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目標を立てない生き方

小さなころから特に目標を持たず、ただ茫漠と生きてきました。

生まれ故郷を出て東京に来たのも、ひょんなきっかけでコピーライターという仕事に就いたのも、挫折して居酒屋の店長になったのも、その後ふたたびライター稼業に戻ったのも、そうするぞと強い意思があったわけでなく。

ひたすら流されて今日に至るわけです。

高校受験は身の丈の学力で受かる学校だったし、大学受験はしてもいません。

部活は半年で辞めるわバンドはすぐ解散するわ。
転職回数だって片手じゃ足りません。
なにひとつ最後までやりきったことがない。

おおこわ。

やはり人生というのは目標を高く掲げて達成にむけ邁進すべきものなんでしょうか。って誰に相談してるんでしょうか。

いつも目標原理主義者がそばにいる

不思議なことに、常にぼくの周囲には目標原理主義者ともいえる人物が必ず存在しています。彼らの主張は言い方こそ違えどだいたいこんな感じ。

「夢や目標を持つことが人生において最も大事」
「目標を持たずに生きていると絶対に後悔する」
「目標は思っているだけじゃだめ。書き出そう」
「過去の偉人はみんな言っていることだからね」
「成功した人はみんなやっていることだからね」

こういうありがたい言葉を比較的頻繁に頂戴します。そしてその都度(まあそうなんでしょうね。そうなんでしょうけどね。本当にそうなんでしょうかね)と徐々に奇妙な心の冒険をはじめます。

つまりあまり信じていない。目標の効能を。

いやもちろん、なろう系起業家が語るように偉人と呼ばれる人たちは目標に向かって一心不乱に取り組んできたのでしょうよ。ひと世代上の経営者たちが心酔する京セラの稲盛会長も、そりゃあ気の遠くなるような目標に全身全霊でぶつかってきた結果としてのいま、なわけで。

でも、そういう人ってひと握りじゃないか?と思うんです。世界中の誰もがきっと熱い夢見てるわけじゃないと思うんです。

そんなふうにずっと思い続けてきたんですけど、なかなか人には言いにくかったです。だってどう考えたってマイノリティですもの。

だからってここで書いていいものかどうか迷いましたが、水曜の度にオモローなネタがあるわけでもなく。貧乏芸人は細い身を削って原稿用紙のマスを埋めるわけです。原稿用紙じゃないけど。

正月そうそう福音が!

そんな目標原理主義に猜疑心満点なぼくですが、新年早々にあるふたつの記事を発見し狂喜乱舞します。まずひとつ目がこちら。

かの有名な『楽天大学』の学長である仲山進也さんのnoteです。昨年末にアップされた記事なんですが、非常に面白くてためになる内容なので、みなさんもぜひご一読ください。

この記事の中で仲山さんは、仲山さんご自身の半世紀をわらしべ長者っぽいと見たオンライン私塾の塾生からの「運についてどう捉えているか」という質問に絶妙なテンションで回答しています。

【回答】
こんにちは、わらしべ長者だよ!(笑)

きょうはキミに、わらしべ長者になるノウハウを教えちゃうよ!

(1)目標を立てない(目標達成型より展開型)
(2)夢中で遊ぶ(イマココだけど刹那的ではない)
(3)浮く(レールから外れる、軽くする・手放す)
(4)ご縁を育む(変化をもたらすのはいつも人)
(5)スペースをつくる(流れを変えたいとき)

この5つをやるといいよ! じゃあね!
「わらしべ長者」っぽい人生とは/仲山進也(考材作家/楽天大学学長)のnoteより

おお!いきなり目標を立てない(目標達成型より展開型)とあるではないか。鼻息を荒くして続きを読みます。すると出てくるわ出てくるわ、ぼくが目標原理主義に対して覚えていた違和感が言葉になっとる。

わ:「小学校の卒業文集の【将来の夢】に、ネットショップ店長になりたい、って書いた?」

質:「そんなわけないでしょ。プロ野球選手って書くでしょ。しかもネット自体が存在してなかったんですからネットショップ店長になりたいなんて、誰も書けないでしょ」

わ:「人が立てられる目標なんて、そんな程度のもんだっていうこと。目標立てて達成するのを繰り返してたら、想像以上のものにはなれないんだよ」
「わらしべ長者」っぽい人生とは/仲山進也(考材作家/楽天大学学長)のnoteより

ううむ…痺れる!

わ:「人間には2パターンあるんだよ。目標達成型と展開型ね。目標フェチな人は、目標を立てて達成するのを繰り返していれば幸せなので前者でいいけど、そうでない人は目標達成型だけが成功の秘訣ではないと知っておくほうがいいと思うよ」

(中略)

わ:「イマココを大事にして、流れに乗っているうちに、自分の想像以上のところに流れ着くのが【展開型】だよ」

質:「目標を立てて達成しないとダメな人間のままなんだと思ってました」

わ:「違うよ。成功者が講演を頼まれると、ホントは展開型でうまくいった人もカッコいいこと言いたいから、『目標を立てて達成していけば、夢は叶うんです!』っていう話にしちゃうから、みんなそれ一択だと思っちゃうんだよ」
「わらしべ長者」っぽい人生とは/仲山進也(考材作家/楽天大学学長)のnoteより

なるほど、とはたひざです。

目標を立てて達成することを繰り返していると想像以上のものになれない。うーむ、納得。

以前投稿したこのツイートを思い出した。

そしてイマココを大事にする、という点においては、こんなぼくでもこれまでやってきたことです。先のことはわからないけど、いま置かれている現場で一生懸命やるってことですよね。うん、それならやってきた。

ぼくはにわかに肯定されたような気がして、なんだかうれしくなりました。

同時に目標原理主義の危うさを感じました。目標を立てると達成か未達の二択しかないですよね。それが視野狭窄というか、白黒オンリーの思考回路につながるのかもしれない、と。

このあたりを掘っていくと現代社会が抱える病巣にたどりつくような気がしますが、それは誰か頭のいい人に任せるとして。

尊敬するココイチの創業者まで

そしてもうひとつ。この記事です。

ぼくが心の底から尊敬するカレーハウスCoCo壱番屋の創業者、宗次徳二さんがこれまた大好きなメディア、ログミーBizに取り上げられていました。

宗次さんといえば天涯孤独の身ながら体ひとつでCoCo壱番屋を立ち上げた地元・名古屋の名士。ぼくは居酒屋店長時代にこの本を読んで感銘を受け、将来はココ壱のブルームシステムでオーナーになろうかなと真剣に考えていたぐらいです。

経営者としても、また一人の人間としても尊敬する宗次さんはあるイベントに登壇し、起業家を目指そうとする若者に向け、こんなことをおっしゃいます。

宗次:だから、誰にでもチャンスがあるけども、一生懸命やりなさいっていうことですよね。だから、目標とか夢ばっかり掲げて「起業します」っていうんだったら辞めなさいと。そんな甘くはないですからね。
ずっと右肩上がりで、社員の給料を上げ続けられるココイチ創業者が「他店に追随した値下げ」を検討すらしなかった理由(ログミーBiz)より引用

おお、ここでも目標や夢ばかり掲げていてはいけない、という説が。もちろん宗次さんは目標を立てるのがいけないと言うわけでなく、起業するなら、経営するなら身を捧げよとおっしゃっているのですね。

身を捧げるという行動の前に、言葉だけの目標やまやかしの夢などは甘言であると。生半可なことではないと。

宗次:やろうと決めたら、後先考えず、やりたいだけですから。私はそのまま、今に至っても行き当たりばったりです。その時々を必死にやる。がんばってやる。そんな中で、修正しながらも方向性が定まっていきますよね。
ずっと右肩上がりで、社員の給料を上げ続けられるココイチ創業者が「他店に追随した値下げ」を検討すらしなかった理由(ログミーBiz)より引用

「その時々を必死にやる」仲山さんとの共通項がここにありますね。「イマココを大事にする」と同じ意味です。「イマココ」「ココイチ」語感も互換性ありそう。

と、いうことで

目標を立てなければ成功しない、夢はかなわない、というのは都市伝説とまではいえないけれど、決してそんなことはないんじゃないかというのが今回の結論です。

目標を立てて邁進できる人はそれでいいけど、そうじゃないぼくや、これを読んで「うんうん」とうなづいている方。自分を卑下せず悲観せず、前向きに生きていきましょう。

ぼくも目の前のことに一生懸命取り組む、という目標ができました!あれ?

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