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小説

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#掌編小説

【掌編】視力

【掌編】視力

見えている世界が他の人と違う。
純粋に視力が悪いだけなのだけれども、たったそれだけのことで世界の見え方は変わってくる。
初めてメガネを作ってもらった時のことは今でも鮮明に思い出せるほど衝撃的な出来事だった。確かに前の席に座らないと黒板は見えなかったけれど、地面の見え方さえ違っていたのには驚くしかなかった。ただの灰色の砂利道は、細かな石の集合体なのだと視覚情報として認識したのはその時が初めてだった。

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【掌編小説】手紙

【掌編小説】手紙

小さなメモ用紙に文章を書いて、可愛く折って友だちに渡す。
休み時間になればいくらでもしゃべることができるのに、まるで内緒話をするようなその行為は、小学校を卒業するまで続いた。
別に特定の誰かとだけするわけではない。
クラスの女子全員と1度はやった。「みんながやっているから」という集団心理なのだろうか。
クラスが違う子とももちろんやっていたし、違うクラスの子たちとの方が文章が長くてやりとりが続いたの

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