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嫌いで好きで

スポーツは嫌いだ。
皆から遅れ一人だけで走る徒競走は公開処刑かと思う。
私がいるとチームの空気が悪くなりいたたまれない。
とにかく小・中・高はこの時間をどうサボるか考えることに費やしたといっても過言ではない。
そんな私がスポーツに夢中になった。
きっかけはシドニーオリンピックで”魚雷”と呼ばれたあの人だった。
そこから水泳を『観る』ことに夢中になった。
コンマ数秒の差でつく勝敗。
凄まじいスピード。
美しいフォーム。
そして何位にゴールしても国を超えて選手同士がお互いを称え合う姿。
そこには”最後にゴールした”人間に向ける白い眼や同情などなかった。
選手達は皆天井知らずの努力家だった。
身体を鍛え、それ以上に精神を研ぎ澄ませ、決して自暴自棄にならない。
出来なければ原因を追究し更にトレーニングを重ね一歩一歩確実に進む。
真摯な姿により一層魅せられた。
その年の夏、私は水泳に夢中になった。
スポーツ嫌いはどこへ行ったのだろうと思うくらいたくさんの試合を観戦し、好きになったらどの国の選手でも応援した。
夏季オリンピックの水泳は必ず観戦する。
美しい姿と精神力の尊さを自分も持ちたい、と思いながら。
そしてシドニーオリンピックから約20年。
水泳には変わらず夢中だ。
でも20年間一度もプールや海に行ったことがない。
スポーツは相変わらず嫌い。
集団とか強調とか根性とか寒気がする。
でも水泳観戦だけは大好き。

ちょっとおかしいですか?

でもこういう人間がいてもいいですよね?


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