旅立ちは雨の日に①

「これで最後かな。」
そう言って煙草の火を消す。
そしてゆっくりと深呼吸し口の中に残る煙草の香りと味を噛み締めて冷めた缶コーヒーを身体に流し込む。

「そういえばいつから煙草って吸い始めたっけ?」
「確か高校の途中ぐらいだったと思うよ」
「そういえば高校転校する時には吸ってたよな。」
「あれは転校じゃなくて留年したから高校辞めて通信に変えただけだろ。」
「実際卒業まで4年掛かってるし。」

そんなこともあったなと思いながらも明確に吸い始めた理由と時期は思い出せなかった。

「どうせかっこつけてただけとかヤンキーに憧れてただけだろ」
そう言い聞かせながら僕は心との会話を辞めた。

これ以上話すことは無いし別に自分だからさよならもまたねも要らない。もしかしたらまた縁があれば何処かで会えるかもしれないし。まあ心の自分は本当にぼくなのかも分からないし他人なら元気で勝手にやってくれって感じだ。

「まあ悲しむ奴も少ないだろうし、僕が居なくなってもきっと世の中に変化なんて起きない。」

そう自分に言い聞かせ僕は右手に握りしめた包丁を胸の真ん中に振り下ろした。

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