見出し画像

たか子姉さんとの再会

3月13日午前10時55分、某駅。

「ナカソネさーん!ひさしぶりーっ!」

と、すっごい笑顔でぶんぶん大きく手を振りながら私に近寄ってきたのは、パタゴニアの青いライトダウンを着た、たか子姉さんだ。

(何年も会っていない超仲良しの友達との再会みたいなテンションで来るじゃん…)と心の中で思いつつ、「おひさしぶりですー」と私も控えめに手を振り返した。

おひさしぶりなのは間違いないが、会うのは今日で2回目だから全然仲良しというわけではない。たまたまスタバのコーヒーセミナーを一緒に受けただけの間柄である。

その話、知らねー!って方はコチラをどうぞ↓↓

何度かLINEでやり取りした私たちは、お互いの家からちょうど真ん中あたりになる駅で待ち合わせて、一緒にランチを食べる約束をした。

ランチを食べるとなると、どこかお店を予約しておくべきかとも思ったが、わりと大きな駅ビルがあって飲食店も多かったので、予約せずに適当な店に入ろうということになっていた。

駅ビルの中に入っている飲食店をスマホでチェックし、良さそうな店に行ってみたら10人ぐらい並んでいた。

私はその日、13時半には電車に乗らないと幼稚園のお迎えに間に合わないというスケジュールだったため、並ぶのはやめて別の空いているカフェに入った。

ランチメニューの中から、エビとイカが入った明太子スパゲッティを注文した。たか子姉さんはエッグベネディクトを頼んでいた。そういえばエッグベネディクトっていまだに食べたことがないような気がする。

流行っているものは流行っているときに食べないと、今さらなぁ…となってずっと食べないことになる。いまだにタピオカの入ったアレも飲んだことないし、マリトッツォも食べたことない。マリトッツォさんはもうこの世から消えてしまったのではないだろうか、とんと見かけない。

海老とイカが入った明太子スパゲッティ

また話が脱線した。


11時に待ち合わせで13時半には帰る、っていうスケジュールを組むのもどうなんだろうとは思ったが、それはまあアレだ、私の警戒心によるアレだ。

たまたまコーヒーのセミナーであっただけの人が、「友達になりましょう!」って言ってきたらそりゃあ…ちょっと警戒もするってもんで。

たか子姉さんは良い人そうだと感じたし、仲良くなれたらいいなと思ってランチすることにした。でも万が一、強引に補正下着を勧められたり、高価な壺を売ろうとしてきたり、「いま、幸せですか?」とか問い詰められたりしたらどうしよう…という気持ちも1割ぐらい持ってしまう。

いや2割ぐらいか。
いやいや3割ぐらいは警戒してたか。
ていうか半分以上は疑ってかかってた。

まあとにかく、急に距離を詰めてくる人は警戒しといて損はないんだよなぁって相田みつをが言ってたような気がするし、42年も生きてきたから知ってるわけで。

パスタの後のコーヒーは実にうまい

変な話になった場合、あまり長時間になるとしんどい。でも変な話じゃなかった場合は短すぎるランチタイムになって、それはそれで気まずい。
なので、普通にランチして世間話する分には問題ないであろう、2時間半という制限付きの約束をしたのだ。「子供のお迎えの時間があるから」という鉄板な理由を掲げて。

もしもたか子姉さんがベテラン壺売り師で、私が壺の魅力に惹かれて気持ちが揺らいだとしても、あとひと押しというところで時間切れになる計算である。

向かいに座っている相手が、そんな計算までしているなんて知らないであろうたか子姉さんは、相変わらずにこやかで柔らかな笑顔を見せていた。なんかゴメンなさいという気持ち。

本文とは関係ないツツジ

たか子姉さんは人の話を聞くのが上手だった。
気づけば私は、自分のことをペラペラと喋りまくっていた。

子育てのこと、家庭のこと、過去の仕事のこと、これからのこと。

聞くのが上手くて、こっちが気持ちよくなるようなことばっかり言ってくれるもんだから、自分で引くほど喋っていて、なんなら軽く今後の夢まで語っちゃってた。こわ。

例えて言うならアレだ。
キャバ嬢に「すごーい!」「知らなかったですー!」「そうなんですねー!」って言われて、気分よく喋りまくるおじさん。まさにアレになっていた。
たか子姉さんはキャバ嬢で、私はおじさんだった。

おじさん(私)は飢えていたのだ。
人と会話をすることに。っていうか自分の話を誰かに聞いてもらうことに。
いつも5歳と3歳と訳のわからない会話ばかりしているんだから、ちゃんと大人の人が相槌を打ってくれながら話を聞いてくれるなんて最高でしかない。
金を払わねばと思う。

それにしてもちょっと自分の話ばっかりしすぎていることに気がついたとき、腕時計をチラッと見てみると13時を過ぎていた。
「わっ、もう13時過ぎちゃってますね…あと20分ぐらいしかないや」
と私が言うと、たか子姉さんは少しだけ焦ったような気がした。

本文とは関係ないバナナケーキ

たか子姉さんが話したい話を、まだ出来てないんだろうなと察した。
そしておそらく、その話というのは私が警戒していた系の話なんだろうなと、その一瞬の雰囲気で分かってしまった。

仕事の話になったとき、たか子姉さんにも何をしているのか聞いてみたら「家にいてもできるような、時間には縛られない仕事」みたいな曖昧なことを言っていたのが引っ掛かりまくっていたんだ。

なので、もう一度その話題を振ってみた。
するとたか子姉さんは話し始めた。

「さっきもちょっと話した私の仕事のことなんだけどね、私は「潜在意識」を学びながら収入を得ているのよ」

「せんざいいしき…?を、まなびながら、しゅうにゅうをえる?」

(ちょっと何言ってるか分かんないっス)
私の頭の中のサンドイッチマンの声が聞こえてしまったのだろうか、たか子姉さんは笑いながら「よく分からないでしょー!でもね、そんな世界があるのよ」と言った。

そしてこう続けた。

「でもねー、たぶんナカソネさんには必要ないかもしれないね。やりたいことやってきて、今がすごく楽しいみたいだし、これからやりたいことも明確にあるみたいだし。私はね、その潜在意識を学ぶ前までは全然自分に自信がなくて、毎日が不安で、上手くいかないことばっかりだったの。ナカソネさんも、悩んでいたりするなら是非教えてあげたいなって思ったんだけどね。なんか、大丈夫そうだよね、そのままで(笑)」

お、おう。
これは喜んでいいところなのだろうか…。

気分よくペラペラペラペラ自分の話をしちゃったんだが、どうやらその内容を聞いてたか子姉さんは私を誘う気がなくなったらしいのだ。
もうちょっとこう、悩んだり迷ったりしている人だと思ったのにコイツ全然じゃんっていう。

潜在意識を学びながら収入を得る、っていうことについては気になったけれど深追いするといけない気がしてそれ以上は聞かなかった。
ネットワークビジネスの部類だとは言っていたけれど、たか子姉さんもそれ以上詳しく説明するつもりは無いようだった。

「いいのいいの、そんな世界もあるよーっていうだけだから。私はそれを始めたら、良いことしか起こらなくなって、全てが上手くいくようになったんだよね」とのことで。

潜在意識とやらを学んでそうなれるのは良いとは思うけれど、一体どうやってそれで収入が発生しているのかが謎であり闇である。せっかくだからその謎まで聞きたい気持ちもあったが、闇の部分に首を突っ込むのはやめておいた。

時間ギリギリでそういう話になり、なんだかちょっとだけ気まずい雰囲気だったが、たか子姉さんは最後まで柔らかい笑顔を絶やすことはなかった。
きっと本当にいい人なんだと思う。「人を応援するのが好き」と言っていたのは嘘じゃないはずだ。それは話していてよく分かった。

普通にお友達になれるといいなーと半分は期待していたので、やっぱりそういうビジネスへのお誘い目的だったことに残念な気持ちにはなったが、まあこれも良い経験だったかなと。

ビジネスへのお誘い目的でランチに誘われたのに、お誘いする気を無くさせてしまってなんか申し訳なかったかなとも思う今日この頃である。

いやぁーおじさんちょっと喋り過ぎちゃったなぁ。


そしてこの記事も長くなっちゃったなぁ。









この記事が参加している募集

今こんな気分

#創作大賞2024

書いてみる

締切:

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?