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短編フィクション)支配者は語りたい

※これはフィクションです。私の妄想作品です。

とうとう我らの一族が頂点に立った。何世代にも渡る悲願…であったらしい。幼少より、ただひたすら、自分たちが優れているという教育を受けた。同じような姿かたちをした亜種をゴイム(ケモノ)と呼んで、機をみて、とうとう彼らの遺伝子そのものを組み替えた。ゴイムは人生を通して決して我々の支配を脅かすことのない生命として、ただ劣等であり続けるだけの存在となった。そして、今日も狭い檻の中で、せかせかと蠢いている。

気骨のある人間とゴイムをまとめて追い詰めようとすると、我々のカルマが傷物となるため、古来の呪詛返しと呼ばれる手法を多用していた。しかし、一番は呪詛返しを使わないで済むこと。彼らが自分自身を卑しい存在であると思い続けるように、ゆっくりと調教し、卑しい選択を永続させるに専念した。
モルモットの実験でもあったが、電気ショックで苦痛を与えて続ける状態でで、それを止めるボタンを用意しておく。ボタンが機能すればこそ、抵抗しようと試みるものだが、それが効かないないなら諦めて苦痛を受け入れるようになるというものだ。敗者を多く生み出す競争のシステムを介して、ゴイムには電気ショックを模した微弱な苦痛を与え続ける。ボタンの存在は、教える義理はない。
しかし、ゴイムに混じる人間の場合は抵抗していないように見えて、忍辱という形で耐えている場合もあり見分けがつきにくい。よって、油断も隙もなかった。
だから、気づかれないように、じわじわと血管を劣化させ、あらゆるリスクを高めるという方法が有効であった。もちろん、ゴイムには選択肢を与えた。食べ物には毒を表示していたし、リスクを隠さずに政府の公式サイトにアップもしている。情報を吟味しない奴が悪い。それを吟味できる能力があっても周知しない奴も罪だ。我々の間では、そのような非協力的な同胞は裏切り者として処罰される。

ゴイムは同胞が負けている姿を傍観している。政府の失策を嘆く姿もそれだ。
そして、よくあるだろう台詞、人もしくは人類は愚かだという台詞、実のところゴイム自身はそれに全く影響のある行動してはいないのに、ハハハッ、いないのに人類は…などと一般論で語っている。
おいおい、笑えるな。戦争も厄災も我々の匙加減であるのに、眠っているだけのゴイムが人類の愚かさと呼ぶのは勘違いも甚だしい。
慈悲をもって伝えよう。ゴイムよ、お前たちは敗者ですらない。ただの傍観者であるゴイムはメェメェ言っているだけ。そもそも我々と勝負するまでに至れないからな。そう、あたかも勝負している気分にさせているだけ。痛みを知らぬのに、実に多くの物語を知っている。そこで、ガス抜きさせられているだけであるのに。
ゴイムには、世界に影響力を持つほどに我々がやった世代を重ねる努力も、成果の蓄積もない、刹那的で意志も弱い。
我々が用意した演者が、見せかけでゴイムのために戦っている。それを見て満足しているだけだ。演者は同じゴイムでもいい餌を与えている。それなりに評価しているのだ。

つまりは、傍観者だらけにして、我々にとって都合の良いシステムを作り上げたということだ。本能にある抵抗者としての猛々しさも薄れ、その印象も忘れ去られた頃合いだろう。支配は盤石である。

我らは家族、同胞を大切にするが、ゴイムは我々のシステムを拒絶しなかったため、とうとう家族すらも顧みないゴイムとなった。自分の精神を死滅させるルールを、家族を犠牲にしてまでも受け入れるからだ。淘汰されることも必然、これだけの理由で、また我々は主張を強められる。

さあて、今年の花粉は10倍だぞ。それすらも信じるか?信じてくれるか?ありがとう(バカでいてくれて)。我は神だからな!

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