見出し画像

立って本を読む

これはもしかしたら自分だけに起きる現象かもしれません。こんなことねえよ、と読者から怒られることも覚悟で書きます。そしていつものように最初にあやまっておきます。ごめんなさい。


本屋さんが好きです。

アマンゾは便利なんですけど便利なだけでしかなくて、よほどのことがない限り本を買うのは本屋さんと決めています。六本木での待ち合わせはアマンドと決めています。

本屋さんで有象無象の書籍に囲まれているときがいちばんの幸せ。もし実家が手芸屋ではなくて本屋だったら絶対に跡を継いでいたことでしょう。

そして本屋さんでの楽しみがあれですよあれ。

立ち読み。

店頭に平積みされている新刊や話題の書を皮切りに、ビジネス、広告、マーケティング、自己啓発、自動車、音楽、料理、文庫、新書といろんな棚をまわりながら気になるタイトルの本をかたっぱしから手にとり目を通す。

まさに至福のときです。

それで、パラパラと数ページ目を通すじゃないですか。

中には「これは面白そうだ!」と思う本が何冊かみつかりますよね。

そうするともう、なんとなく気分はホクホクしてきませんか?

ぼくはします。

そういったホクホク気分が一冊だけでなく、三冊、四冊と見つかると、もうたまらなくうれしくなります。すごいぞ今日は収穫祭だ!帰ってワインで乾杯だ、となるわけ。

もちろんお金持ちではないし乾杯用のワインも買わないといけないので、何冊もは買えません。

こっちのほうがいいかな、いや、やっぱあっちかな。うれしくもなやましい時間です。しまいには今日買うなら、といった観点まで出てきます。

そうして吟味に吟味を重ねた一冊、せいぜい二冊を持ってレジへ。なんとなく達成感に包まれながら帰るわけですよ。

ここまではみなさんも経験したことあるでしょう。


ところが。

そうやって自宅に持って帰った厳選された一冊、二冊。心躍らんばかりに楽しみにしていた本が、家で読むとあら不思議、ぜんぜん面白くない。

本屋さんで立ち読みしたときに感じた面白さが雲散霧消。

そういうこと、ありませんか?

ぼくはあります。

あれはなんなんでしょう。あの色褪せ方っていったい。

あんなに本屋さんで立ち読みしていたとき、ページのほうからこっちに飛び込んできた活字たちがまるで動こうとしない。

次へ、次ヘとグイグイ話をひっぱっていってくれたフレーズが、センテンスが、ブロックが、精彩を欠いている。

あれ?俺、買う本間違えちゃったっけ?と思いながら書店のカバーを外して表紙を確かめるも、確かに心を捉えたあの本に間違いない。

なにかがおかしい。なにかが。

そうして浮かれていた気持ちは一気に萎え、本棚の肥やしが一冊増え、乾杯のワインはヤケ酒になるのでした。

こんな経験、ありますでしょうか?
やっぱりぼくだけ?


ついせんだっても同じことがあり、もういい加減いやになってしまいました。なんで立ち読みのときは面白いのにこうして家で座って読むと…

と、ここまで思ってハタと気づいた。

もしかしたら、座って読んでるからじゃないか。

家の中でも立ち読みにしてみたらどうだろうか。

しかもリビングや寝室といったこれまで本を読もうとして挫折し続けてきた環境ではなく、ちょっとした異空間で。

早速試してみました。

キッチンで、立ったまま読んでみた。

そうしたらなんと面白く読めた!

やはり姿勢だったか。

そこで塩漬けになっていたいくつかの本を書棚の奥のほうからひっぱりだして、いろいろ試してみました。以下はその一例です。

『街とその不確かな壁』村上春樹 著
『創始者たち』ジミー・ソニ 著
『未秘のマクベス』早瀬耕 著
『LISTEN』ケイト・マーフィ 著
『ずっとそこにいるつもり?』古矢永塔子 著
『傲慢と善良』辻村深月 著
『天才』石原慎太郎 著
『「わからない」という方法』橋本治 著
『ユーチューバー』村上龍 著

いずれもリビングの椅子に座ったりベッドで横になりながらだと秒で眠くなってしまいぜんぜんページが進まず挫折、という本でした(いっておきますが本屋で立ち読みしたときは最高に面白い!とおもったんですよ)。

中にはベストセラー作品、売れ筋本、話題の書などもあり、いっときはもしかすると俺は本を読む能力に欠けているのではないか、と真剣に悩んだものです。

しかし、これらのラインナップも台所で立ったまま読むとあれよあれよという間に集中できる。本の世界に引きずり込まれる。

これからは買ったはいいがいまいち読が進まない(そんな言葉あるのか?)本に関しては家庭内立ち読みを敢行することに決めました。

これでもう、乾杯用のワインで悪酔いすることもなさそうです。


と、いうわけでぼくの場合、問題は姿勢にあったようです。本屋さんでも家でも立って読む。デメリットはいまのところ疲れるということぐらいでしょうか。それでも本の面白さの力が上回ることが多いようです。

どうも本屋でのときめきが家に帰ると失われてね…なんていうお悩みをお持ちの方(いるのか?)ぜひ試してみてください。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?