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求人広告コピーとコンテキストの幸せな関係

今日から、これまでとはまた少し異なる切り口で、文章を書いていくことにしました。これまでのわたくしと、いえば…

◆『広告本読書録』…「なんかコピーが上手くなるような本ってないですかね」というクライアントのひと言からはじまった、現役コピーライターによる「広告本」の紹介。
◆とりとめのない雑文…その広告本読書録をFacebookで拡散するときに、黙ってシェアするのも愛想ないな、とおもい毎回くだらない文章を書いているのですが、それをnoteに移管したもの。

という二本立てで「note楽しいなあっ」って日々を送っていました。

そこにですね、あろうことか、もう一本。誰にも頼まれていないのですが『求人広告制作に関するよもやま話』というラインで連載をはじめようとおもいったったのであります。

なぜか。

あまたある『広告本』をいろいろ読んできて、なおかつそれを読書感想というかたちでアウトプットしていくうちに、そういえば求人広告に関する内容の書籍って驚くほど少ないな、とおもったのです。

ぼくの読書録でも過去に『求人広告半世紀』という作品集を複数回にわたって紹介しただけにとどまります。

あと、世の中にある求人広告に関する本が、なんか、どうも営業系の方が書いているものが多いみたいで、何冊か読んだんですがクリエイティブのセンシティブなところにあまり触れられていないようでした(ぼくの読解力が足りないだけかもですが)。それかなんかすごく難解なやつか。

ぼくは、もうちょっとおもしろく、というか、親しみやすく、求人広告のクリエイティブについて書かれているものがあってもいいんじゃないか、と常々おもっていたんです。

そんなふうにおもいながら、上記2本の方向性で週何回か文章を書いているとスキしてくださったりコメントくださる方もでてきて(ありがたいことです)非常にうれしいことに、ぼくがどういうプロセスでコピーを書くことに目覚めたのかも書いてみそ、というリクエストをいただきまして。

だったら雑文のほうで、とおもったんですが、最初にどんな内容が書けそうか脳内編集会議を開いたところ、結構まとまった本数のコンテンツができそうなことがわかった。そうすると「トラック野郎」とか「包丁人味平」といったテーマで書いている雑文と混ぜるのってどうなの?と。

じゃあもういっそ、新たに『求人広告制作』に関するテーマで毎週一本書いていこうじゃないか、と決めた次第であります。とはいえ、読み手のみなさまからするとひとつのアカウントなのでなんだかよくわからないとおもいます。

一応、自分なりには月曜日を『求人広告制作よもやま話』、水曜日を『雑文』、金曜日を『広告本読書録』というふうに切り分けていこうかと目論んでおります。いつまで続くかわかりませんが、どうぞよろしくお願いします。と、いうことで第一回は「求人広告コピーとコンテキストの悩める関係性」について。先週、頭を悩ませていたホヤホヤのお話です。

■ ■ ■

ああ、またやってしまった。勇気がないのである。いくじがないのである。思い切りが足りないのである。なんの話かというと、求人広告におけるコピーライティングについて、であります。

ぼくは“広告をつくらないコピーライター”を名乗っていますが、求人広告の制作にはかなり長い時間、携わってきました。厳密にいえば求人広告のコピーライティングですね。通算で14年ぐらい?まあキャリアの半分ぐらいは求人広告という沼にハマっていたことになります。

ここ数年は意識的に距離を置いていて、つくるのは年に数回。どうしても、と頼まれたり、プロジェクトの一環に求人メディアへの掲載、みたいなのがあると「そこはやっぱり、よろしくね!」と依頼される。なにがやっぱりなのか。

で、書き出しの「やってしまった」に戻るんですけど。

いまクリエイティブ・ディレクターとして関わっているWebメディアがありまして。そこの編集部に首を突っ込ませていただいております。で、編集長候補の採用ニーズが生まれた。代表から相談を受けつつ、これは俺が書くしかない、いや書かせてくれという流れになるわけです。

久しぶりに求人広告を作るんですが、今回は編集長候補の募集です。この職種はそもそも応募数が跳ね上がる傾向にあり、どんだけハードル上げても応募者がひきもきらず、になります。昨年もスタッフクラスを募集したら400名も応募がありました。

なので今回はノイズを抑える、つまり母集団のS/N比を上げることに主眼を置いたコミュニケーションを採用しようとぼくの中で決めたんです。経験者歓迎というより経験者限定。書籍など出版編集経験者に、Webですけど編集長の座を用意しましたよ、と告知する。

紙の世界で先が見えない、と悩んでいる編集者はたくさんいらっしゃると想像できます。そこに対して、Webの将来性や可能性、風通しの良さとともにキャリアアップの成果としてのポジション訴求をしようというのが今回の広告設計です。

コンセプトは「編集者としてのキャリアアップを、Webメディアの編集長で」。いいたいことは他にもたくさんあるんですが、まあ、今回は経験者採用の王道である「ミッション・ポジション・待遇」の中から「ポジション」におもいきって振ったわけです。

で、問題はキャッチです。これがいつも悩ましい。ぼく、求人広告のいいところは精読率の高さだと思っているんですね。ふつう広告はマイナスステージからの情報発信になるんですが、求人広告に限ってはマイナスじゃない。むしろ読み手が積極的に来てくれる。

新聞や雑誌、あるいは電波媒体に載っかる場合は別ですよ。でも求人広告の多くは求人広告誌や求人広告サイトに掲載されるわけです。と、なるとユーザーはあらかじめ仕事を探している人であって、そういう意欲の人が当然求人情報が載っているサイトに訪れている以上、もうそのことについては触れる必要がないんじゃないかとおもっているんです。

つまり「仕事を探している人」が「人を求めている会社」の情報を見に来ているという前提条件、コンテキストが成立している。文脈ができあがっているのにわざわざ「募集です」とか「求めています」とか「お待ちしています」というワードって偏差値低くない?コミュニケーションとしてはかなり低次元ではないの?っておもうんです。

だけど、だけどですね。これがやってみようとすると実に勇気がいる。これでコミュニケーション成立するかなあ…とびびってしまうんです。さっきあんな勇ましいこといってたのに。

今回のキャッチを例にとってみます。今回ぼくはさきほどのコンセプトから以下のキャッチコピーをつくりました。

「注文の多い編集長。」

今回の編集長にはいろいろやってもらうことになります。メディアの運営、方向性確定、それもビジネス領域限定、組織づくり、新しいコンテンツへの挑戦…つまりお願いすること=注文が多いことをあえて前面に出して、案件の特別感を創出したかったんです。

このフレーズのベースは、編集経験者なら必ず通っていてほしい宮沢賢治の「注文の多い料理店」です。わかるひとには、わかる。わかったひとだけ、わかったことが、ちょっとうれしい。そんな効果を狙っています。これにピンとこないなら、それはもうセンスがないということだし。

しかし、このキャッチを書いて、ひと晩寝かせてみると…不安な気持ちがぞわぞわと。これだけで伝わるだろうか。果たして、コミュニケーションとして成立するだろうか。弱気の虫が湧いてきます。そして、こう手直ししてしまうのです。

「注文の多い編集長募集。」

なんのことはない、文末に募集、とつけるだけなんですが、これでなんとか通じるな、とほっと胸をなでおろしてしまうぼくがいるんです。あんなに座りが悪く感じたキャッチが、きちんと成立している。募集がないと、なんのことかさっぱりわからない。

そんなふうにおもえて仕方がないのです。あれほどコンテキストがー!と叫んでいたのに。これは何の病なんでしょうか。求人広告制作に携わっている方、どなたか教えてください。

■ ■ ■

こんなかんじで、ほそぼそつづけていきたいとおもっています。noteは動画や画像もアップできるので、そのあたりの表現の自由度も活用しながら書いていきますのでよろしかったらお付き合いのほど、よろしくお願いします。

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