父と宇宙物理学


父は 宇宙が好きなのだろう。

大学は物理学科へ進み、母と出会い結婚した。
仕事も研究者の道を選んだ。


家の2階の父の部屋は、
カラーボックスで部屋が仕切られていた。
北側の静かな空間。

カラーボックスには、ぎっしりと本が詰まっており、本が壁を作っていた。

宇宙物理の本、相対性理論の本、小説は宇宙の旅シリーズなど、同じような題名の本や科学雑誌が並ぶ。

それに負けず劣らず母も沢山の本を持っていた。
父の好みとは異なり、文学小説が多かった。



私は沢山の本に囲まれて過ごした。
幼い頃から二週間に一回は家族で街の中心にある大きな図書館へ行き、
それぞれ思い思いの本を借りて帰ったものだ。
すぐに車酔いするにも拘らず、家まで待ち切れなくて、車の中でページを捲る。

中学生になると、母親の持つ文庫本を次々と読み漁った。
沢山の沢山の本を読んだ。



何かを探していたのだろうか。



何を受け取ったのかもわからないまま、



言語化出来ないまま。






父がよく観るテレビ番組は宇宙関連のものか、囲碁ばかり。
そんな映像を日々観ていた私は、自然と宇宙に思いを馳せることとなる。


父がどうしてそれほど宇宙に興味があるのか、
考えた事も無かった。

2022年の夏の終わり、ある本を読むまでは。







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