世界が認めた大正〜昭和の浮世絵師…川瀬巴水《東京十二題》
東京国立博物館(トーハク)は、毎週展示替えがあるため、月に何度も足を運んでも見飽きることが……今のところありません(そのうち飽きるかもしれませんけどね)。
先日、法隆寺宝物館の展示を見るためにトーハクへ行ったのですが、せっかくだからと本館へも立ち寄ってみました。それで……知らなかったのですが、いつのまにか近代絵画の部屋が展示替えされていました。しかも、いつも楽しみにしている、絵巻が置いてあることのおおい長い長い展示ケースの作品も、替わっていたんです。
おぉ〜!
……って、思いました。2年ぶりに見る、川瀬巴水の《東京十二題》です。大正8年(1919)~大正10年(1921)に描かれた……彫られた……刷られた……作品です。
そう……2年ぶりなんですよね。まぁトーハクの人気作品は、だいたい2年ごとに展示される雰囲気のようです。当作も、そうした定期展示される人気作品の1つなのでしょう。2年前にnoteした際には『スティーブ・ジョブズが魅了された川瀬巴水の浮世絵を見にトーハクへ』という、かなりイヤラシイ感じのタイトルを付けましたけど……まぁジョブズが好きとかはキャッチーになるだけで、どうでもいいことですね。まぁ今回のタイトルも、そういう種の文言しか思いつきかず……遺憾です。
タイトルの通り、東京のどこにでもありそうな12の風景を切り取った作品です。川瀬巴水さんの優しい視点で見た東京の十二景です……なんでタイトルを「景」ではなく「題」にしたんでしょうね。とてもとても優しい雰囲気で、見ているとほっこりしてきます。一昔前の言葉を使えば、とてもエモい作品と言えるでしょう。
今回、改めて作品を見てきたのですが……とにかく時間がありませんでした。というのも、一旦作品の前に来た時には、ちょうど平成館から本館に渡って、この部屋を通って帰っていく人たちが、すごく多かったんです。それで、本館の別の部屋のソファで、人が引いていくのを待っていたんです。それから、あと15分で閉館……みたいなタイミングで、またこの作品の前に立ちました。
見るのは2回目。それでもすばらしい作品だなぁと思えました。うれしいですね。
で、前回は各作品の全体像を1枚ずつ撮影してnoteしましたから、今回はやめました……時間ないし。それで、1枚ずつを見終わってから、どの視点から見るのが良かったかを、写真で撮っていくことにしました。前回と同じかもしれないし、違うかもしれない。それを比べてみたら、面白いかもなと……僕だけが面白いんですけどねw
この前、法隆寺宝物館の前にある草地を眺めていました。ここは四季が感じられる色んな草があるのですが……今は、何という名前なのか分からないけれど、よく見かける草がボウボウとしていました。かなりよく見かけるのに、名前を知らないなんて……。ちょっと調べてみると、確証はありませんが「イチゴツナギ」というイネ科の植物かもしれません。とにかく、この草で覆われていました。
朝に雨が降っていたため、そのイチゴツナギ(仮)の葉には、水滴がぽつりぽつりと乗っていました。それが下の写真です。雨上がりであれば、よく見かけられる情景ですし、きれいですよね。自分の写真を自慢しているわけではなく、ただこの写真に写っている、なんでもない情景が美しいなと感じただけです。
絵師を含む芸術家は、どんなモチベーションで作品を作るんだろう? と、一方的に鑑賞する側のわたしは思うことがあります。何を描いたり彫ったりしたいのかなと。
上の写真にある情景を見た時に、ちょうどそういうことを考えていました。それで思ったんですよ。特にモネとかマティスとかって、こういうどうということもない、身近にある「きれいだなぁ」っていう情景……一瞬を、その空気とかニオイなどといっしょに描き込みたいとか描きたいとかって考えていたんだろうなと。景色も人の営みも、その人が空想したものも、結局は地球にある自然から出来上がっていますからね。自然と人工は、なにか反意語のように思えますが、人も自然の一部だと考えれば人が作ったものも自然の一部なわけで……そうしたものを含めた、自然の美しさを……ありふれた美しさ(または怖さや醜悪さ)を、芸術家は描きたいんだろうなと。
ただ……例えば上に載せた「葉に乗る水滴の(写真ではなく)情景」よりも、「美しい!」と思える芸術作品を描けたり作れたりする芸術家って、ほとんどいないんじゃないかな? というふうに思えてなりません。比べるものではないのかもしれませんが、上の情景と芸術家の作品とを目の前にした時に、どちらに、より心を震わせられるだろうか? って考えたら、たいていの芸術作品よりも、そのあたりにある美しい情景だろうなと。
でも、ひと握りの芸術家は、そのへんにある美しい情景と同じか、それよりもさらに美しいものを作り出しているわけですから……これは本当にすごいことです。今回の川瀬巴水(と、彫師や摺師)も、間違いなくそういうことができた1人だろうなと思ったわけです。
今回のnoteは以上です。
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