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『ボストン美術館展』を、滑り込みで見てきた! @東京都美術館

先週、時間が空いたので、ふらっと東京都美術館で開催されていた『ボストン美術館展 芸術×力』へ行ってきました。同展は本日(2022年10月2日)で終わりなので、滑り込みで見てきたことになります。

それほど美術に興味津々というわけでもないのに、先日の東京藝大美術館に引き続いて、美術展に行く理由は……美術を見に行くわけではなく博物館へ行く感覚なんです。

そのためもあり、『ボストン美術館展 芸術×力』へ行った狙いは、ずばり『平治へいじ物語絵巻えまき 三条殿さんじょうどの夜討ようち巻』と『吉備大臣きびだいじん入唐にっとう絵巻えまき』を見に行くことでした。

■見てきて良かった2つの絵巻

美術館へふらっと出かけた大きな理由の一つは、『吉備大臣きびだいじん入唐にっとう絵巻えまき』です。この絵巻については、先日、調べてnoteにまとめたばかりなので……見られるなら見に行こうよ……という気持ちが強かったです。(しかも今回は、ボストン美術館が所蔵する全3巻を一気に見られる貴重な機会です)

実際に目の前にすると、パソコンやスマホで見た画像よりも、一本一本の線がシャキッとしていることに気が付きました。特に描かれた建物については、定規かなにかを使って、線をひいているんですかね? それほど直線が揃っています。

また、絵巻のはじめの部分で、吉備真備きびのまきびを出迎える、唐の人たちが使っている、貴族が乗るための車について。これって中国のものではないだろうなと。完全に、日本の八葉車が描かれているな……と、そういうどうでも良さそうな気づきもありました。

吉備大臣きびだいじん入唐にっとう絵巻えまき』(部分)Museum purchase with funds by exchange from the William Sturgis Bigelow Collection

また、吉備真備きびのまきびが唐に上陸して、はじめに馬に乗って移動する点に関して。やはり八葉車に乗らずに、騎馬で移動するというのは、唐の嫌がらせだったんだろうと、改めて思いました。もしくは、公卿なのに騎馬もイケる吉備真備はすごいぜ!、ということなのかもしれません。

吉備大臣きびだいじん入唐にっとう絵巻えまき』(部分)Museum purchase with funds by exchange from the William Sturgis Bigelow Collection

阿倍仲麻呂と吉備真備きびのまきびが飛ぶ姿が見られたのも良かったです。記念になりました。

吉備大臣きびだいじん入唐にっとう絵巻えまき』(部分)Museum purchase with funds by exchange from the William Sturgis Bigelow Collection

もう一つの絵巻『平治へいじ物語絵巻えまき 三条殿さんじょうどの夜討巻ようちのまき』については、最近『平治物語絵巻』の現存3巻のストーリーを学び直していました。

ストーリーとしては、まずはボストン美術館所蔵の『 三条殿さんじょうどの夜討ようちの巻』があり、次に静嘉堂文庫美術館の『信西しんぜいの巻』があって、それから東京国立博物館の『六波羅行幸ろくはらぎょうこうの巻』という流れですね。

日本にある2巻は、いつか見る機会があるだろうけど、ボストンの『 三条殿さんじょうどの夜討ようちの巻』は、なかなかチャンスがないだろうなと。しかも物語の出だしの部分ですからね……こりゃ見ておかなきゃ! みたいな気持ちにもなりました。

絵巻はけっこうな行列ができていました。そこで1度目はスルーして、展示会場の先へ進み、当絵巻は2巡目にじっくりと見ました。

戦争の残虐性が描かれている点に注目……なんてことがどこかに書かれていた気がしますが、たしかに容赦のない描写ですね。三条殿(屋敷)にどたばたと貴族が集まってくるシーンでは、その貴族が乗る八葉車の車輪に轢かれている人がいます。屋敷では火の手が上がっていますが、その下では未武装の公家を刀をかざして追い回す武士がいたり、短刀で首を掻き切っていたり、逃げ込んだ人たちの死体が井戸の中に累々としていたりと……。

平治へいじ物語絵巻えまき 三条殿さんじょうどの夜討巻ようちのまき』(部分)ボストン美術館所蔵
平治へいじ物語絵巻えまき 三条殿さんじょうどの夜討巻ようちのまき』(部分)ボストン美術館所蔵
平治へいじ物語絵巻えまき 三条殿さんじょうどの夜討巻ようちのまき』(部分)ボストン美術館所蔵

人間の本性が、絵巻には描かれているんだなと思いました。

■ハッとなって見入った作品

2つの絵巻以外については、比較的にサササァっと見て回りました。もちろん、いくつかの作品については、立ち止まってじっくりと見入りました。その中の一つがジョン・シンガー・サージェントが描いた『1902年8月のエドワード7世の戴冠式にて国家の剣を持つ、第6代ロンドンデリー侯爵チャールズ・スチュワートと従者を務めるW・C・ボーモント』という、長い長いタイトルの油彩でした。

「Charles Stewart, Sixth Marquess of Londonderry, Carrying the Great Sword of State at the Coronation of King Edward VII, August, 1902, and Mr. W. C. Beaumont, His Page on That Occasion」Gift of an American Private Collector and Museum purchase with the generous assistance of a friend of the Museum, and the Juliana Cheney Edwards Collection, M. and M. Karolik Fund, Harry Wallace Anderson Fund, General Funds, Francis Welch Fund, Susan Cornelia Warren Fund, Ellen Kelleran Gardner Fund, Abbott Lawrence Fund, and funds by exchange from a Gift of John Richardson Hall, Bequest of Ernest Wadsworth Longfellow, Gift of Alexander Cochrane, The Hayden Collection—Charles Henry Hayden Fund, Anonymous gift, and Bequest of Maxim Karolik Photograph:Museum of fine arts, Boston

タイトルも長いのですが、写真を掲載する際に提示すべきクレジットも長いですね。2つを英字で記すと、上記のようになります。それだけでなく、実物もデカい! 額縁を除くサイズが、縦287cm×横195.6cmなので、展示室の壁にドドド〜ン! と掛けられていて、その存在感がすさまじいんです。

絵が上手なのかどうかは、私には判断がつかないのですが(汗)……とにかくインパクトがすごいぞと。これは図録やWebサイトで写真を見ただけでは伝わらない感覚ですね。

■建物自体を見て回るのも楽しいです【都美の写真集】

展示会の初めのナポレオンの肖像画などは写真撮影をしても良かったようです。それを知ったのが、見てきた後のことだったので、展示会場自体の写真は一枚もありません。

ただし、多くの博物館や美術館と同じように、東京都美術館も、その建物自体を見て回るのも興味深いです。

来ておいて良かったなと思った展示会でした。

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