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性の物質化と圧縮について。

男が女に抱くあらゆる感情を圧縮したものがTENGAだ。

女を完全な道具としてしまいたい欲求が、男の性根の深くで長い時間をかけて圧縮されたのだ。

圧縮とは簡略化であり、分解と再構築による解釈の余地そのものであり、究極の記号化だ。

古くからある仏教が、悟りの複雑性を梵字ひとつに圧縮してみせたように、全ての名のない欲動と感動には、圧縮による記号化という果てがある。

電子メールに添付されたZIPファイルが解凍されるように、水分が与えられた乾燥食品のように、圧縮された記号は何らかの刺激によって、かつての複雑性を伴って蘇ることができる。

TENGAを分解した際に解釈され得る複雑性とは、女の主体性そのものである。

女は、自らの肉体が先天的に持つ性的価値を、男によって圧縮された自己、又はひとつの道具的側面として捉える。

女が自らの身体性のみが愛されることを避けるのは、男の欲動の底に潜む道具への愛情に気付いているからだろう。

女が望む愛とは、TENGAとしての身体的性能ではない。

無闇に破かれ、度重なる摩耗により色褪せど、艶のある表皮と、衛生的な梱包を纏った、この世にひとつだけの愛玩品として貴重に扱われることを望んでいる。

男はその逆で、道具として無感情に乱雑に扱われ、やがて捨てられることを望んでいる。

柔らかく乾いた生殖器に、甘美な痛みと快感が走り、跨りながら鳴く女の呻きをアラームとする事をどこかで望むのはそれが理由だ。

異性との関係性においての男は、自分個人が愛されることよりも、自分の持つ身体が愛される事を喜ぶ生き物だ。

もっと言えば、原子核の周囲を膜のように漂う電子の連鎖的反発によって生じる摩擦反応を求めているのであって、そこに宿る愛や感情には何の興味もないのだ。

女の陰部が凹んで、男の陰部が凸る。
女は凹みだけを愛される事を嫌がり、男は己の凸に依存される事を喜ぶ。
男は己の凸を奪われる事を嫌がり、女は凹みを失ってもなお続く愛を喜ぶ。

ないものねだりという言葉は非常におもしろい。
ないものを満たし合う為に性が産まれたのであれば、全てを手にした者は本当に退屈だろう。

女は自分という特別な鞘に傷一つ入れず守ってくれる特別な刀を探し、刀である男はその守るべき鞘を探している。

というのは間違いで。

傷一つない鞘は単に欲しがられないだけで、血濡れの刀は適当な鞘に納まれば良いだけだ。

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