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二郎から始まる家族ゲーム第6章

 和夫は次の冷凍船が来るまで、日々の仕事を頑張った。しかし、最近はナブラを発見する事ができずに不漁の日が続いていた。
船長は、
「今までが獲れたんよってに、また獲れるようになるわ。」
と焦りはしていたが、乗組員に気づかれないように前向きな言葉を発して、船の士気を落とさないようにしていた。
 上陸日にはマリーのいる食堂に食事をしながらマリーと話が少しずつ出来るようになり、コミュニケーションも取れるようになってきた。英語は片言ではあるのだろうがお互いに、言いたい事を察してこういう事?などリアクションをして話しているうちに、マリーがこれはこういう風に言うんだよと教えてくれたり、どうしても困ると兄さんに聞きに行ったり日常会話は一人でできるようになり、マリーの父からも気に入られたようで和夫が来ると食堂も一際明るくなるのであった。
兄さんが、
「和夫!あのマスター去年凄い怖かってんぞ!お前凄いなぁ!」
照れながら和夫は、
「兄さんたちのお陰ですよ。料理を船で習っているなら、休みの日はここで働かないか?って言われたけど、カツオがいつ獲れるか分からへんからちょっと待って欲しいって言ってるんですよ。」
兄さんは、
「そうやな。カツオが獲れだすとやる事が多くなるからな。船長とコック長に聞いてみるとええわ。せやけど上陸日は身体を休めた方がええど。」
和夫は、
「そうですよね。家族や友達にも手紙書きたいし。」
兄さんは、
「和夫は偉いなぁ。俺達みたいに何年もカツオ船乗っとると家族に手紙も送らんようになってしもうたけど、ホンマは近況を知らせないかんよなぁ。和夫には家族に手紙出せよって言っときながら、俺達は全然出してないわ。」
和夫は
「僕も正直何書いて良いか分からなくて、どこにいるのかと船長が月に一回身長測ってくれるからそれを書いてるくらいです。」
と言うと兄さん達は、
「そういえば和夫も、松のおっちゃんに髪切ってもろてから大人になったなぁ。背もちょっと伸びたし、身体つきも痩せとったのが筋肉付いて来とるなぁ。成長期なんやなぁ。」
(成長期か、確かにまだ脚が痛くなるし成長期なのかなぁ?おかあちゃんが脚が痛くなるのは骨が伸びとる証拠やって教えてくれたもんなぁ。どれだけ伸びるんやろ?)
和夫は兄さん達に、
「僕先に船に帰ってます。船に残ってる人たちのご飯も用意せないかんので。」
と、カツオは船に戻った。
 船に戻りコック長に言われた通り、船に残っている人数分×0.25号を炊飯器に入れて米を研ぐ、船長からは18:30にはご飯が炊けているように言われているので、今から夕食までの段取りをしておくのだ。
 コック長が来たら指示をもらうので、それまでは食堂の整理整頓や掃除をしてコック長が食堂に来るのを待つのだ。
 17:00前にいつも通りコック長がきた。
「和夫。今日は俺が見とるから、カレーを作って見るか。俺も身体休めたい時に交代で作れるようにしときたいからな。」
和夫は緊張しながらコック長に、
「はい。やってみます。」
と言って早速コック長がいつも行っているように野菜を切り始めた。玉ねぎを半分に切ってなるべく薄くなるようにスライスしていく。最初は手つきもおぼつかなかったが、今はまな板にコンコンコンと良いリズムでスライスできるようになった。今度はジャガイモの皮を剥いて1cm角のサイコロ上に切る。これも最初は大きさがバラバラでコック長に火の通りにバラツキがでると叱られていたのだが、今はコック長と同じようにサイコロ上に出きるようになった。次はニンジンを一口サイズに乱切りにしていく。これも大き過ぎると火の通りが悪くなるので大きくならないように慎重にニンジンを転がしながら切っていくのだ。野菜の仕込みが終わると鍋を用意して水を入れて火にかける。その間に冷蔵庫に行って吊るしてある牛肉を必要な分だけさばいてくる。肉の量は少ないと船員から苦情が出る事があるので多過ぎず、少な過ぎず丁度良い量をさばけるようになった。さばいた肉は調理場で、一口大に切り分け鍋に入れる。これでひと煮立ちするまで一旦待つのである。
 和夫の無駄のない動きを見て、コック長は感心していた。自分でも少し言い過ぎたかなと言うくらいに細かく和夫には清潔と不潔の観念を教え込み、野菜を切る大きさも火の通りやすい大きさに切る事によって、船の燃料を無駄に使わないようにしているなど、この事にはこういう意味があると細かく聞かせたのだった。和夫は懸命にメモを取り、あり程度まとまるとメモのまとめを仕事帳と書いたノートにまとめて持ってくる。非常によくまとめられているので、和夫に一晩借りて船長にコック長はノートを見せたのである。
「田川さんの息子は凄いなぁ。一つ言うた事に対して何個も注釈をつけてあるわ。このまま説明書につかえるわな。コック長ありがとう。田川さんも喜ぶわ。和夫せやけど、ワシが正月行ったの覚えトランみたいやな…正月は背広も着て髭も剃って行ったから、分からんのやろなぁ。」
 そうなのだ船長は正月の和夫の家に訪問していた幹部の中の一人だった。和夫は礼儀正しくしつけられ、挨拶もしっかりとできてお酒のお酌の所作も無駄な動きはなく、船の上でしっかりと仕事を教える事が出来れば、コック長の助けになると考えていた。
 和夫は鍋を見ながら鍋が沸騰してくるまでの間に、人数分のお皿を用意して、コップ、スプーン、福神漬けなどをテーブルに用意した。今日は波も穏やかであるが波がある時はまとめて用意すると食器などが滑っていくので、一か所にまとめて船員一人ずつ手渡ししてご飯を盛りつけてもらい、カレーをその上から乗せていくのだ。波のない日はナブラを見つけやすいのだが、こういう日にはナブラはほとんど見つからない。少々波が荒い方がナブラが見つけやすいのだ。
 和夫は船の窓から空を見て、雲の色が灰色くなってきている事を確認した。明日は雨が降るだろうから少々雨も降るかもしれない。そうすると船が漁に向けて出港するので、雨の日の食堂の段取りを頭の中で繰り返していた。
 そうしているうちに鍋が沸騰し始めた。肉から出る灰汁を取りながら沸騰し始めた鍋にカレールーを入れる。隠し味にハチミツを混ぜて火を弱火にして焦げないように木のしゃもじでグルグルと回し続ける。この作業が一番力がいる。野菜も肉も入ってカレールーも入れてトロミがついた鍋の中を回す事によって野菜や肉からでたうま味を全体に行きわたらせると共に焦げ付かないようにひたすらグツグツと煮えている鍋を大きなしゃもじで回し続けるのは大の大人でも体力のいる仕事である。
 うしろで何も言わずコック長は見ていた。
「和夫もうそれくらいでええやろ。火を止めて寸胴を隣のテーブルに移せるか?」
和夫は、
「はい。コック長。」
そういうと膝をグッと下にかがめ、寸胴を持ち上げ隣のテーブルに移した。
「よし。和夫、最後まで一人でできたな。何も言う事はない。あともう一回一人で作るのを見せてもろて、それからは一人で作ってもらう時は前もって言うよってに。頼むぞ。」
和夫は、
「ありがとうございます。頑張ります。」
船長は、
「頑張ってくれ、まだ若いよってに覚えてもらう事は沢山あるから、この調子で働いてくれると、船長も喜ぶわ。」
こういうと船長は沸いたお茶を海水張っておいたタライに付けて冷やし始めた。
 翌日予想した通り、小雨が降って来たので夜明けとともに船長が船を出すと船員に告げた。今日はたくさんカツオが釣れると良いなと船員たちも雨カッパを着ながら話している。竿もそれぞれ手入れしてあるので、ナブラが見つかればいつでも一本釣りできる準備をしていた。
(兄やん達は段取りをしっかりとして、いざとなった時に慌てんと甲板に出ていくのが凄いわ。段取りがどれだけ重要か兄やん達に教えてもらったわ)
 和夫は船員の立ち振る舞いを見て学び、自分の厨房での仕事に何が活かせるかをしっかりと掴んでいた。家の畑や田んぼを管理する時も、要る物を用意してから仕事を始めていった方が仕事が早く終わる事を自然と身に付けていた和夫は、妹や弟にも段取りの大切さを教えていた。
「ナブラがあったどー!」
双眼鏡で何人かが波の様子を見てサイレンのボタンを押した。約1週間ぶりの漁である。船員たちは嬉しそうに甲板に出ていった。船はナブラ近づくと船の横から海水を吸い上げ海面に水滴を作る。そこに餌まきがイワシをまいてカツオをおびき寄せる。一本釣り漁師はひたすらに竿を上下させてカツオを引っ掛けて船に落としていく。
 和夫はいつ見てもこの時の姿が、輝いて見えた。船員たちが一丸となって呼吸をしているように竿が上下されている。そしてカツオが一本、もう一本と船に上がってくる。
「おりゃー!」「負けへんど!」
とそれぞれが気勢を上げカツオをどんどん上げていく30分位した所で波が静まった。
船長が拡声器を使い、
「よし!もういいど!いったん戻ってくれ。」
と言い船員が準備場に戻ってくる。
「今日はようけ釣れたんちゃうか?」
「長かったなぁ~」
続々と引き上げてくる。着替えて直ぐ早めの昼食を摂る。
和夫の初めて一人で作ったカレーを船員の皆が
「美味いなー!!」
と言いながら勢いよく、スプーンを使ってかき込んでいく姿を見て和夫は感動を覚えた。自分の作ったカレーが美味いと言われている事に。
コック長は、
「どうや?和夫、嬉しいやろ。俺もこの仕事何年やっとってもこの瞬間が一番好きなんや。」
和夫は、
「コック長ありがとうございます。まだ教えて欲しい事が色々あるもんで、よろしくお願いします。」
再敬礼でコック長に伝えた。
「分かった。今度新しいメニューに牛丼を作ろうと思うてる。カレーの材料で十分作れる。船長にも醤油を頼んどいた。和食はまた難しいよってに、俺の仕事を見ながら覚えてくれ。」
和夫は、
「はい。お願いします。」
と言いながら船員達の食べ終わった皿とスプーンを洗うための段取りを始めた。
 桶に1ℓほど水を入れ洗剤を入れて泡立てる。カレー皿に残った汚れを新聞紙で作った袋に牛乳パックで作ったヘラで落としていく。最後に泡立ててある泡を使い、古い網で作った食器洗いで皿を一枚づつ丁寧に洗っていく。皿と言っても海の上では割れ物は使えないのでブリキの皿だ。ボコボコになっていてボコッとなった穴にカレーが入って取りにくい、そこで網の細かい糸が汚れをかき出してくれる。和夫は一つ一つしっかり考えられて作られているんだなぁと感心しながら皿洗いをしている。
 船長が船内放送で、
「今日は冷凍船が来るので、郵便物がある人は用意しておいてください。」
和夫はちょうど皿洗いが終わって調理場のシンクの水分をきれいに拭き取っていた所だった。
 今日の1回の漁で冷凍庫がいっぱいになったようだ。ナブラを探す船員は一旦冷凍船のいる港に行くため、自分の部屋に戻り郵便物の用意をしていた。和夫も家族と朋輩に初めて出す手紙を出して、港に着くのを待っていた。
 港に着くと冷凍船からベルトコンベアがカツオ船にゆっくりと上から降りてくる。上手に距離を取りながらベルトコンベアをカツオ船に乗せる、2メートルほど渡したら冷凍庫から簡易エレベーターに乗ったカツオが上がってくる。カツオ船の船員がカツオを何本も手に持ちどんどんコンベアに乗せる。旗で合図を送ると、冷凍船のベルトコンベアが勢い良く回り始める。コンベアに乗ったカツオは冷凍船の下にある更に大きな冷凍庫にどんどん吸収されてく。和夫はこの冷凍船にカツオが入って行くのが見るのが好きで、兄さん達にお願いして、いつも前の方でカツオを乗せる作業を手伝っていた。
 兄さん達は各指の間にカツオの尾の方を持ち一気に8本のカツオを乗せていた。和夫もやってみようとしたが初めのうちは出来なかったがコツをつかむと出来るようになり、8本のカツオをコンベアに乗せていると、
「和夫!やるやんけ!8本乗せマスターしたな。握力つくど!!」
兄さん達が、和夫に声をかける。
「手が痺れるけどやる度に、軽くなってきてます!」
兄さん達が、
「日本に帰ったら、家族びっくりするやろな。身体もがっちりして、手もみ見てみぃ。大きいなったやろ?」
「ホンマや大きなとる。気づかんかった。」
兄やんは笑いながら、
「手が大きなって来たら、握力が付いとる証拠や。カツオが持ちやすうなったやろ?」
和夫は、
「はい。それやから、カツオが軽く感じるようになったんですね。」
兄さんは嬉しそうに、
「そうや、乗ってまだ3か月も経たへんのにこの船の仕事ほとんど覚えてしもうたな。凄いわ。」
和夫は照れながら、
「調理場だけ居るのも退屈やもんで、コック長と船長に頼んで船の仕事もやらせてもらいました。」
そうすると冷凍船から
「○○さんと○○さんにお届け物があるのでコンベアに乗せますので受け取ってください。」
コンベアから2人分の木箱に入った届け物が届いた。
 木箱を開けると中に段ボールが入っており、コック長に届いた荷物らしく段ボールを抱えて食堂に戻って行った。もう一人は上陸用の服を送ってもらったようで嬉しそうに段ボールを抱えて部屋に戻ていった。
「カツオ船の皆さんの郵送物は木箱に入れてください。大きい荷物はそのままコンベアに乗せてください。」
木箱には船員が誰に宛てたか分からない手紙が無数に入っていった。
 再度カツオ船から旗を上げて合図を送ると、コンベアは動き出し木箱を回収してコンベアも冷凍船側にチェーンで巻き取られていく。
 和夫は家族と朋輩に出した手紙が早く届く事を祈って、食堂の仕事に戻った。
「和夫!ちょうど良かった。来てみぃ。」
船長とコック長が食堂から声をかけた。
「和夫。これ何か分かるか?開けてみぃ。」
和夫は
「コック長が持って行った荷物じゃないんですか?」
「ええから、開けてみぃ。」
箱にグルグル巻きにしてあるガムテープを解くと、黒いケースが出てきた。
黒いケースを開けると、新品のピカピカに輝く包丁が5本入っていた。
出刃包丁、菜切り包丁、ペティナイフ、万能包丁、柳葉包丁。全部左利き用の物だった。
「これ…どうしたんですか?」
和夫は驚いて船長と、コック長に聞いた。
「ワシらからのプレゼントや。左利きの和夫に右利き用使わせとったら変な癖ついたらあかん思うてな。」
船長が言った。
「和夫、俺もいかげんな歳になったから和夫に料理をこの船に乗っている間に覚えてもろて、船員さん達に美味しいご飯を食べてもろてくれ。この包丁は和夫の物や。毎回仕事が終わったらキレイに手入れをして自分の寝場所に持っていくんやぞ。これが和夫の仕事道具や。命と同じや。」
コック長が和夫にニコニコしながら話してくれた。コック長の笑顔をまともに見るのは初めてかもしれない。
和夫は
「ありがとうございます。船長にコック長。僕1年しか乗らないのに…良いんでしょうか?」
コック長は、
「高校卒業したらまた乗ってくれるんやろ?そしたら今度は和夫がコック長になっとるかもしれん。何があるのが分からへんのが人生や。とにかくその包丁で次の食事の支度してくれ。」
コック長が和夫の頭を撫でながら話してくれた。
「はい。分かりました。ありがとうございます。松のおっちゃんの持ってる散髪の道具も手入れして20年使うてるって言うてました。僕も大切に使って一生使います。」
和夫は船長とコック長に話すと、
「松も自分お店持つのが夢みたいでな、あの散髪のハサミやカミソリは大切に手入れしとるなぁ。和夫も大切に物を扱うんやぞ。物には命があって、粗末に扱えば段々使いにくくなるし、手入れしておけば、いつでも使いやすい道具になる。家から持ってきた服なんかもきれいに畳んでおけばしわも寄らへん。ぐちゃぐちゃにおいておくと、しわまみれになって服が破けやすうなってしまうんや。物には命が宿っとる。何でも大切にするんやぞ。」
 和夫は胸を現れるような爽快感があった。船員たちが道具の手入れをこれでもかとしている事、燃料の無駄にならないような事はしない事。コック長も真水や燃料を無駄にしないように料理を考えながらやっている。物を大切にする事は、仕事をしやすくする面の他に燃料などの資源も無駄にしないという事を学んだ。
 和夫はこのプレゼントしていただいた包丁セットを今も大事に手入れしながら使っているのだ。
 
 明日は最後のこの地での上陸日なので、みんなワクワクしながら仕事をしていた。これまで大漁が続き、北アフリカでカツオが回遊している事を察知した他の漁船が日本から押し寄せてきていると情報が入った。船長はすぐに南アフリカ行きを決めた。ほとんどカツオを獲ってしまったと言っていいくらいの大量だったので、特別褒章金がもらえる事になったと聞いてますます上陸するのが楽しみになっているのだった。
 上陸日、いつものバーに兄さん達と向かった。和夫はマリーと会うのもこれで最後だと少し寂しい気持ちでいたが、新しくいく南アフリカはどんな所だろうと希望に胸を膨らませていた。
 「カズオ、コンニチハ」
和夫達が店に入るとマリーがすぐに駆け寄ってきた。
 兄さん達が、
「和夫!今日でマリーちゃんとは最後やからカウンターでゆっくり話をしておいで。」
と言われ、マリーが誘うがままにカウンターに座った。
マスターが、
「カツオ、ハロー!」
と上機嫌でコーラを二人分置いていった。
マスターは和夫と言いずらいのか、カツオ船に乗っている和夫をあだ名で呼んでいるのか、カツオと呼んでくるのであった。
「トゥデイ、ラスト。トゥモロー、サウスアフリカ」
と和夫はマリーに告げた。
マリーは、
「ワカリマシタ。」
とコーラを一口飲んで下を向いてしまった。
マスターの方を和夫が見ると、両手を胸の位置まで上げ、首を横に振って困ったような顔をした。
 マリーは英語の出来る兄さんを通訳として連れてきた。
「私達もイギリスに帰る事になったの。治安も悪いし、私はパパとママに学校に行って勉強もしたいし、友達も欲しい。和夫が来るのが待ち遠しくてしょうがない。色々話を聞いてくれてありがとう。」
和夫は、
「手紙はここに書いてある所に送ってくれれば届くから、これからも文通しようね。」
和夫は言うとマリーは和夫の手を握り、
「アリガトウゴザイマシタ。」
涙を流しながら、和夫を見つめていた。
それを見ていた兄さんが、
「なんか辛気臭いのう…和夫!ビール飲んでパーッとな!南アフリカでまた稼ごうや!マスタービール!!」
マスターはビールを2本持ってきて、親指を上げて常連客の元へ戻っていた。
 マリーがナッツをスープカップ一に山盛りの量を乗せて持ってきた。まだ昼食を食べていない和夫はマリーに、
「ツナライス、アリマスカ?」
マリーは、
「マヨネーズ、ソイソース。O.K?」
と聞くと走ってカウンターの中に入り、カツオを蒸してオイルに付けた物をご飯の上に乗せて、野菜を沢山乗せてくれる。そこに醤油をたらしてマヨネーズを付けて食べると、この上なくおいしいのだ。和夫の大好物になっていた。
 和夫は一口スプーンで口に運ぶと、
「美味ーい!!!」
といつも言うのでマリーもそれが楽しみになっていた。

次回は波乱の展開、和夫のアオハル編その2をお送りいたします。
乞うご期待!!






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