投票行って外食した日曜日
断っておくがわたしはモー娘。世代ではない。
しかし、つんく♂さんとまったく接点がゼロか、というと実はそんなことがないんですよ。いや限りなくゼロに近いんですけど。
30年ほど前の話を聞いてください。ぼく、駆け出しコピーライターやりながらバンド組んでドラム叩いていたんです。池袋アダムや下北沢チョコレートシティ、下北沢SHELTERなどのライブハウスでブッキングバンドとして月イチぐらいのペースで活動していました。
ある日、原宿RUIDOに出演することになって、朝からリハのためにハコに入っていました。逆リハではなく順リハだったので割と、ね、そこはね。ぼくらはそんな人気のバンドではないわけだから。早いわけ。
それでも昼過ぎにリハ終えて、さあ夕方の本番まで飲むか…とライブハウスの裏口から出ようとしたら、あなた!なんか若い女の子たちがワンサと集まっているじゃありませんか。
「これってもしや…」ぼくがつぶやきます。
「そうだねとうとうだね」ベースが返します。
「なにこの人だかり!?」ギターが驚きます。
「ふふふ…ようやく」ボーカルが鼻高々です。
そうです、この時点でわれわれのバンドもとうとうここまで来たかと。きっとどこかのライブハウスでの演奏が噂となったか、地道に配り続けて来たデモテープが誰かの耳を虜にしたか。アマチュアバンドとはいえ完全オリジナルのプロ志向だったぼくらは一気に舞い上がります。
するとギャル山の人だかりから「キャーッ!」という叫びが聞こえたと思ったらあなた、ザザーッと堤防のフナムシの勢いで表玄関のほうにチューブを巻いていくではありませんか?
そして、その先に存在していたのは…そうです、デビュー間もない『シャ乱Q』だったのです。当時はまだヒット曲に恵まれず、ぼくらのような下々のアマチュアバンドとブッキングされていたんですね。でもしっかりとファンはついていた。
そのさまを見てぼくらは「…本番前に飲むの、やめよか」と何故か真面目モードになり、なんとなく意気消沈し、その日のライブはいまひとつキレがないというかビクつきながら演奏を終えたのでありました。
終
制作・著作
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そんな思い出話はどうでもよくて。Twitter眺めてたらなんかモー娘。の『ザ ピース』という歌の一節に選挙の日は投票に行って外食する旨の文言があるとかで盛り上がっているのを見つけました。
よし、じゃあ投票行って外食しよう!
でもその前に馬券も買おう。
と、いうことで投票開始と同時に近所の小学校で清き一票を投じましたよ。そしてそのあと銀座のWINDSで福島6レース2歳新馬と7レース3歳未勝利戦、9レース織姫賞、10レース天の川ステークス、11レース第58回七夕賞、12レース彦星賞にも投票してきました。ついでに小倉11レースのプロキシオンステークス、函館11レース五稜郭ステークスにも投票しましたよ。
やることをやったので、なんだか体が清められた気がします。
よし、飲むぞ。
ということでやってきたのは門前仲町。予約必須の『まるお』さんです。
裏通りに佇む雑居ビル2階の一室。カウンター10席のこじんまりとした空間。大きな窓からは枝ぶりのいい桜の木が目を楽しませてくれます。
まずはビールをいただきます。このお店は奈良出身のご夫婦が経営されているみたいでお酒もご当地の『風の森』をおすすめしています。雑誌「dancyu(ダンチュウ)」によるとご主人は昼は豊洲市場の仲卸で働き、夜はこちらのお店の厨房に立っているとのこと。すごい働きものです。
市場の仲卸で働いているんだからつまり魚の目利きがいい。加えて丁寧な仕事ぶりもいい。小さなカウンター内の板場で煮る、焼く、蒸す、揚げる、切る。ひとつひとつの動きがとても綺麗で繊細なのです。
そういうご主人の手仕事を眺めながら飲む酒をサーブしてくれるのは奥さんです。とってもキュートな女性で、お酒の知識も豊富。こういう感じの味の…と伝えるとドンピシャな銘柄をおすすめしてくれます。
それだけでなくお店全体のコンディションにも気を配っていて、この日はちょっと暑かったのですがエアコンの風がまな板の上を直撃しないようにいろいろと吹き出しぐちの角度を調整したり、電話で予約を受けたり、お会計したりとコンパクトかつパワフルな動きを見せてくれました。
そして選挙の行方は…馬券の行方は…いろいろと心乱されがちなここ数日ではありましたが、少なくとも自分の半径数メートルは平穏無事な日常が続いていることにあらためて感謝しつつ、杯を重ねたわけです。
ああ、美味しかった。
投票のあとだから格別か、というとあんまり関係ないかもしれませんが、たぶんぼくのようにSNSの投稿をきっかけに食べたり呑んだりしている人はたくさんいるんだろうなあ、と思うと、なにげに連帯感を覚えたりして。ほっこりしたりして。
ながらくつらい思いをしつづけてきた飲食店さんのためにも、という大義名分のもと、できる範囲で外食に励むぞと思った次第であります。
ちなみにぼくは広告をつくらないコピーライターなのですが、広告はつくりませんが嫌いではないので、毎年TCC賞という業界のお祭りのような広告賞を生暖かく眺めているんですね。
で、今年(2022)のTCCグランプリ作品がこれ。
あんなににぎやかなのに
みんなの声が聞こえる。
今日もまた
笑って、語って。
人生には、飲食店がいる。
というサントリーホールディングスの広告でした。ちなみにこの広告は第70回朝日広告賞広告主参加の部でも最高賞に輝きました。
あらためてコピーを読み返して、そうだよな、としみじみ思う。そしてサントリーという酒造メーカーが飲食店のために大枚はたいて広告を打つ。その姿勢が素晴らしいとあらためて。サントリーって昔からそういう会社だったよね。いいこと言う以上にいいことする。広告上手とはまさにこのこと。
ちなみにちなみに、ぼくは選挙の前日にも飲みにいっています。あまり投票とは関係なく飲みにいくわけです。Twitterで知り合いになったおじさんたち4人のオフ会(?)でした。いやあ、おもしろかったなあ。同世代だからこそ盛り上がる音楽談義。そしておじさん初心者も交えての仕事話、業界話。やはり最後はこの本をレコメンドして終わりたいと思います。なにがやはりかわかりませんが。
会って、話すこと。その間に酒があること。小さな平和がいつまでもつづく国にしましょうよ、と当選された政治家のみなさんに祈りをこめつつ。
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