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倉庫

私はスーパーでバイトをしている。そこの倉庫の一角に何かを祀ってある祠がある。そこの周辺にはどんなに荷物があふれていても物を置かないことと、必要時以外開けてはいけないこと事前に教えられた。
古びてはいるが綺麗な赤い屋根とそこ周辺の掃除は誰かがしているらしく、いつも綺麗な花が目をひく。
気になって、長年勤めている主婦に聞いても要領のいい返事は返ってこなかった。
「お稲荷様とかお地蔵様じゃない?」
「知らないほうがいいこともあのらかもよ」
そう言われると俄然、興味が出てしまう。
バイトの時間や曜日をずらしてみると、掃除をしているのはビルの管理人がわかった。その姿はさながら我が子のように慈しんでいる姿を見かけた。
荷物を探すふりをして中を覗き込もうとしたが、背中でうまく中が見えなかった。また、物音で気づいた管理人がすぐに観音開きの扉を閉めてしまった。
少し調べると商売に関係ある土地ならば、稲荷や恵比寿であろうと考えて暫くは忘れていた。
しかし、ある梅雨明けの暑い日にふと興味が湧いて同じような言い訳をして祠に近づいた。
そこの祠に詰まってるのは口に出すのもおぞましい肉塊であった。生気のない目やだらんとした口があるべき場所になくただぎちゃぎちゃと音も立てていた。
あんなものお稲荷様でも地蔵菩薩でもない、薄気味の悪い肉塊がびっちりと詰まっていざ声を漏らしている。
なぜ今まで気づかなかったのか、これはなんなのだろうか疑問でパニックになって、そこに釘釘付けになってしまった。後ろから聞きなれない男性の声が聞こえた。
もう一度祠を見ると扉は閉まっていた。
「今扉が開いてたから、ちょっと覗きたら…」
管理人のおじさんは不気味な笑みを浮かべて諭すように言った
「世の中には知らないこともあったほうがいいんだよ」
私はそれ以上何も言わず荷物を持って店の中へ戻って言った。
その後すぐにバイトを辞めた。中身を見た私も無事だが、元バイト先が潰れた話も聞かないから、管理人さんが一生懸命に掃除していのだと思う。
あの肉塊と管理人さんの関係はなんだったのかはまだ聞く勇気も出ない。

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