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「破壊の読書会」主催者の夢に出てきた文章たち

先日、個人サイト「翻訳困難」の「夢の中に出てきた奇妙な単語達」というページに触発された、これまでの自分自身の夢に出てきた奇妙な単語をまとめた記事を投稿しました。

「翻訳困難」の形式に倣って、今回は夢に出てきた奇妙な文章をまとめたいと思います。

アラスカでもこのように流れるのか?
小川のほとりを一緒に歩いていた謎の男が尋ねてきた。「枯草が風に吹かれて、同じように流れる」と答えたが、あまり興味がなさそうだった。
(1/1/2015)
「あなたが言う事には証拠がない」
「そんなの、人間が人間である証拠がないと言っているようなものだ」

ロッチ(お笑いコンビ)のあるコントの中でのやりとり。
(9/14/2015)
Remember, Neverland is just brain... 
壁の狭い穴の中に吸い込まれた先の空間で、どこからか聞こえてきた声。気が付くと自分は手術室で寝ていて、自分の脳の断面を見上げていた。
(5/7/2016)
そういうときは前に避けるもんだ。あんたが避けたのは溺れる方角だよ。あんたは今、溺れたんだよ。 
書店のアルバイト初出勤の日、何をしていいのかわからずレジの前で立っていると、店員のひとり(小さな外国人の老婆)が本を抱えてやってきたので、邪魔にならないよう後ろに避けた時にかけられた言葉。
(6/20/2020)
〈☜宿の浴場は細菌による感染症のおそれがあり危険です。海水浴場はこちら。おひとり様五百円。〉
〈☞浴場の常在菌が感染症を引き起こすことはありません。ご安心ください。浴場はこちら。〉
〈☜嘘です。騙されないでください。〉

海辺にある旅先の宿で、浴場前に設置されていた立看板。宿には海水浴場と普通の浴場の両方があり、管理者も分かれているようだが、あまり仲は良くないらしい。
(8/20/2021)
お客様、当店は初めてのご利用ですか? 当店は《日本一お客様をいじめるレストラン》でございます。気になるメニューのお値段は……秘密です! 
旅先で入ってしまったレストランで、ウェイターが嬉しそうに店のコンセプトを説明してきた時の台詞。高くてもせいぜい五千円程度だろうと自分を落ち着けて水を注ぎに行くと、「あっ、ここで水入れるんだぁ」と茶々を入れてきた。
(8/20/2021)
だって十六でアナルプラグまで覚えさせられたら、二十歳になったらもう結婚するしかないじゃない。 
海外の大学に併設されている映画館で、上映中もずっといちゃついていた隣のカップルの女が彼氏に言った台詞。これを聞いて、堪りかねず劇場を出た。
(10/4/2021)
口が鍛えられてるってなんだ? フェラか!? お前は、宇宙人の……テンタクルをフェラでもしたのか!?
大学のサークル仲間と『三体』(SF小説)の読書会をしている時に口論になり、「俺の方が口が鍛えられてるからな」と言われてカッとなり口を突いた言葉(「触手」という単語が咄嗟に出てこなかった)。
(10/18/2021)
「次の出廷日に備えて、今から裁判所の食堂メニューを考えておく」
友人からSNSで送られてきた怪獣映画トリビアのクイズ(10択問題)にあった選択肢のひとつ。
(10/22/2021)
田舎に引っ越して、1つでもいいから田んぼを買え。自分の田んぼなら、中から子供たちにポップコーンを撒いてもいい。 
映画館からの帰り道、水面に反射する空を見ようと子供たちが田んぼに集まっている様子を見た友人が「あれって中に入って写真撮ってもいいのかな」と訊いてきたので、それに答えて言った。
(12/13/2021)
「やっぱり船旅は豪華客船じゃないとだめか」
「お前が豪華客船に乗ったら、やっぱりアレか? 亀頭を……ヌルヌルで……」
「俺が豪華客船に乗ったら、アレだ……ウエルベックの……ほら……大体アレに準ずるよ」

友人と南の島(沖縄?)へ向かうフェリーに乗り込むときに交わした会話。ミシェル・ウエルベックの豪華客船が出てくる作品のタイトルを思い出そうとしたが、出てこなかった。
(12/31/2021)
〈新年早々ミソりました〉
新年の伝統行事に参加した知人がSNSに投稿した文面。この行事は最近、女性蔑視であるとの批判を浴びるようになっていた。「ミソる」はここではミソジニー的行為をするという意味。
(1/2/2022)
Tシャツはペットボトルの原料。小学生でも知っていることだ。 
Tシャツの回収日に出し忘れをした母の大げさな騒ぎっぷりに腹が立って言った台詞。母はなにか神聖な捧げものとしてTシャツを回収していると思っていたらしい。
(5/27/2022)
水の色がざるそばのようです。 
東京湾が氾濫したことを伝えるニュース映像で、レポーターが放った台詞。この台詞はミーム化し、音MADなどの素材になった。
(6/5/2022)
セラピー反対! 奴らは俺たちの未来のために金を貰ってる! 
反心理療法のデモ隊が唱えていたシュプレヒコール。「奴ら」というのは恐らくセラピストだろう。
(10/1/2022)
でも、こっちに向かって飛んできた水滴の方角が「凶」だと分かっても避けられっこないよね。 
海外の高校に入学し、初登校の日に出会った風水を少し齧っている若い男性教師が言ったジョーク。とりあえず愛想笑いを返しておいた。
(10/2/2022)
沖縄の海でマグロが育つわけがないんだ。 
沖縄を舞台にした動物医療マンガ(を実写化したドラマ?)で、マグロ養殖のためにある企業が海沿いに建設した大型タンクを見た主人公(動物病院の新入り)に向けて先輩が言った台詞。
(10/13/2022)
「ある種の処女からは、独特のにおいがする」
旅行先の古書店で見つけたエッセイ集を適当なページで開いてみると、大見出しにこう書かれていた。
(12/4/2022)
あなたのおかげで、いま私はあなたと同じ身長になれました。今夜、あなたをお迎えに上がります。 
あるパニックSF映画で、遺伝子操作によって誕生した巨大人喰いコオロギが、自らを生んだ女性科学者の夢枕に現れてささやいた言葉。
(4/13/2023)
米兵が海に立ちションをすると、地元住民は「良いデハナイ」ことをする迷惑ガイジン扱いするが、それは夜に蕎麦を食べた後のオシッコだった。うどんを食べた後のオシッコとは臭いが違うから、そっちが日本人だと言うのなら、嗅ぎ分けてみろってんだ! 
沖縄某所の米海軍基地に在日米軍総司令官が来訪した際、司令官の横に立っていた兵士がカタコトの日本語で披露したジョーク。
(5/12/2023)
I thought, we could construct meteors……made of styrofoam that is. 
無数の隕石が地表に降り注ぎ、視界いっぱいにキノコ雲の海が広がるモノクロ映像に被さるように聞こえてきた声。声の主はデヴィッド・リンチで、この映像は『ツイン・ピークス』シリーズのオリジンらしい。
(5/25/2023)
ビートたけしは前々から「自殺したい」って言ってたからね。
芸能人自殺のニュースを受け、取材のため会見場に訪れた記者である自分が、友人の記者に言った台詞。会見場に現れたのは死んだはずのビートたけし本人で、これからまさに自分が自殺した理由を公表するのだ。
(10/21/2023)
「これをニューヨークで流行らせれば、ネズミ問題は解決するかもしれませんね」
「ドブネズミはともかく、鳩を細菌が繁殖しない環境で育てるのは難しいんじゃないかな」

ドブネズミの肉を細かく刻んだものを鳩の肉の中に詰め、それを更に別の肉に詰めたものをコンソメスープに浮かべた創作料理を食べながら、知人と交わした会話。
(12/22/2023)
「民衆が寺に対して蜂起するメリットはなんだ? 寺を解体して木材にでもするのか?」
「寺の中には食料がある」
「動物でも狩れ!」

江戸時代の民衆蜂起をデマだと伝えるNHKの歴史番組を見ていた時に、それは事実だと母が言い張ったことで始まった口論。
(1/23/2024)
「英語で話すなら父親がいいですね。父親は英語ペラペラなんで」
「謝罪嘆願書は出したんだよね?」
「……なんすかそれ?」

読書会仲間とカフェで語学について話していて、話題が自分の家庭事情へと移った時の会話。文脈がよくわからないが、「謝罪嘆願書」なるものを父に提出すべきだということらしい。
(3/7/2024)

以上が、2024年6月2日時点の、僕の見た夢に出てきた奇妙な文章のまとめです。

「文章」という括りではありますが、ほとんどが文字ではなく会話であることに、今回まとめてみて気が付きました。
「翻訳困難」管理人さんが記録した2021年以降の夢の文章を確認しますと、(本記事執筆時点では)文字情報として認識されたと思われる文章は全体の3分の1以下に止まっていますので、夢では言葉は文字よりも音声として表れやすいという傾向ははっきりしているように思われます。

前回の「単語編」の記事で、夢には夢の合理性があるのではないかと書きましたが、夢の会話文を読んでいると特にそう感じます。
もし仮に睡眠中に脳内で生じる言葉の知覚が全く合理性を欠いたものであったとしたら、会話らしい会話はそもそも成立せず、「言葉のキャッチボール」ではなく「言葉のドッジボール」のようなやり取りが繰り広げられるのではないでしょうか。ところが、夢の会話では多くの場合、きちんと(脳内でイメージされた)相手の言葉を受けて返すこと、つまり「言葉のキャッチボール」を行っているように思われるのです。

会話はふつう、他者の存在があってはじめて成り立つものと考えられているからこそ、夢では存在しない脳内の相手と言葉が交わせるという事実が、個人的にはとても重く感じられます。

参考元:「夢の中に出てきた奇妙な単語達」(「翻訳困難」管理人)http://hon-kon.o.oo7.jp/unknown.html

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