあなたは、どこにいますか?

みなさま、お手を拝借。
一緒に手を叩きましょう。
(周りに人がいるときは、心の中で。)

いきますよ?
せーの、

バチン!

僕は先日、ある結婚式に列席しました。
その中で最も印象に残ったのは新婦側のご友人のスピーチ。
誰もが涙したスピーチでした。

新婦さんとは幼少期からの仲良しだというそのご友人は、
大人になったいまでも、その前を通るだけで涙が出そうになる場所があると言います。

それはどこだと思いますか?

なんとそれは、牛丼チェーンの「すき家」の前。

悩み多き年頃。
彼女には人生を諦めてしまおうかと思った日がありました。
もしかしたら人生最後になるかもしれなかったその日に彼女は、親友だった花嫁さんに連れ出され、夜通しともに過ごしました。
そして、空が白むころには人生を続けることを心に決めていたそうです。

そうです。
花嫁さんに誘い出されて夜を明かしたその場所こそが「すき家」だったのです。

それで今でも彼女は「すき家」の前を通るだけで涙が出そうになるのです。

「たった一杯の牛丼の味が大人になった今でもずっと忘れられない。」

と彼女は言いました。

あなたは3日前の夕食に何を食べたましたか?

この問いに自信を持って即答できる方は少ないのではないでしょうか。

では、こちらはどうでしょう?
あなたのこれまでの人生で一番幸せだったときの食事を思い出してください。

たとえば、
子どもの頃、家族に祝ってもらった誕生日。
大好きな友達と行った卒業旅行先。
パートナーとの結婚記念日で行ったレストラン。

何でもいいです。
とても幸せだった食事を思い出してください。

そのときあなたは何を食べましたか?

これなら鮮明に思い出すことができたのではないでしょうか?

ずいぶん昔の食事を思い出せるのに、
たった3日前の食事は思い出せない。
だとしたら、不思議ですね。
どうしてでしょうか?

答えはズバリ、
あなたが「そこにいたか」
あなたが「そこにいなかったか」
の違いです。

ちゃんと思い出せた幸せな食事のときには、あなたはちゃんとそこにいて、
思い出せなかった3日前の食事のときには、あなたはそこにいなかったのです。

「いやいや、私はいつもここにいるよ。」

そう思いましたよね?

でも実は違うのです。

ここでいう「ここにいる」とは
「あなたの心と体がちゃんと同じ場所にいる」
ということ。

体だけがここにいても、心がどこそかに行ってしまっていたとしたら、
あなたは「ここにいる」とは言えないのです。

あなたが思い出すことができた人生で最高の食卓のときには、あなたは体も心も確かにそこにいました。

でも、3日前の夕食のときには、
あなたの体はそこにいてもあなたの心はそこにいなかったのです。

さてここからは、懇意にしていただいている佛通寺というお寺の和尚さんからいただいたお話です。

話の初めに、和尚さんは僕に湯呑みを差し出して言いました。

「いま目の前にあるこのほうじ茶をじっくりを味わって飲んでみてください。どんな味がしますか?」

和尚さんによると、人間の脳みそは1日のうちに6万回もの思考をしているようです。

そういえばブッダも「思考は光の17倍の速さで進む」と言っていました。

僕たちの脳みそでは、思考が光よりも速いスピードで、目まぐるしく駆け巡っているのです。
そして始末の悪いことに、僕たちの心はすぐにその思考にしがみつきます。

たとえば、
片付けなければならない仕事のこと、散らかってきた部屋のこと、将来のお金のこと、子ども時代の辛い経験、トラウマ・・・。

たとえば、
来週のバカンスの計画、もう時期やってくる彼女(彼氏)の誕生日プレゼントのこと、次のお正月のこと・・・。

僕たちは、そんな思考に一瞬でしがみつくのです。
そして、その思考は決まって「過去」「未来」
「いま」ではないのです。

そうして僕たちは、いまを生きているようでいて、
いまを生きていないのです。

楽しんでいるようで、楽しんでいないのです。
苦しんでいるようで、苦しんでいないのです。
喜んでいるようで、喜んでいないのです。

一杯のほうじ茶を飲んでいるように見えて、じつは飲んでいないのです。

ここまで聞くと、
「僕(私)って、なんなんだろう?」
って思えてきませんか?

でも安心してください。
和尚さんは、こんなことも教えてくれました。

「思考の滞在時間は、6秒間。」

光以上の速さで現れる思考が脳に滞在するのは「6秒間」なのだそうです。

だから和尚さんは言いました。

「邪魔な思考が現れて、
心が過去や未来にしがみつきそうになったとき、
またはそれに気がついたとき、
10秒間かけてゆっくりと呼吸をしてみてください。」

思考の滞在時間が6秒なら、
それより長い呼吸に集中して、
邪魔な思考をやり過ごす。
心を「いま」から離さない。

そうやって、「いま」を味わうことがとても大切なのです。

おすすめは、10秒間の長い呼吸をしながら、
目の前にある何かの名前を心の中で呟いてみることです。

たとえば、
怒りが湧いて、心がそれにしがみつこうとしたら、
大きく息を吸ってゆっくり吐きます。
そうしながら、目の前の物の名前を心で呟きます。
原稿を書いている今の僕なら、パソコンのキーボード。

ゆっくり呼吸をしながら、
「キーボード。キーボード。キーボード。」
と心で呟きます。

すると不思議なことに、目の前のキーボードのことしか考えられなくなります。
そして、いとも簡単に怒りの思考から開放されるのです。

さて、そんなとてつもなく興味深いお話が終わりに差し掛かるころ、
和尚さんは僕の目の前におもむろに両手を差し出しました。

バチン!!!

和尚さんが両手を打った音がしたかしないか、
和尚さんは僕に問いました。

「あなたは、” いま ” どこにいましたか?」

僕は、和尚さんのお話をありがたく聞いているつもりでいたのに、
気がつけば心の片隅では明日の天気なんかのことを考えたりしていたのでした。


さてさて、手を打つほどの刹那の瞬間。
あなたはしっかりとそこにいますか?


本日も文末までお付き合いいただきありがとうございました。
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それではまた次回。

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