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求人広告に強いフォトグラファーの条件

このnoteは求人広告制作関係者にのみ向けて書かれているものです。徹頭徹尾私見であり極めて個人的な意見ですので相当偏りがありますが、求人広告制作関係者には比較的わかっていただけるのではないかと信じています。

さて本題。

求人広告制作に関わる職種は大きく分けて4種類あります。媒体やサイズによるのですがデザイナー、コピーライター、フォトグラファー、イラストレイターです。このうち絶対に必要なのがコピーライターになります。

求人広告のコピーライターの中にはイラレを使いこなし、デザインまでやっちゃうというクリエイターもいます。というかほとんどがそうです。

ただ最近はどの媒体もデザイン要素を極力抑える傾向にあり、基本的にはコピーライティングのみが求められます。

デザイン要素を排するということは同時にイラストのニーズも減少することになります。一方で画像についての必要性は高まるばかり。

そこでコピーライターがフォトグラファーの代わりに、というケースもなくはないのですが、ここはやはりプロのカメラマンにお願いしたい、みたいな顧客の声があるのも事実。

ぼくが所属していた求人広告会社では徹底的に省力化を図っていたので多くの場合、取材は営業がひとりでヒアリングから撮影までこなしていました。そのせいで営業はクライアントから嫌味を言われたようです。

「お宅の会社はカメラマン連れてこないの?」
「◎◎さん(競合)は5人で取材に来たよ?」
「素人が安っぽいデジカメで撮るって本気?」

その都度、営業は思いの丈(愚痴ともいいます)を日報に綴るのですが毎回上司から「ですよね、だからいいんです。だから適正価格なんですと言えばええんや!」というお家芸の返しトークで蓋をされておしまい。

ま、間違ってないんですけどね。

フォトグラファーには2種類ある(ほんとはもっとある)

ぼくは20代の前半、いくつかのプロダクションで修業を積んできました。求人広告のみならず一般消費財、耐久消費財、小売サービスなどさまざまな分野のグラフィック広告を経験してきました。

その中でさまざまなフォトグラファーの方々のお仕事を拝見することができました。

また45歳を超えて転職した会社では求人だけでなくWeb広告やHP、CI・VIに関わる中であらためていろいろなフォトグラファーの方々とお仕事をご一緒してきました。

そしてわかったことがあります。

フォトグラファーには2種類ある。

求人広告の取材現場に強いフォトグラファーと、そうでもないフォトグラファーがいるということです。

(いやもちろんホントはもっと細かくいろいろ分野だったり志向性だったりで分かれているんですけどここでは便宜上ということでスンマセン)

これはどちらが優れているという話ではありません。またその人の性格に依るところも多分にあるかもしれません。しかしそうだとしても向き不向きというものがはっきりとあるのです。

ではそれをここで紹介します。

ん?なんのために?

うーんと、そうですね。いまこれを読んでくれている求人広告のコピーライター諸氏がいつカメラを持って現場に取材にいかなければならなくなるか、わかりませんよね。

ひょっとしたらもうすでに経験されているかもしれません。経験された上で「なんとなく苦手だな…」と思われているかもしれません。

そのときに、プロのフォトグラファーの中でも求人広告に強い方がどんなことをやっているかを知っておいたほうがいいんじゃないか。参考になる点があるんじゃないかと思うんですよね。

では早速いってみましょう!求人広告の現場に強いフォトグラファーの特徴は以下の4点です!

事前に伝える気づかい

遅くとも一週間ぐらい前には採用担当者や人事から、事前に撮影がある旨を被写体となる社員の方に伝えていただきます。このとき、求人に強いフォトグラファーはみなさん「自分独自のお願い」を持っている。そして、それをきちんと事前に伝えてくれます。たとえば…

◎そもそもの撮影の目的
◎被写体のみなさんに期待すること
◎デスクまわりはできるだけ整理整頓を
◎服装は普段どおりお気に入りのもので
◎女性の方は特にお化粧や髪型ご注意を
◎同僚や先輩と共に前夜に笑顔の練習を

などなど、ほかにもその会社の雰囲気や事前にわかることを加味してあれこれと注文をつけてくれたりします。

これだけでずいぶん違います。これができるかできないかは本当に大きいし、上手い人はみんなやってるんですよね。

え?なんでそんなことフォトグラファーがやらなくちゃいけないんだ?それはディレクターの仕事だろ?おっしゃる通りです。だけど求人に強いフォトグラファーの方ほど「これ、事前に伝えておいてもらえます?」とオーダーしてくれる。

これ、わかっていてもありがたいんですよね。

割り切るスキル

求人広告の撮影現場といえばデスク周辺が多い。デスクといえばそこで働く人の「生活感」がどうしても出てくるもの。ここで求人に強いフォトグラファーは選択と集中をします。

つまり著作権に関わるものやメーカー限定される商品に限ってハケていただく。逆をいえばそうでもないものはできる限りそのまま撮影する。そうすることで被写体の方の負担を最小限に抑えることができます。

綺麗な状態を撮るべし、というこだわりは大事だと思います。しかしだからといってヤラせの領域までいくのはいかがなものか。あまりにも整理しすぎてなにもない殺風景なデスクの写真を時々みかけますが、リアリティないなあ、と思っちゃいます。

あと画角やヌケ感についてはどこまで追求するか、という点において選択と集中は必要になってきます。ここの割り切るチカラはもはやセンスにも近いのかもしれません。

被写体ファースト

これは忘れられがちなのですが、忘れてはいけないのですが、求人の場合、被写体はその会社で働いている人です。そして往々にして撮影日というのは平日です。しかもバリバリ営業時間です。

求人現場に強いフォトグラファーはそのことを肝に命じています。そしてそれをすべての判断軸にします。だからとにかく「早い」のです。だからといって雑な仕事ではない。

え?もうおわり?みたいな感じで撮影が終わる。そして上がってきた画像がグンバツにいい。あれでよくこんないいカットが…というフォトグラファーがときどきいらっしゃるんですよね。

なぜそんな仕事ができるのか…の謎は解けてはいないのですが(たぶん超絶事前シミュレーションしているんだと思う)ぼくなりに彼らの共通項をあげていくと見えてくるのが「常に相手のことを考えて行動する」というところなんですよね。つまり被写体ファーストにもほどがあると。

場を盛り上げる

くどいようですが求人広告の場合、被写体はモデルではありません。集合写真では誰か必ず目をつむる。笑ってくださいといっても笑えない。立ちのカットじゃ両手だらり戦法。当たり前です。

だから求人広告の撮影時、フォトグラファーには露出やホワイトバランス、ISOの調整以上にその場を盛り上げるスキルが求められます。これができるかできないか。上手いか下手かではなく、バカになれるか、ピエロになれるかが大切なのです。

ふだんの作品が結構なアート入っている人でもできる人はできます。逆にどう見ても商業フォトグラファーの方でもまったくできない人もいます。

昔、在籍していた会社で役員の集合写真を撮影するとき、外部からフォトグラファーを呼んだのですが「笑ってください」の連発。しまいに会長さんから「お前、プロなら笑ってくださいやないやろ!お前が笑わせんかい!」と激怒され、撮影した画像がすべてボツになったことがあります。

後日ぼくが再撮影する羽目になったんですけど。

結論、あるものでなんとかするチカラなのかも

毎回そうなんですが今回もやっぱり精神論っぽくなってしまいました。しかし求人広告や採用系の撮影に強いフォトグラファーに共通するのは上記4つかなと思います。

ざっくりまとめると「あるものでなんとかするチカラ」といってもいい。あれがない、これもないと言っていると求人の世界では仕事が前に進みません。そこをなんとかするのは本質的にフォトグラファーの仕事ではないかもしれないのですが、しかし現実問題としてそういう現場なんですよね。

「こんなの当たり前じゃん」と思った方。あなたはフォトグラファーに恵まれています。「こんなことはフォトグラファーのやることじゃない」と思った方。あなたは現場に恵まれています。

そしてなんだかモヤモヤしながらシャッターを切っているコピーライターのあなた。「バカになれ、ピエロになれ」の精神でひとつ、撮影現場を楽しんでみてはいかがでしょうか。

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