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キャンパス(3)

結婚。
最後はそこに行き着くんだろうか。
結婚してないから親は安心できない。
子供を持って一人前。
未だにその考えに疑問を持たない人々が恐ろしかった。
友達の孫の可愛さを語る母。
孫を抱く叔父を見る羨ましそうな父の目線。
直接的な言葉より間接的な言葉や目線の方が雄弁だ。
父も母も遠回しな物言いで自分の欲しいものを手に入れるのが上手い。
結局、私は2人が望むように実家に帰り頼まればお金を貸すのだろう。
そしてどれだけ苦痛でも”底辺の末っ子”としての役割を果たすのだろう。

結婚しない。子供もいらない。
子供がいることで過去を追体験することが怖いから。
「自分が一人前になる」為に他の人を利用したくないから。
その本音を隠して。

一緒にいる時間が楽しいと嘘を吐きながら。

時を経て私が家族を見る目が変化した。
それは果たして私だけなのだろうか。姉から見た私は、父から見た姉は、母から見た父は、父から見た母は、姉から見た母は、母から見た私は、母から見た父は、父から見た私は。母から見た姉は。

その瞬間、何も描かれてない真っ白いキャンパスが頭に浮かんだ。

気づいたら雨が止んでいた。
通話時間を確認する。
1:05:23
1時間以上虚実入り混じった話を続けていた。自分のものでないような口を操りながら、何色でもいい、キャンパスに色を付けてほしい。そう願った。

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