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「介護におけるサービスとは」介護は本当に“サービス”なのか。

「モノ消費」から「コト消費」へ

このような消費傾向の変動が起きていることは知っているだろうか。

「モノ消費」は商品やサービスそのものに価値がありそれを買うという行為です。例えば、Tシャツを買う。掃除機を買う。
「コト消費」は商品やサービスによって得られる経験に価値がありそれを買うという行為です。Tシャツを買うのではなく、作る体験。掃除機を使うだけではなく、家を綺麗にするというコトに注目したサービスを提供する。

このように大きく消費傾向が変化してきている。
そして、この傾向に伴い料金体系も変化している。

「買い切り」から「サブスクリプション」へ。

消費者は購入する時にお金を支払うのは当然だ。しかし、最近では月額契約や年間契約という料金体系が多くなってきているのは肌感覚で理解しているはずです。

アマゾンプライムは代表例です。
空いている時間にすぐに映画やアニメが見れたり、本購入時の送料が無料になったり配達スピードが上がります。いずれも「時間の使い方」に対してのサービスになります。スマートフォンが普及してから圧倒的に時間の使い方にパラダイムシフトが起こりました。いつでもインターネットと繋がり、ユーチューブを見たり、SNSを活用したりできます。あらゆるエンターテイメント事業の競合となってしまいました。アマゾンプライムはそのスマートフォンと上手くシナジーを起こしている事業ではないでしょうか。

このように、単にモノを売るのではなく、暮らしに密着して暮らしの質を高める“サービス”が主流になり始めています。つまり、UX(ユーザー体験)の質を高めることが真髄になっているのではないかと思います。

それでは介護サービスはどうでしょうか。

介護サービスの料金体系は、月額課金制。サブスクリプションモデルとも言えるのではないでしょうか。それではUXに価値は置けているのでしょうか。介護保険サービスは公的サービスという側面もあると思うので、純粋なビジネスと比較することはできません。しかし、公的サービスという側面があるこそ、“価値の見える化”が大切になると思います。

実際に介護事業所でできているところはあるのでしょうか。価値とは何を指すのでしょうか。

そもそも介護保険制度は「利用者がもつ機能をできる限り維持させながら、彼らの日常生活における自律性を向上させる」ことが目的とされている。

そして、介護事業は何をサービスとして提供しているのだろうか。アマゾンプライムであれば、インターネットで見れる映画やアニメ。
介護の場合は、居心地の良い空間というハード的要素もあるかもしれないが、基本的には「ヒト」である。

「ヒト」を介して、上述した介護保険制度の目的を達成しなければならない。つまり、「ヒト」がビジネスでいう「商品」とも置き換えられる。

では「ヒト」の評価はしっかりとできているのだろうか。本来であれば、商品というのは品質チェックというのがあったり、アンケートをとったりとなんらかの評価は行われる。サブスクリプションモデルで契約を継続してもらうためには、絶えず改善が必要である。
しかし、同じサブスクリプションモデルであっても介護というのは、他のサービスと違い、気軽に「解約」することができない。そういった背景もあり契約してもらうと、解約されるという危機感は非常に乏しいと思う。

介護というものは歴史的には家族をはじめとする人たちが行う、インフォーマルサービスだった。そこに金銭的な授受は介することはなかった。
今の時代は違う。介護がサービスとなり、産業になった。そうなったのであれば、“サービス”として評価は行っていく必要がある。

しかし、介護のほとんどは、介護技術が「できる」か「できない」かの評価はサービスを受けてからではないとわかりにくい。その見える化がなされていない。

「評価がされていない」、「見える化がされていない」。介護はサービスであるにも関わらず、利用者目線(サービスを使う人たち)が抜けているのではないでしょうか。つまり、UXの視点がかけている。その視点が欠けてしまうと、どうしても「サービス提供者→利用者」への一方通行になってしまう。これは、家電やTシャツを売っているだけの「モノ消費」と同じ現象です。

介護事業所のホームページでは、「最新テクノロジー導入しています」、「○○介護に取り組んでいます」、「外出支援しています」といった謳い文句はよく見かけます。
本当にこれは提供価値としては正しいのでしょうか。
様々な意見があるでしょう。個人的な意見としては、もっと「ヒト」にフォーカスした方が良いのではないかと思う。事業所によっていろいろな取り組みがなされていますが、それを生み出しているのは「ヒト」です。その「ヒト」から直接、介護されるわけですから・・・。

それでは「ヒト」。つまり、介護職員の力量になります。この力量を見える化している事業所はまだ見たことがありません。

この本を参考にすると、介護を純粋に提供する「提供型価値」と臨機応変の対応ができるかの「適応価値」があると言われています。
これらの能力は介護福祉士という国家資格の有無や国が求める研修の受講の有無とも統計的な関係性は示されなかったとされています。

例えば介護保険においては、ケアプランという利用者に対して個別ケア計画書のようなものが作成されている。基本的にはその内容にそってケアを行っていく。これを確実に遂行していくのが「提供型価値」の能力の高さです。しかし、介護の場面は日によって、いや、その時によって、利用者の状況は変わります。移動を車椅子で行っている利用者がいます。「移動」に介助がいる利用者ということになります。ケアプランをたてた時点では車椅子が最適だったかもしれません。しかし、時と場合によっては介護保険制度の目的である自律性を重んじる場合、車椅子よりも他の方法が良い時もあります。歩けるようになっているのであれば、杖や歩行器を使用した方が良い可能性もあります。
このように様々な角度から物事を考察し、臨機応変に対応できるのは「適応価値」の高い介護職員となります。

この見える化が個人的には重要になってくると思っています。

もし仮に今、自分が介護サービスをうける立場であれば、どのような事業所が良いでしょうか。綺麗な施設ですか?大きいお風呂ですか?最新テクノロジーですか?

僕はやはり、働く「ヒト」です。
“サービス”としてUXを常に高めていく。改善していく。
この姿勢は改めて考えても良いのかもしれません。

今一度、使う側の立場で、“介護サービス”を見つめて見るのも良いかもしれません。

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