縄文ファンは横浜で観覧車に乗る

私は今東京に住んでいるが、兵庫の田舎で高校生をやっていた頃、友だちと大阪へ遊びに出かけてヘップの観覧車に乗ったことがある。
(ヘップとはファッションビルの上に観覧車がくっついた、大阪梅田のランドマークみたいなものだ)

その時浮かれすぎて自分が高所恐怖症だということをすっかり忘れていた。
ゴンドラが動き始めるとすぐに思い出して怖くなり、結局乗車時間の半分くらい目をつぶっていたら、一緒に乗っていた友だちに本気でキレられた。
それからは観覧車に憧れを抱きつつも乗ることを極力避けてきた。

​高所恐怖症の者にとっての観覧車とは忌み嫌うか憧れるかの二つしかない。私は後者で、そこからしか眺められない景色と一緒に不安や恐怖が付いてくるって学園一のアイドルとの付き合うみたいなもので、地味で怖がりな私みたいなものは一生地面から見上げることしかできない尊い存在なのだ。

そんなにも遠い存在の観覧車だが、横浜市歴史博物館へ行くといつも乗りたくてたまらなくなる。

この博物館の近くのモールには観覧車があり、晴れた日には富士山まで見えるらしい。
ということは、博物館で見てきた遺跡のあった場所も見えるのかもしれない。

川の形が変わらないように、地形というのはそう簡単には変わらない。
災害や開発で変わってしまったところもあるだろうが、縄文時代から変わらないところもある。
縄文時代の楽しみ方は土器や土偶だけじゃなく地形から見るのも楽しい。
例えば川の近くにある小高い丘のような場所からはよく住居跡が見つかっていて、縄文人はそういった場所を好んでいたことがわかっている。

なのでたっぷりと見学して博物館を出た後、観覧車から横浜の町を眺めるともっと楽しいだろうなと横目で見上げつつ、いつも乗らないまま最寄駅であるセンター北駅へ向かってしまう。

この博物館では今週いっぱい、秦野市菩提横手遺跡から出土した中空土偶が展示されている。
5月に出土したばかりのものということで、この週末に見に行く縄文ファンの人も多いだろう。

経験上、縄文趣味というのは周囲の理解を得難いことが多く、なかなか同じ趣味の友だちができない。
なので縄文ファンの多くが今回の土偶を一人で見に行くのではないだろうか。
今後それらの人が博物館の帰りに一人で観覧車に乗るようになれば、お一人様で観覧車に乗っても恥ずかしくない世界がセンター北駅にできあがる。

その時に楽しめるような、観覧車から見る遺跡マップとかあると楽しそう。
ただあの観覧車には乗ったことがないから、どんな感じに景色が見えるのか全くわからない。

トラウマ持ちでお一人様観覧車のハードルは果てしなく高いし、乗ったところで遺跡の場所なんて見えないのかもしれない。

それでも今週末、勇気が出たら乗ってみたい。
でもたぶん乗らない。

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