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【詩】二十歳のアネモネに

二十歳のアネモネに

二十歳の君を画いた
どうしたらいいのか わからないままに 生きて 話した
二十歳の君の裸を画いた
二十歳の君は自由のコルセットをはずし 
ぼくの赤い十字軍となった
ただそれだけだ

二十歳の君を画いた
互いの言葉にアンダラインを引き 理解し合えないまま 話した
二十歳の君の無垢を画いた
二十歳の君は月と語る露となり
東雲の空に消えていった
ただそれだけだ

翻訳不可能な川の両岸に ぼくらは 立ち
たがいに見つめたまま 沈黙の本を読み上げた
あなたは 空を恋するキリンのようだと 君は言い ぼくは
君の残酷な美しさを 画いた

辞書のない 春の朝の目覚めは 
音もなく扉を開け お互いに 別々の 国を見せていた
希望は 地中海の夏空に枯れ 化膿した傷は
秋風のガーゼで拭き取られたが
真実は 囓りかけの林檎のように放置されたままだ 

ぼくは いま ひとりため息の橋を渡り 君を画く 
ぼくの感じている君を画く 
二十歳のままの君を画く 
ぼくの 二十歳のなみだを画く

#詩 #現代詩 #青春 #アネモネ #花


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