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図書館に行ってきた 3

ブラフマンの埋葬 小川洋子
気温、湿度、光の強さや傾き、風の匂い、森の空気や足元にある木の根のうねりなど、その世界に入り込むための全ての表現が淡々と描かれている。僕もブラフマンも娘も彫刻家も皆、絵画の中にいて、それを見て読者が空想してるだけのような、そんな本だった。

明日の子供たち 有川浩
読みやすさと爽やかな読後感は相変わらず。実際の児童養護施設を知るきっかけになる。登場人物の年齢層が高めなので、本当はもっとてんやわんやしてるんだろうな。感想すらも本文に入っているまとまり感。

幽霊人命救助隊 高野和明
真っ暗なトンネルの中なのか、絶望のど真ん中なのか、人生のどん底なのか、あの頃の私が本の中にいた。そしてかつての私は今更ながら彼らによって救われた。泣きながら読んだ。

町医 北村宗哲 佐藤雅美
時代背景や知識の解説が多めで、それを楽しめたら奥行きを感じて面白い。町医者の日常なんだけど、淡々と描かれているんだけど、主人公がすごいとか偉いとか無いんだけど、面白いんだよなぁ。

問いのない答え 長嶋有
円周率3.14を描くと円に見えるけど、よくよく見ると円ではない。液晶画面はよくよく見ると無数の点でできている。Twitterで起こる「炎上」もよくよく見れば無数の人がいる。
この作品にはたくさんの人物が細切れに、入れ替わり立ち替わり出てくるのでとにかく読みにくい。けれどTwitterをスクロールしながら見るように読むと、すいすい読めた。読後には何も残らない。感想をすぐに書かないと内容を忘れてしまいそうな感じ。
私たちが意識せずにしている些細なことが丁寧に描かれていて「あるある〜」と思うことが多かった。けれど気づいたことを気づいた側から忘れてしまう、そんな本だった。

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