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Twitterの人員削減に思うこと

求人広告の仕事をしていると、どうしても経済ニュースに敏感になります。

最近だとあれですね、Twitterの大量人員削減。イーロンマスクが株主として経営の舵をとった瞬間に約半数の人員を解雇したニュースです。

こういう話は求人広告屋としては、ついつい妄想を膨らませてしまうのです。

ぼくはいまでこそ求人広告の仕事から身を引いていますが、それでも長年にわたって染み付いた癖で、このニュースについていろんな思いを馳せています。

と、いうことで今回はこのTwitter大量人員削減でなにが起こるのか、について徹頭徹尾求人広告屋目線に基づいて考察してみたいと思います。

転職市場に与える影響

まず最初に思ったのが「転職マーケットに元ツイ(元Twitter社員)がわんさと現れるのではないか?」ということ。

大きな企業が倒産または大量リストラを行うと、その企業銘柄の人材が一時的に転職市場を賑わせてくれます。古くは山一證券、最近だとホンダやパナソニック銘柄の人材が目立っていました。

銘柄人材は大きく2通りに分けられます。

一つは、とっても能力の高い人。
一つは、あれ?この人本当に○○銘柄?な人。

ま、そりゃそうだろう、という話でもありますが。JTC大手になればなるほど後者の数が増える印象ですね。

Twitter日本は従業員数を明らかにしていませんので、今回の施策でどれぐらいの人数が市場に放出されたかはわかりません。

が、全世界では7500人といわれていて、その半分が削減対象。その中の日本法人ですので、やはりそれほど大量に求職者が生まれたわけではないそうです。

メディアでは「広報チームまるごと」みたいなインパクトある書き方をされていますが、広報チームに50人、なんてありえないです。多くて5名前後でしょう。

また、外資なおかつ大企業って雰囲気でもないので、優秀な人の比率が高いのではないかと予想しています。

そんな元ツイのみなさんは転職市場でどういう捉えられ方をするのでしょうか。

今回の人員削減は個人の能力云々ではなく会社の事業方針によるものですから、それなりの市場価値を持っているのか。

それともSNS上ではあまりいい噂を聞かないので、色眼鏡で見られてしまうのか。

Twitterの青い鳥(白い鳥?)が上手くいけば勲章、下手するとネガティブなレッテルになりかねません。

もしかしたら既にエージェント界隈では噂に?と思い、親しい紹介業の数人に聞いてみたところ、今回の件よりも前からこのあたりの銘柄の登録者は一定数存在するとのこと。

個別の情報はさすがにハヤカワさんにも言えませんよ、でした。すばらしい職業倫理観。

さる筋の話によると来年の頭ぐらいまでは猶予がある(給与保証?)ようなので、これからじわじわと活発化するのかも知れないですね。

ベンチャー企業に与える影響

さきほどSNSではあまりいい噂を聞かない、と書きましたが、解雇された元ツイの方々に貼られているネガティブレッテルは「トレンド操作していた」や「ホットヨガエンジョイ勢」といったものでしょう。

このうちトレンド操作云々についてはその手法や技術だけを抜き出せば優れたスキルやノウハウと言えるものであり、思想や組織風土、同調圧力などは差引いて評価すべきではないかと思います。

稲盛和夫さん言うところの「考え方×情熱×能力」のうち、考え方を変えれば社会の役に立つ方面で力を発揮できるのではないでしょうか。

で、もう一つの「ホットヨガエンジョイ勢」というパワーワードが爆誕した背景にNHKの番組でも取り上げられた、福利厚生という枠を大きく逸脱したフリーダムな労働環境があります。

その労働環境の是非について当事者ではないわたしがとやかくいうことではありませんし、実際にはどうだったのかこの目で確認していない以上、実態や真偽のほどはわかりません。

ただ一つ、私が想定しているのが、このTwitterレイオフの波にいっちょ噛みして他のベンチャーもリストラとまではいかなくても、現場の締め付けをやや厳しめにするのではないか、ということ。

実際に米メタでは数千人を対象とする大幅な人員削減を検討しているといいますし。

諸外国とは異なり解雇制限が厳しく敷かれている日本でも事業規模縮小、組織見直しなどに一定の推進力が働くのではないか、と見ています。利益率をよりシビアにチェックする、とか。

ただ、その辺りの小難しい話は経済の専門家に任せるとして。

私が問題提起したいのは、この一連の流れによってベンチャー、特に渋谷界隈に棲息する“やりらふぃー”ベンチャーがウェイウェイワークライフを縮小するのではないか。そしてそれは不可逆ではないかということであります。

今回のリストラの報道を受けて、まず最初にウェイウェイやりらふぃーに一撃を喰らわすTweetをされたのがこの方。

ご存じ、識学の安藤広大先生です。安藤先生は反ウェイウェイ派の最右翼ですので、今回の件については自説の正しさをグローバルスケールで証明した格好の事例となるわけです。

続けざまに

と自らの投稿に引用コメント付きでリツイートされています。このTweetなんてプリントアウトして額装して受付に飾っておきたい。

そして「やっぱり従業員側は会社で『仕事だけ』したいんじゃないかな」という名言は、チーム飲み会?残業代出るんすか?的マインドを持つZ世代の意識とも偶然シンクロするわけですよ。

この発言、成長著しいベンチャーの経営者にも信奉者が多い識学だけに、影響力は決して小さくないのでは、と考えられます。

加えてコロナ禍によるリモートワークの浸透。

マンボウ解除後に基本全員出社せよ!とウェイ政復古の大号令をかけたものの、取引先のほうがキープ・リモートのスタンスを崩さないという足並みの揃わなさ。

すると商談も打ち合わせもクレーム対応もzoomだ、meetだとディスプレイ越しのコミュニケーションがデフォルトになるでしょう。

こうなると出社前提の会社では、自分のデスクやパーテーションブースから会議に参加することになりますが、周りの社員もこぞって電話だzoomだやってるのでまあうるさいことうるさいこと。

あまりにもやかましくて「すみません、ちょっとミュートしてもらえます?後ろの騒音をマイクが拾っちゃって聞こえないんです…」みたいな光景があちこちで見られます。

いっそ、みんなリモートワークにした方が効率もいいじゃん、みたいな風が道玄坂から宮益坂に向けて吹いてきているようです。これを道玄坂おろしと言います。

そうなるとどんなに社長がウェイウェイしたくてもやりようがない。なにしろオフィスに誰もいないんだから。クラブ貸切の社員決起会もない。チーム対抗のダーツ大会もない。オフィスのテラスでのBBQもない。社員のために作った社内バーも閑古鳥、というわけです。

それなら、とやりらふぃー社長、社員を全員業務委託に切り替えたりして。その結果なぜか業績が瀑上がりする、という笑えない話もまんざら夢まぼろしではないかもしれません。

そうして、いっとき道玄坂を頂点とした「社内で女子社員が“恋するフォーチュンクッキー”をダンスする」的なキラキラ感はすっかり過去の遺産となり、会社は学校じゃねえんだよ、がいよいよ実態を伴うことになるのです。

この先、ベンチャーはヘルシーに

結論。

私はこの先、ベンチャーはどんどんヘルシーになっていくのではないかと予測しています。

無機質な仕事の代償に、さまざまな承認欲求を満たすオプションを用意することで求職者に対してアトラクトしたり、既存社員をグリップしたり、モチベーションを担保することの価値が相対的に薄れていくものと考えているのです。

それよりも、もっと自分と周囲の人の幸せに貢献できるような仕事の座組みを考えたり、企業や事業の存在意義、存在理由を探したり、社会における位置づけを真剣に模索したり、といった「過度にお金がかからない」「本質的な」企業活動こそが、これからの低成長時代をサバイブし、本当の意味で優秀な人材を集めるために必要になる。

それが世の中全体に浸透したとき「ああ、この流れってイーロンマスクがTwitterでリストラ断行した時が起点だったね」と振り返ることができるのではないでしょうか。

以上、Twitterの大量人員削減というニュースに触れて私が思ったことをつらつら述べました。

ご愛読ありがとうございました。

※当初「一部で従業員の呼び戻しを行っている」という報道があったので「レイオフ」という単語を使っていましたが、どうもその後の報道を聞かないので「人員削減」または「リストラ」と表現を変更いたしました。

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