ツーリングエッセイ 其の3 湯の滝

*はじめに
バイクツーリングに凝っていたころの
思い出です。当時を思い出して書きました。
間違っているところがあっても、ご容赦を。

北海道に「カムイワッカ湯の滝」という
場所がある。
僕が行ったころは、温泉が流れる自然の川を
川の中を川上まで歩いて行けて、
湯の滝まで行くことができた。

滝壺は温泉になっていて、
たくさんの人が訪れていた。

かなり前、危険なので入れなくなったと
聞いた。とても残念である。
(ネットで見たら、今は行けるみたいです)

今回はこの滝のお話し。

僕が北海道に行きたいと思ったきっかけは、
この温泉だった。

当時、バイクツーリングの専門雑誌があって
北海道が特集されていたときの記事で
この温泉の存在を知った。

川そのものが温泉で、しかも人が入る事が
出来る。湯壺は結構上流にあって、
そこまで川の温泉を歩いていく。
この記事を読んで行くことを決めた。

カムイワッカ湯の滝は、道東にあり、
夏とはいえ、ヒンヤリしている。

滝近くは舗装されておらず林道のような
道だ。バイクでしばらく行くとそれらしい
場所に着いた。

山奥の秘境と聞いていたのに、
すごい人だかり。僕は少しがっかりした。

覚えてないけど、当時入場料のような
ものはなかったと思う。だけど入り口
のようなところで、ワラジを有料で貸す
という。(有料だったと思います)
何のことかと思ったら、川の中を歩く
ときに滑らないようにとのことだった。

バイク用のブーツを脱ぎ、ワラジを履いて、
川の中を上流に向かって歩く。

確かに川の水はぬるい。
ところどころ、川から湯気もあがっていた。

ところどころ、急な傾斜もあって、
これを昇るのは大変だと思ったけど、
子供も歩いているのに弱音をはいては
いられない。

川の滝壺が目的地だけど、
ところどころ、湯だまりのような場所も
あって、子供たちはそこで遊んでいた。
でも少し水がぬるいから、
もう少し上流に行きたい。

まるで、山登りをしている感覚で上流へと
進む。ワラジを借りておいてよかったと
思う。

滝壺につくと若い男性ばかり。
家族連れでは、ここまでは来れないだろう。

彼らに混じって、僕も温泉に入る。
まだ、ちょっとぬるい。

でも目的を果たした満足感で、
僕は湯の滝を後にした。

この後、ちょっとした事故が起きる。

湯の滝を後にして、
来た道を戻っていくときのこと。

僕のバイクはアメリカンの車高の低い
バイクだった。

舗装していない道は砂利でデコボコして、
ときどき穴があいてたりする。
車高が低いので、いちいち、このデコボコに
ハンドルがとられてあぶないのだ。

来るときは慎重に道を見ていたから大丈夫
だったけど、帰りは疲れていたんだろう。
うっかり穴を見落として、バイクの前輪が
穴にハマり、見事に転倒してしまった。

ゆっくり走っていたし、幸い前後に車は
なかったから良かったけれど、
あぶなかった。

転んだときに体を支えるため、
咄嗟に出した左手は、グローブをしていた
ので、痛くはあるけどケガはなかった。
体の方は、着地したときに左のあばら骨
辺りをしたたか打ったらしく、とても痛い。

バイクの方は、少しブレーキレバーが
曲がったくらいで済んだ。
エンジンもかかるし大丈夫そうだ。

気を取り直してバイクを走らせ、
交差点の赤信号で止まった時のことだ。
止まった瞬間に、

パキーーンと、

とてもいい音が、どこからか響いた。
この音は今でも忘れない。

最初はそれが僕のあばら骨が折れた音とは、
気が付かなかった。
その後、激しい痛みが僕を襲い、
北海道の山奥でしばらく動けなかった。

とりあえず、ふもとの街まで降りて行き、
接骨院に駆け込んだ。

あばら骨が折れていることはすぐに
わかったけど、特に治療はないという。
あばら骨はくっつくのを待つしかない
らしい。応急処置として、胸にテーピング
をしてくれた。

ちなみに僕の北海道ツーリングは、帰りの
フェリーまでまだ何日もあったので、
その後はあばら骨が折れた状態でバイクに
乗ってツーリングを続けた。まだ若かった。

地元に帰って医者に行ったら、あばら骨は
完治まで半年といわれた。
特に治療はなかったと思う。

バイクの方も地元のバイク屋で点検して
もらったら、こちらは入院になった。
危ない状態だったらしい。
バイクで転倒したときは乗らずに、すぐに
バイク屋にもってきてくださいと、
叱られてしまった。当然だ。

忘れられない思い出である。

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