見出し画像

月に一度の無料観覧日に、息子と一緒に国立西洋美術館へ…おまけ:息子の模写作品

最近知ったんですが、上野の国立西洋美術館には、常設展が無料で観られる「Kawasaki Free Sunday」というオシャレな日が設定されています。そもそも常設展の観覧料が500円なのに、それすらも不要という日が月に一度もあるんです(そのほか文化の日も無料)。その由来には触れませんが、とにかく「無料」が大好きなセコいわたしは、その無料で観られる第二日曜日は、国立西洋美術館の日に設定し、できるだけ見に行くことにしました。

先週の日曜日が、ちょうど「Kawasaki Free Sunday」でした。金曜の夜には息子を無理やりに東京国立博物館(トーハク)へ連れ出したばかりでしたが、日曜日も……「西洋美術館へ行くぞぉ〜!」と言ったら、想定通りにテンションが低い息子……。とりあえず妻が家に不在の日だったので、一人で留守番させるわけにもいかず、「スケッチブックを持っていって、絵を描いていてもいいよ」という条件を、期待もせずに持ちかけてみました。すると…なぜか息子は、「じゃあ行く!」と。まだ絵を描くのは好きらしいです。結局、館内で描こうとはしませんでしたけどね。

※ちなみに国立西洋美術館で作品スケッチ(模写)が可能なのかは、いまネットで調べてみましたが……よくわかりませんでした。2021年時点では禁止されていると、美術手帖オンラインの記事には書いてあります。公式サイトには、学校来館プログラムについては、はっきりと「可能」としていますが、個人で行った時の可否については、見つけられませんでした。まぁ誰もスケッチしていないところを見ると、ダメな可能性が高いのでしょうけど……美術館博物館の「撮影禁止」と合わせて、意味不明なルールだと個人的には思いますけど(西美は撮影可です)……まぁとにかく神社仏閣と同じで「秘蔵」したい気持ちが、伝統的にあるのじゃないかと思います。という面も含めて、国立西洋美術館は、ものすごく美術鑑賞に適した施設とは、わたしには思えません。おすすめは(今のところ)アーティゾン美術館です。

今回も、コルビジュエの旧館についてはスルー。エントランスから階段を上がって、すぐに新館へ直行しました。新館にあるのは比較的に最近の、19世紀あたりからの作品です。日本で言うと幕末から明治以降の作品ということになります。

クロード・モネの《黄色いアイリス》です。「アイリス」って言われると、どんな花だっけ? となるのですが、日本語で言うとアヤメとかハナショウブ、カキツバタも入るでしょうか。

上述のとおり、この週の金曜夜には、息子を連れてトーハクへ行きました。本館1階に、「国宝の《八橋蒔絵硯箱》をデザインしてみよう!」という体験コーナーがあり、その時“も”、息子が硯箱をデザインしていました(大好きなコーナー)。配置できるのは、波と橋と、カキツバタの草と花です。

モネの黄色いアイリスを観ながら「おとといにトーハクで箱をデザインした時に……カキツバタの花があったでしょ。カキツバタも、このアイリスの一種だよ」と教えてあげると、「ほぉ〜、そ〜なんだぁ」と、少しだけ関心を持ったようでした。

下の絵はクロード・モネの《ヴェトゥイユ》。松方コレクション……クロード・モネの作品が多いなぁ……なんて思ったのですが、上の《黄色いアイリス》は、松方コレクションではないようです。

地上の建物は、グチャッとした印象ですが、絵の下半分に描かれた川面の表現は、けっこう好きです。水面と印象派……特にモネの描き方は、相性が良いように思えます。

なんだか少年がまっすぐとこちらを見つめてくるので、思わず見つめ返してしまいました。ジョン・エヴァレット・ミレイという人が1829年に描いた《狼の巣穴 The Wolf’s Den》です。

こちらは“旧”松方コレクション。“旧”ってなんだろ? と思ったら、松方さんが、川崎造船所の経営を立て直すために、銀行からお金を借りる時に担保としていたそうです。この時には差し押さえられただけだったようですが、その後の1928年に松方さんが、誰かに売却。その誰かから、2018年に個人が購入……その個人の方から同館が2020年に購入したそうです。

↑ なんか手が……怖いw

次は、毎回足をとめてしまう、1891年に描かれたピエール・ボナール(1867年-1947年)の《坐る娘と兎》。写真で見ると全体に黄色っぽいけれど、美術館で観た時にも「こんなに黄色かったっけ?」と思ったものでした。

エミール・ベルナール (1868年-1941年)が1892年に描いた《吟遊詩人に扮した自画像》。すごく良いなぁと思ったのは、このポストカードで持っておきたくなるような色合いが、大きな要因のような気がします。あとはスラッとした黄色い女性の2人。吟遊詩人ってどれだろ? って思ったのですが、一番手前の人ですね。吟遊詩人って、こういうコスプレなのか…。

そうして作品を観ながら歩いているうちに、そういえば……と思って、息子に「どの作品をスケッチするか決めたの?」と聞いてみました。模写ってほどではないけれど、なにか描くって言っていたのでね。そしたら「あぁ〜忘れてたっ。じゃあ、またあれでいいやぁ」って言って指さしたのが下の作品です。

ピエール=アルベール・マルケ (1875年-1947年)が1921年に描いた《レ・サーブル・ドロンヌ》です。このマルケさんは、一般的にはアンリ・マティスと同じく「フォーヴィスム(野獣主義)」の画家として紹介されることが多いそうです。そのわりには野獣っぽさを微塵も感じさせませんね……。やっぱりフォーヴィスムっていうくくり方が謎です。

画題もですが、タッチも色合いなどもいたって穏やかな雰囲気です。「写真撮っておいて。あとで写真見て描くから」と、息子。それならネットで検索すればいいのに、とも思いましたが、まぁネット検索して見るのと、撮ってきた写真を見るのとでは、その印象が全く違うのも事実ですからね。気になったところをパシャリ。

そして出口に一番近い、天井が2階までズドンッと吹き抜けになっていて気持ちの良い展示室へ行くと……やっぱりピカソが展示されています。国立西洋美術館って、なんでこんなにピカソが好きなんでしょか…。まぁ買っておけば、しばらく価値はどんどん上がっていくでしょうから、投資として所蔵しておくのには良いですね。ちなみに同館は18作を所蔵。2024年3月17日現在、そのうちの3作が展示されています……と思ったら、こちらの《女性の胸像》については寄託品なので、その3作には入っていないようです……ということは、現在4作が展示されているということです(もしくは4作以上)。

相変わらずわたしには、ピカソの良さはわかりませんが……なるほど、モダンな空間に飾ったら、しっくりときそうだし、おしゃれっぽく見えるかもしれないなぁと思いました。

そして同じくピカソで、同じく井内コレクションからの寄託品《小さな丸帽子を被って座る女性》。こちらも初展示作品ということです。ピカソほどデッサンというか、絵が上手な人が、こうやってヘンテコな絵を描く時の、気持ちの状況って、どういう感じなんでしょう。例えば顔の左右が対象でないのは、もしかするとモデルを見た時の角度が異なるものだったのかもしれません。ただ、手を異常に大きく描いたり……視覚したものとは全く異なる描き方をする時に、絵が上手な人は「実際に見えるものと異なるものを描く」のって、逆に難しいんじゃないかなと。

最後は、アルベール・グレーズ(1881年 - 1953年)というフランス人が描いた《収穫物の脱穀》です。269×353cmという、もう他を圧倒するように、どどぉ〜んと壁に架けられています。パッと見て、キュビスムですね。

これ、バカでかいので思わず見入ってしまいます。作品の前に立って「なにこれ?」って息子に聞かれたのですが「なんだろうね?」としか返せませんでした。

「なんか人がいるね」と……「ほら、あそことか、こことか……」と言うと「ほんとだあそこにもいるよ」と。

「あそこも人だよね」と言ったところが、わたしには分からず…「どこどこ?」と探したのですが、息子が説明する場所に人が描かれているとも思えず……「ちょっとスマホを貸して」と言われたので手渡すと、パシャリと写真を撮ったあとに、「ほらここだよ」と言って赤い線を引きながら「ここが手で…ここが帽子で…」などと説明しはじめました。下がその画像です。

そして常設の展示室を出た後に、ミュージアムショップへ初めて行ってみました。

その入り口の壁にプリントされているのが、西洋美術館の建物を描いた、コルビジュエのイメージ図でした(設計当初の構想)。こういう絵は、好きなんですよね。同館を設計したコルビジュエさんの作品って、いくつか所蔵しているようで、行くたびに一点は展示されているんですけど……正直、同館の設計者ではなかったら、こんなにコレクションに加えていませんよね? っていう印象しかありません。でも、このイラストは好きです。撮った後にコルビジュエが描いたものと知ったのですが、コルビジュエの作品で1番好きです。

正直、国立西洋美術館のコルビジュエが設計した旧館部分は、好きではありません。なぜかと言えば、元々の段階で、とても息苦しい空間設計だったのに加えて、おそらく後のことですが、外光が入らないように窓が閉ざされてしまっただろうためです(本当は天井から外光が漏れてくるよう設計されていたはずです)。

展示室は広くなく、天井には凹凸というか高低が目立つうえに総じて低く、変なところに柱が並んでいて……コルビジュエさん、本当に美術館を想定して設計してくれました? フランスに、美術館として設計された建物で、こんなに息苦しい美術館ってあるんですか? と聞きたくなるほどです。

そのため、旧館をぐるりと巡って新館に入ると、やっと息ができる気がします……ぷはぁ〜っと。そこから1900年代の作品を見て、場合によっては特集展示室を見て、新館の1階に降りていくと、新館と旧館の間の中庭が、とても気持ち良さそうに見えるんですよね。でも……出られないんです……それがとても残念で残念で……。

ということで、西洋美術館の後は東京都美術館で無料で開催されている展覧会を少し観てから帰りました。帰ってから「絵を描かなかったね」と息子に言うと、「じゃあ今から描くかぁ」といって10分くらいでサササぁっと描いたのが以下です。

(右)2022年10月の作品(小1)
(左)今回、2024年3月の作品(小3)
今回はちっちゃいな


この記事が参加している募集

休日のすごし方

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?