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空想アラフォー女子 2

 妊娠してからは、あっという間だった。私が三十二歳、彼が三十五歳の時に職場で出会った。ちょうど前の恋愛が終わった後で、10年ほど付き合っていたが、浮気をされて破局。相手は年下の浮気相手と結婚した。

 職場の飲み会の帰り、彼ともう一軒行き、流れで関係を持った。彼には、妻がいた。妊活をするもなかなか子供に恵まれず、夫婦関係はギクシャクしていると話してくれた。ただ私といる時が安らぐと言ってくれていた。

 気がつけば8年経っていた。彼は栄転、私は転職していたが、関係は続いていた。私は彼を愛していたし、彼も私を愛してくれた。週一回2時間だけの関係。私はそれでも充実していた。四十歳の誕生日に妊娠が判明した。

 妊娠報告したとき彼は喜んでくれた。そして、妻と別れると話してくれた。私はようやく彼と本当の意味で一つになれることが何より嬉しかった。ようやく暗闇から太陽が見えるようになる。

 誤算が一つだけあった。彼は妻と離婚しなかった。妻は私の妊娠を彼に聞かされたが、離婚は許さなかった。彼はせめて私の子を認知したいと言ったそうであるが、それも許さなかった。私と彼は接近禁止となった。暗闇からでても太陽なんて無かった。

 それからはあまり記憶が曖昧だ。一度も涙を流したところを見た事がない父が泣いていた。母は泣きながら抱きしめてくれた。妹には伝えた後電話に出てくれない。職場は出産後異動になるようだ。会社なりの配慮らしい。

 迷った。堕ろすギリギリの時期まで決めきれずにいた。ただ、妹に、産まれる子供に罪みは無いと言われて抱きしめられた。涙が止まらなかった。決心がついた。電話はそれ以来でてくれない。

 名前はどうしよう。お腹をさすると、確かな胎動を感じた。




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